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交渉事案の思い出 その10・過失割合2

2021-11-14 | 賠償交渉事例の記録
交渉事案の思い出 その10・過失割合2
 またまた、過失割合の折衝事例としてて紹介してみたい。これは、対物事故事案ですので、やはり対損保との戦いということにになる。

 本件の思い出は、この事故は乗用車とバスが交差点で出合い頭に激突しているものだが、衝突後バスは30m近くも空走し、道路右手のフェンスを突き破り敷地内法面に乗り上げたものだ。なんで、衝突後に、こんな長い距離を空走するのだというのが最初に思い浮かんだ疑問だった。

 そんな思いを持つ中、ディーラーで再立会の打合せをしていた所、相手車の運転者が負傷した風体で表れ、私に罵詈雑言を吐きながら「衝撃で俺は出入り口扉(左側)まで飛ばされて、お蔭でこんな怪我をさせられたんだ!」という訳なのだ。
 私は、被害者が被害意識が生じた故に出す発言に怒るなんてことはまずないのですが、以下の様な思いを持つに至ったのだった。
・相手は企業の送迎用車両の運転手であり、業務中の事故であり、被害意識があろうが言い方があるだろう。
・衝突後左側に飛ばされたと云うことは、シートベルトもしていなかったということを示している。

 そんな思いを持ちながら、[この事故の妥当性をとことん追求してやろうじゃないか]との念を強くしたのだった。

1.事故内容
 事故内容は事故状況調査報告書(添付)の通りであるが、その概要は次の通りのものであった。
・契約者側に一時停止のある交差点での典型的な出合い頭事故。
・契約車両は乗用車で明かな全損。(時価15万円)
・相手車両は中型バスで新車から1ヶ月と真新しい車両で修理費394万円。
・相手車は修理期間4ヶ月間を要し、その間の代替え交通費用として、で296万円の費用が発生。
・相手車のレッカー費として33万円を要し、相手方の物的損害額総計は723万円に至った。
・その他に第3者構築物等の損害として63万円が発生。

2.何故に相手方はこの様な高額の損害額に至ったのか
 理由は種々あるが、その概要は以下の通りである。
・相手方のバスは契約者との出合い頭衝突後、33mを空走し、フェンス等の構築物に二次衝突したこと。
・その理由として、相手運転者はシートベルトをしていなかったため、一時衝突で投げ出され運転者不在に陥ったこと。
・このことは相手車の速度の超過が疑われること。

3.当方の主張
 当方の主張については、添付ファイルの事故状況報告書の通りをまとめ、相手方に提示して進めたのである。最終的な過失相殺としては、基本過失80:20を前提として、修正要素として相手方に大型車として5%、そしてシートベルト非装着およびスピード超過の可能性大として重過失20%を加算し、55:45という提示を行ったのである。

4.最終結果
 相手方の抵抗は予想された通り強く、なかなか進展せぬまま推移したのであった。しかし、当方として、私の判断が絶対とは思わないが、基本過失では納得できるものではない。しかし、約1年を経て私が転勤することになり、他のアジャスター(一応先輩になる)に、以後の交渉は引き継がれたのであった。正直云って、この先輩は私がダメなアジャスターの典型として断じる「云うべきことと云えない」タイプの者であったので、不安を持ちつつ転勤したのであった。

 その後、約1年を経て、次の最終内容としての示談を取り交わす結果に至ったとの報告を得たのであった。
・相手方の損害額合計723万円について、一次衝突分および二次衝突分を、それぞれ60%(434万円)、40%(289万円)として按分した。
・一次衝突分の損害額434万円については、75%の賠償負担として325万を支払うこと。
・二次衝突分の損害額289万円については、60%の賠償負担として174万円を支払うこと。
・第三者の損害は二次衝突として、損害額63万円の60%の賠償負担として38万円を支払うこと。

※以上を通常の過失割合でのものに換算すると、相手方および第三者損害の総合計786万円に対し、537万円の賠償金の支払いとなり69%相当(69:31)となった。

5.最後に
 本件のシートベルト非着用は、4ヶ月を要した相手車の修理完了も間近くなって得られたものであった。しかし、果たしてシートベルトの非着用による損害拡大が重過失に相当するのか等という意見もあることとは思う。何れにしても損害額が大幅に拡大しているのは事実であり、訴訟にでもなって新しい判例でもできれば面白いじゃないかとも思っていたのである。

 ところで、先に述べた様に「頼りない先輩」に後を託したのであるが、「不満足」ながら一定譲歩を勝ち取れたのは、一重に事故状況損害調査書と関係資料と判断論点を明確に文書化して提示したことだと思っている。

 ここであえて無謀とも考える方もいるかもしれないが重過失修正(20%)と訴求したのであった。とはいえ、当方も最後まで絶対20%修正が通るものだとは考えてはいなかったのであり、あえてこの様な主張を進めたからこそ、最終的に10%超の過失修正が勝ち取れたとも思うのである。






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