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和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

凍ってしまうのです。

2014-03-06 | 本棚並べ
谷沢永一著「モノの道理」(講談社インターナショナル)に

「解放同盟が跳梁跋扈していたころのことです。
私は直接糾弾を受け、彼らに対応しました。
ふつうのインテリだ、知識人だ、といわれる人間は
同じ言葉を繰り返すことを嫌います。
謝罪の場でも、つい教養のあるところを見せたくなって、
ある言葉を別の言葉の表現で言い換えようとします。
ところが言い換えると揚げ足を取られることになるのです。
それを知っているから私は五時間、いや六時間近く、
最初から最後まで同じ言葉で通しました。
一言半句も言い換えはしなかった。
壊れたレコードのような答弁をつづけました。
『私はそんなことは思っていません』
『いや、そんなことは考えてもおりません』
『まったくそんな考えはもっておりません』。
もうそればっかりで、延々六時間。
それが私の作戦でした。
相手は私を吊し上げにかかっているわけです。
こちらが何をどう言おうと聞く耳などもっていない。
ということは、私には相手を説得する必要がないのです。
したがってこちらも同じ言葉ばかり繰り返すことにしたのです。
・ ・・・・・・
壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返すのは
知識階層にとってはいちばん辛いことです。
それを六時間もつづけるのですから、
われながらイヤになってきました。
しかし私は頑張り通した。
『そんなことは考えてもおりません』
『まったくそんな考えはもっておりません』と、
馬鹿のひとつ覚えのように繰り返した。
そんな私を傍から見たら、なんと語彙の乏しい
国文科教授よと、哀れに思えたことでしょう。
しかし魔法のようなレトリックを弄して、
手を替え品を替え弁明につとめたら、
絶対に言葉尻を捉えられたはずです。
だからあれはアレでよかったのです。
・ ・・・・・・    
かつて
『あの戦争で、日本には侵略の意図はなかった』とか
『日韓併合は韓国側にも責任がある』などという
発言で何人かの政治家が大臣の椅子から引きずり
下ろされましたけれども、
真実を口にすると世の中は凍ってしまうのです。
それゆえに、政治家の言葉が貧しいのは
政治家の勉強不足のせいだけではなく、
世間のほうも悪いのだと心得るべきではないでしょうか。」
(p111~113)


ちなみに、この本は平成二十年に発売されておりました。
本のあとがきに

「本書の志すところは、
現代の報道媒体が定型の建前に偏向している実態を衝き、
健全な常識に基づく判断の側へ論旨を導きながら、
読者の不審をできるだけ解明しようと努める主旨である。
読者と共に出発点から検討し直そうと私は願う。
平常心を堅持する視座の試みを諒とされたい。」(p229)

うん。ありがたいなあ。
そう思いながら読み直しておりました。

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