動物たちにぬくもりを!

動物愛護活動の活動経過や日々の出来事、世の中の動き等幅広く紹介します。

ペット業界の深い闇

2020-08-31 05:33:22 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

ペット業界の深い闇…
 子犬や子猫を量産するヤバいブリーダーがいる現実

2020年8月13日(木) 現代ビジネス

コロナ禍で、にわかペットブームになっています。
家にいる時間が長くなり、見ているだけで癒しになるペットを求める人が増えていることは理解できます。
SNSの中では、かわいい犬や猫の動画や写真で溢れていますから。
一般的には、ペットショップで、犬や猫を購入する人が多いです。
行政や保護団体から、ペットの里親になるという方法もありますが、手続きが面倒だったり、飼い主がひとり暮らしだったり、年齢的に難しいなどの理由でなかなか浸透しません。
今回は、お店にキラキラと並んでいる犬や猫の繁殖、そしてヤバいブリーダーについて考えましょう。

◆ペットショップの犬や猫はどこからやってくるのか?

写真:現代ビジネス

日本のペットの流通経路は以下のような流れです。
つまり、犬や猫を繁殖させて、子犬や子猫はオークションに出され、その子たちをペットショップが購入して、ガラス張りのケースに並べて販売します。
年間数十万匹のペットがこのようなルート通っています。
ここには、命の大量消費、大量販売を前提としているペットビジネスが存在するのです。
---------- (*)改正動物愛護法により、ペットショップの販売ができる犬や猫は、生後56日(8週)からになりました。 ----------

◆ペットのブリーダーとは?
ペット業界において、犬や猫の発情を促し、子どもを産ませる人たちをブリーダーといいます。
もちろん健全なブリーダーもいますが、中には悪徳な業者もいるのです。

◆「パピーミル」「キトンミル」とは?
消費者であるあなたが、ペットショップで子猫や子犬を購入したら、そこの子たちは、「パピーミル」「キトンミル」から来ているかもしれないのです。この事実を知っていますか?
「パピーミル」とは、パピーは子犬、ミルは工場、あわせて「子犬工場」という意味です。
つまり、営利企業で悪質なブリーダーが大量に繁殖させることを指します。
メス犬は、子犬を産む機械のように扱われ、繁殖させられるのです。
 「キトンミル」(パピーミルほど、一般的ではありません)とは、キトンとは子猫、ミルは工場なので、「子猫工場」を意味します。
母犬や母猫はこのような環境にいると当然、ボロボロな肉体になり病気になりやすくなります。
 人気の種は「高値で売れるうちに」繁殖の回数を増やします。
母犬や母猫が、ずっと哺乳をしていると、次の発情が来るのが遅れたりするので、最低限の日数で子犬や子猫を放します。
こうなると、まだ母親のぬくもりがほしい子犬や子犬の精神面にも影響をきたします。
ペットブームの裏には、こうしたことが起きているのです。
ショーケースに並んだ子犬や子犬だけを見ていると、わからないかもしれません。
その一方、この子たちの母犬や母猫は、狭いケージに閉じこめられたまま生産設備のように飼われて、犬なら満足に散歩もさせてもらえず、猫なら遊んでもらうこともなく、繁殖能力が衰えるまで、子犬や子猫を産み続けるのです。
さらに、糞尿まみれになるなどの劣悪な環境の中で生きている子も多くいます。

◆犬の発情期間、年に何回産むのか?
犬は、生後6カ月ぐらいから、ほぼ年に2回、季節や日照時間に関係なく発情がきます。
発情期の前になると、膣から血液成分のような分泌が出て、膣は軟らかくなります。
犬の発情は人には、わかりやすいです。
一度、発情が来れば、約半年ごとにくるので、年に2回は出産させられます。
良心的なブリーダーは、母犬の体を守るために、年に1回しか産ませません。

◆猫の発情やその期間、年に何回産むのか?
猫の発情は、早い子は生後4カ月できます。
猫も人を同じように時間で刻んでいると思われているかもしれませんが、猫は季節繁殖動物で、一定の季節に繁殖活動を行う動物なのです。
犬とは、全く違います。
長日性季節繁殖動物と呼ばれて「日照時間」が長くなるとメス猫が発情するのですのです。
避妊手術をしていない猫を観察しているとわかると思いますが、月一度でなく、何回も発情がきています。
人のように膣から血のような成分が排泄されないので、人には発情がわかりにくいのです。
以下のようなことが起きるようになります。
 ・クネクネする。
・懸命に家出を試みる。
・近寄ってくる。
・オス猫が寄ってくる。
 飼い主にはわかりにくいですが、猫同士ではすぐわかるようです。
 日照時間が伸びた1月から9月ぐらいが猫の発情期になり、日照時間の短い10月から12月は発情しません。
 猫の妊娠期間は、2カ月少しなので、暖かい時期に子育てなのでいいのでしょう。
2カ月の妊娠期間を経て、3月生まれから11月生まれるになるわけです。
自然界だと、12月から2月生まれはいないのです(現実には、猫は1年中、生まされています)。
こうした猫の発情期を「悪用」する繁殖業者も存在します。
日照時間をコントロールすれば、犬と違って、猫は何回も発情を迎えて子猫を生むことができます。
つまり年間を通して人為的に照明の光を長時間浴びせ、何度も発情を起こして、オス猫と交配した刺激で排卵する動物(交尾排卵動物、交尾の刺激で排卵する)なので子猫を産めるわけです。
年に3回ぐらい産みます。
この方法を詳しく説明すると、この猫の性周期を悪用したブリーダーは、人工的に照明を長く浴びせて(1日8時間以下だと発情がこないので、12時間以上の光を浴びせる)、年に何度も繁殖させているのです。
もちろん、良質なブリーダーは、年に1回しか繁殖させません。

◆改正動物愛護法の内容とは?
このような劣悪なブリーダーが存在する事態を改善するために、2019年6月に成立した改正動物愛護法で規制強化が決まりました。
2021年6月までに関係省令を改正する予定です。
---------- ・従業員1人当たりの飼育上限を明記 繁殖業者の場合、犬は15匹、猫は25匹、ペットショップなど販売業者に対しては、犬20匹、猫30匹としました。 ・狭い場所に押し込めて飼育させないよう、ケージの大きさも明記 寝床として使う場合、犬猫ともに縦は体長の2倍、横は1.5倍とした。高さは、犬は体高の2倍、猫は3倍にしました。 ----------

◆犬や猫を飼いたい人のできること

犬や猫を飼っていると、ついつい人と同じと考えがちですが、動物の種によって性周期は違うのです。
 猫は人と暮らすことで、一年中不夜城な空間での生活を強いられています。
避妊手術をしていない猫は、日照時間が長くなるので、いつでも発情して子を生むことが可能になるのです。
いまや、犬や猫をペットショップで子猫を購入する人が後を絶たない結果、1年中、蛍光灯を12時間以上浴びて、キトンミルみたいな飼い方をしているブリーダーが存在し続ける状況になっています。
このような事実を知って、良心的なブリーダーから購入したり、保護犬や保護猫を探したりすることも選択肢になるかもしれません。
ただ、犬や猫が「かわいい」ということだけでなく、ペット産業に闇があることをもっと浸透してほしいです。
日本では、残念ながら動物が「モノ」と見られている部分がありますが、世界では、「パピーミル」「キトンミル」とつながりのあるペットショップに対して不買運動が続けられています国もあります。
ペットブームが来るとそれに翻弄される犬や猫がいることを知ってもらい、成熟したペット文化になることを切に望みます。
犬や猫は、「命あるもの」ですから。

【写真】衝撃…女性に大人気「フクロウカフェ」のあぶない実態

石井 万寿美(獣医師・作家)


ネコの祖先、6000年前の暮らしぶりが判明

2020-08-30 05:42:28 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

ネコの祖先、6000年前の暮らしぶりが判明、なぜ中欧に広まった?

