思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

拙著『沖縄人力紀行』が『北海道いい旅研究室9』でも紹介された。が……

2007-01-08 11:00:19 | 拙著の媒体露出状況

先の投稿の『野宿野郎』とほぼ同時期に、主に北海道内でよく出回っている旅の情報誌『北海道いい旅研究室』の最新第9号が発刊されたが、実はこの号でも拙著『沖縄人力紀行』(彩図社刊)を紹介していただいている。

その前に、『いい旅』について簡単に触れておくと、この編集および発行をしているのが北海道の旅事情に詳しいライターの舘浦あざらし氏(以下、あざらしさん)で、主に道内のホテル・旅館や温泉についての記事が多い。しかも、元々は椎名誠を「アニキ」と呼んで親しんでいるためか(今号でも椎名の最新写真集『ONCE UPON A TIME』を紹介している)、歯に衣着せぬおべっかなしの本音で宿や温泉をほぼ実名を出しながら批評し続けている、というかなりの論客である。それはこの冊子を読んでいるとそこかしこで見受けられ、「こんなことまで書いて良いものなのだろうか? どう考えても嫌われるだろうなあ」と読んでいるほうがヒヤヒヤする筆致が目立つ。というか、そんな記述ばっかり。

まあ、あざらしさん自らが道内各地を取材し(取材は現地には行かずに電話やFAXなどで簡単に済ませて原稿を仕上げる、という一般商業誌の安易な取材手法も大嫌いなのだそうだ)、ときには「北海道新幹線は不要」などと北海道政というか高橋はるみ知事を痛烈に批判し、大きな媒体や広告に頼らずに「責任編集」しているものだから本音で思いっきり書けるのだけど。
もちろん、彼だけでなく実際に宿泊したり温泉に入ったりした読者からの情報も募って、自腹を切って利用した人たちだからこそ言える宿や温泉の良し悪しをほぼ実名で批評し(実際の館名をアルファベットや記号表記にして一応はぼかしているが、調べれば簡単にわかる。9号からは完全に実名でいくようだ)、まさに道内での「正しい温泉」や「いい旅」を日々追求している。

僕はこの雑誌の読者歴はまだ4年ほどなのだが、最近は道内の書店のみならず、内地でも北は仙台から南は鹿児島までの比較的大きな書店で扱っていて(主にジュンク堂書店、リブロ、紀伊國屋書店が多い)、わざわざ北海道に行かなくてもこれを入手して読める機会は増えている(未確認だが、『情報やいま』つながりで沖縄県内の一部の図書館にも置いてあるかもしれない)。僕も最近は東京都・神保町の地方小出版物を扱う書肆アクセスか、池袋のリブロ本店で買っている。今回の9号も昨年末に後者で買った。

で、肝心の拙著の紹介記事だが、118ページの上段に、本の紹介のコーナーのいちばん最初に持ってこられて、驚いた。こんなに大きな扱いにされるとは。
実は、あざらしさんが昨夏からの9号を発刊するうえでの編集段階で、道内外問わずいろんな人や動物!? から個人広告を受け付けるという企画を考えていて(もちろん有料)、僕も拙著の広告を載せてもらおうとそれに便乗したのだが、昨年10月にあざらしさんから直接、本の広告を無料で載せる代わりに9号で北海道の自転車旅に関するエッセイのようなものを書いてほしい、という交換条件の依頼を受けた。だが、これは僕の連絡手段の点で少々問題があり、結局は僕が何か書く話は流れてしまった。が、それでもあざらしさんは拙著を自腹で買って読んで、『いい旅』にふさわしい内容であれば勝手に紹介する、ということも言われた。その結果が、今回の紹介である。
昨年、あざらしさんは100冊以上の本を買ったそうだが、ほかに道内の旅にもっと深い関係のある、拙著よりも優先的に紹介すべき本は多々あるはずなのに、なぜそんななかで急に連絡を取った僕の本がこの扱いで紹介されたのかは不明だが、まあ拙著ができるだけ多くの人の目に触れる機会を与えてもらったことは素直に嬉しい。しかも、僕がここ数年旅先として沖縄県と同じくらい好んでいる北海道の媒体であるため、喜びも倍増である。

