動物たちにぬくもりを!

動物愛護活動の活動経過や日々の出来事、世の中の動き等幅広く紹介します。

飼い主が逮捕されたら、飼っているペットはどうなる?

2021-01-31 05:51:37 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

飼い主が逮捕されたら…「ペットにとっては死刑宣告です」
 世話はどうなる?

2020年11月28日(土) 弁護士ドットコム

逮捕され、身柄を拘束された被疑者(被告人)がペットを飼っていた場合、誰がその世話をすればいいのか。
逮捕なら最大23日間、裁判や服役となれば、年単位になることもある。
家族や知人に頼れないのであれば、事件を担当する弁護士の出番か。
しかし、「死亡や怪我など、法的なリスクを負うことになる」、「職務の範囲ではない」、「国選なら引き受けない」など否定的な見方が強い。
それでも、職責と倫理感との間で苦悩や葛藤もある。
「飼い主が軽微な犯罪で逮捕されたとしても、残されたペットにとっては死刑です」(実際に預かった弁護士)。
ペットに関する訴訟も手がける渋谷寛弁護士は「かわりに飼育することは、弁護士がすべき職務ではないのでは」とし、国の制度の必要性を唱える。
(編集部・塚田賢慎)


逮捕されたら、この子はどうなるのか…(編集部記者が飼っているウサギ)

◆ウサギが危うく死にかけた
刑事弁護を多く手がける若林翔弁護士は、一度だけ実際に餌をやったという。
――被疑者のペットを世話する機会はありましたか
私選で刑事弁護した被疑者から頼まれ、自宅で犬に餌をやったことがあります。
私選であれば、弁護士の仕事はある種サービス業の側面もあるでしょう。
拘束されている間、被疑者に快適に過ごしてもらうことも仕事のうち。
そのため、ペットの世話を家族や知人のかたにお願いしたり、ペットホテルなどを手配したりします。
――ほか、機会はありましたか
被疑者が「飼っているウサギが飢えて死んでしまう」ということで、私が自宅に慌てて向かいましたが、鍵がなくて入れませんでした。
結局、ご本人が48時間後に出てこられたので、なんとかなりました。
うちの弁護士事務所では、事務所としてのルールはなく、担当弁護士個人の倫理観で、対応を任せています。
拘束中の被疑者のために、一時預かりしてくれるところがあればいいと思います。

◆自分の担当外の事件でも、ペットを預かった
内海文志弁護士は2015年~2016年にかけて、計4頭(3件)の犬を預かった。
そのすべてが、自身の担当とは関係ない事件の被疑者のペットだった。
千葉県動物愛護推進員を務めていたこともあり、動物好きと知られていたため、他の弁護士から頼まれたのだという。
「鍵を宅下げしてもらって、家にいた犬を私の自宅に連れていったんです。一時避難所のようなものです」
しばらく飼った後、動物保護団体を通じて、里親を見つけて引き取ってもらったという。
どのケースでも、怪我など何かあったときの責任を負えないほか、逮捕されるおそれがある人がこれからも動物を飼うことは適切ではないと考えることから、被疑者には「所有権放棄書」を書かせたそうだ。
「自分が受任した件であっても、僕自身が鍵を宅下げして連れていって、やります。人間が覚せい剤で逮捕されても、行き場を失ったペットにとっては死刑と同じです」
内海弁護士が、被疑者のペットの保護について、ある警察署に問い合わせたところ、「ペットの世話について対処してしまうと、被疑者に対して利益供与になり、任意性に疑いが出てしまうことになりえて、警察では対処せず、ほぼ弁護士さんにお願いしている」との回答を得たという。
警察と保健所の組織的な連携が必要ではないかと内海弁護士は言う。

◆保健所で引き取っているわけではない?
各地の保健所(動物愛護センター)での対応の一例を紹介する。
東京都動物愛護相談センター(世田谷区)によれば、保健所では、動物の「保護」はしない。
動物の所有権を放棄してもらったうえで、「引き取り」をする施設だ。
新たな飼い主を探して、それでも見つからない場合に限り、有料で引き取るという。
引き取りの主な理由は、本人の病気・老人ホームに入居・死亡などがあるという。
引き取った動物を殺処分するかどうかは、全国の各保健所によって対応が異なる。
「東京都では、今は殺処分をしません」
事件によって拘束されたことを理由に、被疑者のペットを引き取った事例については、 「全くないとも言えないが、わからない」とのことだった。

◆被疑者のペットを保健所で引き取った事例は「5年に1度」
香川県高松市保健所生活衛生課では、被疑者が所有権放棄をして、ペットの引き取りをしたことが「5年ほど前に1件」あったという。
滅多にないことだそうだ。
「逮捕された本人に身寄りがなく、引き取り先がないため、犬を高松市保健所で引き取りました。本人とは話せませんでした。警察が間に入って、やりとりをしました。どんな事件か警察は言いません。引き取りには手数料も必要ですから、本人に支払ってもらったんだと思います」
それ以降、引き取りの相談はもう1件あったが、交渉の過程で別の引き取り先が見つかったという。
――逮捕されたら、ペットはどうすればよいのでしょうか
「まずは身内に頼む。その次は、有料の業者さんに頼む。ペットホテルやペットシッターは山ほどあります」
――お金がない人はどうすれば
「それであれば、保健所に相談してください」

◆弁護士の立場では「世話をしない」が、しかし…
ペットに関する法律と政策を研究する「ペット法学会」会員の渋谷寛弁護士に、今回のテーマを取り巻く問題について聞いた。
――弁護士は被疑者のペットの世話をすべきと考えますか
まず、原則として、弁護士がすべき職務ではないと思います。
私が仮に頼まれても、適切な飼育について責任を持てないので断るでしょう。
世話を頼める相手に連絡をすることや、「クビになる前に会社に連絡してくれ」という頼みには応じるでしょう。
しかし、ペットのもとに行っても、本当に餌をあげられるのかわからない。
ひっかかれたり、噛まれたりするリスクもあります。
もっとも、動物愛護の観点からは、何とかしてあげたいと思います。
動物愛護管理法で定められた「命あるもの」である動物に、なんらかの手を差しのべるべきです。
問題は、動物が健康を害したり、死んでしまうことでしょう。
生まれて1~2カ月の幼い子を持つ母子家庭で、お母さんが現行犯逮捕される。
そのようなケースと同じ発想で、国として動物の保護制度を整備すべきではないでしょうか。
冤罪の発生もありえます。
どのような犯罪においても、残された動物の保護は国家レベルで考えていく必要があると思います。
世話を行う組織ができるといいと思います。
弁護士から保護団体に連絡をすることはできますが、その流れで受け入れることが、制度化されていない以上、無理に頼むこともできません。

【写真】猫22匹「動くぬいぐるみ」扱い

弁護士ドットコムニュース編集部


動物病院の調剤がペットの健康被害を招くというヤバい話

2021-01-31 05:50:23 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

愛犬や愛猫は大丈夫?
 動物病院の調剤がペットの健康被害を招くというヤバい話

2020年12月28日(月) ディリー新潮

私たちが病院で治療を受けると、処方箋を渡されることがある。
その紙を調剤薬局に提出すると、薬剤師が薬を渡してくれる。
これを「医薬分業」と言う。


医療事故のリスク
薬を調剤しているのは誰?(写真はイメージです)

なぜ医薬分業が行われているのか、担当記者が解説する。
「日本では90年代まで、受診した病院で薬をもらうのが当たり前でした。これを“院内処方”と言います。なぜ院内処方が問題視されたかといえば、一部の医師や病院が薬でも利益を確保するため、患者に大量の薬を調剤する“薬漬け医療”を行ったからです」
当時の厚生省は、法改正による“正面突破”を選択せず、行政指導で医薬分業の進展を狙った。
具体的には、薬価を改定したり、処方箋の発行価格を上げたりするなど、病院側に利益誘導を行ったのだ。
日本薬剤師会の公式サイトには、2012年度のデータを紹介し、《医薬分業率は66・1%に達し、完全分業にようやく近づきつつあります》と評価している。(末尾註1)
ここまでは人間の話だが、動物病院の場合はどうなっているのだろうか。
愛犬や愛猫を病院へ連れて行った経験のある方ならご記憶だろうが、“院内処方”が圧倒的多数だ。
ところが最近、動物病院における院内処方を問題視する動きがあるという。
「インターネット上で『動物病院 薬漬け』と検索すると、かなりのサイトが表示されます。飼い主が『自分のペットが薬漬けにされた』と被害を訴えるものはもちろん、『薬漬けの医療は行っていません』とPRする動物病院も散見されます。ペットの投薬に対し、高い意識を持っている飼い主が既に存在するのです」(同・記者)

