いつもの散歩コース、自宅近くの森を歩いていると、
風がほわんといい匂いを漂わせながら鼻先をかすめ、ヤマユリの開花を告げてゆく。
辺りを見回しても、花の姿はなく、それからしばらく歩いたところに咲いていた。
強い芳香を放ち
大輪の花を咲かせるヤマユリは日本特産種で、、ユリの女王と呼ばれ、古くは江戸時代に
ヨーロッパへ紹介され、カサブランカはじめオリエンタルハイブリッドのユリが作出された。
ヤマユリの代表的な自生地である神奈川県は、丹沢で採取したヤマユリを横浜港から
輸出していた。で、県の花はもちろんヤマユリ。
先日、四季の森公園でヤマユリの観察会が行われたので参加してみた。
普段はただぼーっと眺めていたヤマユリ、ここでは林の縁に咲く花がたくさん見られるが
種から花が咲くまで5年もかかり、こぼれたタネが自然のまま芽を出し、大輪の花となる
までは容易じゃないというのがわかる。 他の花もそうだけど、、。
むせかえるほどの強烈な香りは
夜になるとさらに強くなるそうで、道路など一方が明るい林の縁を好んで咲くこと
に合わせ、蛾や蝶など花粉を運んでもらうためのアピール。
また、T字型の雄しべは花粉の入った葯が自在に動く仕組みになっていて、
どんな角度でも蝶の体にスリスリできるようになっている。さらに花粉には粘り気が
あり、付着しやすくなっている。それで、花粉が衣服につくと取れにくい。
宅地開発、乱獲、獣害によってヤマユリも年々減少傾向にあるという。神奈川県でも植栽に
よる保全が行われているが、ヤマユリは遺伝子変異の大きい植物であることから、自生地特有
の遺伝子系統を持つヤマユリでないと、本来自生地に存在していた遺伝子系統を持つ
ヤマユリが絶滅し、ヤマユリの遺伝的多様性が失われる恐れがあるそうだ。そこで県内各
自生地のヤマユリをサンプリングしてDNA分析が行われている。
ところで、植物の分類は「エングラー」や「クロンキスト」によるものが一般的だったのが、
これからはDNAやRNAの分析結果によるAPG分類が主流となっていくようだ。
ユリ科はイイカゲンなことに、
寄せ集めの科としていろんな系統の植物がぶち込まれていたそうで、それがAPG分類では
コテンパンに解体され、例えばギボウシはユリ科からキジカクシ科へ、チゴユリは
イヌサフラン科へという具合に、これまでとはまったく違うものに、、。
|゜Д゜)))えぇ~ チゴユリがユリ科じゃないなんてねぇ~(@_@。
ヤマユリの変種に、伊豆諸島のみに自生するサクユリがあり、ヤマユリとの違いは花被の
斑点が黄色で目立たない。 また、ベニスジヤマユリという花被に見られるスジが紅色の
変種もあり、10年に一度くらいのわりで見つかる「幻のヤマユリ」がある。この辺では
大船植物園でしか見られないとのこと。まだ咲いているかなぁ??
山百合がユリの女王なら、山椒薔薇は野バラの女王といえて、
富士箱根周辺にのみ自生する日本固有種で、ハコネバラとも呼ばれる。
美人薄命、サンショウバラも哀れなるかな、蕾のうちに虫に食べられ、咲いても麗しき姿を
見られるのはわずか一日、出会うタイミングに左右される。
花期はふつう6月だけど、画像は三ツ峠7月初旬のもの。自生地によって差があるのかも。
このようにたくさんの花をつけるので
ジャストタイミングで見られたときはラッキー。(6月中旬・西湖近くの森で)
ルビーのような真紅の蕾が花開くと
淡いピンクの花びら(直径5~6cm)を
ひろげ、それはそれは美しい。
わっせわっせと登った山の頂で、思いがけなく咲いていた花と出会い歓びも一入( ^∀^)
シンプルな美しさがワイルドな魅力を放つ山育ちのサンショウバラ、
また来年お会いしましょう。。
ヤマユリもサンショウバラも、初夏の山野でよく目立つ。小さな花が多数を占める山野に
おいては貴重な存在ともいえるんじゃないか。自生地も限られるだけに、大事に見守って
いきたい花