だが、紹介文を読むと、これまたあざらしさんらしいちょっとした皮肉というか批判というか、拙著をこれまでに紹介していただいた媒体とは明らかに異なる筆致で、第一印象としては受け取るほうもどう受け取ればよいものか微妙だな、とつい苦笑してしまう内容であった。

まあ著者の僕としては、値段を付けて書店やネット書店で(取次経由で)実際に販売している本なのだから、この世の中、何事においても受け取る人たちの反応が賛成意見だけに偏るのはおかしいということは常々思っているし、拙著を出版するさいにも異論反論オブジェクションを受ける覚悟は当然できていた。だから、このあざらしさんの一文に関しても、ああそうなのか、と結局は素直に厳粛に受け止めることができた。この一文のなかで、「村上春樹を読むような」という表現もあるのだが、そんな今や世界的名作家の名前まで出して引き合いにしていただけるだけでも光栄なことである、と前向きに考える。
でも、んー、僕としては拙著の文章表現は基本的に椎名誠のカヌー親分である野田知佑を目指しているのだけど、受け取り方は人それぞれ、人生いろいろ、読者もいろいろだから、まあいいか。

それと、この一文の最後のほうに、「化石燃料で製造された自転車」という表現もあるのだが、これが3日の投稿の、人力で旅することも「悪」の行為ではないか、ということをこの年末年始に再考するきっかけとなった。これについてはまた後日触れることにする。

それと、今回の9号は表紙にもあるように、あざらしさんの気まぐれによってリニューアルされ、判型が少し横長になり、8号以前よりも情報量が微増した。したのはいいけど、これまでよりも大きくなって収納にちょっと困るし、これまでに比べると中身の表現は「正直すぎる奥尻島ガイド」のようにより過激にはなっているけれども、近年温泉話を取り上げるさいによく使われる「源泉かけ流し」という言葉の生みの親でもある“温泉教授”こと松田忠徳氏の寄稿はなく、原稿が抜け落ちているページもあり(しかも大事なカラーページ)、内容は全体的にこれまでに比べるとやや大味になってしまったような気はする。まあリニューアルした今後も引き続き、あざらしさんの筆致に刺激を受けるのが好きなので読み続けていくけどね。

あざらしさん、今回は拙著をホントに紹介していただき、ありがとうございました。


※2007年1月31日の追記

26日の朝日新聞夕刊6面の文化芸能欄にある、作家の亀和田武氏のコラム「時評圏外」で『いい旅9』が写真付きで取り上げられていて、『本の雑誌』や『酒とつまみ』とも重なる「リトルマガジンの北の新星」と評されていた。
で、このなかであざらしさんのことを「編集者」と表現していたのだが、僕としてはあざらしさんが『いい旅』をひとりで編集していることはわかっているが、その中身は毎号あざらしさんが取材して書いた記事が大半を占めているため、これまでにも「編集者」と言うよりは「ライター」ではないか、と認識していた。だが改めて考えると、ひとりで編集しているのだから当然「編集者」であるし、巻末にも「編集&発行人」とあるから「編集長」とも、有限会社海豹舎の「社長」とも呼べる。でも、僕の結論としては本文でのあざらしさんの肩書きは変更せずに引き続き「ライター」という表記で続けることにする。
もし、あざらしさんから苦情が来ればその変更も考えるけど、朝日新聞の北海道版に連載を持っていたり、小説の出版構想もあるとかで、そうなるとやはり編集よりは書くことを主体に生きているのかな、と思う。まあ何度でも読み返せる味わい深い良い(善い?)本を出版してくれれば、肩書きなんてどうでもいいか。


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