親の恩は子を持って知る。
=自分が子供を持ってはじめて、親がどれほど苦労
して育ててくれたかがわかるということ=
=========☆☆☆☆☆===========
「母親」というもの
ぼくは、母が早くに亡くなりましたので母の愛に接した期間が
短かったのですが、それでも母のことはよく憶えています。
ぼくの体験からいうと、母親の愛というものは”私”が
ありませんね。自分というものがない。
そして、海のように広く、かつまた深い・・・・・・・
「紀ノ川駅での別れ」
ぼくの母は、自分の子供に対して精一杯の愛情をそそぐというような、
どこにでも見られるいわば平凡な母親でした。
いつか町に連れていってくれたとき、ぼくがおもちゃを買ってとダダを
こねて店先の道ばたにしゃがみこんでしまったのですな。
それを母はやさしくなぐさめてくれました。
買いもせんかわりに叱りもせん。母はやさしく女性的な人でしたね。
いつまでもぼくはね、大阪に奉公に出る九歳のぼくを、紀ノ川駅まで
送ってくれた母の姿をはっきり心に浮かべることができますよ。
「身体に気いつけてな、精出して奉公先のご主人にかわいがって
もらうんやで・・・・・」と涙を浮かべてぼくに言ってくれました。
汽車が出るまでしっかり握って離さなかった手のあたたかみ、
隣あわせた乗客に、「この子は大阪までまいりますが、初めての
汽車の旅ですので、どうかよろしくお願いします。あちらに着けば
迎えにきていますから・・・・」
と一生懸命に頼んでくれたことなどがぼくの脳裡(のうり)になつか
しくもありがたい思い出として残っているのですよ。
「偉大なる力」
よく一般に、女性は弱いものだといわれるでしょう。しかし、一概に
そうだとはいえないように思いますね。
母親の限りない愛情、それはまことに大きな力なのですから。
人によって個人差はあるでしゅうが、女性には愛情のこまやかさとか、
思いやり、あるいは忍耐強さとか、いろいろな特徴があります。
その中でとくに大切なのはぼくは愛情だと思うのですよ。
愛情にあふれた女性に接すると、そこに女らしい美しさを感じるも
のですし、またそのような姿に女性がなることが、まわりの人を
幸せにし、みずからも幸せになる道ではないかと思うのです。
もちろん、愛情が深ければあとはどうでもよいというのではありま
せん。シンの強さとか、視野の広さとか、分別心とか、そういうものも
あわせ持つことが望ましいと思いますよ。
けれどもやはり、女性としては、愛情、思いやり、親切といった
心の面の豊かさがまず大切だと思うのです。
これらには、すべてのものを溶かすといっていいほどの偉大な力
がひそんでいるのではないでしょうか。
そこに、母親の尊さ、女性の尊さがあるのでしょうね。
「松下幸之助:人生談義より抜粋」
写真:緒方弘之「素晴らしい自然」五家荘(新緑)
1300~1700m級の九州山地の奥深い位置に点在する五家荘は八代市泉町(旧:泉村)の中の旧村であった椎原、仁田尾、樅木、葉木、久連子の5つの集落の総称であり、五家荘という地名では地図に載っていない。
五家荘地方は平家落人伝説の残る九州中央山地の奥深い山間に点在する集落で九州の秘境と言われている場所である。五家荘にある「平家の里」の資料館には平家落人伝説の資料が展示してある。