◆院外処方のメリット
ブラジルでペットを飼っている日本人が、現地では医薬分業が行われていることをリポートしたブログもある。
動物病院で薬が調剤されることはなく、処方箋だけが渡される。
ちなみに、ペットの治療に用いられる薬は、そのまま人間用を使うことが多い。
だからブラジルでは、動物病院が出した処方箋でも、普通の調剤薬局に持って行く。
ただし、動物専用の薬が調剤されることもあり、その場合はペットショップに併設されている薬局などにも行く必要があるという。
2軒の薬局に行くのは手間にも思えるが、ブログの筆者によると、医薬分業はメリットも大きいという。
薬の名前や効能、副作用の有無などを、薬剤師から説明を受けることが可能であり、インターネットを活用すれば、処方箋に記された薬について自分でも調べることができるからだ。
複数の痛み止めが調剤された時は不安になり、1つだけを投与して様子を見たこともあったという。
獣医師法や薬機法などに詳しい獣医師は、「日本の動物病院でも“院外処方”を進めていくべきです」と指摘する。
「医師や看護師といった医療関係者もペットを飼っています。そんな医療関係者ですら、『ペットに間違った薬を調剤され、健康が悪化したという印象を持った』と打ち明ける人が、かなりの数に達するのです。もちろんペットが亡くなっても病理解剖など行われませんから、実態はよく分かりません。とはいえ、ペットの治療現場に薬の専門家が存在すれば、歓迎する飼い主は少なくないと考えています」

◆看護師は調剤可能?
コンプライアンス(法令遵守)という観点からも、動物病院における調剤の現場は問題点がある。
先に動物にも人間用の薬が調剤されることを紹介したが、必要とする分量は全く違う。
動物病院に行ったことのある方なら、人間用の薬を半分に割ったり、すりこぎで粉々にしたりしているのを見かけたことがあるのではないか。
人間用の薬をペット用の量に調整していたのは、誰だっただろうか?
ペットを診察した獣医師か、それとも動物看護師か?
「法律上は薬剤師か、診察した獣医師しか、薬の調剤はできません。ただし、薬剤師を雇っている動物病院は極めて少数です。実際の現場では、薬を割ったり潰したりするのも、診察した獣医師しかできないのです。同僚の獣医師ですら、自分が診察していないペットの薬を調剤したら法律違反になります。まして動物看護師なら問答無用で違反です」
ペットの医療現場における治療水準を向上させようと、19年6月に愛玩動物看護師法が公布されており、22年5月の施行が決まっている。
農林水産省は9月28日、愛玩動物看護師カリキュラム等検討会を開催した。
動物看護師の養成に必要なカリキュラムなどを、専門家に話し合ってもらう場だ。

◆専門学校でも誤解
この日、治療を受けたペットに薬を調剤するのは原則、薬剤師であり、動物看護師の業務内容には含まれないことが確認された。
「動物病院における調剤の現状は、コンプライアンスの観点からも問題でしょう。率直に言って、日本全国で多くの動物病院が調剤に関する“グレーゾーン”を放置したまま、日々の診察に当たっています。これが健全な状態でないことは言うまでもありません。動物看護師の国家資格化を機会に、是正が求められています」
だが、動物看護師を育成する専門学校でも、法令を間違って解釈している学校もあるという。
「一部の専門学校は公式サイトで、『調剤実習』を紹介しているのです。動物看護師が調剤に関わることは法律で禁止されていることを、知らない専門学校もあるのです。改めて、この問題の根が深いことを痛感させられます」
日本は今やペット大国。
正しい飼育方法が広まったことなどもあり、特に犬と猫は長生きするようになった。
それ自体は喜ばしいことだが、飼い主が終末医療に直面するケースも増加している。

◆調剤の危険性
愛犬や愛猫ががんに罹患し、抗がん剤が投与されることも、動物病院で日常的な光景になった。
そのため、ペットに投与する抗がん剤が、獣医師や動物看護師の健康に被害を与える危険性も懸念されているという。
「抗がん剤の飛沫が体に付着したり吸い込んだりして、健康被害を受けるケースは少なくないのです。人間の医療現場なら、薬剤師は“安全キャビネット”の中で調剤作業を行います。ところが大半の動物病院では、抗がん剤の投与は日常的なのですが、キャビネットを使用しているところはまずありません」
動物看護師は国家資格化が決まった。
ならば動物薬剤師の国家資格も必要なのかと言えば、それは違うという。
「ペットの医療現場に、薬の専門家は必要です。しかしながら、ペット専門の薬剤師を動物病院が雇用するとなると、コストがかかりすぎます。現実的な解決策は、現行の調剤薬局と薬剤師を活用するのがベストだと思います。動物病院専門の調剤薬局など、このような解決策を助けるサービスを提供する企業も登場しているようです」

◆獣医師側も期待
ペットの飼い主も、「獣医師と動物看護師にお任せ」という態度は問題があるという。
院内処方を改善することで生じる“コスト増”を、しっかりと引き受ける覚悟が求められる。
「動物病院の経営に、調剤による利益は不可欠なものになっています。病院によっては収入の4割を占めるところもあるのです。ペットの健康やコンプライアンスのため院外処方を推し進めていけば、診察費の値上げは不可欠です。飼い主は負担増に応じる必要がありますし、そのためにも保険に加入すべきだと思います」
日本経済新聞(電子版)は10月1日、「加入は過去最高 ペット保険の賢い選び方、2大ポイント」という記事を配信した。
文中では《国内ペット保険最大手のアニコム損害保険は、2020年4~6月の新規契約数が四半期として過去最高を記録した》と伝えながらも、《加入率はまだ低い》と指摘。
アニコムは日経の取材に対し、《加入率は10%程度》と答えている。
何よりも獣医師が薬剤師を必要としているようだ。
日本獣医師学会の公式サイトに、「薬剤師に期待する獣医師療業務」というコラムが掲載されている。
これによると、獣医師が《薬剤の管理および調剤をすべて担うことは、非効率であるとともに獣医師療上の事故につながる可能性》があると警鐘を鳴らしている。
動物病院の業務において《薬剤の専門家である薬剤師に期待する》ことは多いと指摘している。
飼い主の関心が更に高まれば、動物病院における院外処方が一気に進展する可能性もありそうだ。

【末尾註】
註1:小数点の表記は、デイリー新潮の表記法に合わせた。 週刊新潮WEB取材班 2020年12月28日 掲載

新潮社

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ペットブームの影で相次ぐ飼育放棄

2021-01-30 05:51:53 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

ブームの影で相次ぐ飼育放棄
 コロナ禍に翻弄されるペット

2021年1月13日(水) 産経新聞

新型コロナウイルス禍で自宅で過ごす時間が増える中、ペットに関心を持つ人、飼いたいと思う人が増えている。
癒やされる、動画を見て-。
理由はさまざまだが、購入したばかりの子犬や子猫の身勝手な飼育放棄も相次いでいる。
新たな飼い主を探す譲渡会も多くが中止となり、人の接触を避けるオンラインの活用を模索する動きも出ている。
「動物が二度と不幸にならないように」。
関係者が力を込めた。
(田中佐和)


神奈川県動物愛護センターが開いたオンライン譲渡会の様子。職員らが保護犬や保護猫を生中継で紹介した=昨年11月、神奈川県平塚市(同センター提供)

■身勝手な理由
「ペットショップでは天使に見えたのに、今は悪魔にしか見えない」
昨年5月、NPO法人「みなしご救援隊犬猫譲渡センター」の東京支部に、生後数カ月のトイプードル1匹が持ち込まれた。
飼い主の男性によると、飼い始めてわずか2、3日。
衝動的に購入したとみられる。
男性は「ペットショップで抱っこしたときはおとなしかったのに、家に連れて帰ったら鳴くわ家具はボロボロにするわで、もう無理だ」とこぼしたという。
同センターの担当者は憤る。「昨春の緊急事態宣言以降、ペットショップは『コロナ景気』に沸くと聞く。でも、安易に飼い始めた結果、飼育放棄される犬猫が増えている」
飼い主側の言い分はさまざまだ。
出張が増えて面倒をみられない▽動物飼育が禁止されているマンションなのに飼ってしまった▽犬の臭いがだめだった-。
そうした身勝手な理由が目立つという。

