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クルマの安全性評価のこと

2007-10-07 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 現在、世界各国で自動車の衝突安全性(パッシブセーフティ)の評価(NCAP:New Car Assessment Programme)が行われています。
 その方式は、国より若干の異なりはあるものの、前面衝突および側面衝突等を基本としたものです。日本でも、前面衝突については、対リジットバリヤーフルラップ衝突テスト(速度50km/h)および対デフォーマブルバリアオフセット衝突テスト(速度56km/h)が行われています。また、側面衝突については、ムービングバリヤ(アルミハニカムを装着)による、側面衝突テスト(速度50km/h)が行われています。
 各衝突テストでは、人体を模したダミーを搭載し、ダミー内に設置した各種Gセンサーの数値や、車体の変形(衝突後の左右ドアの開閉性やペダル類の後退量等)を評価対象としています。ダミー内のGセンサーにより、頭部、頸部、胸部、下肢部の傷害値を計測しています。もっとも重視される数値としては人体の生存率に極めて大きなファクターとなるHIC(頭部障害値:Head Injury Criteria)があります。この値が1000を超えると脳震とうレベルもしくは後遺障害の発生大であり、3000を超すと即死の状態であると云われています。現在の生産車両における前面衝突では、エアバッグおよびシートベルトプリテンショナーの装備がほぼ標準化されていますので、まずHIC値で1000を超える様なクルマはあり得ません。
 ところで、前面衝突テストですが、フルラップとオフセットの2種Benz_c1997が行われていますが、フルラップでは車体の変形量は比較的小さいですが、ダミーに生ずる加速度は相対的に大きくなります。一方、オフセット衝突では、車体の一部に衝撃が掛かるためダミーに生じる加速度は比較的小さいものの、車体の変形は大きく生じるため、人体の生存空間が圧迫されることによる加害性が問題となって来ます。このオフセット衝突テストに高評価を得るには、エアバックやシートベルトプリテンショナー等の副次的な装備ではなく、車体の設計に対応した工夫が必要となって来ます。オフセット衝突テストでは、車幅の40%の幅で運転席側をバリヤーに衝突させますが、バリヤー側には相手車を模したアルミハニカムによるデフォーマブル構造とされています。従って、単にフロントサイドメンバーだけを強化しても、高評価は得られません。当然に、衝突側の前輪を含め面として強く後方への後退を強いられますから、フロントピラー(特に下部)を中心とした車体の強化が欠かせない訳です。従って、現在のフロントピラー構造は、下部をフロントサイドメンバーとフロントピラー下部を連結するボックス断面構造を付加したり、従来のアウターおよびインナーの単純なボックス断面構造から、中間により板厚の大きく強度の極めて高いBenz_c2002_2高張力鋼板(場合により超高張力鋼板も)を付加した3枚パネル構造が採用される様になって来た訳です。

 ここで、乗用車の世界で初めて衝突安全の思想(クラ ッシャブルボデー)を採用し、その安全性が神話ともなっているメルセデスベンツ車の2世代に渡るオフセット衝突テストの結果を比べて見ます。共にEuroNCAP(欧州委員会)試験結果からの写真です。上部写真が1993年型のCクラス(202型)で、下部写真が2000年型のCクラス(203型)ですが、その違いは余りにも明確なものです。

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