<ペット>改正法で自治体の引き取り拒否可能に 命守れるか
2013年9月23日(月) 毎日新聞
福岡市の東部動物愛護管理センターに収容されている犬=福岡市東区蒲田で、野田武撮影
ペットが死ぬまで飼い続ける責任が飼い主にあることを明記した改正動物愛護管理法が今月1日施行された。
これまで各自治体は、飼い主が持ち込んできた犬や猫を一定期間収容し、新たな飼い主が見つからなければ殺処分していたが、引き取りを拒否できるようになった。
20~26日は動物愛護週間。ペットを巡る現状と課題を探った。
【末永麻裕】
「寂しいからと犬や猫を飼い始めた高齢者が先に亡くなったり入院したりして持ち込まれるケースが増えている」。
福岡市東部動物愛護管理センターの安河内清文所長(55)は言う。
建物内のオリには二十数頭の犬や猫を収容。
引き取り手が見つからなければ、いずれ殺処分される。
法改正では、飼い続けるのが困難と判断される「相当の理由」がない限り、自治体は引き取りを拒否でき、飼えなくなった場合は飼い主に新たな飼い主を探す努力を求めた。
行政の安易な引き取りで動物の命が絶たれるのを防ぐのが狙い。
センターでは、飼い主の高齢化の他、ペットの病気▽しつけができない▽引っ越し--などの理由で持ち込まれることが多かったという。
動物愛護団体のNPO法人「地球生物会議ALIVE」(東京)によると、福岡県の犬・猫の殺処分数は2005~09年度まで毎年1万匹を超え全国ワースト1位だった。
県は09年10月に引き取り有料化を打ち出し10年度はワースト5位に。
それでも11年度は8161匹で広島県、大阪府に続くワースト3位だった。
ただ、改正法施行で殺処分数は全国的に相当減る見込みだ。
また、ペットショップなど販売業者への規制も強化。
対面販売を義務付けたのに加え、生後56日(当面3年間は45日)未満の販売を禁止した。
生後早い段階で親やきょうだいと引き離すとほえ癖やかみ癖がつき、飼うのが難しくなるためだ。
ALIVEの小澤利子さん(23)は「しつけられない、懐(なつ)かないという理由で手放す飼い主は減るのでは」と期待する。
懸念されるのは、引き取りを断られた飼い主が遺棄するケースが増えることだ。
とりわけ猫は、狂犬病予防法で登録が義務付けられている犬に比べて飼い主の特定が難しく、小澤さんは「(個体識別用データの入った)マイクロチップ装着の義務化を進めていく必要がある」と指摘する。
熊本市は02年から飼い主の高齢化や死亡などのやむを得ない事情を除いて極力引き取らず、市役所のホームページなどで新たな飼い主を探すよう指導。
しつけのインストラクターを紹介するなどの活動も続け、同年度1003匹だった殺処分数は11年度には36匹に激減した。
遺棄数も増えておらず、市動物愛護センターの後藤隆一郎さん(35)は「最終的には飼い主への啓発活動が重要」と話す。