NATIONAL GEOGRAPHIC

中欧最古の証拠を分析、近東から農耕とともに移動か、歴史解明に前進

ヨーロッパヤマネコ(写真はイタリアのナトゥラ・ヴィヴァ公園で撮影)は、6000年前のポーランドで近東から来たリビアヤマネコと同じ地域に生息していた。(PHOTOGRAPH BY JOEL SATORE)

約7000年前、近東の「肥沃な三日月地帯」を出発した新石器時代の初期の農民たちは、ヤギ、ヒツジ、ウシ、イヌなど、新たに家畜化された動物たちも一緒に連れて移動していた。
しかし彼らはおそらく、ヤマネコもこっそりとついてきたことには気がついていなかっただろう。
そして6000年ほど前に、現在のポーランドに到達した人々は、森を開拓して広々とした牧草地や農地へと変え定住し始める。
こうした農耕地のそばにある洞窟で発見されたリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)の骨を分析したところ、ネズミやリビアヤマネコもまた一緒にすみ着いていたことが新たな研究で明らかになった。
論文は2020年7月13日付けの「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。
現代のイエネコはリビアヤマネコの子孫であり、約1万年前に肥沃な三日月地帯で家畜化が始まったとされている。
ポーランドで見つかった約6000年前のリビアヤマネコの骨は、中央ヨーロッパにおける最古の証拠だ。
リビアヤマネコがなぜポーランドまで分布を広げたのかは分かっていなかったが、今回の発見はその謎の一端を明らかにするとともに、イエネコの進化の物語を読み解く新たな手がかりが見つかったことを意味する。
「予想もしない発見でした」と話すのは、ポーランド、ニコラウス・コペルニクス大学の動物考古学者で、研究を主導したマグダレーナ・クライツァールズ氏だ。
注目すべき発見のひとつは、ネコの上腕骨が陶器と一緒に堆積物の層に埋まっていたことだ。
ただし、当時の人々がネコとどこまで親密だったかは分からない。
ちなみに、新石器時代、人類が洞窟を訪れていたことは分かっている。
見つかったネコの骨は、たまたまイヌなどの捕食動物が洞窟に運んだものかもしれない。
それでも、この辺りにネコがいたという事実は、当時でも人間のそばで暮らすことが、ネコにとって居心地がよかったことを示唆している。
「ネコが家畜になるまでの重要なステップです」とクライツァールズ氏は述べている。
科学者たちは、リビアヤマネコの近縁種にあたる、地元種のヨーロッパヤマネコ(Felis silvestris silvestris)4匹の骨も、同じ洞窟から発掘している。
つまり、リビアヤマネコが新たなすみかにたどり着いたとき、彼らは遠い親戚と遭遇したことになる(リビアヤマネコとヨーロッパヤマネコは、約20万年前にはまだ枝分かれしていなかった)。
このことから「興味深い疑問が出てきます」とクライツァールズ氏は言う。
2種のネコは獲物をめぐって争っただろうか。
また、彼らは交配をしたのだろうか。
もしそうであれば、人間が今ペットとして飼っているイエネコには、私たちの想像以上に複雑な進化の歴史があるのかもしれない。

◆エサはもらっていなかった
近東から来たリビアヤマネコと地元のヨーロッパヤマネコの関係を探るために、研究者は、ネコの骨に含まれている窒素の同位体を分析して、彼らが何を食べていたのかを調べた。
過去の研究から、新石器時代の人々は、農作物の成長を促すために堆肥を使用していたことが分かっている。
その証拠は、人間や、イヌなどの家畜の骨における窒素濃度の上昇としても残されている。
ところが、リビアヤマネコでは骨の窒素濃度が低かった。
これは「ネコと人間との関係がかなりゆるやかなもの」であり、彼らが人間から食物をもらっていなかったことを示していると、イタリア、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の古遺伝学者、クラウディオ・オットーニ氏は述べている。
リビアヤマネコたちが食物としていたのは、農地にすみついたネズミ類だったと思われる。
近東のハツカネズミだけでなく、ハタネズミやヨーロッパモリネズミなど、ポーランドの在来種も含まれていただろう。
一方のヨーロッパヤマネコの骨の分析でも、似たパターンが確認された。
つまり、彼らもまた、農民たちの畑や倉にいるネズミをとっていたことを示唆している。
しかし、この分析は、ヨーロッパヤマネコたちがツグミなどの野生の渡り鳥も獲物にしていたことも明らかにした。
森が切り開かれ農地となったことで、渡り鳥もやって来るようになったためだろう。
つまり「2種のヤマネコたちは、直接、獲物で競合するようなことがなかったのです」と、クライツァールズ氏は言う。
彼らはこの新たな生息地で「共存することができ」、さらには交配をしていた可能性が高い。
今後の遺伝学的な研究によって、彼らがどの程度交配していたのか、さらには、ヨーロッパヤマネコの遺伝子が加わることが、リビアヤマネコのイエネコへの進化に影響を与えたのかどうかが明らかになるかもしれない。
たとえば、ヨーロッパヤマネコの遺伝子が、この土地にいたリビアヤマネコが完全にイエネコ化されるのを、長年、妨げていた可能性もある。
ポーランドでは、イエネコの骨は西暦200年までは登場しないから、この仮説は説得力を持っている。
ただ、近年、イエネコとヨーロッパヤマネコは交配を繰り返していて、野生種が遺伝的な健全性を保つうえでの脅威となっている。

◆イエネコの1万年の旅路をたどる
考古学者らは、リビアヤマネコ(少し体が大きいが、それ以外は現代のイエネコとほとんど変わらない)が、最初に砂漠を離れたのは、簡単に手に入る食料につられてのことだったのではないかと考えている。
その食料とは、肥沃な三日月地帯の農地を走り回るハツカネズミだ。
ヤマネコは片利共生生物、すなわちほかの動物の資源(たとえば人間の貯蔵食料やゴミ)を搾取する動物である一方、人間とより近い関係になることをできるだけ避けようとしていた。
「オオカミやブタも、最初は似たような過程を経て家畜化されていったと考えられています」と、クライツァールズ氏は言う。
いにしえの人間たちは、ヤマネコの行動を大目にみていたようだ。
ひょっとすると、ヤマネコたちが自ら進んで果たしていたネズミ退治の仕事をありがたく思い、やがて家の中にもいれるようになったのかもしれない。
ところで、現在分かっている最古のイエネコの埋葬例は9500年前のもので、トルコから約70キロ南に浮かぶキプロス島で2004年に発見された。
生後8カ月のそのネコは、貝殻や磨かれた石などの装飾品と、飼い主と思われる30歳の人間(性別は不明)と一緒に墓に葬られていた。
ちなみに、古代のキプロス島には野生のヤマネコはいない。
「ネコは約1万年前に船乗りが連れてきた」と考える研究者もいる。
ヤマネコをイエネコへと変貌させていった遺伝的な変化や、生活の変化については、まだ多くの疑問がある。
ネコは外洋を航行する船に乗って、つまり人間によって世界各地へと散らばっていったのだろうか?
それとも、ネコ自らが人がすむ地を渡り歩いていったのだろうか?
「今後は、遺伝子解析で、ヤマネコが辿ってきた、砂漠から農地、農地から暖かい家の中(さらにペットとして人間の心の中)へと至る道のりを完全に明らかにしたい」とクライツァールズ氏は述べている。
文=VIRGINIA MORELL/訳=北村京子

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戦争に翻弄された東山動物園の人気者たち

2020-08-29 05:37:45 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

【戦後75年特集】
戦争に翻弄された東山動物園の人気者たち
対照的な運命をたどったライオンとゾウ…
伝え継ぐ「戦争の記憶」

2020年8月18日(火) CHUKYO TV NEWS

戦時中、人間の都合で殺された動物たちがいました。
そんな時代があったことを信じられますか。


園内で死んだ動物たちをまつる慰霊碑

たくさんの動物が出迎えてくれる名古屋市千種区の「東山動植物園」。
正門からライオン舎へと向かう坂道の先に、戦争を伝えるものが残っています。
「奥にありますので、気づかずに通り過ぎて行く人も多いかなと思います」(東山動植物園 教育普及担当主幹 今西鉄也さん)
それは、東山動植物園で死んだ動物たちの霊をまつる慰霊碑。その中には、戦争で死んだ多くの動物たちも含まれています。


戦後に立てられたレリーフ

慰霊碑の隣にあるのは、戦争後に建てられたレリーフ。
彫られたゾウとライオンは、戦時中、まったく異なる運命をたどったのです。


開園当時の様子(写真提供:東山動植物園)

東山動植物園が開園したのは、日中戦争が始まった1937年。
当時としては、とても珍しかった動物園に連日、多くの人が詰めかけました。
その数、1か月で46万人。
このとき、動物園と戦争は無関係だと、誰もが思っていました。
しかし…。


空襲で建物の40%が焼失

開園から4年後の1941年。
太平洋戦争に突入。
徐々に戦況は悪化し、全国で空襲がはじまります。
名古屋市は、空襲によって建物の40%が焼失。
死者は約8000人と壊滅的な打撃を受けました。