■飼い方知らぬまま
コロナ禍でペットへの需要が高まっている。
民間調査会社「クロス・マーケティング」(東京)が昨年11月に全国の1100人に行った調査では、4月以降にペットを飼い始めた人は3・2%。飼育を検討した人も6・5%だった。
飼い始めたり、飼育を検討したりした理由を尋ねると、最多は「癒やされる」(42%)。
「ペット動画を見てほしくなった」(20・5%)、「コロナ禍で家にいる割合が増えた」(11・4%)なども続いた。
一方、飼い方や育て方を「調べたことはない」としたのは21・6%に上った。
関西のある動物愛護団体の男性代表はこう指摘する。
「動物の命を物のように扱う人が多すぎる。うちでは子犬や子猫の譲渡希望が増えているが、『初めて動物を飼う』という人は特に慎重に譲渡の審査をしている」

■オンライン活用も
行政や愛護団体が開く譲渡会の中止が相次ぎ、新たな飼い主との縁を結べずにいる保護犬・保護猫も多い。
そんな中、神奈川県動物愛護センターは昨年11月下旬、代案として、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使ったオンライン譲渡会を初開催した。
「1匹猫を飼っていますが、一緒に飼えそうですか?」「鳴き声が聞いてみたい」。
当日は200人以上が参加。
画面越しに犬や猫との触れ合いを楽しんだ。
譲り受けの条件となる事前講習についても、県は譲渡会と同じ日にオンラインで配信。
参加者の不安払拭にも努めた。
上條光喜愛護・指導課長は「オンライン譲渡会で出会いの場が広がった」と喜ぶ。
ただ、譲渡までには従来通りの厳しい審査が必要で、「動物が二度と不幸にならないように、時間をかけて最善の譲渡先を決めていきたい」と話した。

【図でみる】オンライン譲渡会の流れ


公園の片隅にいた盲目の母猫と子猫

2021-01-29 05:56:05 | 幸せになったワン・ニャンたち

公園の片隅で子育てをしていた盲目の母猫・ヘレン
 保護された家で穏やかな日々を送る

2021年1月1日(金) まいどなニュース

冬の寒さが残る公園で、ボロボロになりながら3匹の子猫を産み育てていた盲目の母猫。
親子一緒に保護され、子猫は里親のもとで、母猫は保護された家で幸せを見つけた。

■出会いは1本の通報から
「猫の親子がいじめられている。小学生が石を投げたり、棒で突いたりしている」
保護猫活動をやっている方山眞奈美さんのもとに、1本の通報が入った。
春とはいえまだ風が冷たい、昨年3月のことだった。
通報があった大阪府羽曳野市にある公園へ駆け付けると、まだ若いメス猫が3匹の子猫と一緒にいるのを発見。
なんと母猫は盲目で、子猫たちは生後2カ月半くらいと思われた。
方山さんはすぐ動物病院へ連れて行った。
母猫の右目は眼球癆(がんきゅうろう)といって、炎症や損傷により眼球が萎縮して機能を失っていた。
そして左目は眼球癒着を起こしていた。
獣医師は「子猫のときに感染したヘルペスウイルスが原因だろう」と診断した。
この母猫は、生まれてまもなく失明していたということだ。
獣医の見立てでは、母猫はまだ1歳にも満たない月齢だという。
出産して2カ月半、この母猫は両目が見えない状態で、どのように子育てをしていたのだろう。
雨露をしのぐ場所を確保するだけでも困難を極めたはず。
しかも、どうやって食べ物を手に入れていたのか?
おそらくエサをあげている人がいたのだろうと、方山さんは推測する。
公園にはそんな形跡が残っていた。
親子は、いったん方山さん宅に保護された。
母猫はヘレン・ケラーにちなんで「ヘレン」と名付けられた。
ごはんをあげると、ヘレンはどんなに空腹でも子猫に食べさせた。
目が見えないけれど気配で察知するのだろうか、子猫が食べ終わってから自分が食べ始める。


ヘレンと子猫たち

■ヘレンは我が子の姿を見たのか
右目は完全に失明していたが、左目は手術すれば見えるようになる希望があるという。
しかし見えるようになる確率は50%で、費用は60万円もかかる。
「我が子の姿を見せてあげたい」
方山さんはSNSで呼びかけて寄付を募り、手術費用は工面できた。
ヘレンは過酷を極める野良生活で弱りきっており、保護されたあとも何度か生死の境をさまよい、手術日はたびたび延期された。
それでもなんとか健康を取り戻したヘレンは、やっと手術を受けることができた。
「手術を受けたんですけど、クリアに見えるようにはなりませんでした」
一方、3匹の子猫はどうなったか。
感染症が原因で、残念ながら2匹は亡くなってしまったという。
たまたま抵抗力が強かったのだろうか、1匹はすくすく育って、里親に引き取られていった。
今ではヘレンよりも大きく育って、元気に過ごしているそうだ。
ヘレンは今、方山さん宅で穏やかな日々を過ごしている。
視力は回復せず、光の明暗を感じるているというが、そんな不自由を感じさせないほど家の中を活発に動き回る。
筆者がカメラを構えたら、まるで照れたように顔をそむけたので、「本当は見えているんじゃないの?」と思ったほどだ。
見た目も、公園で発見されたときのボロボロな状態から打って変わって、毛並みがいい。
そして、小食のわりには体格もいい。
「ヘレンは目が見えないけど、高いところが好きなんです」。
それは猫としての本能なのだろうか。
方山さんにとってヘレンとの出会いは運命的だったのかもしれない。
野良猫の保護活動を行うNPO法人を約1年がかりで準備してきたのだが、方山さんはその法人名を『令和さくら猫マザーヘレン』と名付けた。

【写真】まるで目が見えているかのように動き回るヘレン
【写真】すっかり元気になったヘレン
【写真】保護されて間もないころのヘレンと子猫たち
【写真】手術後のヘレン

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)


補助犬の正しい理解と接し方

2021-01-28 05:49:19 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

補助犬達はかわいそう?正しい理解と接し方のポイント6つ

わんちゃんホンポ

◆補助犬について知っておいて欲しいこと
「日本盲導犬協会」のテレビCMに違和感を覚えるという声があるようです。
「盲導犬って大変そうだよね」「ストレス多そう」「かわいそう」という道ゆく人の声に対して、信号待ちしていた盲導犬がいきなりカメラの方を向いて関西弁で話し出すCMです。
おそらく、「かわいそう」とか「ストレスが多そう」というのは、「させられている」という感覚から出てくるのでしょう。
だから、犬の「いつでも一緒におんのが幸せや思てんのに」という発言も言わされているように聞こえてしまうのかもしれません。
しかし、本当に盲導犬を始めとした補助犬達は、かわいそうなのでしょうか。
今回は、補助犬の誤解について整理し、実際に補助犬に出会った時にどう接したら良いのかについてまとめました。

◆補助犬への誤解
犬は、数万年前から人類と共に生活するようになり、次第にその能力に応じて狩猟犬や牧畜犬等として品種改良され、現代の犬種になったことが分かっています。
つまり、犬の祖先達は働いて人の役に立ちながら人と一緒に暮らすことを選んできたのです。
現代の補助犬達も、まずは適性の見極めから始まります。
生まれて最初の1年間は、ボランティアの家庭で自由に育てられます。
その後、訓練センターに戻って適性を見極められます。
適性がないと判断された犬達は、キャリアチェンジといって一般家庭に引き取られたり、センターの広報犬として活躍したりします。
適性のある犬だけが補助犬になるのです。
実際に、20年間を3頭の盲導犬と共に暮らしてきた中学校教師の方は、あるインタビューで「盲導犬はユーザーとずっと一緒にいられること自体を幸せに感じているようだ」と応えていました。

補助犬は排泄も我慢させられていると思っている方も多いようです。
しかし、実際は補助犬のユーザーさんがその犬の排泄のタイミングを理解した上で、食事や飲水の時間や量を考慮し、自然に排泄できるように管理しています。
また、定期検診や予防接種はもちろん、体重管理や日々のブラッシング、歯磨きなどもユーザーさんの仕事として義務付けられており、場合によっては一般家庭のペット犬よりもしっかりと健康管理されていると言っても過言ではないかもしれません。
さらに、補助犬はストレスが多くて寿命が短いという誤解もあるようです。
これについては、日本獣医生命科学大学の水越美奈氏と全国盲導犬施設連合会の下重貞一氏が共同で事例研究として下記の調査結果を報告しています。
盲導犬の平均寿命は12歳11ヵ月、死亡年齢 が15歳を超える割合は28%でした。
内、ラブラドールレトリバーの平均は13歳3カ月、ゴールデンレトリバーでは11歳5ヵ月で、いずれも家庭犬の平均寿命についての調査に比較して高いことが 明らかになりました。

