和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

「これは是非とも」

2020-11-23 | 本棚並べ
はい。わたしは、マンガとテレビで育ちました。
それでもって、活字よりも、すぐに絵の方に目がゆきます。
ということで、世界文化社のグラフィック版「徒然草方丈記」(1976年)
をひらくのは、絵巻までが載っていて、たのしめるからでした。

その6~7ページに「徒然草絵巻」の絵があります。それは、
海北友雪筆「女の白い脛(はぎ)を見て通力を失った久米の仙人」。

さてっと、この絵は印象深く、何度もひらきたくなります。
それより、ここでは、ほかの話題をとりあげます(笑)。

「枕草子」の116と117には、
『絵にかきおとりするもの』
『かきまさりするもの』がある。
うん。森三千代さんの訳で引用。

「    絵を描いて劣るもの

絵に描いて、じっさいのものより劣るものは、
なでしこ、しょうぶ、桜です。

物語のなかに出てくる男や女も、
挿絵に描かれたのを見ると、
文章でほめあげているほどには美しいとも、
すぐれているとも見えないのが、ふつうです。」

「  絵に描いて引き立つもの

絵に描いて、じっさいのもの以上に引き立って見えるものは、
松の木、秋の野原、山里、山路です。 」

(p140~141・「日本古典物語全集」岩崎書店1975年)

ここを引用していたら、思い出す本がありました。

庄野潤三著「前途」(講談社・1968年)。
ここには、庄野氏の先生・伊東静雄に、
夜、酒を飲み、教えてもらった指摘があるのでした。
ちょうど今日、改めて思い出した印象深い箇所です。

「話は国文学の読みかたに移る。先生はこう云った。
和文脈の中心となるものは、先ず
源氏物語、伊勢物語、枕草子、徒然草、倭漢朗詠集の5つ、
日本の美感はこれに尽されている。
このうち源氏物語は大本であるが、全部読むのは面倒ゆえ、
好きなところを引っぱり出して読めばいい。

特に大切なのは枕草子と徒然草で、これは是非とも読む必要がある。

・・・通読しなくてよいから、気の向いた時、
すぐ出して、そこだけ読む。こんな本を(と伊東先生はそのあたり
に積んであった本の中から受験生用の薄い『奥の細道』を取り上げ)、
注釈書のようなものでも、小さいのでも、何でもいいから見つけ次第、
買って来ておく、そして、どんどん読み散らす。
知っていればいるだけ得という風な態度で読めばいいのです。

枕草子は、その書きぶりが賢そうで嫌いだったけれども、
書いてあることは非常に大切。日本の美感の源泉で、
これを知っているといないとでは大へんな違いとなる。」
(p117~118)

はい。源氏物語は、まず敬遠している私ですが、
『これは是非とも』と伊東静雄先生がいうところの、枕草子と徒然草。
こちらなら、私にも読めそうな気がしておりました。
酒に酔って、『日本の美感』がスラスラと口をついて・・。
そんな場面を思いながら、どんどん読み散らせますように。




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