写真は 関東大震災 吉村 昭 文集文庫 560円 税別。
大正12年9月1日、午後11時58分、関東大震災は起きた。地震による直接な被害のさることながら、その後の火災、流言蜚語による人心の喪乱は目を覆うばかりだ。地震の備えといえば、防災グッズや食料の備蓄があげられるだろうが、極限な状態に遭って冷静である強い理性を持つことも地震の備えであると痛感した。
天災は忘れた頃にやって来る。
関東大震災からすでに90年以上の時が過ぎている。震災はいつ起きても不思議では無い。本文から引いてみよう。(336頁)
「文人でもあった理学博士寺田寅彦は、地震と人間についての考察もおこなった。関東大震災の大災害は、歴史的に考えれば前例が繰り返されたにすぎず、それは人間の愚かしさから発していると述べた。過去の人間が経験したことを軽視したことが災害を大きくした原因であり、火災に対する処置などは、むしろ江戸時代よりも後退していると嘆いた。」
一読をお勧めする。
蛇足だが、私は司馬遼太郎よりも吉村昭が好きだ。