猛獣の射殺訓練が行われたライオン舎前

そんな中、人間が起こした戦争に、動物たちも無関係ではなくなっていきます。
「訓練時の写真がちょうど、この角度で残っています。当日も、おそらくここから狙ったのではないかと思います」(東山動植物園 今西さん)
ここはライオン舎の前。開園時から変わっていない場所のひとつです。
戦時中、まさにこの場所で、猛獣を射殺するための訓練が行われました。
万が一、空襲によりライオンが逃げだしたら、射殺しなくてはいけません。


当時の様子(写真提供:東山動植物園)

しかし、戦火が近づくにつれて、市民の声は、職員が思ってもみなかった方向に進んで行きます。
「動物園は、最初は楽しいものだったのだろうと思いますが、猛獣がいるから危険な場所なんだと認識が変わったのかもしれない。まずは自分たちの命を守るのが第一になるのは当然と思います」(東山動植物園 今西さん)
動物園に対する市民の扱いが、娯楽から危険なものへと変化したのです。
新聞には、空襲時の危険を訴える市民の投書も掲載されるように…。
そして、ライオンやクマなどの一部の猛獣たちは、空襲がひどくなり始めた1944年12月、射殺されてしまいました。


当時の様子(写真提供:東山動植物園)

一方、奇跡的に戦争を生きのびたのが、動物園の人気者、アジアゾウ。
「非常に芸達者で、人だかりが、ゾウたちの周りに映っている写真が残っていますので、そこから人気ぶりが分かります」(東山動植物園 今西さん)
サーカスからやってきた4頭のゾウは台に乗ったり、逆立ちなどの芸を披露し、動物園のスターでした。
しかし、そんな人気のゾウにも軍から処分の要請が…。


当時の様子(写真提供:東山動植物園)

なんとしてもゾウは守る!
動物園側は常時、鎖で前足を拘束することを約束し、処分の見送りを訴えます。
その結果、ゾウの処分は見送られることになったのです。


(東山動植物園 教育普及担当主幹 今西鉄也さん)

しかしこのころ、食糧事情が悪化。
そのため、園内の空き地のほとんどがエサを得るための畑になりますが、1日約100キログラムのエサを食べるゾウのおなかを満たすのは不可能でした。
「(当時の職員たちは)自分の子どもに食べ物を与えられないぐらい情けなかったり、申し訳なかったと感じたのではないかなと思います」(東山動植物園 今西さん)
殺処分の危機から守ったゾウですが、深刻な食料不足で、徐々にやせ細っていきます。
そして、職員たちの努力も報われず、飢えと寒さなどから、4頭のうち2頭のゾウが死んでしまいました。


当時の様子(写真提供:東山動植物園)

1945年8月、日本は終戦を迎えます。
奇跡的に生きのびた2頭のゾウは、再び動物園の人気者に。
戦争を経験し、元気に生きのびたゾウは日本中で東山動植物園だけでした。


平和の尊さを伝える慰霊碑

今年で戦後75年。
人間の都合で殺されてしまったライオンと、人間の愛情により生きのびたゾウ。
レリーフに刻まれたライオンとゾウは、対照的な運命をたどったのです。
楽しい場所であるはずの東山動植物園。
しかし、ここには、戦争の犠牲になった動物たちがいました。
この慰霊碑は、私たちに平和の尊さを伝えてくれているのです。

動画
https://news.yahoo.co.jp/articles/f3f56ce81860fc0fd6790154c7dad8ff7fe6aa77?page=1


不登校、引きこもり……悩みを抱えた若者たちが保護犬と出会った

2020-08-28 05:37:41 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

不登校、引きこもり……
 悩みを抱えた若者たちが保護犬と出会った

2020年8月12日(水) いぬのきもち

心に傷を負った保護犬のトレーニングを介して、青少年の自立支援を行う「NPO法人キドックス」を立ち上げた、上山琴美さんの活動を紹介します。

◆悩みを抱えた若者と保護犬が、ともに幸せになるための施設

左から動物看護士と産業カウンセラーの資格を持つ村本知恵里さん、キドックス代表理事の上山さん、スタッフの伊勢川知子さん

組織名のキドックス(KIDOGS)とは、“KID(子ども)”と“DOG(犬)”を掛け合わせた言葉です。
茨城県土浦市にあるキドックスファームでは、不登校や引きこもりなどの悩みを抱える青少年が、つらい境遇にいた保護犬の心と体のケア、トレーニングを行うことで、自立をしていけるよう促し、同時に保護犬を幸せな家庭に譲渡する活動を行っています。
この活動をキドックスでは、「シェルター部」と呼び、毎週火曜日から金曜日の4日間行っています。
毎朝6、7名の青少年が通いで訪れ、キドックスに保護されている保護犬のお世話、トレーニングをして、最終的には新しい家族への譲渡までを担当します。
「ここでは、悩みを抱えた青少年が主体的に自分の人生を生きていけること、そして、犬が人間社会の中で幸せに生きていけること、2つのことを目指しています」と語る代表理事の上山琴美さんは、20代後半でこの施設を創設しました。

◆愛犬の死と親友が非行に走ったことが転機に
2012年に開所した茨城県土浦市にあるキドックスファーム。
筑波山近くの緑豊かな環境に建っています。
シェルター部ほか、木工部、カフェ部などの活動に、引きこもりの悩みを抱える若者たちが通います。



上山さんは、幼少の頃から犬と共に育ち、学生時代にかわいがっていた愛犬2頭を病気で亡くしました。
そのとき、自分が何もできなかったことを悔しく思い、「これからは、もっと犬たちのために何かをしたい……」と考え、動物保護の活動を始めました。
その同時期に、中学時代の親友が非行に走り、高校になると学校に出てこなくなったという出来事があったそう。
「同じ環境で育ってきた友人が、急に変わってしまってショックだったのと同時に『人はなぜ変わるのか? 』という部分にとても興味がわいたんです」と語る上山さん。
その後、犯罪心理などの勉強を始め、大学では教育学、心理学を学び、ボランティアで非行や引きこもりなどの悩みを抱える青少年の支援活動に参加しました。
「そんなとき、偶然テレビで、アメリカのオレゴン州にある少年院で実施されている『プロジェクト・プーチ』という更生プログラムを知ったんです」


猫の『クーラー病』に気を付けて!

2020-08-27 05:36:21 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

猫の『クーラー病』に気を付けて!症状3つ

2020年8月23日(日) ねこちゃんホンポ

1.咳やくしゃみが出


夏に冷房をつけるようになってから、猫に咳やくしゃみの症状が出てくるということがあります。
これは冷えすぎることで風邪を引いてしまったという場合も考えられますが、エアコンの掃除を長い間していなかったり、風によって猫の毛やダニ、ノミなどの死骸が巻き上がりそれが原因でアレルギーの症状が出ている可能性も考えられます。
・症状の悪化に注意
咳やくしゃみは最初は症状が軽くても悪化すると気管支炎、肺炎などを引き起こすこともありますので注意が必要です。
猫が風邪を引いてしまったという場合には、普段過ごしている床の上が人間の考えている以上に冷えてしまった、ということも考えられます。
また、アレルギー症状でこれらの症状が出ている場合には、空調内部の掃除や、猫の抜け毛などを今まで以上にこまめに掃除する必要があるかもしれません。

2.自律神経の乱れから来る体調不良


冷房をかけることによって外気温と室内の気温差が大きくなり、体がその違いに対応しきれないと自律神経のバランスが崩れてしまいます。
これは人間にも見られる症状ですが、猫も同じように神経のバランスが崩れると食欲不振、元気がないなど様々な体調不良が現れるようになります。
夏場は熱中症という心配もあり、なかなかクーラーをつけないというわけにはいきません。
しかし、できる範囲で室内の換気で風通しを良くする、扇風機を使う、クールマットなどの冷却グッズを取り入れる。
また、遮光カーテンを使って室温を下げるなど工夫をして、なるべく冷房に頼り過ぎないようにすることも人間だけではなく、猫の健康にとっても大切でしょう。

3.腹痛、下痢、嘔吐


クーラーによって体が冷えすぎると猫はお腹の状態が悪化したり、嘔吐をしたりすることがあります。
猫が夏場快適に過ごせる室温は24℃~26℃ぐらいと言われています。
ただこの快適さは短毛か長毛かなど猫によって異なりますので、どのぐらいの室温で猫が快適に過ごせているか、冷房の気温を調節してまずは様子を見てみてもいいかもしれません。
猫は室内で過ごすのが暑すぎて不快だったりすると部屋の外に出たがったり、逆に寒すぎると丸まって寝ていたりもします。
猫が家の中で伸びるようにリラックスして寝ているようであれば、室温は猫にとって快適ということになります。

