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クルマの安全性評価のこと(その2)

2007-10-08 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 前回は前面衝突テストについて記しましたが、今回は側面衝突テストについて記してみます。
 側面衝突テストについては、基本的に相手乗用車を模し前面にアルミハニカムを装着したムービングバリアを被テスト車両に衝突させて行われます。なお、日本および欧州、オーストラリアでのムービングバリヤ速度は時速50km/hで、米国では速度54km/hでしかも、衝突角度を側方鉛直線の上方27°に設定しているという違いがある様です。

 現在の車両においては、前後ドア共にドア内部にはサイドインパクトビームという鋼管や鋼材(材質は高張力鋼または超高張力鋼または高張力のアルミ材の場合もあり)が装着され、ドア自体の大きな変形を極力防ぐ様になっています。また、そのドアの受け止める、フロント、センター、リヤの各ピラーも、前回の前面衝突で記したのと同様に強化がなされています。特に、対側面衝突テストに備え、センターピラーの強化は著しいものがあり、アウターパネルはプレス成形性を考慮して比較的強度の低めの高張力鋼板が、インナーパネルおよび中間にサンドイッチされるレインフォースメント(補強板の意)は、板厚もアップした高張力鋼板もしくは超高張力鋼板が使用されています。また、センターピラーリインフォースメントの特に下部は装着部位の結合剛性を強化するべく、サイドシルインナーおよびフロアパネルに直結する結合構造が取られています。

 側面衝突の場合、前面衝突と異なり車両の潰れ代を大きくすることによるGコントロールは、車両の構成上困難ですから、基本的に側面の車体強度を出来うる限りアップさせ、後はサイドエアバッグおよびカーテンシールドエアバッグ(ヘッドエアバック)での救命対応となります。ところで、先に述べた側面衝突テストでは、相手物が乗用車である場合を前提としたものです。相手車がトラックやSUV車等の車高の高いクルマである場合Is_poleや、車両自体が横滑りしての電柱等への衝突は考慮されていません。しかし、欧州で行われるているEuroNCAPでは、新たな側面衝突テストとしてポールテストというものがすでにが開始されています。被テスト車両自体を平たい代車の上に乗せ、時速29km/hで運転席ダミーの頭部付近をポールに側突させるというテストです。

 日本自動車研究所(JARI)でのポールテストの試験結果の様子を伝える記事を下記にリンクしました。カーテンシールドエアバックなしでは、たぶんダミーの頭部がポールに直撃したのだと想定されますが、HIC値(前回記事参照)が8600以上と完全に即死状態となっています。しかし、カーテンシールドエアバック作動状態でのHIC値は140以下と桁違いに低下しています。現在の日本車では、高級車を除いて、サイドエアバックやカーテンシールドエアバックはオプション扱いのクルマがまだまだ多くあります。特にカーテンシールドエアバックについては、その設定すらされていないクルマも多いのが現状です。しかし、この試験結果を見る限り、前部エアバックと同様に、標準装備とされてしかるべき安全装備であると感じます。

※掲載写真はEuroNCAPでのレクサスISのポールテストの様子です。

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