◆補助犬への接し方のポイント6つ
補助犬には、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種類が存在します。
仕事中には、盲導犬は白または黄色のハーネスを、その他は「介助犬」や「聴導犬」の表示札を付ける決まりになっています。
補助犬であっても、ハーネスや表示札を身に付けていない時はオフタイムです。
しかし、私たちが補助犬に出会う場合は、おそらく仕事中の事が多いでしょう。
その場合は、決して仕事の邪魔をするべきではありません。
補助犬への接し方として気をつけるべきことをまとめましたので、参考にしてください。


✔大原則:見つめない、勝手に触らない、声をかけない
✔愛犬と一緒の場合は愛犬を補助犬から遠ざける
✔勝手に食べ物や水を与えない
✔ハーネスやリードには手を触れない
✔犬嫌いの人でも、怖がらない
✔補助犬が通路を塞いでいる等の迷惑な行動をしている場合は、直接補助犬にではなく補助犬のユーザーに伝える

◆補助犬の受入れ

2002年に、障がい者の自立と社会参加の促進を目的に「身体障害者補助犬法」が施行されました。
そこには、スーパー、病院、レストランなどの不特定多数が利用する場所は、補助犬を連れた障がい者達も安心して利用できるということが定められています。
しかし実際には、まだ受入れを拒否される事が少なくないようです。
前述の通り、補助犬は一般家庭のペットと比較しても高いレベルで衛生管理をされていますし、しっかりと社会性を身に付けていますので、快く受け入れて頂きたいと思います。

◆まとめ

補助犬は、全国にある多くの施設や多くのボランティアによって運営されています。
中には、補助犬に対する扱いが不適切で報道される事もあります。
こういった事は改善されなければなりません。
しかし、この問題と補助犬への理解とは別に考えても良いのではないでしょうか。
補助犬達が決して嫌々仕事をしている訳ではない事、ユーザーから正しい知識により保護管理されている事を理解した上で、補助犬達の仕事を邪魔せず、暖かい目で見守れる世の中になるように、自分達のできる範囲で協力していきませんか。

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餓死、轢死、凍死…山間部の廃屋に遺棄された数十匹の猫を救え!

2021-01-27 05:52:35 | 動物実験・動物虐待

餓死、轢死、凍死…山間部の廃屋に遺棄された数十匹の猫を救え!
 アニマルレスキューが見た凄惨な現場

2021年1月16日(土) まいどなニュース

大阪府豊能郡の山間部にある1軒の廃屋に、5年ほど前から一度に大量の猫が遺棄され始めた。
エサを与えられないため、食べ物を求めて外へ逃げ出した猫は、道路で車に轢かれた。
中にとどまった猫は餓死あるいは凍死し、最初に棄てられた20匹がひと冬で全滅した。


窓ガラスが割られて山の冷気が吹き込む状態(写真提供:アニマルレスキューたんぽぽ)

■一度に50匹近く棄てていく老夫婦の姿
2020年9月29日のことだった。
NPO法人「アニマルレスキューたんぽぽ」代表の本田千晶さんが、この廃屋がある石垣の下を偶然通りがかったとき、数匹の猫が道路にいるのをみつけた。
「どの子もガリガリにやせていて、極度の栄養失調なのがわかりました」
尋常ではないことが起こっている。
直感した本田さんが近所で聞き込みをしたところ、ある老夫婦が数十匹まとめて運んできて、廃屋に棄てたことが判明。
廃屋は、猫を棄てた老夫婦が所有する物件だった。
このご近所さんは老夫婦の親戚で、老夫婦が住んでいる場所は廃屋から車で1時間以上、公共交通機関を使うと2時間ていどかかる遠方だそうだ。
後に本田さんが調べて分かったのは、過去にも2度、その老夫婦が大量の猫を棄てていたことだった。
廃屋になる前は、少なくとも15年くらい前までは賃借人がいたが、いつ退居していったのか、親戚の人でも記憶が定かでなかった。
そして今、その老夫婦の『猫棄て場』になっている。
決して看過できないと憤った本田さんは、猫の保護と世話をしたいと老夫婦に願い出て話し合った。
しかし老夫婦は、「猫は全て自分の飼い猫。増えてしまったのでこちら(廃屋)に連れてきたが、適切に飼育している」といって、猫の世話をするために本田さんが廃屋に立ち入ることを拒んだ。
それでも老夫婦の親戚が間に入って説得し、「アニマルレスキューたんぽぽ」として猫の世話をするために立ち入ることだけは承諾してもらった。
併せて「今後は猫を飼わないこと」「この廃屋に猫を棄てないこと」「ここに戻ってこないこと」を約束させた。

■どうやって増えた?一度に数十匹も棄てる理由
子猫がたくさん生まれたから棄てるという不届きな飼い主のことは、ときどき耳にすることがある。
この老夫婦の場合は、数がケタ違いだ。
「わかっている範囲では、目立って増え始めたのは2015年頃に40匹、2017年頃に20匹ていどが遺棄されたそうです。この期間に棄てられた子は、外へ逃げ出して車に轢かれたり、エサが与えられないから餓死したり、冬を越せず凍死したりして、春までに全滅したと聞いています」
廃屋のある石垣の階段を下りたらすぐ、車が走る道路だ。
見通しがきかず、小さな猫はドライバーから見えづらい。


廃屋から出て階段をおりたらすぐ道路だ(写真提供:アニマルレスキューたんぽぽ)

そして昨年、40~50匹の猫がいっぺんに棄てられた。
そもそも不思議なのは、なぜそんなに増えるのか?
「老夫婦は『人から引き取っているうちに増えた』というのですが、見た目にわかるほど柄の似ている子が多いです。ここからは推測ですが、不妊手術を受けた子が1匹も見当たりませんから、老夫婦に飼われているうちに近親交配を繰り返して繁殖したのでしょう」
繁殖しすぎたから棄てる⇒廃屋でさらに繁殖する⇒冬を越せずに全滅⇒老夫婦が棄てに来る⇒繁殖⇒冬に全滅……を繰り返していたのだろうと、本田さんは推測する。

■今後どうなる? 猫たちの運命
「アニマルレスキューたんぽぽ」では今、廃屋に棄てられた猫の保護活動に全力を注いでいる。
「保護した子たちのお腹には回虫やマンソンがいました。そのことから、極度の飢えをしのぐためカエルや虫を食べていたことは明らかです」
マンソンとは、カエルなどを食べて発生する「さなだ虫」の一種だ。
また、大量に保護したため、保護用の猫舎が足りなくなり、あらたにつくろうとしている。
そのための資金を今、クラウドファンディングで募っているところだ。
並行して里親探しも行っている。
「廃屋で生まれた子は人に慣れていませんし、過去に人からエサをもらったり飼われた経験があったりしても、棄てられて飢えや寒さという苦しみを味わったことで人間不信になった子もいます。そんな中でも、人なれしていて一般家庭で飼育できそうな子は里親を募集しています」
本田さんは、里親を希望する人がどんなに遠方に住む人であろうと、必ず直接訪問する。
猫を飼える環境を確認するのはもちろん、家族全員と面談してから、猫を譲るか否かを判断するという。
「二度と不幸にしないために、こだわっていることです。身勝手な人間のために不幸になるのは、いつも口のきけない動物達です。もしも自分が、棄てられた猫や犬だったらと想像してみてほしいのです。この子たちは好きで野良になったのではありません。この子たちの痛みを想像して、理解してほしいと思います」


廃屋の中はこんな状況(写真提供:アニマルレスキューたんぽぽ)


大量の猫が遺棄されていた廃屋(写真提供:アニマルレスキューたんぽぽ)

【写真】大量の猫が遺棄されていた廃屋の中は…

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)


難病でも生きることをあきらめなかった猫たち

2021-01-27 05:51:19 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

難病でも生きることをあきらめなかった猫たち
 闘病支えた飼い主「本当にえらかった」

2020年12月19日(土) sippo(朝日新聞社)

動物のための寄付サイトを運営する、公益社団法人アニマル・ドネーションの企画「STORY with PET」。ペットとのエピソードをシェアすると、動物のために活動をする団体へ寄付されるという試みだ。

和歌山県に住むチィパッパさんがかつて「STORY with PET」に投稿したのは、奇跡的な確率の病に侵され亡くなった猫トトと、奇跡的な確率で白血病が陰転したグルのストーリーだ。
愛猫たちとともに向き合った闘病の日々について、チィパッパさんにお話を聞いた。

◆2人と4匹の幸せな暮らし

保護当時のグル。マロコとともに近所に捨てられていたところを、チィパッパさんが保護した(チィパッパさん提供)

