和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

母牛、狼を突き殺す語。

2017-02-19 | 古典
産経抄2月12日に引用されていた
今昔物語集は、新聞社にメールで
問い合わせると、さっそく教えてくださいました。
ありがたい。
今昔物語集巻第29の第38。

前もって岩波文庫4冊本「今昔物語集」の
目次題名を探していて見つからなかったのでした。
うん。巻第29の第38は、岩波文庫では
省かれておりました。

それがわかれば、次は
講談社学術文庫の「今昔物語集」を
古本で注文。全9巻とあるので
てっきり入っていると思いきや、
ここにはなく。
あらためて、
講談社学術文庫「今昔物語集」の
本朝世俗篇下を注文。
これは武石彰夫氏の全現代語訳。
そこにありました(笑)。

ということで、 
「母牛、狼を突き殺す語(こと)」

そのはじまりは

「今は昔、奈良の西の京あたりに住む身分の低い男が、
農耕用に、家で子牛を一頭持った牝牛をかっていたが、
秋のころ、田に放っておいたところ、夕方にるといつも、
小童が行って、牛を追い入れることになっていたのを、
その日は、家の主人も小童も、すっかり忘れて追い入れなかった」


肝心の、おわりも引用。

「夜が明けてから、例の牛の飼い主が、
『昨夜は、牛を追い入れるのを忘れてしまったが、
あの牛は、おおかみにでも食い殺されたかも知れないぞ』
とさわぎ出したとき、隣家の小童が、
『昨夜、これこれのところで、おとなりの家の牛のまわりを、
おおかみがうろついていたよ』と言う。
牛の飼主は、これを聞いておどろき、
大あわてでかけつけて見ると、
牛は、大きなおおかみをがけに突きつけたまま
身動きもせずに立っている。
子牛が鳴きながらそばでふしていた。
母牛は、飼主がやってきたのを見て、
やっとおおかみを話したが、おおかみはすでに死んでいて・・
牛の飼主は、これを見て、たいへんおどろいて、
『さては、昨夜おおかみがきて食おうとしたのを、
このように突きつけたもので、もし放したら食われると思って、
一晩中放さずにいたのだ』とわかり、
牛にむかい、『なんとかしこいやつよ』とほめて、
つれて家にもどってきた。
されば、けものでも、度胸があり、かしこいやつは
このとおりである。この話は、まさしく、
その近辺のものが、つぎつぎと聞きついで、
このように語り伝えているということである。」

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