和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

好き嫌い。ひいき筋。

2022-05-06 | 本棚並べ
え~と。本は黙っているので、
こちらが、ほっぽりだしても文句を言わない。
ですから、こちらの好き嫌いなわがままを通せる。

そう思ったら、思い浮かんだ本がありました。
清水幾太郎著「私の文章作法」(中公文庫)。
そのはじまりのページには、こうありました。

「良い文章を書ける見込みのある人、
 文章というものと縁のある人というのは、
 一体、どういう人なのでしょうか。それは、
 文字や言葉や文章に相当の好き嫌いのある人のことです。」(p9)

はい。こうして、はじまっておりました。
読者をウキウキさせるような始まりです。
けれど、始まりより本文がもっと面白い。
ここは、はじまりだけで話題をかえます。

好き嫌いから続いて、ひいき筋へ。
丸谷才一著「思考のレッスン」の、レッスン3「思考の準備」に
『ひいき筋』という言葉がでてきます。

「普通は書評の読みっぱなしでいいんですよ。
 『ちょっとおもしろそうだ』ぐらいでみんな読もうとしたら、
 とても身が持たないもの(笑)。

 うんと感心した書評があったら、読んでみる。そして、
 もう一つ大事なのは、その書評を書いた人の本を読んでみることです。
 この二つをやるととても具合がいい。別の言い方をすれば、
 ひいき筋の書評家を持つことですね。」(p120・単行本)


「・・ひいきの書評家をつくれと言いましたが、この場合も、
 ひいき筋の学者を持つことをお勧めします。
 
 学者をひいきするのは、タレントをひいきするより、
 はるかに長持ちする(笑)。・・・・・

 ・・・ひいきの学者を決めて、その人の本は必ず読むようにする。
 すぐに読まないままでも、一応は買っておいて、気が向いたとき
 に開けてみる。それをぜひお勧めしたい。 」(p121~122)

ところで、学者といえば最近気になるのが、尾形仂。
尾形仂著「歌仙の世界」(講談社学術文庫)のあとがきに
ちらりと、恩師の本の題名がでておりました。

「 学生時代に連句鑑賞の手ほどきを受けた先師能勢朝次博士の
  『連句芸術の性格』をはじめ・・・ 」(p272)

あとがきに、本の題名はこの一冊だけでしたので、気になる。
はい。今は居ながら古本が手に入る。

能勢朝次著「連句芸術の性格」(交蘭社・昭和18年)。
きたないながらも、初版。送料共837円。

本文のはじまりは「連句研究の現代的意義」。
はい。その3ページだけを読んで、私は満腹。
うん。全文引用したくなる誘惑にかられるのですが、
それは我慢して、断片を引用。

「・・・現代の俳人諸君には、古い時代の作品を味はふ暇を惜んで、
 ひたすらに現実の世界から句を得ようとせられる傾向が多い。
 
 しかし、物は『見る眼がなければ見えない』のだし、
 自分一人の眼で見得るものは極めて狭い。

 ・・・それも大てい発句だけである。
 だが、発句だけでは、古人の開拓した風雅の世界の
 全貌を知る事は不可能である。どうしても連句にまで
 進まなくてはと、私は考へてゐる。 」

こうして、3ページほどの短い本文の書き出しに能勢氏は
残りのページを寺田寅彦の『俳諧の本質的概論』からの
引用をしておりました。

う~ん。寺田寅彦の俳諧関連の本を、それでは

「すぐに読まないまでも、一応は買っておいて、
 気が向いたときに開けてみる。」ことにします。



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2 コメント

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こんにちは(^^♪ (のりピー)
2022-05-06 16:16:46
気のせいでしょうか・・・何だか窓が大きく開いてきたよう気がします(^_-)
返信する
気のせい。 (和田浦海岸)
2022-05-06 17:53:34
こんにちは。のりピーさん。
コメントありがとうございます。

うん。気のせい。気のせい(笑)。
はい。のりピーさんのコメントで、
たのしく本への拍車がかかります。
返信する

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