チィパッパさんは2014年の春、近所に捨てられた2匹のキジトラの子猫を保護した。
避妊・去勢手術を控えたある日、メスの妊娠が発覚。
4匹の子猫を出産し、2匹を譲渡して、家には両親のグル(雄)、マロコ(雌)、子どものメロ(雌)、トト(雌)が残された。
4匹のキジトラ一家はとても仲が良く、特に、穏やかで面倒見の良い父猫のグルは、母猫のマロコと娘たちを溺愛し、常に家族のそばにいて何かと世話を焼いていた。
そんなグルに育てられた子猫たちも、グル父さんが大好き。
特に妹のトトは、人間の家族よりもグルに懐いて、いつも甘えていたという。
「母子家庭で貧しいながら、保護したからには責任を持って飼おうと覚悟を決めました。でも、いざ猫と暮らしてみると、本当にどの子も個性豊かで可愛く、娘とともに家族の一員として溺愛していたんです」とチィパッパさん。
しかし、2人と4匹の家族がそろった、穏やかで幸せな暮らしは長くは続かなかった。

◆トトとの突然の別れ

穏やかな性格で子煩悩なグル(手前)と、食いしん坊でグル父さんが大好きだったトト(奥)(チィパッパさん提供)

2016年の夏のことだった。
「あの日のことはよく覚えています。前日までは元気だったトトが、ひょこひょこと片足をあげるような妙な歩き方をしていたのです。その日は日曜でかかりつけの病院が休診日だったので、様子を見ようとしていたら夜には腰が立たなくなった。慌てて近隣の動物病院に手当たり次第電話をかけたのですが全滅。翌朝、かかりつけの病院で診てもらうと、診断結果は『心筋症かヘルニアの疑い』でした」
しかし、処方された薬はまるで効果がなく、トトの動きは目に見えて鈍っていく。
チィパッパさんはいま一度、設備が整った他県の動物病院でトトを診てもらうことにした。
「朝の8時半に受け付けをし、結果が出たのが19時でした。先生から、トトの骨髄に腫瘍が見つかったと言われ、詳しく調べるには骨髄を開いて肉腫をとらなければいけないと説明されました。猫には非常に珍しい症例で、前例も知らないため、治癒の見込みは腫瘍を調べてみなければわからないとも言われ、頭が真っ白になりました」
手術の費用は30万円。
母子家庭で当時は生活が苦しかったチィパッパさんにとって、ほぼ全財産にあたる金額だった。
「小学生だった娘は、『大人になったら働いて返すから手術してほしい』と泣いて訴えてきましが、主治医に検査結果を伝えると、おそらく『リンパ腫』で、進行が早すぎてすでに手術には耐えられないと言われました。その言葉通り、2、3日後にはトトの体は首から上しか動かなくなり、私たちはやむを得ず、緩和治療を選択しました」
わけのわからないまま体が動かなくなっていっても、トトの瞳には最後まで力がみなぎっていた。
首を強く左右に振り、痛みと闘った。
しかし、奇跡を願う家族の思いもむなしく、症状が出てからおよそ10日で、トトは大好きなグル父さんの鳴き声を合図に、虹の橋を渡った。
まだ2歳だった。

◆痛い思いをさせずにすんだ

数日前まで元気に猫家族に甘えていたトトの喪失を、チイパッパさんは受け入れられずにいた(チィパッパさん提供)

トトが亡くなっても、チィパッパさんにはまったく現実感がなかった。
「あっという間のことで、頭がついていきませんでした」。
そんな時、病院から、トトの献体を要請する連絡が入った。
「亡くなってなお、あの子に痛い思いをさせたくはない」チィパッパさんは悩んだ。
しかし、「必ず次の子にいかす」というスタッフの言葉を聞き、それがトトの短い人生の証しになるのだと考えることができた。
献体の結果診断されたのは、『骨髄軟化症』。
ヘルニアから骨髄を傷めて血管が死んでいくという、猫には非常にまれな病気だった。
「場所が悪くて、手術をしても治る病気ではなかったと聞いて、最後に痛い思いをさせずにすんだんだ、と思いました」と、チィパッパさん。
トトの進行の早さから、病気はウイルス感染の疑いがあると言われていた。
チィパッパさんの家は完全室内飼いのため、元野良猫のグルとマロコがウイルスを保有、マロコから子猫たちへの母子感染という感染経路が疑われた。
速やかに3匹に検査を受けさせると、雌のマロコと娘のメロは無事だったものの、父親のグルのみ、『猫白血病ウイルス(Felv)』の陽性反応が出た。
「それまで餌も水も共有していた女の子たちが陰性なのに、なんでグルだけがと、再びパニックになりました。主治医の話によると、子猫の頃にウイルスが体に入っても、免疫力が強い子は成長過程でウイルスを排出するのですが、それができずに大人になっても持続感染しているパターンはほぼ陰転しないと。何か希望はないか、図書館やネットでも、できる限り情報を集めてみましたが、やはり主治医と同じ答えしか見つかりませんでした」

◆グルに起きた奇跡

グルは、チィパッパさんの手の上に顔を乗せて甘えるのが好きだった(チィパッパさん提供)

トトとの突然の別れに続き、グルの猫白血病陽性。
「なんで大切なうちの子ばかりが」。
そんな思いがチィパッパさんの頭の中をぐるぐるとめぐった。
しかし、希望もあった。
猫白血病キャリアでも、栄養を取らせて環境を気遣い、発症を遅らせれば寿命を全うできる子もいる。
幸いグルはまだ発症していないし、体格も良く、持病もなかった。
チィパッパさんは、グルのために最善を尽くすことを決意した。
「まずは、急いでグルの生活環境を変えました。健康管理のため、24時間エアコンで室温を調整し、ネットで猫白血病キャリアの子の飼い主がおすすめしていた空気清浄機や加湿器も導入しました。それから、主治医に相談して免疫を上げるサプリメントも導入。ごはんもこれまでよりもいいものに変え、できることはすべてやりました」
グルにかかる費用のため、チィパッパさんは仕事を増やして必死に働いた。
家では、当時小学生だった娘がこまめにグルの様子を見ていたという。
ほかの猫の家族への感染を防ぐために、グルを家族から引き離さざるをえなかった。
しかし、猫の家族が大好きだったグルにとって、マロコやメロに会えないことは辛かった。
「ケージに体当たりして、ここから出たい、家族に会いたいと鳴くグルを見るのがつらかったです」
事態が変わったのは、2017年の春。
チィパッパさんは、かかりつけ医を増やすために訪れた新たな動物病院で、猫白血病の研究をしている獣医に出会った。
「先生が、『持続感染でも陰転する事例があるからもう一度検査してみたら?』と言ったんです。そこで、最初の診断から時間をあけて、春にもう一度検査をしてみることにしました」
ダメもとだった検査の結果は、待合室に飛び出してきた獣医師が伝えた。
「陰転していますよ!これは奇跡です!」
「あたまがふわふわして、涙がぽろぽろこぼれました。これで、猫家族と一緒にしてあげられる!娘は『トトが治してくれたんだ!』と大喜びでした」
再検査を進めた主治医ですら、「実際に目にするのは初めて」という、持続感染からの陰転だった。

◆「グル、幸せだったね」

亡くなる前の晩、チィパッパさんがかける言葉を理解しているかのように、涙をこぼしたグル(チィパッパさん提供)

「体格が良く、栄養状態も良いので、自力でウイルスを排出できたんでしょう」主治医はグルとチィパッパさんの頑張りをたたえた。
その日から、グルはうれしそうに、大好きな猫家族とくっついて過ごした。
2020年、4月。
グルの体に、猫白血病とは無関係の、消化器系のリンパ腫が発見される。
チィパッパさんは、再びの奇跡を信じて闘病に向き合ったが、コロナ禍による動物病院の閉鎖や混雑で詳しい診断が遅れた結果、診断結果が出た頃には腫瘍が大きくなり、グルは亡くなった。
病院が大嫌いなグルは、抗がん剤治療の通院のたびにおしっこを漏らして腰を抜かした。
それでもグルは動物病院のスタッフやチィパッパさんたち家族には絶対に手を出さず、じっとこらえて男気を見せたという。
猫は具合が悪いと人目につかない場所に隠れるというが、猫家族も人間家族も大好きだったグルは、闘病中もリビングの真ん中で、みんなに囲まれて甘えていた。

亡くなる3日前のグル。どんなに病院が嫌でも、暴れたり手を出したりしない優しい子だった(チィパッパさん提供)

