和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

新刊の楽しみ。

2010-08-30 | 前書・後書。
文春新書の「完本 紳士と淑女 1980~2009」の最後は「紳士と淑女諸君へ」という5ページほどの文でした。そこに悪性リンパ腫(血液性ガン)という診断を受け闘病生活に入るのと前後して『諸君!』の休刊が決まったこと。そこでは第二クール、第三クールの治療を受けている日々に触れたおわりで
「なお、三十年にわたって、ご愛読いただいた『紳士と淑女』の筆者は、徳岡孝夫という者であった。」と雑誌の巻頭コラムの最終号の最後をしめくくっておりました。

読者である私は薄情なもので、そのままに忘れておりました。
すると、最新刊の書評が石井英夫氏によって書かれ。
さっそく、徳岡孝夫著「お礼まいり」(清流出版社 1890円)を取り寄せました。
また、徳岡孝夫氏の文が読める。
最後の方にこうありました。

「退院後も抗ガン剤の点滴を受けに通院して三カ月、主治医は『あなたの腫瘍は一つもなくなりました。この写真を持ち帰って、ご家族に見せてください』と、二枚のエックス線写真を渡した。私のガンは完全に治っていた。」(p281)

ちなみに、あとがきには、こうはじまっておりました。

「私は、この本の校正刷りを読んでいた。・・・視力の弱い私のため、編集者は全文を思い切り大きい活字にし、読み易くしてくれている。だが何時間も読んでいると、目が霞み神経が疲れる。私は赤鉛筆を放り出し、『今日はこれまで』と呟いて一日の仕事にピリオドを打った。2010年3月11日の午後11時過ぎだったと思う。・・・」

あとがきの最後のほうには、こうもあります。

「闘うタイプの人が見れば敗北主義だろう。だが私は『運命の率直な子』でありたいと念じ、今日まで頭を下げて運命を受け入れてきた。この本に収めた諸短篇は、そういう弱々しい個性の者が、長年の間に見聞したことの報告である。」


何者にも代え難い徳岡孝夫氏の報告が読める。
そのありがたさ。
ということで、あとはゆっくりと読みはじめます。
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