冷えすぎ対策を
また、腹痛等は冷えすぎることが原因で起こる症状なので、家に猫を留守番させて出かける時はクーラーをつけっぱなしでも、冷気から逃れて別の部屋に行けるようにドアを開けておいてあげる、涼を取る冷却グッズと同時に、冷え過ぎた時用のベッドも用意しておくなどの対策をしてあげるとよいでしょう。

まとめ

今日のねこちゃんより:レオ♂ / サイベリアン / 5kg

いかがでしたか?
夏は熱中症も怖いですが、クーラー病も猫にとっては油断できないものです。
暑さと涼しさの調節をするのは難しいですが、猫が快適に過ごせて健康も維持できるようにいろいろな方法で工夫したり対策をしてみましょう。
(獣医師監修:平松育子)


コロナ危機後も中国人が野生動物を食べ続ける理由

2020-08-26 05:41:19 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

コロナ危機後も中国人がコウモリやヘビなど野生動物を食べ続ける理由
コロナで中国人の食習慣は変わるか

2020年8月18日(火) 現代ビジネス

「野生動物を食べるのは野蛮だって? 動物の内臓には特殊な栄養要素があるのを知らないのかい?」 
「豚の内臓や手や足を食べずに捨てる? 冗談はやめてくれ。俺たちは外国人じゃないんだ!」
「野生動物を食べる理由? 美味いからに決まっているじゃないか」
「会食禁止、大皿料理から個別盛り、じか箸ダメで取り箸使え? 食事は腹を満たすものだけじゃないはずだ!」
「取り箸使うなんて、他人行儀だね」
中国では、千年以上続いた習慣を変えるか否かの瀬戸際に立たされている。
なかでも生活の基本である食習慣は、コロナ禍のもと、どこまで変化させられるのだろう。

◆生きたまま売られる食用動物

ヘビのスープ〔PHOTO〕gettyimages

中国で疫病が発生すると、必ず問題にされるのが、生鮮食料品市場と、そこで売られる野生動物だ。
思い返せば2003年、SARS(重症急性呼吸器症候群)は、広東省の生鮮市場から広まったとされている。
その後の研究で、ウイルスを持ったコウモリを食したハクビシンが感染源とも言われている。
それから17年。
今回の新型コロナウイルスは、諸説あるものの、武漢の華南海産物市場が発生源というのはほぼ間違いないだろう。
市場は今年1月1日に封鎖されたが、この時点で、すでにウイルスは市中に蔓延していたと考えられる。
中国の報道によると、この市場では、普通の加工肉のほか、生きたまま売られる食用動物も多く、具体的には鶏やロバ、羊、豚、ラクダ、キツネ、アナグマ、タケネズミ、ハリネズミ、ヘビと多岐にわたる。
まるで動物園である。
規模の違いはあっても、こうした市場は中国全土で存在する。
北京、上海のような近代都市も例外ではない。
日本で言えば、アメ横や築地や豊洲市場のように、卸売りの他、一般客も買いに行く。
そして中国人消費者は、日々の買い物は、この市場に行く。肉や野菜、海産物など、スーパーで買うより市場のほうが、圧倒的に鮮度が高いし、価格も安い。
テレビ、冷蔵庫、洗濯機が三種の神器と言われたのは80年代のことで、当時、冷蔵庫がない家庭は普通だった。
しかし、別に不自由はない。
中国人は冷たいものを嫌ううえ、毎日、市場で新鮮な食材を買えばいい。
鶏は生きたまま買ってきて、直前に首をしめて調理する。
それが最高のご馳走だった。

◆野生動物を食べるのは究極の贅沢
新鮮さの他に、食材の珍しさにも、中国人の食に対するこだわりが表れる。
満漢全席といえば、西太后が愛した料理として知られているが、数日間かけて100種類ほどの料理が出されたという。
山・陸・海などから珍味が集められ、ツバメの巣・フカひれなどはさほどの高級料理ではなく、ここで言う珍味とは、熊の掌・象の鼻の輪切り・蛇・猿などを指す。
食材は中国料理の基本である。
現代でも、高級になればなるほど、珍しい食材を使った料理が卓上に並ぶ。
外国人駐在員たちは、取引先との接待の場で、望む望まないは関係なく、日本では口にすることのない料理と相対する場面も少なくない。
友人の中国駐在経験者は、コウモリ、ヘビ、ゲンゴロウ、サソリなどを接待の席で食べた経験があると言う。
「多くは鳥類で、キジ、白鳥、クジャクの類は、よく出現しますね。某有名メーカーOBから『駐在員は食べ物に気をつけないといけないよ。変な病気もらったら会社に迷惑かけるからね』と注意されたことを、今回の新型肺炎騒動で思い出しました。
でも相手は好意で高い料理をご馳走してくれているわけで、なかなか断れませんよね」
この友人いわく、ヘビは鳥のササミみたいな味だったそうだ。
食材としてだけではない。
漢方では薬剤としても利用されている。
野生動物は免疫力を高めるとされていて、農場で育った動物より、野生のほうが、栄養も豊富だと信じられている。
いずれにしても、中国人にとって、こうした野生動物を食するというのは、究極の贅沢であり、ごく限られた富裕層だけが可能である。
ウイルスの発生源とされているのにもかかわらず、中国政府がなかなか売買禁止にできないのは、野生動物を好む富裕層の反発を恐れているからという説さえある。

◆「個別盛り、取り箸……うんざり」
もうひとつ中国人の食習慣に大きく影響しているのが、中国料理の西洋化である。
ある中国人は言う。
「一人メシ、個別盛り、取り箸、取り匙……うんざりだ。だけど疫病が収まれば自然忘れていくさ。SARSの時も盛んに提唱されたが、一年たたないうちに雲散霧消したからね」
中国政府はコロナ禍にあたって「公筷公勺」つまり「取り箸・取り匙」を使おうというキャンペーンを始めた。
中国において、じか箸とは我々日本人が考えるように、単なる作法上の問題ではない。
中国料理といえば、大皿料理である。
中国で大皿料理が一般的になったのは、商人が登場した宋の時代と言われている。
各地から都市に集まった商人たちは、酒楼と呼ばれる場所で、同じテーブルを囲み、大皿料理から料理を取り分けながら食べ、賑やかで楽しい雰囲気のなかで商談をまとめていった。
現代で言うビジネスディナーである。
中国人にとって、食事とは、単に空腹を満たすだけのものではない。
感情の育成、人間関係の構築である。
取り箸を使うことは、究極の他人行儀なので、できれば使いたくない。
大きな円卓を囲み、親しい仲間がわいわいがやがや、楽しく酒を飲み、食事をする。
おいしい料理は仲間で取り分け、楽しみを共有する。
食事時間を賑やかに楽しむことは、中国人の天性と合致する。
「このような素晴らしい伝統文化を無くすのは先祖に対し申し訳ないし、受け入れがたい」……。
これが庶民の正直な感想である。

◆多くの中国人を震撼させた数字
それにしても、江蘇省杭州市疾病管理センターで行った実験結果は、彼らにとっても衝撃的だったはずだ。
食事の際に、じか箸の場合と取り箸を使った場合とでは、食後の細菌量がどう違うかを比較するというもので、じか箸の場合、細菌数は取り箸を使った時の最大で250倍だったという。
この数字は多くの中国人を震撼させた。
新型コロナの後に実施されたアンケートによると、取り箸を使うことに対して、支持率は100%で、反対はゼロだったそうだ。
しかし、支持率と実行率は別問題である。
現実に実践しているかどうかになると、話は別で、現段階では、取り箸の使用率は、まだ低いと言っていい。
そして「公筷公勺」と並行して提唱されているのが、中国料理を西洋式で食べよう、という新しい様式である。
簡単に言うと、大皿に盛るのをやめようというもので、真ん中にスープ、四隅に小分けした料理を配するという西洋風に食事をしようということだ。
ただしこれは、用意する時や片付けの時、実に面倒だ。
食事の際の賑やかな雰囲気も損なうし、相手との一体感もない。
食事の最大の目的である、もてなしの気持ちも損なわれてしまう。
衛生的ではあっても、食事の楽しみが減るのも事実である。
何千年も続いた習慣や、民族的な心理を変えるには、時間がかかる。
年頭から始まったコロナ問題だが、夏を迎えて世界各地でいわゆる「第2波」が出現し始めた。
日本も同じである。
東京など都市圏では、食事会、飲み会などで感染が広がっている。
そもそも人間は会食が好きな生命体である。
親しい人々と楽しく会話しながら、美味しく、珍しい料理を楽しむ。
この豊かな時間が失われる悲しみは、言葉で言いあらわせないが、コロナ禍のなか、いかに折り合っていくかに、人間の智慧が試されている。
青樹 明子(ノンフィクション作家)