亡くなる前日、チィパッパさんがグルのおなかをなでると、テニスボールほどの大きさになった腫瘍に気づく。
「いっぱい頑張ったんだね、えらかったね。みんなに甘えられて、幸せだったね。と声をかけながらなでたら、グルの目からポロリと涙が流れました」
その翌日、グルはチィパッパさんの娘に看取られて、まな娘のトトのもとへ旅立った。
2020年の8月、奇跡の陰転から3年後のことだった。

◆闘病経験が教えてくれたこと

「病気になるとわかっていたら飼わなかったかと言われると、そうではない。たくさんの幸せをくれたグルとトトに感謝しています」とチィパッパさん。写真はグル(左)とマロコ(右)(チィパッパさん提供)

「トトとグルを看取った経験で、命は長さではなんく、密度なんだということを教わりました」とチィパッパさんは話す。
「生きるために一生懸命頑張ったトトやグルは本当にえらかった。信じることや受け入れることをあの子たちから教わった。つらいことの中でも、幸せな気持ちの方が多かった。『うちに来てくれてありがとう』という気持ちしかないですよ」
現在、愛するペットの病気と向き合う飼い主に伝えたいことは?と質問すると、チィパッパさんは、言葉を選びながら答えてくれた。
「たぶん、みなさん、病気については十分に調べられていると思うんです。私から言えるのは、その子自身の生命力を信じて、その子のためにできる精いっぱいのことが答えだということ。私自身、『お母さんが決めたことをグルは信じている』と言われてハッとしたことがあります。後悔はどうしたってやってくる。でもきっと、その時その時、自分が一生懸命考えたことが、その子にとっては一番の答えなのではないでしょうか」
また、自身の経験からのアドバイスもしてくれた。
「同じ症状、病気でも、病院によって見解は違います。ガンに強い先生、白血病に強い先生と、専門によって治療方針も分かれる。1つの病院に固執するのではなく、日頃から信頼できる主治医をふやしておけば、いざという時に選択肢が増え、焦らないと思います」
新型コロナウイルスを鑑みて、電話取材となった今回。
顔が見えない中でも、愛猫たちの話をするチィパッパさんの声からは、深い愛情とやさしさが切々と伝わってきた。
「猫は、病気だからと言って生きることを諦めない。今なでられた頭の気持ち良さを知っているんです」
チィパッパさんが最後に話してくれたそんな言葉を、今愛猫とともにつらい闘病に向き合う人たちに届けたい。

【写真】4匹のキジトラ一家 とても仲良く、父猫は穏やかでよく世話を焼いた

 

アニドネの投稿企画「STORY with PET」 ペットへの感謝や想いを綴る「STORY with PET」の第3弾。
今年は「コロナ禍のペットと私」をテーマにSTORYを募集しています。
1投稿につき500円がアニドネから寄付されます(寄付目標50万円)。
ペットとあなたの素敵なお話に写真を添えて投稿ください。
詳細や投稿はこちら(https://www.animaldonation.org/campaign/)のページからどうぞ。


福井県内保護収容犬

2021-01-26 05:43:57 | 保護・収容動物のお知らせ

福井県動物愛護センターで1匹の犬が保護・収容されています。
飼い主の方至急センターへ、そして心当たりの方々のご協力お願いします


【福井県動物愛護センター 嶺南支所】
 電話番号:0770-22-3747

収容月日:2021年1月25

種類:雑種
保護場所:美浜町新庄 付近
性別・体格:メス・中型
年齢:不明
毛色:黒茶
赤色の首輪着用
公示終了:1月28日




※このワンちゃんは、美浜町役場の方とちょっと関わった子です。
美浜町役場のホームページ上に、住民環境課から保護犬のお知らせが掲載されておりました。

最終更新日時:2021122日(金曜日) 1704ID2-1-16-6631
情報発信元:住民環境課


現在、住民環境課で犬を保護しています。

新庄地区において保護された赤い首輪で黒茶の中型犬です。

お心当たりの方は役場住民環境課までご連絡をお願いいたします。


コロナで高騰するペット生体販売の闇

2021-01-25 05:56:53 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

チワワが諸費込みで60万円 
コロナで高騰するペット生体販売の闇

2020年12月30日(水) NEWSポストセブン

ペットブームと言われてしばらく経つが、2020年はそれが加速した年でもあった。
新型コロナウイルスの感染拡大で自粛生活を強いられ、癒やしを求めて新たにペットを家族に迎えた人が急増したからだ。
俳人で著作家の日野百草氏がクリスマス商戦真っ只中、郊外の大型ペットショップでよく見られる、購入検討の景色をレポートする。
* *
「60万円は高いな、これつけなきゃだめなの?」
クリスマスの飾り付けも華やかな店内、初老の男性が小声で店員の男に耳打ちする。
店員が甲高い声で再度説明を始めたそばで、大柄な男性がチワワを抱いている。
そばで中年女性がチワワの小さな頭をなでている。
茶髪の若い女性が彼らに向かってお父さん、お母さんと呼ぶ様子から、彼らが家族であることが確認できた。
初老の男性と中年女性がご両親、茶髪が娘さんだとすると、大柄な男性は彼女の旦那さんか何かだろうか。
「条件次第では安くなりますよ」
店員の甲高い営業トークはさらに甲高くなり必死さが伝わってくる。
ここは関東のペットショップ、なぜかこの近隣はショッピングモールやホームセンターのペットショップが乱立している。
詳しく書けばすぐ分かる場所だが、筆者はペットビジネス関連のルポに関してはとくに慎重にならざるを得ない。
信じてもらえなくて構わないがすぐ訴えてくるし、はっきり言って怖い人も多い。
だから誰もルポルタージュなんか手がけないし、やってもすぐやめる。
「お迎えするんですか?」
店員と離れたところでショーケースごしに猫を見ていた茶髪の娘さんに話しかけてみる。
30代くらいだろうか。
「私じゃないです。そこの兄です。仕事決まったんでプレゼントです」
なんと旦那さんと思っていたがお兄さんだったのか。
それにしても娘さんの笑みには含むところがあるようだ。
それはおめでとうございますと筆者が言うと、 「ちょっとバイト決まっただけですよ、それで犬ってふざけてるし」
ざっくばらんに言い放って意地悪な笑みを浮かべる。
いろいろ事情があるのだろう。
30代男のバイトが決まったから親がクリスマスにチワワ、コロナ禍でも家庭の事情は本当にそれぞれだ。
別のペットショップではそのコロナの影響で抱っこ禁止だったが、ここは「どうぞ抱いてください」なので息子さんはずっと抱いている。


かつてほどではないが今も人気犬種のチワワ(イメージ)

