私の思いと技術的覚え書き

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ポルシェ917Kのこと

2016-07-21 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 このレーシングカーは、映画「栄光へのル・マン」でマックイーンが駆る映画として、強烈に印象に残ります。
 エンジンは約5Lの水平対向12気筒、といってもクランク剛性から、各気筒独立のボクサーではなく、クランクピン部を対向シリンダーで共有した180°V12気筒だった様です。しかも、捻り剛性上、クランク出力は中央部からギヤを介してアウトプットするというセンターテイクオフとしていた様です。

 当初、ル・マンの長いストレートであるミュルザンヌでの空力を意識してLH(ラングヘッド)としていた様ですが、その後短いテールの917kにモデファイされています。エンジン冷却は、もちろん空冷でエンジン上部に大きな強制空冷ファンが装備されています。これを、当時ホンダのF1総指揮を取っていた中村良夫氏は、あれは相当な出力損失になっているハスだと酷評していたものでした。

 このポルシェ917kの魅力を余すことなく描いているのが映画、「栄光へのル・マン」でしょう。公開当時にに劇場でも見ましたが、今、DVDで何度も見直しても、飽きることはありません。この映画を知っている方と話すと、「あのポルシェがクラッシュするシーンは凄かった。クラッシュしてもホイールスピンが止まらなかった・・・」などと、そのショッキングシーンのことに及びます。これは、主演のマックイーンが駆るポルシェ917Kが、他車のクラッシュによる閃光に一瞬気を取られ、先行する低速度のポルシェ911の発見が遅れ追突しそうになり、これを避けようと、制御不能に陥り大クラッシュをやらかしてしまうという設定です。映画製作では、流石にポルシェ917Kを潰すわけにも行かず、市販レーシングカーであるローラをラジオコントロールにより遠隔操作してクラッシュを再現させたと伝えられています。それで、クラッシュ後も、スロットルONのままで、ホイールスピンが止まらないという若干不自然な映像となっている訳です。でも、そんな不自然さはあっても、高速度撮影したと思われる映像は、迫力満点で見るものを引きつけます。
 この映画は、ル・マンのレース当日の雰囲気や、今となってはクラシカルなスポーツプロトタイプ・レーシングマシンの魅力が良く保存されていると感じます。そして、当時のマシンは、最低地上高が高く、現在の市販スポーツカー(RX7、NSX、Z4など)と同レベルではないでしょうか。それだけ、当時のサーキットは路面凹凸が酷かったことや、ラジアルでないバイヤスのタイヤの摩擦係数も低く、十分なストロークを持ったサスペンションが必用だったといえるのでしょう。 それでも、車体としての全高は十分低く、ドライバーはかなり寝た姿勢でのドライビングとなるのです。

 また、エンジンレブリミットも8千rpm程度と4AGなどの市販スポーツ車と大差ないものです。しかし、一時期のF1みたいに2万rpmも廻る音より、8千rpm近くの音の方が魅力あるものと思えます。なお、十分な最低地上高がありますので、それなりの保安装置と排ガス装置を付加すれば十分公道走行可能な状態とも思えます。
 最期に、主演するマックイーンのブルーアイの鋭く視線は厳しく、何時まで経っても魅力を感じます。ステーブ・マックイーンやポール・ニューマンなど、現役時代からクルマとレースが好きだった大スター達ですが、両名とも既に冥界の旅立たれてから久しいですが、銀幕の中では色褪ることはありません。


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