和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

「夢ん久作」ごたる。

2020-11-17 | 本棚並べ
本は断片で読んでいるので、ときに、
『アレ、どこに書いてあったかなあ』などと、
思うと始末に困る。気になるフレーズが思い浮かべば、
それを、どこの本で読んだのかが分からなくなってる。

さてっと、こうしてブログを書きはじめていると、
細かい断片でも、書きこめるので、面白いですね。
私が以前に読んで時間を置いて思い浮かぶのは、いつも、
細かい断片のようなエピソードだったような気がします。

それなら、普段からブログに書きこんでおけばいい。
これは、きっと、あとで思い出しそうな断片だなあ。
という箇所が、何となくわかるんですね。

たとえば、こんな箇所。
「女子学生、渡辺京二に会いに行く」(文春文庫)の
最後の方にありました。

「・・僕のおふくろは現実的な人で、
『京二、どうするつもりかい』というから、
『うん、郷土雑誌を出して、いろんな郷土の企業から
広告をもらったりして、その雑誌で食おうかと思う』と言ったら、

また『「夢ん久作」ごたること言うて』って。おふくろは
推理小説家の夢野久作のことを言っているのではないんですよ。
庶民の中で、なんか夢のような、ホラのような話をする人間のことを
『夢ん久作』と言うようになったんですね。
『夢ん』というのは九州弁で、『の』を『ん』と言うんですよね。
『ごたる』というのは『ような』という意味よ。・・・・・

それでも姉が当時の金で30万出してくれたのよ。
それで『熊本風土記』という雑誌を一年間出したの、
だけど、うまくゆかずに潰れたのね。

そしたら僕の五高時代の友人が、
『渡辺君、塾やれ』って言うの。・・・・・

当時は、塾によっては、できんやつははねる塾があったんだけど、
僕の塾は、できるやつも、できんやつもとる。で、
わからんやつは徹底してわからんで、おもしろいんだ。

The leaves will turn red in autumn.
ってわかるでしょう。葉っぱは秋になりゃ赤くなるってことだね。
高校二年の生徒が、ほんとに英語がわからない。
そいつに訳せと言ったら、相手は苦しまぎれだね。
辞書を引いて、
『サルは秋には赤く曲がる』。

『なに? おまえが言うとる、さるは、
猿のオケツは真っ赤でござるの、あの猿か?』

って僕が聞くわけですよ。
リーヴスは、リーフの複数形でしょう。
それを辞書で引いたら、動詞で『去る』と出てくるでしょう。
だけど、『さるは』というんだから、動詞が主語で来るのは
おかしいでしょう。だけど、日本語には、
『会うは別れの始めなり』ってあるじゃないの。
日本語は会うって動詞が主語になるじゃない。
だから『去るは』って言ったんだ。
ターンだから『曲がる』というわけよ(笑)。

それで三年ぐらい楽しくやったんだよ。」
(p258~260)

はい。英語がわからない私は、身につまされて、
これを読んで、笑ってよいのか泣いてよいのか。

それでも、ひとつだけわかるのは、
この英語塾の先生が『楽しくやったんだよ』
という一言が何より救いとなります。ハイ。 


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