乳がんステージ4で保護猫カフェを開いた女性

2020-08-25 05:38:53 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

乳がんステージ4で保護猫カフェを開いた女性
 猫を助けているようで実は助けられている

2020年8月22日(土) sippo(朝日新聞社)

猫の保護活動をしていると、猫を助けているようでいて、実は猫に助けられていると感じることがよくある。
仲間のボランティアさんもそのひとりかも知れない。

仲間からの相談

ボニズハウスの猫たち

「保護猫カフェを開きたいと思うんですけど、相談に乗ってもらえませんか?」
数年前に仲間のボランティアさんの古橋さんから相談を受けた。
自宅を改装して保護猫カフェを開きたいという。
「……」
猫の保護活動を真剣にやってくれる人が増えることは、もちろんうれしい。
でも、手放しでは賛成できなかった。
近年増えてきた保護猫カフェや保護猫シェルターであるが、その運営はどこも厳しい。
保護猫というたくさんの命を抱えることになり、休みなどなくなる。
それ以上に、考えなければならないことがあった。
それは彼女が重い病で闘病中の身ということだった。
「古橋さん、体が……」
彼女は乳がんのステージ4を宣告され、抗がん剤で治療中の身だった。
闘病に専念しなければならない身で、たくさんの保護猫を抱え込む。
世話もたいへんだが、本人の身に万が一のことがあったら。
どうしても考えなければならないことだった。
「このままがんが進行しても、自分が生きている間に譲渡先を見つけられるであろう子猫だけ保護することにします。やりたいんです」
たくさん保護した後に、本人に死が訪れてしまったら。猫のためにも本人のためにも、多頭飼育崩壊だけは避けなければならなかった。


ボニズハウスの猫たち

多頭崩壊なんてさせるわけない

古橋さんご夫婦

「古橋さんが保護猫カフェをやりたいと言っているんだけど。」
別の仲間のボランティアさんに相談した。
「やらせてあげなよ。本人がやりたいと言っていて、家族のみんなも協力すると言っている。多頭飼育崩壊なんてさせるわけないじゃない。みんながいるんだから」
事前に相談を受けていた仲間のボランティアは、口をそろえてそう言った。
保護猫カフェねこかつを含め、普段から多数の猫を保護して譲渡している仲間がサポートすれば多頭飼育崩壊なんて起きない、起こさせない。
古橋さんの保護猫カフェはスタートした。
古橋さんはたくさんの猫たちを助け、新たな飼い主さんへとつないだ。
しかし、病気は着々と進行しているように見えた。
抗がん剤の副作用からか、歩くのもつらそうに見えた。
頭に帽子をかぶって現れるようになった。
「今度の譲渡会に参加していいですか?長く立っていられないから座りながらの参加になってしまいますけど」
「無理しないでくださいよ」
旦那さんに補助してもらいながら、彼女は譲渡会に参加した。

「乳飲み子ぜんぜんいけます」

授乳する古橋さん

ちょうどその頃、ねこかつでは、ある行政施設からの子猫や乳飲み子のレスキューをはじめたばかりだった。
連日20匹、30匹というむちゃなレスキューだった。
「梅田さん、まだ乳飲み子ぜんぜんいけます。いつでも言ってください」
古橋さんから何度となく連絡をもらった。
「ありがたいんだけど、体は大丈夫なんですか?」
「夫も娘も手伝ってくれてますから、大丈夫です」
産まれてまだ間もない乳飲み子は、3時間おきくらいにミルクをあげなくてはならない。
つまり夜中も起きてミルクをあげなくてはいけないのである。
健康な人がやってもきついのに、末期がんの体にどれだけ負担をかけているのか。

寝ずに到着を待っていた

ボニズハウス譲渡会ののぼり

「古橋さんが、また乳飲み子をやるって言っているんだけど、いいのかな」
別の仲間のボランティアさんに毎回相談した。
「大丈夫だよ。旦那さんも娘さんもみんなで協力してくれてるんだから」
「そう言ったって、旦那さんだって昼間は仕事があって、それなのに夜中に起きて乳飲み子のミルクまであげなくちゃいけないなんて、普通なら嫌なはずだよ」
「古橋さんの旦那さんは、とんでもなく優しいんだから大丈夫。梅田さんとは違うんだから」
そんな言葉が毎回返ってきた。
行政施設から乳飲み子を引き出したあと、ねこかつで1回ミルクをあげて、古橋さんの家に送り届ける。
そうすると、古橋さんの家に到着するのはいつも深夜12時ごろだった。
旦那さんと娘さんも寝ずに乳飲み子の到着を待ってくれていた。
「うわー!かわいいー!」
乳飲み子の入ったキャリーを開けると、古橋さんと同じくらい旦那さんも喜んでいたのが印象的だった。

300の猫の命を救った

IKEAでの譲渡会にご夫婦で参加

そんなことが続いているうちに、あることに気が付いた。
古橋さんの顔色が以前と比べ良くなってきていて、はた目には闘病中だなんてまったくわからなくなっていた。
ちょっと前までは歩くのもつらそうだったのに。
「体、調子よさそうですね」
「抗がん剤を変えたからか、楽になったんです」
それからまたしばらくして、古橋さんの体からがんの反応が消えた。
主治医の先生も「がんはどこに行っちゃったんだろうね」と。
古橋さんが乳がんのステージ4の体で保護猫カフェ「ボニズハウス」を開いてから、3年の月日が経った。
その間に救った猫の命は300匹近くにのぼる。
古橋さんが300の猫の命を救っている間に、300の猫たちが彼女を救ってくれたかもしれない。


群馬の猫ネグレクト事件 飼育者の鬼畜の所業

2020-08-24 05:32:00 | 動物実験・動物虐待

《群馬・猫ネグレクト事件》
空き家で50匹が餓死、共食いも…飼育者の鬼畜の所業

2020年8月22日(土) 週刊女性PRIME

発覚は関係者からのSOSだった。
動物愛護団体「NPO法人群馬わんにゃんネットワーク」の飯田有紀子理事長が当時の様子を明かす。
「昨年10月、私たちの団体に“猫の里親を探している”というメールが寄せられたことがきっかけでした。
猫が38匹いて、飼育費用に困っていると相談されました」

◆荒れ果てた室内に複数の猫の死骸が
多頭飼育の現場は温泉地で有名な群馬県みなかみ町。
関係者は飯田さんらに「猫は2つの建物に数匹ずつ分けて飼っている」と説明していた。
話を聞いていると、相談をもちかけた関係者が「猫はほかにもいる」と切り出した。
実はこれらの猫はもともとA(仮名)という男性が飼っていたのだが、避妊去勢はせず増えてしまった。
Aは猫を残し、2018年に他界。
その後はT(46・仮名)という男を中心に複数の関係者が飼育を引き継いだという。
しかし、 「Tと9月から連絡がとれない、とのことでした。猫が心配でしたので現場に行くことにしました」(飯田さん)
まず、同団体の岩崎一代さんらスタッフはT以外の関係者が世話をしていた猫を確認。
健康状態はよかった。
しかし、Tが世話をしていた猫がいる同じ建物内の別の部屋を確認すると……。
「室内は荒れ果て、大量の糞尿がありました。猫はそれぞれの建物の複数の部屋で数匹ずつ亡くなっていたそうです」(岩崎さん、以下同)
ただごとではない、と慌てる岩崎さんらに関係者の1人がおそるおそる打ち明けた。

◆「もう1軒ある」
そこはT以外、誰も立ち入らなかった空き家だった。
「大家さんに鍵を借りて中に入ると、正面のトイレの入り口で黒い猫が死んでいるのが見えました」(同)
日ごろから多頭飼育の崩壊現場などで悲惨な状況は目の当たりにしている同団体のスタッフらでも「血の気が引きました」と絶句した。
空き家は1階に水回り含め4部屋、2階に3部屋。
各部屋の扉は釘で打ちつけられていたり、ひもやフックで厳重に固定。
鍵がつき、頑丈に施錠されていた扉も。
「許可をもらいバールで扉をこじあけました。積み重なった糞尿が固まってしまい開かない扉もありました」(同)