◆高くなるのはしょうがない。うちだけじゃない
それにしても60万円。
その総額を店員が言った瞬間、息子さん以外の家族三人びっくりしていた。
システム上のことは店舗がばれるので詳しく書けないのだが、そのチワワの生体価格はその半分くらい。
表示価格にいろいろなオプションをつけると高額になるのはスマホキャリアの料金や紳士服チェーンのやり口だが、これは生体販売でも常套手段となっている。
犬種や年齢、血統の良し悪し、その時々の流行り廃りにもよるし言い値の世界でもあるのだが、チワワの生体価格が30万円前後なのは相場としては妥当で、ブリーダーナビの調べでも約29万2700円である(2020年11月2日更新)。
いま大人気のティーカッププードルなら60万円くらい平気でするが、チワワはサラ金のCMで人気を博した一昔前に比べると当時ほどの人気はない。
生体価格に問題はないが、どうやらこの店は生体価格に今後、必要になるという名目のエサやケージや洋服といったペット用品、保証プランをつけることで利幅を取っている。
それにしても生体価格の2倍とは。
「本体価格がこれでしょ、で、これとこれがプラスになるわけ?」
父親が渋い顔で見積書とにらめっこしている。
店員はさすがに生体価格と何度も言い直していたが、父親の本体価格という言葉は日本の法律上まったく間違っていない。
犬も猫も現行法では「物」である。
そもそも民法はペットについて何ら規定していない。
あえて規定とするなら「『物』とは、有体物をいう。」(民法第85条)だろうか。
つまるところ「物」である。
筆者も子供の頃は捨てられた子犬やうっかり生まれた雑種を飼ってきたし、専門ブリーダー経由で繁殖犬にされる寸前の子や、1年近く残った子をお迎えし、ときに看取ってきたので釈然としないが、筆者にとって我が子でも日本国では「物」だ。
刑法もペットの規定はないため、民法上の「物」という判断と同様となるために「器物損壊罪」(刑法261条)なのだ。
近年は動物傷害罪と言い換える向きもあるが、言い換えられているだけで刑法上は「物」である。
そしてこれは飼い主の虐待には適用されない(被害者による親告罪のため)。
そこは動物愛護管理法の出番となるが、その罰則は懲役1年10月執行猶予4年で済んだ猫13匹虐待死傷事件のように限りなく軽く、劣悪な環境で犬猫を飼育していると刑事告発された栃木県・矢板の引取り屋事件のように不起訴の可能性すら高い。
なぜなら繰り返すが日本では犬や猫は法律上「物」だからだ。
「どうしようか」
父親の声が娘さんに飛ぶ。
彼女はすでに結婚していて両親とは別に暮らしているそうで、そこで犬も飼っているそうだ。
それなりに詳しい娘さんが駆け寄って「ワクチンこんなにしないよー」と突っ込む。
店員の男は慣れたもので、 「息子さんにとてもなついてますね。大好きなんでしょう。それにいま本当に数も少ないから高くなるのはしょうがないんです。うちだけじゃないです」
それについては娘さんも「犬、いま高いですよねー」と同意していた。
コロナ禍のペットブームでどの犬も猫も信じられない高値がついている。
2020年6月の改正動物愛護法施行以降、ブリーダーもかつてほどの無茶をしなくなった。
じつは2018年ごろから犬や猫の価格は上がり始めていた。
SNSの普及で動物愛護団体が発信や告発をし易くなったことも要因だろう。
それにコロナ禍のステイホーム、在宅志向の広まりが「犬でも飼うか」「猫でも飼うか」に追い打ちをかけた。
「内金を今日入れてくれないとこの子、明日には○○店に移動なんですよ」
ずいぶん遠い店舗に移動の予定だが本当だろうか、セールストークとしてはちょっと強引だが、粗利は知らないが60万円でチワワが売れるならノルマの足しには十分なのかも知れない。
他人の米びつに手を突っ込むなと言われることは承知だが、これは命の売買である。
このチワワは生きている。
小さな体でずっとこの店で頑張って生きてきた子だ。
「内金だって、誰か持ってるか?」
生体価格の一部ということで数万円。
自分の財布を覗いた父親が家族に聞くがみな声は出さないところをみると持ってない。
それにしても30代くらいの息子さん、プレゼントとはいえ自分の犬なんだから内金くらい出しとけと思うが所在なげにチワワを抱いているだけ。
抱き方もちょっと危なっかしい。
そのチワワはペコ(大泉門開存、頭蓋骨の形成が不完全なこと、チワワの幼犬には多い)と軽い鼠径ヘルニアがあると店員は説明していたので落としでもしたら怖い。
その説明に「ずいぶん欠点あるんだな」と父親は腐していたが彼の年代的にはしょうがないかもしれないが言い方がちょっと。
「内金もカードでいけますか」
父親の小声にもちろんですと店員の表情が明るくなる。
しかし先程の娘さんが「もう一回家で考えよう」と提案した途端、母親のほうも「そうね、高い買い物だし」と食い気味に同調した。
父親がどこかホッとした様子で「すいません、そういうことで」と言うと店員の表情は豹変し「ネットでも売ってるんで、売れちゃうかもしれませんよ」「明日には○○店なんで、お別れになっちゃいますよ」と語気強くまくしたてるが「その時は縁がなかったってことで、すいません」と父親はバツが悪そうにあやまる。
「わかりました~↓。お待ちしてま~す↓」
あえて矢印など入れてみたが、それまでと明らかに違うトーンでぶっきらぼうに言い放つ店員、息子さんからチワワをささっと取り上げ、ショーケースに戻した。
たぶんこの家族はお迎えには来ないだろう。
高齢の両親が30代の息子のバイトが決まったお祝いに総額60万円のチワワ、他人の勝手と言われたらそれまでだが、現実の世の中はフィクションで片付かないほどにいろんな人がいる。

◆好きを語るより嫌いを語る
「だってペコあるしー、ヘルニアあるしー、○○には難しいよこの子はー」
○○は息子さんのこと。
買わなかった手前、ちょっとした言い訳アピールもあるかもしれないが、娘さんの言うことはもっともだ。
「他もいろいろ見て決めようね」と母親が息子さんに語りかける。
息子さんはボソボソとなにかを言っていたが聞き取れなかった。
お迎えがあったほうがチワワも店から出られるが、相手次第ではそうでないほうがいい場合もあるのかもしれない。
しかし彼はどこかで別のチワワを買ってもらうだろう。
複雑な心境だ。
一家のチワワをめぐる一部始終が繰り広げられていたその間も、店には多くのカップルや親子連れが訪れた。
それにしても気になったのは欠点ばかりを言う人が多いこと、「この子病気あるんだね」「この顔じゃ売れないね」「もう1歳じゃん、こんな大きいのいらない」と、好きを語るより嫌いを語る。
この地域、ちょっとやんちゃな土地柄もあるのかもしれないが、好きを語らず嫌いを語り、欠点を探すために近寄ってくる。
ネットもリアルも、こういう手合いがコロナ禍でより鮮明になったのかもしれない。
クリスマスの飾りの中、犬も猫も小さなショーケースの中で懸命に命をつないでいる。
ガラスごしにくっつくマンチカンとアメリカンショートヘア、互いのぬくもりも感じられないだろうにくっつくのは、透けた壁ごしに仲間と認識しているのだろう。
マンチカンはまだ4ヶ月ほどだがアメショーは8ヶ月、大きなアメショーは店の後輩のマンチカンに寄り添って、毎日なにを語り聞かせているのだろう。
この店の猫、ペットショップにしてはみんな反応がいい。
筆者が来るだけで寄ってくる子も多いし覗き込むと「遊べ」とゴロンしてくれる子もいる。
それにしても見つめられると辛い。
ロシアンブルーがチェシャ猫みたいにひたすら見つめてくる。
ここにいる猫みんなお迎えしてあげたいくらいだが下げに下げても生体価格15万、さっきの家族の話を聞く限り、いろいろオプションがついて倍以上にはなる。
ワクチンやら何やら掛かるのは承知だが、ちょっとこの店は高すぎやしないか。
それにこの子たちを買うことは、店に加担することになる。
その金でまた別の幼い子を仕入れてくる。
猫と違って犬はみんな元気がない。
いろいろなペットショップを見てきたが犬のほうが元気で猫は寝てばかりのところが多い中、この店は多くの犬が眠っている。
さっきのチワワも寝たようだ。
下段には大柄な体を窮屈に折り曲げて眠り続ける柴犬。
もう1歳、走り回ることも、飼い主にわがままを叱られることもなく育ったこの子の値段はまだ強気の価格、店も商売だし個々の生活もかかっているのだろうがこの店、ネットの評判そのままだった。
チワワと同じサイズのショーケースに入れられている。
「ほら○○ちゃんを見てるよー」
若い母親が小さな娘を抱っこであやしながら2ヶ月ちょっとの小さなポメラニアンを眺めている。
ミニ動物園感覚か。
悪気はないのだろうがオシッコまみれのトイレにうずくまるこの子を眺めながら娘をあやす。
ペットショップチェーンやショッピングモール、ホームセンターのペットショップでは当たり前の光景、その当たり前がおかしいと思う筆者がおかしいのだろうか。
改正動物愛護管理法では生後56日を経過しない犬及び猫の販売、販売のための引渡し・展示が禁止された。
しかし柴犬などの天然記念物に指定されている(柴犬が天然記念物とは意外と知られていない)日本犬はそれまで通りの生後49日、幼犬が多くのユーザーに求められ、高値で売れるのはわかるが改正してもまだ早いのが筆者の考えだ。
免疫力と社会性をつけるためにはせめて母親の元にいる期間は三ヶ月欲しい。
実際、欧米を始めまともなブリーダーの多くの引き渡しは3ヶ月だ。
このルポは特定の店や客をあげつらうためのものではない。
あくまで問題提起のためのルポルタージュだ。
一部の良質な専門ショップやブリーダー経由を除けば、どこのペットショップも大なり小なり似たようなもので、それが1兆5629億円という一大産業となった日本のペットビジネスの実態だ。
多くの日本人のコンパニオン・アニマルに対する感覚は命を「本体価格」と口にできるほどに昭和のままで、それが生体販売を後押ししている。
日本人そのものがペットに対する意識を文化レベルで変えなければ、生後2ヶ月の子が次々と見世物小屋に陳列されては大きくなった先は謎、という闇は解消されないだろう。
閉店後の店舗は薄暗く、クリスマスの飾りがよりいっそう華やかに瞬く。
あの60万円のチワワも、マンチカンとアメショーのコンビも、チェシャ猫ばりのロシアンブルーも、ぎゅうぎゅう詰めの柴犬もトイレがベッドのポメラニアンもどんな夢を見ているのだろう。
クリスマスプレゼントでも構わない、せめて優しい家族にお迎えしてもらいたいと願うが、それはこの立派な店をより立派にしてしまい、新しい子の仕入れに使われてしまう。
コロナ禍で人間が優先もわかるが、コロナ特需のせいでたくさんの小さな命が苦しんでいることも、それがこの国で現在進行系なことも、どうか心にとどめてほしい。

