和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

夏もさすがに夜半の大気

2022-08-05 | 詩歌
中村草田男著「蕪村集」(大修館書店・1980年)を
ひらいてみる。俳句が季節ごとに章立てされていて、
それではと、『夏の部』をひらいてみる。

草田男さんは、蕪村俳句を読み解きながら
『立派に一編の小品小説を書き替えられそう』と記すのでした。

それでは引用。

  鮎くれてよらで過行(すぎゆく)夜半(よは)の門

これを草田男さんは、どう訳して語っているか?

「 夜中に門を叩く者がある。
  何事かと起き出て門の戸を開けてみると、
  闇から声をかけるのは友人であった。

  ほのかに浮かんだ姿を見ると、
  尻からげのはだしという恰好であって、

 『 鮎の夜釣りでいま帰宅するところだ。
   獲物が意外に多かったから、おすそ分けしよう。

   明朝改めて届けるのでは、せっかくの味が落ちてしまって
   もったいないと、迷惑な時間とは承知しながらおどろかした次第だ。』

  と容器を要求する。手早く分け終えると、

 『 疲れているだろうから、しばらく憩って行くがいい。』
    というこちらの挨拶には耳もかさず、

 『 こんな時刻に手間どっては双方迷惑だ。 』
    と、サッサと行き過ぎてしまった。

  その後ろ姿へ追いかけて礼をいい、
  やがて門の戸を閉ざしていると、

夏もさすがに夜半の大気は、寝巻を透して冷やひやと覚えられる。
そして、手にした容器からは鮎独特の上品な強い香気がたちのぼっている。」
                    
                         ( p173 )

はい。残念ですが、獲れないし、さすがに鮎くれる友人はなし。
けれども、この時期ならでは、近所からは獲れすぎたキュウリや
ナス、ゴーヤのおすそわけがまわってきたりします。

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