写真は、阿久津英歌集 現代短歌文庫 砂小屋書房 1500円➕税。
本の裏表紙にある阿久津英の写真。昭和54年「紫木蓮まで」によって短歌研究新人賞受賞。私は受賞作が載った雑誌短歌研究によって阿久津英を知る。私にとってのマドンナも御年(おんとし)65歳。
歌を引いてみよう。
いにしえの 王 (おおきみ)のごと前髪を吹かれてあゆむ紫木蓮まで
地の息のたちのぼりいる夕べにてこの世の外(ほか)の水溜あり
産むならば世界を産めよものの芽の湧き立つ森のさみどりのなか
唇をよせて言葉を放てどもわたしとあなたはわたしとあなた
蛇口より水はひかりて迸(ほとばし)るバケツの底のありふれた明日
風まじえ降り来る雨に敷石のついに濡れざるひとところあり
くれないの空に浮かべる雲ひとつ酩酊をしている如くに見ゆる
今でも、阿久津英は私のマドンナだ。