和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ウマシ国ゾ、秋津島、大和国ハ。

2023-09-25 | 詩歌
月刊「Hanada」11月号届く。
平川祐弘氏の連載『詩を読んで史を語る』から
この箇所を引用。


「湿潤地帯では生物は黴のように自然発生的に自生する。
 ・・・・
 『古事記』原文にはその生々しさが語感から伝わるので、

 『 次に国稚(わか)く浮きし脂の如くして、
   くらげなす漂へる時、葦牙(あしかび)の如く
   萌え騰(あが)る物によりて成れる神の名は、
   宇摩志阿斯訶備比古遅(うましあしかびひこぢの)神 』

  という一節に、私は一篇の詩を感じる。
  葦の芽の出るのを神格化した名前そのものの発音が面白い。
  
  その妙趣が英訳文では、意味だけが蒸留装置で汲み取られた
  かのように伝わるが、印象が希薄で味気ない。
  詩的感動も水っぽくなってしまった。

  蝉が殻から抜け出す場面に出くわしてじっと見つめた
  子供のときの記憶があるが、それと同じような驚きが、

  ウマシ・アシカビ・ヒコヂの神に出くわして感じられる。

  竹林の中である朝、筍が生えていた、驚いて見つめる、
  そんな感じが日本語で朗読すると追体験される。

  ウマシは、心、耳、目、口に感じてはなはだ好し、の語で、
  旨い、美味い、とも重なる。Pleasant以上にウマシは聴覚、
  視覚、觸覺、味覚など五官のほとんどすべてに好ましく訴える。

  『 ウマシ国ゾ、秋津島、大和国ハ 』と『万葉集』でも
  用いられるウマシでもあるからだ。

  『 ウマシ・アシカビ・ヒコヂの神 』と聞いただけでは
  詩情をまだ感じなかった読者も、

  『 ウマシ国ゾ、秋津島、大和国ハ 』と聞けば、
  この七五七の短い日本語に詩情を覚えるのではあるまいか。 」
                          ( p325~326 )

  

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