空き家とは別の建物の一角。ここでも猫が死んでいた

◆「様子は見ている」とウソを重ねた
どうにか部屋に入ると中には複数の猫の遺体と糞尿の山。
床は腐り、ウジ虫がわき、部屋の中央に空になったエサと水の皿が置かれていた。
数日前に亡くなったようなしっかりと形がある遺体、新聞紙に包まれゴミ袋に入れられた遺体、白骨化して形すらとどめていない遺体もあった。
これは猫たちが時間差で死んだことを表していた。
「空の器を見て“水をくまないと”と思いました。1匹も生きていないのに。それほど混乱していました」(同)
窓はすべて閉じられ、換気扇は網や格子で覆われていたためどこからも外には出られない、密室だった。
通報すると、最初は「猫でしょ、まぁ行きますけど」としぶしぶの様子だった警察官も現場の状態に顔色が変わった。
その後、群馬県警沼田署により現場検証が行われた。
猫の遺体は翌日、岩崎さんや合流した冒頭の飯田さんらの手によって1体ずつ確認された。
形が残っていたもので21体。
骨の欠片しか残っていないものも合わせると50匹以上の猫がいたとみられる。
「関係者は半狂乱でした。Tは失踪するまで関係者と毎日連絡を取り合い、みなかみ町にも顔を出していたそうです。ただ、姿が見えなくなることも増え、電話で猫のことを尋ねると“夜、行っている。世話をしているから大丈夫”とか“若い人を行かせているから”と説明していたそうです。関係者は“毎日来ている”と安心してしまったとか……」(前出・飯田さん)
事情を知る人物は匿名を条件に取材に応じた。
「Tさんから猫のことで何か聞かれたら“若い人が見に来ていたと言え”と言われていた人もいたそうです。でも、そんな人は来ていなかった。全部ウソだったんです」
後から明かされた空き家を含めた3か所の建物で死んでいたのはすべてTが世話をしていた猫だった。


共食いの跡だろうか、ところどころ赤黒く変色した畳

◆ひっかきキズがまるで叫び声のように残されて
事件から半年以上がたった7月上旬、空き家に入った。
室内は換気され関係者の手でだいぶ片づけられているもののマスク越しでも鼻の奥にツンとくる激しいアンモニア臭や乾いた排泄物のにおいがした。
各部屋の壁や扉、床には猫たちが爪でひっかいたおびただしい数のキズがまるで叫び声のように残されていた。
複数の関係者の証言をまとめると、Tは昨年の5、6月ごろから飼育放棄を始めたと推測される。
遺体を包んだ新聞紙が6月のものだったことや大量のハエがわきだし、ひどい異臭がしたのもこの時期だった。
さらに同時期に別の建物でも室内で共食いをしている猫を目撃した人もいた。
住民がTに指摘すると、 「室内の様子が外から見えないようにブルーシートで目隠しをしたそうです」(前出・事情を知る人物)
ただし、空き家以外の建物にはT以外の関係者も出入りしていた。
「彼の言葉を信じ、Tの猫には誰もエサを与えていなかった。ほかの猫はエサも与えられ、毛並みもよかった。同じ建物で飼っていられながら生死を分けたのはついたて1つ。なぜ、誰も異変に気づいてあげられなかったのか。様子がおかしいと思ったら面倒を見にいくと思うんです!」  と事情を知る人物は憤る。

◆水を求めて水道の前で死んだ猫も
Tの猫たちは真夏の閉め切られた室内で、Tが戻ってくることを信じて待ち続け、暑さに飢えと渇きで衰弱し、全滅した。
「亡骸は夏を経ても腐敗していませんでした。バリバリに乾いていたんです。持ち上げると砕けました。  ある子は水が出てくるのを知っていたのでしょう。水道のそばで死んでいました」 と話す岩崎さんには忘れられない猫がいる。
「口がちょっとだけ開いていて、キバが真っ白で……かみしめながら死んでいました。どうしてこんな状況になるまで誰も声を上げなかったのでしょうか」  と怒りをあらわにした。
「昨日までは仲よく一緒に過ごしていた仲間を食べて生きなければならなかった猫の気持ち、残酷という言葉では片づけられません。猫にも感情があります。いろいろなことを考えて苦しんで死んでいった……」(前出・同)

◆自宅の猫は可愛がっていた
飯田さんらは今年4月、動物愛護法44条1項(殺傷罪)違反の疑いでTを刑事告発した。
同月下旬に群馬県警はそれを受理し、7月8日にTは埼玉県内で逮捕された。
「動物愛護法違反の事件で警察が県をまたぎ捜査し、逮捕したケースは今回が初めてかもしれません。手がかりが少ない中で群馬県警の地道な捜査がTの逮捕につながりました」  と説明するのは長年、動物問題に携わってきた動物愛護推進員の川崎亜希子さん。
「逮捕当時、Tは自宅で猫を4匹も飼っており、どの猫も太っていて健康的だったそうです」(全国紙社会部記者)
自宅の猫を可愛がっても、空き家の猫には目もくれなかった。
それどころか世話をしているふりをして関係者にも会っていた。
「猫は好きじゃなかったと思います。自分がエサも水もあげなかったら死ぬことはわかっていながら、知らんぷり。なぜそんなことができたのか。自分が殺したという罪悪感を持っているのか聞きたい」(前出・岩崎さん)
前出の事情を知る人物はTが猫のNPOを立ち上げようとしていたことも証言した。
「“寄付もすぐに集まるし、猫の避妊去勢もできるようになる”と周囲に持ちかけていたそうです」
まじめに世話をしようとしていたのかもしれないが、前出の人物は疑問を投げかける。
「Tはよく猫を病院に連れていっていました。でも、“治療にいくらかかった”とか“大事にしている”とか周囲にアピールをしていたようです。猫の面倒をみれば褒められる、周囲に認められたくて世話をしていると感じました」
その後、金銭的な理由もあり、病院通いも途絶えた。
「Tは猫の避妊去勢をせずに増やしたり、次々に拾ってきてしまう典型的なアニマルホーダーではないと思います。猫は自分の自己顕示欲を満たすためのものとしか思っていなかったのでは」(同)

◆Tとはどのような人物だったのか
Tとはいったいどのような人物だったのだろうか。
複数の関係者によると10年ほど前からみなかみ町に頻繁に訪れるようになったとみられる。
朝一の電車で訪れ、夕方には帰るの繰り返しだった。
「何しにどこから来ているのか、仕事をしているのかも誰も知らない」(同町の住民)
中には「感じのいい人だった」と話す人もいた。
「人柄がよくて穏やかで物知りでした。大柄でいつもタオルを巻いて、作業着姿。でも清潔感があって、おしゃれ好きできっちりしていた印象です」(別の住民)
一方で、変わりようを覚えていた男性がいた。
「関係者が“これから猫はどうするんだ? どこかに相談しよう”とTに言うと“俺だっていろいろ考えているんだ!”と怒りだした。机や椅子を蹴り、怒鳴ることもあったようです。暴れているところを見かけた人もいました」
さらに意外な事実を前出の男性が証言する。
「子猫が生まれ、また増えてしまうので関係者が困っていた。(川に)流してしまおうか、と話しているとTが“生きているんだからダメだよ”と、たしなめたそうです。  そのうちの1匹が弱くて、育つかわからなかった。そうしたらTが“俺が面倒みるから”と引き取ったとか」
その猫は件の空き家にいたとみられている。
ネグレクトに駆り立てた理由はなんだったのか。
Tは群馬県内の出身で両親は幼いころに離婚、祖母と母と暮らしていた。
高校卒業後は職や住まいを転々としていたという。
「お母さんは身体が弱い人でしたが、仕事をかけもちしてTさんのことを育てていました。お母さんが留守の間はおばあちゃんが面倒をみていて、とても可愛がられていました。親から虐待されていたとは聞いたことがありません」(Tの家族を知る男性)
中学時代を知る女性は、 「サッカー部ではゴールキーパー。目立つタイプではなかったけど面倒見もいい穏やかな子でしたよ」  と驚きを隠さなかった。

