年の瀬も押し迫った26日、2012年の最後の山歩きは、
昨年暮れに登った南房総・伊予ヶ岳のちょっと先にある御殿山へ行くことにした。
年末渋滞でひどく混雑した首都高から湾岸でアクアラインへ。
海ほたるから北風の吹きすさぶ海を眺めれば、
波頭のむこうにうっすら富士山が見えた。
館山道を鋸南富山で降り、道の駅・富楽里へ寄って正月用の花を買う。
まだ10時前という時間にもかかわらず花売り場は混雑、すぐにも売り切れそうな勢いだ。
百合、水仙、ポピー、ストックがなくてこれから入荷するらしい。
花屋で買うより安くて新鮮で花の持ちがいい。
県道89号線を東に進んでいくと、山頂に突き出た岩がかっこいい伊予ヶ岳が見えてきた。
伊予ヶ岳登山口を通過して10分もしないうち、御殿山登山口のある高照禅時に到着。
トイレ完備の広い駐車場がある
駐車場から道路を横切り、小さな橋を渡って畑の広がる道をゆるゆると登っていくと、
片側が山の斜面になった舗装路がつづく。林の下には北風に震えるタチツボスミレがひとつ、
そしてこれはノササゲだろうか、なんともきれいな紫色に染まっている。自然がつくる色の
美しさといったらない。 フユイチゴの赤い実と蜜柑色のフウトウカズラの実もちらほら。
やがて道は舗装路から山道となり、
御殿山へと歩きやすい散策路がつづく。
やがて大黒様と書かれた道標の先が見晴らしのいい峰林山で、山頂に大黒様が祀ってある。
この大黒様は江戸中期に作られたらしく、素材の石も地元にはない石でできている。
案内板には、もともとは麓の集落7軒の共有物だった大黒様を、麓のみんなが福を授かるように山のてっぺんから見守ってもらおうと運び上げたとある。
ここからの眺めはよく、房総の里山風景が眼下に広がり、右下にはクルマを停めた寺の駐車場が小さく見えて、左端に伊予ヶ岳を望む。
大黒様から10分ほどで、大日山への巻き道がある分岐となり、御殿山へはロープのある急坂を登る。
階段状に丸太が打ち付けられているのはいいけど、段差が大きくて登りづらい。
急坂を登りきると、スダジイとマテバシイの大木が何本もある標高364mの山頂に着いた。
こんもりドーム状に繁った大木の山頂は、遠くから見るとおっぱいの形に見えるというのに納得。
駐車場から山頂までほぼ1時間、眺めのいい山頂からは双耳峰の富山、伊予ヶ岳
画像でははっきりしないけど、うっすら富士山も見えた。
東屋のベンチでタイム。 天気予報ではマークだったのに、雲が多く、北風が冷たい。
なんだか雪でも降ってきそうな空になってきた。休んでいると寒いので、大日山へと出発。
山頂から下っていく道は椿のトンネルなのだが、まだ花は固いつぼみ。
あ、咲いてる!と思ったら、 濃いピンクのサザンカだった。
どこまで下ってしまうのか、と思うほどの下り坂、またここを登り返してくるのか、どうしよう・・・
どんより曇り空と吹きつける冷たい風に先へ進む意欲も減退、
そうなるとひとり歩きの気ままさで、まわれ右して、今日は大日山とりやめ~、、となる。
とっとこ山道を下り、畑の舗装路に出たところを遠回りして駐車場にもどる。
なだらかな山の斜面にはスイセンが見られ、一株だけ花をつけていた。
南房総のそこかしこで、水仙の花と、さわやかな香りが漂う日も近い。
あっけなく御殿山を終えて、のどかな県道をR127に向かって走っていると、
「富山方面」と書かれた立札が道路わきにあったので、ついでにここも登ってみるかと左折。
坂を上っていくと、斜面の両側にみかん畑が広がり、富山遊歩道入り口の先に駐車場があった。
小さな家はみかんの直売所で、年内終了の貼り紙があり、無人販売のみかん(一袋¥500、30個くらい入ってる)が置かれている。
遊歩道(といってもクルマの通る林道)を歩いていくと、みかんの木の間から伊予ヶ岳がのぞき、
やがて分岐を右に照葉樹林のなかをぐるぐると登っていく。勾配がきつくなる手前のところに
木の枝の杖が何本も置いてあって、お使いくださいとある。杖のサービスは気が利いているけど、はっきりいって楽しくない道で、何度か引き返そうかと思ったほど。
やっと林道が終わり土の地面になったところが、八犬士終焉の地で東屋があり、右が北峰、左が南峰とある。三角点のある北峰へと階段道を行く。
富山北峰の広場にある展望台
山頂(標高350m)は広場反対側の狭い場所にあった。
特徴ある双耳峰の房総の名山とのことで、遠くから眺める山としてはいいけど、
登ってみると御殿山の方が山らしくていいと思った。南峰はパスして下山。
小走りに下って30分もかからずに駐車場に着いた。
みかん畑とは反対側の、正しいコースから登るべきだったかもしれない。
御殿山と富山、ほぼ同じ高さの低山で、どっちも2時間あれば登れて眺めよし。
房総の山は、たいていが短時間で登れて眺望がよく、冬でも海沿いでは花が咲き
晴れていればポカポカ暖かいのがいい。
そんなわけで、冬には何度も来ている南房総だけど、今日はとりわけ寒い日だった。
首都高湾岸線・つばさ橋にさしかかると、西の空が焼けて綺麗な夕映え、
ベイブリッジが見えてくると、微かに空気は温もりを増し、
そしていつも何故かほっとする。
山道を行くときは、木の根につまずかないように、滑らないようにと絶えず注意して歩き、普段とは違う緊張感や集中力が要る。そうして山をのぼったりくだったりしながら、ふと出会う景色や花にほっとさせられるとき、少なからず幸福感を味わえる。そんなことの繰り返しがたのしいと思える山歩き、合間々の「ほっ」が、けっこう大事な要素かもしれない。見慣れた景色から、新しく出会う景色から、ほんのすこしでもこころの休息を得られて「ほっ」とする、そんな出会いは多いほうがいい。また来年も、山歩きを通して、こころ和むシーンにたくさん出会えるといいな。。