のり巻き のりのり

飾り巻き寿司や料理、己書、読書など日々のあれこれを書いています



「うつくしきもの」清少納言との出会い

2016年03月29日 | 随想
昨日来た子どもたち、3年前のことを思い出しました。
3歳と2歳でした。

小さくてもお客さんです。前日に室内の掃除をしました。
危ない物は片付け、塵埃を掃除機で吸い取り、気を遣ってきれいにしました。

幼児にとってよその家は、まるで不思議なお城のようです。探検の旅に来たのです。
部屋を巡り、押し入れに隠れ、ベッドの下に潜り込み・・・異国の旅を満喫しています。

さて、階段を上って2階へ行きたいと言います。
初めての家で慣れない階段、まだ危なっかしくて付いていなくてはいけません。

二人とも階段に手と足を付き、四つん這いになりながら、ゆっくり上っていきます。
その途中「何かある」「これ」と言っては、つまみ上げるのです。

「え、なあに?」と目を近づけて見ると、小さな小さな色糸だったり、ほんのかすかなナッツの皮だったり・・・
ちゃんと掃除をしたつもりでも、残っていたんですね。

そんなことを2、3回繰り返しながら、上っていきました。

地上15㎝のきらきら目線と地上150㎝の老眼目線とでは、見える世界が全く違うのでしょう。
大人だったら「はあ?」でも、幼児ならではの「これ!」の何と新鮮でかわいらしく聞こえたことでしょう。

3年たって、しっかりした足取りで階段を上れるようになっていた6歳と5歳
目線の位置も高くなりました。きらきら目線はまた違う物を見つけに違いありません。

偶然です。たまたま「枕草子」の中に、同じことを見つけました。


    うつくしきもの(145段)

うつくしきもの 瓜にかきたるちごの顔 雀の子のねず鳴きするにをどり来る

二つ三つばかりなるちごの いそぎて這い来る道に いと小さき塵のありけるを 目ざとに見つけて いとをかしげなる指(および)にとらへて 大人ごとに見せたる いとうつくし

頭(かしら)はあまそぎなるちごの 目に髪のおほえるを かきはやらで うちかぶきて物など見たるも うつくし



     子どものかわいらしさ

かわいいなあと思うもの。瓜に描いてある幼児の顔
ちゅちゅっと口で鳴き真似をして呼ぶと、踊るようにしてやってくる小雀

二,三歳くらいの幼児が這い這いしてくる途中、ごく小さいゴミが落ちているのを目ざとく見つけて、とても愛らしげな指で拾って、大人などに見せているのは、実に愛くるしい。

髪を肩のあたりで切りそろえた幼女が、目に髪がかぶっているのを手でかきのけることもせず、顔を傾けて物などを見ているのも、とてもかわいらしい。



たまたま読んだ千年前のエッセイに、全く同じことが書いてあったのには、びっくりしました。
清少納言の感性は、現代に生きる私の感性とぴったりだったのです。

「春はあけぼの」から生じた、清少納言との出会い。
時代を超えた人気エッセイストに対して恐れ多いのですが、まるで旧知の友に出会ったような気持ちになりました。

こんなところにも出会いがあるなんて、まだまだ人生楽しめそうです。