◆見殺しにして罰金10万円は軽い
前橋区検は7月28日Tを、動物愛護法違反の疑いで前橋簡易裁判所にて略式起訴。
同簡裁は罰金10万円の略式命令を出した。
「聞いたときは、怒りよりもあまりの刑の軽さに笑ってしまいました。あれだけのことをしたのにウソでしょって。この判決にはとうてい納得いかないです。Tには法廷で真実を明らかにしてほしかったんですが、叶いませんでした。これが現実なんだなと思いましたが、これでいいのでしょうか。この事実は社会にも問いかけないといけない」
飯田さんは打ちのめされた苦しい思いを打ち明けた。
6月1日より改正動物愛護法が施行、動物の殺傷や虐待の罰則が引き上げられた。
殺傷に対する罰則は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に強化。
ネグレクトや遺棄などの虐待には懲役刑が追加され、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となった。
動物愛護問題に詳しい細川敦史弁護士は、 「猫たちの部屋の扉を打ちつけて出られなくしていたところは未必の故意だったとも考えられます。ですが、判決は残念な結果でした」  と肩を落とす。
さらに「想像の範囲ですが」と前置きをしたうえで、 「処分は告発した動物愛護法44条1項でなく同2項(給餌・給水をしないこと)を前提にしているのかなと思いました。それだと本案は法改正前の犯行なので、罰金100万円が上限で、そこから罰金額が決められます。ただ、10万円は軽い。それでも20年前はどんな虐待をしても罰金は3万円。当時と比べれば罰は重くなりました」
動物愛護への機運は高まるが、世論だけでは司法の壁は変えられないという。
「まずは法律を変えることです。そこには世論の高まりが重要でしょう。法律を変えることで処分や処罰、裁判の判決の中身に影響を与えると思います」(細川弁護士)

◆日本中で起きる猫ネグレクト事件
さらにもうひとつの問題を前出の川崎さんが指摘する。
「所有権の問題があります。現在の法律では、いくら虐待を受けていても第三者が勝手に飼い主から動物を保護することができません。人間の子どもたちのように緊急保護などができるように法整備も必要です」
今回のように悪質でないにしろ、動物のネグレクト事件は日本中で起きている。
「罰金だけでは問題の解決にはなりません。飼育禁止などの処分も必要だと思います。人間の虐待や貧困なども実は動物の問題とも関係があるんです。人間の問題が解決すれば動物の問題は起きにくくなります。一緒に考えなければなりません」(前出・同)
前出・飯田さんは、 「Tには2度と動物を飼わないでもらいたい。言いたい言葉はたくさんありますが、それを言っても亡くなった猫たちは喜びません。あの子たちは私たちが動くことを待っていてくれたんだなと思っています。刑の重さだけではなく、逮捕されたことはひとつの成果かもしれませんが」  と話し、声を詰まらせた。
「あの子たちは飼われていました。1匹ずつ名前もついていて、ごはんをもらって、人にスリスリするのが当たり前だったんです。それが突然ごはんも水もなくなって、ドアをガリガリひっかいても外には出られなくて、……死んだ。残った子は仲間を食べて、頑張って生きていたんです。  Tひとりを罰して終わりではなく、こうした状況を人間側が起こさないこと。自分以外の生き物の痛みを知ることにつなげていかないといけません」(飯田さん)
Tは今、失われた命に対して何を思うのか──。


日本は動物虐待だらけ

2020-08-22 05:35:12 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

多頭飼育崩壊の高齢者、すぐに安楽死を口にする飼い主……
日本は動物虐待だらけ――友森玲子×町田康

2020年8月9日(日) 文春オンライン


友森玲子さん

生まれてまもない子犬や子猫がペットショップに並んでいたら、あなたが発する言葉は「かわいい」? それとも「おかしい」?
動物保護だけでなくフェスの主催など、規格外の愛護活動で注目される動物愛護団体ランコントレ・ミグノン代表・友森玲子さんと、猫との暮らしは約30年、芥川賞作家の町田康さん。
ペット大国・日本の問題点を語り合った(この対談は2019年7月に行われたものです)。
 ◆ ◆ ◆

友森
町田さんとは、坂本美雨ちゃんに連れて行ってもらったパーティではじめてお会いしました。
あのときはピアノを演奏された坂本龍一さんに「顔に似合わず素敵なピアノを弾きますね」と言ってしまって、苦笑されたんです(笑)。
名刺交換してご挨拶したんですよね?
その後、町田さんから猫のエッセイ(『 猫のあしあと 』2012年に文庫化、講談社)の解説を依頼していただきました。

町田
僕は、友森さんの活動を断片的にですが知っていたので「猫のことを書いたエッセイだから、猫に詳しい人に解説してもらったらいいんじゃないか」と思ったんです。

友森
そして、その2年後に、大きなイベントを企画したので「出ていただけませんか」と、今度はこちらからお願しました。
町田さんのエッセイを拝読したら、猫がかわいいという上澄みだけじゃなくて、世話する大変さも知っていて、泣きながらも楽しく暮らしていらっしゃる。
そんな話を聞いてみたくて。
そして「そうだ、確か歌も歌っていたな!」と(笑)。

町田
顔に似合わず素敵な歌を?(笑)
僕は30年くらい前から、拾ったり、誰かに連れてこられたりした猫を保護して育ててきました。
動物愛護の専門用語でいう「預かりボラさん」(保護された動物に正式な家族が見つかるまでの一時期預かり、自分のペット同様に世話をするボランティアのこと)のようなことをやって、これまでに一緒に暮らした猫は20匹から30匹でしょうか。

友森
町田家には、警戒心が強くて触らせない子や、病弱な子が多かったんですよね。
まるで町田さんが厄介な子を自ら呼び寄せているかのように(笑)。
私は、年間約100頭の動物をウチの団体に受け入れてます。
保護した動物はボランティアたちと世話をして、不妊・去勢手術などの医療行為をしたり、家庭動物になるためにしつけたりして、月に2回開催している譲渡会に出します。
そこで家族が決まり、正式譲渡となる動物は年間に100頭くらい。
現在保護してる動物は140頭。
ちょっと抱えすぎだと感じています。
ずっと続けて、限界までやっているけど現状は変わらない。
ならば、国や社会に解決してもらわないと。
「犬や猫を増やさない」「悪い飼い方をする人には飼わせない」など法規制をしてもらえば、飼育放棄されて捨てられる動物も減ります。

町田
2019年6月に、5年に一度という動物愛護法の改正がありましたね。

友森
はい。一応「前進した」といわれています。
でも不思議な現象があったんですよ。
8週齢規制が正式に認められましたけど、決定寸前になって「日本犬6種は例外とする」という一文が添えられました。
「8週齢規制」というのは「生後8週齢に満たない動物を販売してはいけない」という規則です。
犬や猫は、最低でも生まれて8週間は母親や兄弟たちと過ごす必要があります。
その間に免疫ができて精神的にも落ち着き、心身の安定した動物に育つからです。
生後8週間が、動物の一生、ひいてはその飼い主の生活にも大きな影響を与える。
だから、とても大切な法案で、成立させるべく私たちは長年活動し、審議されてきました。
そして、ようやく決まろうとしたそのときになって「日本犬6種は例外とする」って。
本当に驚きました。
愛護活動をするようになって、このような政治の不思議さを目の当たりにするようになりました。
政治には特別な人脈とか、普通の人にはわからない筋道とか近道とか、ミラクルがあるんですよね。

◆日本人はかわいい子犬や子猫が好き
町田
ミラクルのツボね。
そもそも日本では「ペットを飼いたい」と思うと、だいたいペットショップに行きますね。
「愛護団体や愛護センターの譲渡会に行く」という選択肢もあるのに。
しかも子犬子猫を欲しがるし。

友森
海外の人にその話をすると「信じられない!」と言われます。
「パピーは手がかかって大変だ」という常識をちゃんと知っているので。
日本では「かわいい!」だけで犬や猫を迎えますから、ペットショップにすれば犬や猫は小さければ小さいほど価値がある。
ペットショップをお客のフリをして回ってみると、「小さくても大丈夫ですよ」「仕事されているならフードと水を置いておけばいいですよ」って、店員さんの売り方も本当にひどい。
8週齢規制の法改正に20年かかった理由がそこにあるんですよ。

町田
みんな「小さければコントロールできる」と考えるようですね。
懐きやすいとかしつけしやすいとか、安易に思うんですね。

友森
でも、その分、ちゃんとしつけをしないと良くないこともすぐ覚えます。

町田
噛み犬、吠え犬になるゆえん。

友森
それで手に負えなくなってトレーナーさんのところに預けっぱなしにしてしまったり。
そして結果的に飼育放棄するんです。

町田
そんなことが実例として多いんですね。

友森
今回の法改正では、虐待に対しての罰金額が200万円から500万円に上がりました。
でも、日本は虐待の基準が曖昧だから、大量に殺傷したとか、極端でないと検挙されません。
本来なら劣悪な環境での多頭飼い飼育だって虐待、無知によるネグレクトです。
海外では「水のみボウルの中に何センチ以上水が入ってないといけない」とか「10時間以上留守番させるのは虐待とみなす」とか、基準がしっかり数値化されています。
この法律改正の真価を見きわめるために、今後500万円の罰金を支払う人が出てくるのかをしっかり注視するつもりです。

