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交渉事案の思い出 その7・フェラーリ3

2021-11-10 | 賠償交渉事例の記録
交渉事案の思い出 その7・フェラーリ3
 またまた、フェラーリ360モデナの高額修理費の案件として紹介したい。

1.担当者と工場との交渉決裂
 損傷状態は添付写真に示す通りで、担当者としては当初の見込み損害額100万円程度と想定していたのに対し、総額260万円余の工場見積が提示されるに至ったのだった。 添付ファイル(1)&(2)



 その見積見積の項目には、問題点として指摘せざるを得ない多数の内容を含んでおり、担当者から相談を受けることになった当方も、このままでの通常交渉を進めても、とても満足できる結果とはなり難いと感じたのだった。

 そこで、当方が作成した質問書を提示し、内容を整理した上で交渉を進める様にアドバイスしたのだった。しかし、担当者にとっては、この様な文書提示による反発に恐れたのだろう、その同意は得られないまま、更に再立会を行う等作業中の確認を含め折衝を進めたのだった。しかし、結果として工場と折衝中にとうとう電話を切られ、交渉決裂するという事態に至ったのでだった。

2.質問書の提示
 担当者と工場との交渉破局を受けて、予め作成済みの質問書の表書きに「本日のお電話の中で、**社長様より当方との話し合いを拒否される様な発言を受けたことは大変残念に思います。」と書き足す等の一部修正をし、担当者名で直ちにFax提示したのだった。 添付ファイル(3)&(4)



 なお、提示した質問書は見積書のほぼ全項目である18項目についてを対象とし、既に交換作業が進められている作業についても、あえて何故に交換が妥当と判断したの等と問い質す内容も入れたのだった。

 今回の担当者もそうであるが、この様な文書を出すこと自体に、あらぬ反発を買うのではないかと恐れを持つ者が多い気持ちも理解するところはあるが、私はそんなこと気にしていられるかと、ふてぶてしくも考えている。何時も述べているように、鈑金修理という商品を買う購入者(料金支払者)の疑問に答えるのが、販売者たる工場の責務となるはずなのが道理であろうからだ。もし、そんな説明は出来ない等として拒否する様な工場があったとしたら、その工場の立場は社会的に不利にならざるを得ないだろう。私自身は、過去に相当数の同様文書を出し続けて来ましたが、未だかつてそのこと自体をもって拒否を受けたことはないのだ。ただし、これを読んでくれた後輩諸君にくれぐれも、自戒してもらいたいのは、説明責任は、自らにも掛かって来る問題であって、契約者、車両使用所有者や修理工場からの説明の求めについては、「会社で決まっている」とか説明にならない返答をくれぐれもしない様に努めて欲しい。それが結局は、損保担当者と工場などの信頼関係にむずび付く根源的な問題にもなると意識して欲しい。

3.工場への訪問による説明聴取(所要時間2h)
 質問文書を出してから暫くして、再度工場に連絡を入れところ、文書質問の説明を口頭で行いたいとのことであった。そこで、翌日に担当者と私が同行訪問して、約2時間の打合せの時間を持ったのだった。

 但し、当方の思いとしては、この日に協定までに至ることはないであろうとのものであって、この日の目的は当方の質問書に対する相手方の言い分(その根拠、論理)を聴取することにのみ努めたのだった。

※なお、この聴取の中では、当然相手の主張するすべての説明について、なる程等と聞く訳ではない。その場で明確に反論できることは、当然反論したり、牽制したりを行うのだ。ただし、ここですべての問題を決着する必要はまったくないのであって、ある程度は聞き流し、簡単に相手方の譲歩が得られない問題は、その主張の要点だけをメモして帰れば良いのだ。

 それと、相手方の動静として、まったく譲歩するつもりがないのか、ある程度譲歩する様子が見受けられるのかを探っておくことも必要なことだろう。今回は、質問中の各項目において、それぞれレベルは異なるが、一定の譲歩姿勢が見られたのだった。

4.意見書の提示
 説明聴取の翌々日に当方意見書および自己見積書をFax提示したのだった。当方の意見趣旨は、意見書記載の通りだが、これに添付した自己見積は、種々考えながらも意識的にあえて低めに修正しつつ150万円余のものとしたのである。 添付ファイル(5)&(6)to(8)





 なお、意見書の記述方法としては、相手方から口頭で主張を受けた内容について、御社の意見としては・・・でした。しかし、当社としては・・・と考えています。従って、妥当となる工数は・・・と判断します。というように、口頭で聴取した相手の主張を記載した上で、当方の反論および意見を併記して記載する様に努めたのだった。

 このことは、今までの交渉事例にも記して来たが、次の様な思いからなのだ。
 もし協定不能となり第3者の裁定を仰ぐ場合を想定するのだ。その様な記述方法となっていれば、相手の主張に欠点があれば、そのことを明確に示すことが出来ると考えるのだ。そして、そのことを相手方にも感じ取ってもらうことが、牽制力となるものと考えるのだ。

5.最終協定の交渉
 意見書提示の翌日、工場と再打合せを持ったのだった。この打合せの中では、当方としても協定促進に向けて譲歩する姿勢を示しつつ折衝を行ったのだ。この交渉の中では、相手方の外注ガラス業者が高めの設定を行っていることが伺われることから、Frガラスの脱着工賃の見直し、そして左右Frドアの脱着容認等については一定譲歩しつつ、修正見積を送付したのであった。そして、最終見積額170万円弱として協定するに至ったのだ。なお、協定直後に元請け工場からの連絡で、ちょっと協定を待って欲しい旨の連絡を受け、若干緊張する場面があったが、数日後に協定了解の確約を受けるに至ったのだった。

7.後記・雑感
①本件における反省点
 本件経緯を見てもらって判るとおり、Frパネルの取替認容について、曖昧なまま推移させ修理着工させてしまったことは正直に云って失敗であったと思わざるを得ないところだ。この付随作業として、左右フェンダー脱着、左右ドア脱着、フロントガラス脱着等と膨大な作業量(費用)が生じてしまったことを考えれば、この段階において修理の着工を不定しつつ、強く争うべき問題がまずはあったと思うところだ。

②他工場よりの情報入手の活用
 本件車両の様な事例の少ない高級特殊車両では、理不尽とも感じられる料金主張を受け、そのことを指摘しても実時間として要した等として、なかなか妥協を得ることが困難な場合も多いものだ。今回、同型車の修理経験が豊富な別工場より聴取しつつ、そこで得られた情報を該当工場に示しつつ牽制に利用したのであるが、大変大きな影響力を与え得たものと思うところだ。

 しかし、この情報入手先の工場も、直接利害関係にある問題であれば、その様な冷静な情報は得られないだろう。その様な工場であっても、利害関係のない他人への評価というのは、結構に冷静で客観的な意見が得られることは知っておくべきことだろうと感じる。



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