松田道雄著「育児の百科」(岩波書店)をひらく。
兄の家にあったものをもってきました。
はい。読むのははじめてです(笑)。
パラリとひらいたのは、
「1歳6カ月から2歳まで」の箇所でした。
うん。引用。
「母親は百科事典のようにこたえるのではなく、
詩人のようにこたえねばならぬ。その状況で、
子どものいってほしがっていることを、簡潔に、
正確に、いいあてることだ・・・。
人間の個性のさまざまは、すでにこの時期からはっきりしている。
音楽の好きな子はラジオやテレビから音楽がきこえてくると、
きき耳をたてる。調子をあわせて、からだをうごかすこともある。
絵をかくことの好きな子は、クレヨンと紙をあたえておくと、
ひとりで何かかいている。本の好きな子は、くいいるように絵本を
みている。運動の好きな子は、そとへでて走ったりとんだりする。
道具をいじることの好きな子は、電気器具をオモチャにしたり、
椅子のネジをまわしてとってしまう。
好きなことをするのは、たのしいのだから、
親はそれをたすけてやるべきである。
音楽の好きな子には、いっしょに歌をうたってやろう。
絵の好きな子には、なるべく大きい紙をあたえよう。
本の好きな子は、本屋へつれていって絵本をえらばせよう。
運動の好きな子には・・・・・
道具の好きな子には・・・・」(単行本p466)
うん。松田道雄は、どんな人だったのか?
谷沢永一氏は、こう対談で指摘されておりました。
「松田道雄という存在それ自体が、私の憧れの的でした。
・・・山っ気のまったくない人です。自分が考えたことを、
ひとつひとつ謙虚な報告書としてまとめて、
『今、ここまで考えました。みなさん、どうでしょう』と、
そっと世に送り出すことを続けた人ですね。
・・・自分のうちに熟していないものがあれば、それはパスする。
熟していなくても、自分として、このレベルでいっぺんものを
書きたいなと思うときに、それを率直に書くのです。・・・」
(p234)
これは、「知的生活の流儀」(PHP研究所・1998年)からの引用。
この本は、谷沢永一・山野博史と二人の対談で、
さまざまな方の本を紹介している一冊でした。
この谷沢さんに答えて、山野さんは
「私は学生時代に、京都の市電や市バスの中で、
ロシア語の医学雑誌なんかを読んでいる松田道雄を
見かけたことが何度もあるのです。
八十代の半ばぐらいの話ですが、その時点での
小児医学の学問の最前線に追いついていくために、
週に十五、六冊の専門誌を読む生活を続けているそうです。
その本代をやはり捻出しなければいけないから、
『育児の百科』を書き、岩波新書で『私は二歳』とか、
『私の読んだ本』とかを書いている。・・・・」
ここに、谷沢さんは、京都学派を持ち出しておりました。
「松田道雄が幸せだったのは、京都学派がいちはやく
彼を包含したことですね。その点、やはり京都学派はえらかった。
桑原武夫をはじめとする京都学派が一致団結して、
松田道雄を同志と考えた。そういう後援者というものが、
この人の精神の支えであり・・・・・」
はい。1908年生まれの、京都の小児科医でした。
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