◆動物はメルヘンではなく現実
町田
僕が友森さんを応援しているのは、この人の活動はかた苦しい大義じゃなく、ただ動物が好きで、環境を改善したい、不幸な動物を減らしたいから走り回っている。
ボランティアに任せっきりにするんじゃなくて、電話相談を受けたり多頭飼い崩壊の老人の家を訪ねたり。
だから、できることは協力しようと思っていて、友森さんに何か言われたら、なるべく「はい!」と答えるようにしています(笑)。

友森
動物病院で看護師として働いた後、独立してペットサロンを開いたんですけど、開店準備金として借りたお金を数年後に完済して30歳のときに「何か好きなことをやろう」と思って、はじめたのが動物愛護活動です。
活動をはじめた頃に、愛護センターの係の人に「むやみに動物を引き取るな。相談の電話がかかってきたら、説得するから私に回して!」と生意気なことを言ってしまって(笑)。
だから、今も「センターから紹介されました。動物を放棄したいんですが……」という電話がしょっちゅう。
最近は「高齢の親が入院したけど、 自分はペット不可の部屋に住んでいるから親が残したペットを引き取れない」なんていう話もありました。

町田
高齢化と住宅事情が絡まってるんですね。

友森
先日の相談は「ビーグル犬を飼っていて、昼間吠えて苦情が来るから安楽死させたい」って。
聞くと、以前は自営業で家にいたけど、会社勤めをするようになり、留守番をしている犬が吠え続けていると。

町田
飼い主を探しているんですかね。

友森
詳しく聞いてみると、飼い主が家にいるときはよくおやつをやっていたらしいんです。
じゃあ、自動給餌器を買って3時間おきにおやつが出てくるようにしてみたら?とアドバイスしたら、吠えなくなったって。

町田
安楽死とか、極端なことを言い出す前に、打開できるよう現状を踏まえて考えてほしいですね。

友森
「機械でおやつをやるなんて、と思った」とか言うんだけど、死なせるよりはずっとましですよね。

町田
そういうの、よくありますね。
「機械はよくない」「薬は飲ませたくない」とか。
男性によくいるのが「去勢させたくない」。
自分と犬や猫の区別が付いてないんでしょうか。
それって自分のエゴの延長です。

友森
本当にそうですね。
目の前に苦しがっている猫がいるのに「薬は副作用が心配」なんて言う飼い主もいます。
「副作用以前に薬を飲ませなかったら死んじゃいますよ」と伝えても「でも……」って。
理想論もいいけど、現実との距離があまりにも離れていて、結論が極端な人が多い。
日本には、動物を「かわいいから飼っちゃおう」って人がまだまだいっぱいいます。
「吠えて手に負えなくなるかも」とか「自分が病気をして飼いきれなくなるかも」なんて考えもしない。
想像力の欠如、無知と危機感のなさが無責任な飼育放棄につながるんです。

町田
まずは「犬や猫ってこんな生き物ですよ、こんな性質の動物ですよ」ってことをたくさんの人にわかってもらいたいですね。
特に犬には、犬種がありますから。犬種によって習性も違います。
そこを理解しないまま動物を迎えるのは危険。
「かわいいから」とか「いると生活が楽しくなる」とか、そんなふわふわした気持ちで「犬が飼いたい」「猫と暮らしたい」になりがちですが、現実には、動物は人間よりも早く年をとって、病気になってお金がかかったり、悲惨な姿を見なくてはならなかったり、辛いこともたくさんあります。
犬が登場する物語って、昔から、だいたい犬のかわいさや賢さをクローズアップして描かれていますけど「現実はそれだけではないですよ、メルヘンだけじゃなくリアルもありますよ」ということです。
動物をメルヘンと思い込んでいる人が多いですね。

友森
私、うちの保護動物を預かってくれている人たちに「もし災害が起こったら、一番は自分の命を守ること。そして余裕があったら自分のペット。保護動物を助けるのはその後でいい」って言うんですけど、「えっ、信じられない」みたいな反応をされます。
だって、みんなで助かろうとして共倒れになるより、まずは自分が助からなければ、他の動物を助けられる可能性もなくなるわけですからね。
もちろんみんなで助かるのが一番いいけど、そうできない状況も起こり得ますから。

町田
生き物は現実ですからね、災害じゃなくても。
問題の根本を見ずに、言葉だけがひとり歩きするような感じが社会全体にありますね。
「殺処分ゼロ」も、スローガンのようになっているけど、その実質は? というような。
僕は、犬や猫の方が人間より偉いと思っているようなところがあって、それを踏まえて言いますが、人間って、すぐ「なんで?」って聞きますけど、動物には「なんで?」がなく、常に「結果」しかない。
犬にはちょっとあって悲しそうな顔をしますけど。
友森さんの感覚は、それに近いような気がするんですよね。
大義があるんじゃなくて、判断が動物的(笑)。

◆犬や猫は人間の鏡のようなもの
友森
動物を飼うからには「死を見届ける」という義務が生じますが、そこを認識していない人も多いです。
動物を飼うことは、その子の命を預かるということなのに。
それをやりきって「犬や猫を見送ってつらい」ということもありますけど。
町田さんはこれまでに何頭も犬や猫を見送ってますよね。

町田
そうですね。
最近もパタパタッと亡くなってしまいました。
「あのときこうしてやればよかったな」「あんなことしちゃってかわいそうなことをしたな」、逆に「あのときは、自分でもよくやったな」とか、いろいろ思います。
ペットロスを一気に解決する策はありません。
動物を飼うって、自分が「かわいがりたい」というエゴを満たすために飼っている。
しかも彼らは飼い主を選べない。
だからせめて、動物たちにとって少しでもいい環境を整えるとか、苦痛を減らすとか、日々そういうことを続けていくしかないんです。
そしてその積み重ねが、ペットロスに関してもちょっと救われる。
「やれることはやったな」と思えたときは、少しは気が楽になれるし、「不注意だったな」っていうときは、落ち込んだりもします。
ペットが死んだときの衝撃を減らすのは「彼らに対して日頃から後悔のないようにちゃんとやってる」ことでしかない。
自分の人生そのもののようですけどね。

友森
私もたくさんの動物たちの死に立ち会ってきていますけど、慣れるということはなくて、むしろ年々重くなっています。
動物たちの方が「死」を自然に受け入れますね。
「生まれること」と「死ぬこと」を同等に捉えている感じです。

町田
犬や猫って、人間の鏡のようなものだと思うんですよね。
自分がちゃんと生きていたら、犬や猫も健やかでいてくれるし、飼い主の生活が荒むと犬猫もそうなります。
人間が忙しくしていると犬猫が病気になったり、毛づやが悪くなって、ぼさぼさになってきたり。
猫は顕著です。
家の中にいて、人に近いところで暮らしている動物には、特に感じますね。
こっちが勝手に思っているだけかもしれないけれど、動物たちを通して飼い主の心があらわになるというかね。

友森
話は尽きないですね。

※毎年9月に友森さんが開催してきた動物愛護イベント「いぬねこなかまフェス」は、2020年は9月20日からの動物愛護週間前後にオンラインで開催予定。
名物となっていた町田さんの館内放送やフェス最後の「名前の歌」もオンラインで!?

友森玲子(とももりりょうこ)
/1977年東京都生まれ。動物病院の看護師を経て、2007年動物愛護団体ランコントレ・ミグノンを作る。14年からはペットサロンと動物病院を併設したミグノンプランを主宰。災害時には現地に赴き被災動物の保護も。 www.mignonplan.com

町田康(まちだこう)
/1962年大阪府生まれ。97年処女小説『くっすん大黒』で野間文芸新人賞、2000年に「きれぎれ」で芥川賞受賞。猫との日々を綴ったエッセイも多数。近著に『しらふで生きる 大酒飲みの決断』(幻冬舎)、『スピンクの笑顔』 (講談社文庫)。16年からはバンド「汝、我が民に非ズ」を本格的に始動。 www.machidakou.com text:Yukiko Ishiguro, photographs:Keiji Ishikawa

友森 玲子,町田 康/週刊文春WOMAN vol.3

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