春・夏・秋・冬、四季の多彩な移ろいも、日常という直線的な時間に追われていると、
その素晴らしさを見失いがちだ。
沈黙のうちに過ぎてゆく四季の変化は、日常のなかの非日常ともいえて、
平板で閉鎖的な都会にあっては、そういった非日常が感じられることは少ない。
2月に北八ヶ岳で雪の森を歩いてみようと思っていたのが、
なにやかや日常の雑事や天気の具合に押しつぶされ、3月を迎えてしまった。
山がそろそろ春の準備に入る3月は、雪も湿り気を帯びてくる。
サラサラのパウダースノーではなくなってくるが、雪の山と森を歩かずに春を
迎えてしまっては悔いになるので、どこかいいところはないかと探してみた。
そこへ、ここはどうでしょうと出てきたのが高峰高原だった。
うん、決定!
さっそくバスやらホテルだの予約を入れ、しょぼふる雨の中まずは小諸へ向かった。
雨はしとしと一日中降りつづき、碓井バイパスは濃霧に包まれ、
小諸に入ってからも雪など一かけらもなく、グレーの重たい空に沈むようにして町があった。
翌朝、部屋の窓を開けてみると、昨日と景色は一変して真っ白な雪景色になっている!
やったねルンルン♪
お迎えのクルマに乗って標高2000mの雪の森へ。
民家が途切れて山に入ると、真っ白に雪化粧したカラマツ林となり、
クルマは右に左にカーヴを切りながら、雪道をゆっくり高度を上げていく。それにつれて、
気温が徐々に低くなっていくのを感じる、、、うふふ。。
身支度を整え、軽くストレッチしたあと、スノーシューを
履いて10時高峰高原ホテルを出発。ホテル裏から登山道がつづいている。
カラマツの幹。氷のツララがついているのは、昨日の雨の名残り。
幹にはりついている薄緑色の地衣類が雪に映えてきれい。
もっと下の位置の林道周辺にあるカラマツは植林されたものでスラッとして真っすぐだけど、
天然のカラマツは写真のようにグニャっと曲がっていて幹も太く野性的。
先日の温かさで葉を広げてしまったシャクナゲ。
春になったと勘違いしちゃったのか、これでは寒さにやられてしまうかも、、。
みんなが覗きこんでいるのは、野ウサギが食べた芽のあと。
野生動物たちは雪の森でなにを食べて冬をしのいでいるかというと、
こうした木の芽をかじっているんですね~
ナイフでスッパリ切り落としたような食べあとから、鋭い歯だと想像できる。
峠より望む高峰山(2091m)。ここから山頂まで往復して90分くらいだそう。
斜面を利用して、シリッセードで滑る雪遊びがおもしろい
スノーシューを履けば雪の森を思いのまま歩ける。
雪のないときは行かれない場所も、急斜面もガシッと止まる歯が強力なブレーキになってくれる。
ま、転んだところで痛くもないし、転がったりするのが楽しいのが雪の森。。
アツアツのスープがうれしい雪上ランチ
そして、雪の森ライブ
粉雪舞う白い森に、美しい歌声とオカリナが流れたミニライブ。
雪の森をさらに楽しくしてくれた、女性ガイドさんならではのイキな計らいに感謝感激!!
やむことなく降りつづく雪、けれど風はなく、しっとり水分を含んだ春を呼ぶ雪は、
梢に山肌に静かに舞い降りて、、、、と、眺めていた雪景色の中へ
飛んできた野鳥がカラマツの枝にとまった。
上の方にいるのがヒガラ、その下にはシジュウカラ。
どちらも頭が黒く、よく似ているヒガラ(左)とシジュウカラ(右)、
でもよ~く見ると胸のネクタイが違うんですね~
ヒガラは蝶ネクタイ、シジュウカラはロングネクタイ、ここがポイント
雪降る森で、思いがけなく出会った野鳥、
けれど雪の森は、さらに思いがけないサプライズを用意してくれていた。。
森へお食事にやってきたカモシカさん
私たちの方をじっと見て警戒していたが、ほどよい距離をおいたことで、
やつらは危害を加えないと彼女?は判断したみたいで、
それからは場所を移動しながら、食事に集中。ナナカマドの冬芽を好んで食べていた。
ニホンカモシカはウシ科に属することもあって、どっしりした落ち着いた動き。
視覚・聴覚・嗅覚ともによく発達していて、単独行動が多い。
冬芽をすこしかじっては次の枝へと移動するカモシカ、その様子を私たちは雪の中に
うずくまって観察した。どのくらいの時間だったろう。
雪は音もなく森に舞い降り、息をひそめてカモシカを見つめる私たちに静寂をもたらした。
体はすっかり冷えきってしまったが、そんなことも気にならなかった。
こうして、森の先住民たる動物とおなじ時間を共有できたことがうれしかった。
森の素敵な出会い、このよき日をグレートスピリットに感謝!!!
雪の森を楽しんだ一日、フィナーレはYukkoさんのピアノ弾き語りでしめくくった。
スノーシューもご一緒して、雪の森でも美しい歌声を披露してくれたYukkoさん。
熱いお茶とスィーツをいただきながらのライブ。
窓の外の雪景色としっくりなじむ曲が、心地よい気分にさせてくれる。
どの歌も、聴くそばから自然の情景や人の優しい気持ちが思い浮かんでくる、そんな歌だ。
まさにいまのシチュエーションにぴったりで、
また、そういった爽やかな気分になりたいときに聴くのもいいと思った。
未明から降りだした雪は、やむことなく山と森にふんわりと積もり、
まっさらな雪面に足あとをつける歓びをプレゼントしてくれた。
降り積もった雪のラインは、どこもやわらかな曲線を描き、すべてを白くまあるく包みこんでしまう。
冷たさと同時に優しい表情を見せる雪、雪の森は、沈黙することの意味深さをおしえてくれる。
雪が解け、輝く緑に花が咲き揃う夏の高峰山も、ぜひ歩いてみたいと思った。
自然に寄りそい、自然とのふれあいに歓びを見出す日々は、常に新鮮で飽きることがない。