私の思いと技術的覚え書き

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エアバッグ・トラブル事例

2012-08-16 | 技術系情報
 今やエアバッグは乗用車および商用車共に、市販されるクルマのほとんどに装備される時代となっています。これは、法的にエアバッッグの装備が義務付けられたからと云うものではなく、衝突安全性能のテスト評価値(JNCAP)が公表される時代となり、前面事故の際に最も致死に関係するHIC値(頭部障害値=ダミー頭部の3軸加速度合成値)が1000以下をクリアするにはエアバッグの装備が必須のものとなってきていることによると思われます。

 さて、そんなエアバッグの標準装備ですが、999の信頼性を確保したり、各エアバッグモジュール単体での安全性を確保したりするために、色々と工夫がなれていますが、これがまたトラブルの元となったりします。

 例えば、エアバックの電気回路に何らかの不具合が生じて、電源が瞬断する様な場合、多くの車両メーカーでは、エアバッグ警告灯が点灯しっぱなしになり、以後電気回路が正常に戻っても消灯することはありません。消灯には、対応したOBDスキャンテスターによる記憶消去リセット処理が必用になってきます。

 また、電気回路に常時不良が発生している場合は、その不良を解消しない限り、記憶消去(ランプ消灯)はできません。こんな中で、時々瞬断が生じる、例えばステアリングホイール軸部に装着されるスパイラルケーブルが断線しかかっており、ステアリングホイールを廻すと時々断線状態になるなんていうトラブルで、随分と発見までに時間を要した事例があることを聞くこともあります。

 今回、エアバッグ回路で、警告灯が点灯し、消去しようにも消去が不可能となった車両について体験しましたので、その原因などを若干記してみます。

 カーデーラーなどに配備される、その対象車両にマッチしたOBDスキャンテスターがあるなら、エアバッグ(運転席、助手席、左右サイド、左右ヘッドなど)およびベルトプリテンショナーなどの回路別に、オープン(開放)かショート(短絡)かを点検できますので、それなりに原因を絞り込むことが可能です。しかし、対応したツールがない場合、サーキットテスターの抵抗レンジによる導通テストなどは、エアバッグモジュールの誤爆が起きる可能性があり厳禁とされています。

 そんな対応スキャンテスターがない場合に、疑わしいエアバッグモジュール回路を点検する方法としてダイハツ車を利用する方法を知りました。ダイハツ車では、エアバッグ回路に不具合があると警告灯が点灯しますが、不具合が解消されると再度の起動で消灯しますので、何度でも繰り返しテストができてしまうのです。具体的な手法としては、ダイハツ車のシートベルトテンショナーなど、配線を引き出しやすい車両側ハーネスコネクタから引き出した配線を、別の不具合車両の対象となるエアバッグモジュール回路に接続し、警告灯の点灯もしくは消灯で確認するのです。

 そんな手法で、疑わしいサイドエアバッグ(シート内蔵)を点検したところ、ランプが点灯しました。そこで、エアバッグモジュールの接続コネクタを確認したところ一見ピッタリと差し込まれたコネクタですが、正規の形状と比べると微妙に異なる様です。

 エアバッグモジュールは、製品の保管、輸送、整備中など、誤った電源投入や静電気による誤爆による不慮の災害を防止するため、コネクタ抜き取り状態ではスクイブ(発火源)の2極の端子間をショートする仕組みが採用されています。そして正規のコネクタが挿入されると、ショート用端子が開放される仕組みとなっています。今回のケースでは、何らかの理由で正規のコネクタが取替られており、コネクタ挿入状態においても、両端子間はショート状態が維持されていた様です。正規のコネクタを用いて、ダイハツ車で点検すると、正常に警告灯は消灯しました。

 なお、最終的な対象車両の警告灯の消灯には、対応するスキャンテスターのあるディーラー工場等で、消去リセットを行う必用があります。


※写真は、左側がヘッドエアバッグモジュール、中央が正規形状のコネクタ、右側がトラブルを起こしたコネクタ。

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