紅葉の時期に登りたい山があって、夏の唐松岳から再び小谷村へ向かう。
10月15・16日と、秋晴れが期待できそうなので、
着いたその日は栂池自然園の紅葉を楽しんで一泊することにした。
早朝の安積野インター付近は霧で、しばらく真っ白な景色の中を走る。
その霧も朝陽とともに消え、ゴンドラ乗り場に着くころには秋晴れ
ゴンドラの始発は8時ちょうど、30分ほど待って乗り込む。
乗り場付近ではまだ青々していた木々も、高度が上がるごとに黄色く色づいていく。
山頂駅に降り立つと、赤や黄色に色づいた木々が目に飛び込んできて、その鮮やかな
色彩たるや、この先どんな秋景色が見られるのかと思うと期待が高まる。ワクワク
幹も色づく葉っぱで秋の装い。 山頂駅前でわずかに咲いてたノコンギク。
ビジターセンターを通り抜け
赤い屋根の資料館前に立つと、水芭蕉湿原から一気に秋景色が広がる。
雲ひとつない空の下、山肌は黄葉したダケカンバが明るさを放ち、真っ赤なカエデがアクセントをつける。
朝陽をうけてゴールデンイエローに輝くダケカンバの大木。(この上の画像で真ん中に位置している木)
浮島湿原からは白馬三山がすっきりと見えているものの、
時刻は9時を過ぎて雲が出てきている。 さぁさぁ、展望湿原へ急がなくっちゃ
わぉ、迫力の白馬岳!
木道を急ぎ足で進みながらも、素晴らしい景色を前に何度も足をとめて見入ってしまう。
ハァハァ(・。・;
展望室減まで、けっこうアップダウンがあって大汗カキコ
浮島湿原を眼下に望む
チングルマは穂になって、、
な~んとか、雲に覆われるまえに展望湿原テラスに到着。想い出深い大雪渓も見える!
最前列のベンチにどっかりと腰を下ろし、心ゆくまで眺めを満喫。
そして30分ほど経つと、モクモク雲が
湧いてきて、やってくる人も多くなってきた。
立ちならぶ黄葉のダケカンバ、なんて美しい! 今年のダケカンバはとくに綺麗だそうだ。
展望湿原をあとに、こんどはゆっくり景色を眺めながらヤセ尾根を降る。
急下りの階段道だが
そこそこ展望がきき、道の両側はサラサドウダンなどの紅葉が綺麗で楽しめる。
すれ違う人とも、どちらからでもなく「きれいですね~」と、声をかけあう
足元に目をやれば、風になびく草が秋の陽にきらきら輝き、ひょいと顔を上げた先には
何の実かしら?赤と黒のおしゃれな実が秋を感じさせてくれる。
木々のあいだから覗きこむ景色もまた素晴らしく、多彩な色使いで秋を表現する
自然は、偉大なアーティストだ!
お花はこの時期すでに終わっているものの、夏の頃かわいい花をつけていた
ゴゼンタチバナ、マイヅルソウが真っ赤な実になって秋景色に参加。
葉が白く変わって
赤い実をぶらさげているのはオオバタケシマラン。
2008年8月、ワタスゲが風にゆれていた。
いまは もう秋・・・
おなじ場所も、夏と秋ではこんなに雰囲気が違うんだなぁ~って、、
どっちの季節もそれぞれによくて、、、そう、自然が描く景色には二つとおなじものがない。
すこしガスがかかりはじめた山肌、
ズームアップして見る景色はメルヘン模様。オオシラビソの濃い緑、チシマザサの
明るいグリーンにダケカンバの黄、カエデやナナカマドの赤が散らばる風景は
なんだか絵本を見ているみたい。けど、リアルな美しさはそれ以上だ。
ゆっくり時間をかけて自然園を一周して戻ると、赤い屋根の上に広がる山肌は陰り
ダケカンバの白い木肌を美しく浮びあがらせていた。
秋色に染まる栂池自然園、長い冬に向かってクローズするまえの、華やかな彩に満ちた景色は
ほんとうに美しく、胸に迫るものがあった。
帰りのゴンドラに乗って
麓へ。午後の陽射しがやさしく照らす秋色の山肌。
お天気に恵まれたことの感謝でいっぱいの一日。
この日は自然園からも近い
岩菅スキー場前にある小さなホテルに宿をとった。 出発間際になって予約をした
ので宿の選択肢も少なく、バス・トイレ付で洋室だと、ここくらいしかなかった。
スキー客がメインの宿のようで、この日の宿泊客は4組。
建物や設備は古いものの、室内はよく掃除が行き届いている。
靴は脱いであがる式だがスリッパはなく、すべてのフロアがカーペット敷き。
和洋折衷スタイルというところか。
夕食の7時まで、プレイルーム?で「スターウォーズ」のビデオを観て過ごす。
そのうち、1階から吹き抜けになったプレイルームに夕餉のいい匂いが上がってきた。
夕食はいちおうフレンチのコースだった。
どこに泊まっても、食事がおいしかったというのがあまりなくて、まあ明日の活力源として
流し込むしかないといった料理の方が多かった。
「おいしい」、「まずい」はその個人によって左右されるから、何とも計りようがない。
だけど、「バベットの晩餐会」という古い映画からもわかるように、
アートといえるような料理によって、ふつふつともたらされる幸福感もある。
前菜からデザートまで、運ばれてくる料理の一皿、一皿が
意外なほどに美味しく、味はもちろん、素材、盛り付けにいたるまで
作り手の情熱が伝わってくる料理に自分ながら驚いた。
訊いてみると、野菜はすべて自家菜園で採れたものを使い、パンも手作りだった。
デザートに使われた栗は、子どもが拾い集めてきたものだという。
栗は手間がかかるから、もう拾ってこなくていいわよ、
子どもにはそう言っているんですけどね、、、といって苦笑するオーナー。
たしかに、なにもかもご夫婦のみでとなると大変な忙しさだ。
思いがけなくも、感動的ですらあった夕食。
その料理を画像で紹介したいところだが、カメラをクルマに置いたままで
それがかなわない。ここへは再度訪れて食事をしてみたいと思っている。
いつかその機会があったときにレポを書きたい。
食べることにはたいして興味がなく、普段の食事もいたって質素。
あの映画の舞台、デンマークの寒村に住む人々と変わりがないといえる。
映画では、豪華なフランス料理など口にしたことがない人たちが、
バベットが精魂こめて作った料理を食べるにしたがい、
押し黙った硬い表情からやがて至福の表情へと変化していくとともに
それまでいがみあってた人たちが打ち解けていく様子が
温かみのある映像で映し出される。
こころがほっこり、なんだか自分自身で映画を再現したような、おかしな出来事だった。