私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

レンジャー・ダカール参戦車を見る

2018-12-30 | 技術系情報
 先日、八王子の日野オートプラザ(21世紀センター)で眺めた、レンジャー・ダカールラリー参戦車を紹介してみます。日野自動車は、91年以来現在まで、同ラリーに参戦し続けて来ており、展示車は初期となる96年のクラス(カミオン10L未満)優勝マシンだそうです。ちなみに、現在までベースモデルもフルモデルチェンジしていますが、展示車のエンジンはJ08C(およそ400ps台後半)から、現在ではA09C(700ps超)と大幅にパワーアップしている様です。以下、主に車両下部の見える範囲から、勝手な想像を加えて記してみます。

①車体全般
 車両運動性能を考慮すれば当然のことながら4WD仕様のショート荷台長ですが、フレーム廻りを観察しても目立った補強には気付きませんでした。キャブは市販モデルと同様にチルト構造になっている様です。またキャブ内にはロールケージが組まれていますが、これは車体剛性に寄与するものでなく、転覆時の乗員保安用でしょう。また、後部ボデーの荷室内は見れませんが、それなりのロールゲージが組まれ、これは主にねじれ剛性に寄与しているだろうと想像します。

②前後アクスル関係
 前後ともアクスルは、リーフリジットですが、アクスルハウジング(ホーシンク)を一瞥しただけで、市販車とはまるで異なるダクタイル鋳鉄の厚肉一体構造のものと判ります。なお、左右端部のナックル受け部(Fr)とフランジ部(Rr)は、別途の鍛造材切削加工品を溶接接合して仕上げているのだろうと想像します。リーフは、各輪3枚物ですが、全リーフ長がほぼ同じで、リーフ間に隙間があるという市販車とは、およそ思想が異なる仕様であることが判ります。また、ダンパーも各輪2本が使用されています。このリーフとダンパーの仕様ですが、やたらバネ定数を上げた動かない足でなく、十分なサストラベルを有し、接地性を確保するという思想だろうと想像できます。なお、前アクスルのステアリング系には、路面からのキックバックを吸収するダンパーが設置されています。

③エンジン、TM、トランスファ、ペラシャフトなど駆動系
 エンジンは、下部からしか見えませんが、明らかにオイルパンを深く加工してあり、オイル量を増やすことで、高負荷時の熱容量増大により昇温を弱めているのでしょう。想像では、前後の荷重バランスから、市販車に比べ相当後ろにオフセットして搭載していると思っていましたが、やや後退(目検で10cm程)の様です。TMはマニュアルでケースはダクタイル鋳鉄製の様です。また、トランスファで駆動力を前後に分配していますが、TMに直付けでなく、ホイールベース中間辺りにTMとは離して独立して設置されています。これは、トランスファと前後デフのコンパニオンフランジ間を同長と長めに設定することで、クロスジョントのジョイント角がなるべく少なくして耐久性を求めるのが主目的でしょう。なお、前後プロペラシャフトの周辺には、防御ワイヤーが設置されますが、これは、万一ペラシャフトスリーブやクロスジョイントの破壊が起きた際、ペラシャフトが垂れ下がり路面に突き刺さることでの車体の転覆事故を防ぐという理由だと判ります。

④ブレーキ、タイヤ関係
 ブレーキは、驚いたことに前輪もディスクでなくドラムだと判ります。なお、20インチホイール内面とほとんどギリの大径サイズが使用されていることが判ります。なお、ブレーキ制御はエアオーバー式だろうと思いますが、エアマスターの位置は確認していません。
 タイヤは、外見上、ホイールローダなどの建機に付いている様な形状です。サイズは365/80R20と結構太いものですが、幅があるだけにハイトもあり、タイヤ外径は結構大きく見えます。ホイールカバーが付いていますが、その隙間から、何らかの装置が見えます。また、アクスル側にブレーキ配管とは別の配管が、各輪のバックプレート付近に接続されています。これは、それしかないだろうという想像ですが、タイヤ空気圧の可変機構だろうと思います。つまり、深い砂地での走行などでは、空気圧を一定の範囲で下げトラクションを増し、ターマック高速では空気圧を上げ、タイヤの昇温を防ぐなどに対応する目的だろうと思えます。しかし、回転およびインクリネーションする間で、気密を保つには、旋回体を持つクレーンや建機で使用されているスイベルジョイントに相当する機構を組み込むなど、凝ったメカニズムだと感心します。

















最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。