【写真】人気犬種のティーカッププードル

ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一
1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。近刊『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)寄草。著書『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)など。

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「殺処分ゼロ」が“引き取り屋”の暗躍を生み出している状況


もう犬とは暮らせないと思っていたが・・・幸せと「色」が戻ってきた

2021-01-24 05:47:39 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

もう犬とは暮らせないと思っていた
 でも一歩踏み出したら、幸せと「色」が戻ってきた

2021年1月16日16(土)  sippo(朝日新聞社)

先代のあおくん(フレンチブルドッグ)は、家族はもちろん、誰からも愛されるワンコだった。
「運動オンチで、ドッグランでもランしない(笑)。私たちのひざの上でまったりするのが好きで、猫みたい。ちょっとドジで、本当に愛すべきキャラでした」


先代犬のフレンチ・ブルドッグ「あおくん」。これまた笑顔がステキなイケワン

◆愛犬の死で、すべての「色」が消えた
7歳のときに悪性リンパ腫が発覚。
「余命3週間」と宣告されるも、諦めきれず抗がん剤治療や温熱療法などに踏み切った。
すると奇跡的に完全寛解。
以降、短頭種ならではの皮膚や呼吸器系の弱さはあったものの、家族とともに穏やかな日々を過ごし、13歳を迎えた。
ある日、一緒に寝ているあおくんの息が荒いことに気づき、病院に駆け込んだ。
すぐに酸素吸入などの処置がされたが、3日後、誤嚥性肺炎であおくんは虹の橋へ旅立った。
「長患いで苦しむこともなかったし、私たち家族もできることはやり切った。ある意味、納得して見送ることができたと思っています」とお母さんは振り返る。
しかし言葉とは裏腹に、心はついていくことができなかった。
「これまで見てきた当たり前の光景から、すべての『色』が消えてしまいました」
悲しみにくれるお母さんを励まそうと、家族は旅行やハイキングに連れ出してくれたが、どこに行ってもあおくんのことばかり考えてしまう。
ペットロスという言葉では処理できないほどの喪失感だった。
「時が経てばきっと、と思いながらも、この悲しみを超えられる日なんて本当にくるんだろうか……と」
犬を失った悲しみは犬でしか埋められない、と言われる。
しかしお母さんは、あおくんを失ったことがあまりにも辛く、次の子をという気持ちにはなれなかった。
「新しい子をあおの代わりにするのは違うと思ったし、あおの代わりになる子なんていない、とも」

◆弾ける笑顔に「この子だ!」
しかし、次に迎えるなら保護犬をという思いも、心の隅っこにあったという。
そんな中、Facebookを眺めていると、特にフォローしていたわけでもないのに、ある保護犬ボランティアの投稿がタイムラインに流れてきた。
おそらく友達がシェアしたのだろうが、なぜか気になったお母さんはその団体のHPにアクセス。
すると、弾けるような笑顔の一匹のワンコの写真が目に飛び込んできた。


こちらが初めて桃太郎くんを目にしたときの写真

「この子だ!」
シェパードの血が入っている?と思わせる風貌の雑種で、フレンチブルドッグのあおくんとはまったく似ていない。
なのに、お母さんは運命の出会いを直感した。
すぐに連絡をとると、週末に譲渡会があるという。
そしてご対面。
山で保護されたので詳しくはわからないものの、おそらく月齢10カ月ぐらい。
写真以上のとびきりの笑顔を見せてくれたその子に、お母さんの心は決まった。
審査は厳しかったもののトントン拍子に話は進み、翌週からトライアルがスタートした。
「最初こそちょっとキョドキョドしていましたが、すぐに好奇心を発揮し遊び始めました。すでに10キロを超えていたのですが、無邪気さは子犬そのもの」とお母さん。
名前は「桃太郎」に。
預かりボランティアさんの家で「キリッとしているから」とつけてもらった名前だ。
「先代のあおもそうですが、色の名前をつけたい、そして次に迎えるなら『桃』にしようと考えていたのです。私がつけたい名前と、預かってくれていた方の思いがつながっているようでうれしくて、そのまま引き継がせてもらうことにしました」
ボランティアさんの家でラブラドールレトリーバーのお兄ちゃんと仲良く過ごしてきた桃太郎くんは、社会化も問題なし。大型犬になることが予想されたので専門のトレーナーに一度指導してもらうと、すぐにお散歩も気持ちよく歩けるようになった。
びっくりするほど手がかからなかった桃太郎くん。
「もちろん家具をかじったりクッションを破壊したりと子犬ならではのいたずらはしたけれど、それすらもかわいくて」とお母さんは目を細める。
「素直でまっすぐ。桃太郎はひまわりのような子です」

◆厳しいリハビリも、一緒だから頑張れた
お母さんの生活は再び「色」で彩られるように。
しかし、桃太郎くんがきてから2年ほどしたころ、お母さんはマラソンの練習の途中に転倒し骨折。
4カ月に及ぶ入院生活を強いられた。
「痛みよりも桃太郎と離れ離れになることがさみしく、つらかった。週末ごとに外泊許可を出してもらい、担当医にも呆れられました(笑)」
退院後の厳しいリハビリには、桃太郎くんが毎日付き合ってくれた。
「私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれる。最初は足がうまく動かせずきつかったのですが、桃太郎が一緒だから頑張れたのだと思います」
完治したお母さんと桃太郎くんは、飼い主と愛犬が一緒に出場するドッグマラソンに参加。
ブービー賞だったが、「ゴールしたときの桃太郎の顔がまるで優勝したかのようなとびきりの笑顔で、大会の写真コンテストで賞に選ばれちゃいました」とお母さんは笑う。


ドッグマラソンに出場して、写真コンテストで入賞したときの写真。いい笑顔!

アウトドアやスポーツ大好き一家は、あちこちに出かけレジャーを楽しんでいる。
忘れられないのが、福島県裏磐梯の森の中を桃太郎くんと一緒にスノートレッキングしたこと。


スノートレッキングのときの写真。雪原をワンコと歩くの、楽しそう!

お父さんもお母さんも旅行が大好きなので「日本中を桃太郎と旅するのが夢」。
アクティブな一方で、お母さんは編み物やアクセサリー作りなど家の中で静かに過ごすのも好きで、そんなとき桃太郎くんはまったりと寄り添っていてくれるという。
「最近は私の方が守られてる感じ。孫を見守るおじいちゃんみたい」と笑いながら、お母さんはこう続けた。
「桃太郎との日々は毎日がスペシャル。今は楽しくて楽しくて仕方ない。これからも一緒に幸せになっていきたいですね」


ミックス犬「桃太郎くん」。うひゃー気持ちいいー! ……と言っていそう

◆空いた穴は埋まらないけど、素晴らしい日々はまた訪れる
今もあおくんの誕生日は毎年家族で祝う。
「帰ってきてるなと感じることも。あおに作ったごはんは弟が食べまーす、と話しかけてます」とお母さん。
「あおを失って空いた穴が埋まることはありません。今もあおを思い出して泣いてしまうことはある。でも、もう二度と犬とは暮らせないと思っていても、勇気をもって一歩踏み出したらまた楽しく、素晴らしい日々が訪れた。あおと桃太郎のおかげで、犬がいる暮らし、人生の幸せを噛み締めています」
桃太郎くんを迎えたことをきっかけに、保護犬のお散歩ボランティアを行ったり、古タオルなどの支援物資を提供するなどの活動もするようになったというお母さん。
桃太郎くんを中心に仲間が増え、世界が広がったという。
何より保護犬の愛らしさを知ることができた。
「保護犬は育てるのが難しいのでは、と思われがち。もちろん大変な子もなかにはいますが、こちらが愛をもって接すれば、これ以上ないほどのパートナーになってくれる。そして、幸せなワンコも増える。犬を迎えるときに保護犬が選択肢のひとつになるといいなと、心から願っています」


いつもとびきりの笑顔の「桃太郎」 素直でまっすぐ、ひまわりのよう

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