和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

「安房郡の関東大震災」余話⑤

2024-07-11 | 地震
「震災復興 後藤新平の120日」(藤原書店・2011年7月30日)。
政池仁著「内村鑑三伝」(教文館・再増補改訂新版1977年)。

関東大震災の首都東京を、この2冊から引用してみます。
まず1冊目から。

「1923(大正12)年8月24日、
  時の首相加藤友三郎が亡くなり、
  外相の内田康哉(うちだこうさい)が臨時に首相を務めていた。
  28日には海軍大将の山本権兵衛に次期内閣を組織するよう
  『大命』が降下したのだが、組閣は難航し、
  新内閣はまだ発足していなかった。

  この状況(震災)のもとで、内田臨時首相、水野錬太郎内務大臣ら
  内閣の閣僚は首相官邸の植込みの中で閣議を開いた。
  臨時震災救護事務局を特設し、臨時徴発令の発布、
  戒厳令の一部地域への適用などの応急処置を取ることとなった。」(p18)

2冊目から引用。
こちらには小見出しに「朝鮮人虐殺事件」との箇所から引用。

「大震災のあった9月1日夜から、
『 朝鮮人が放火して廻っている 』、
『 朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ 』、
『 社会主義者と朝鮮人が内乱暴動を起こそうとしている 』
 などという流言がとんだ。・・・・

 ・・この流言の出所は『赤池警視総監らが流言の発頭人』
 だと三宅雪嶺が言っている。
 赤池警視総監の部下・官房主事・正力松太郎は
『 自分が部下にこの朝鮮人暴動の流言を命じ、掲示板にも公表させた 』
 と言った。

 なぜ、治安を保つべき警視庁が、このような
 治安を乱す流言を流したのかというと、
 その4年前の大正8年に朝鮮で三・一独立運動(いわゆる万歳事件)
 が起った。・・・・・

 日本政府はこの失政の責任を問うて朝鮮総督・長谷川好道をやめさせ
 斎藤実(まこと)を新総督に任命した。斎藤に随行した
 水野錬太郎・政務総官はソウルに着いた時
 駅前の南大門で朝鮮人から爆弾を投げられた。
 幸い死をまぬがれたが、その後日本に帰り内務大臣になった。
 大震災当時も彼が内務大臣であった・・・・関東各県に
『 朝鮮人や過激思想を有する者が
  妄動をふるう恐れがあるから検挙するように 』
 と命じた。
 水野内務大臣の朝鮮総督府政務総監時代にその下で働いた
 赤池濃は大震災の時、東京の警視総監であった。・・・・・

 なお、水野内務大臣はそのあくる日
 9月2日に東京府に戒厳令を発したが、
 その晩山本権兵衛新内閣ができたので
 内務大臣の席を後藤新平にゆずった。   」(p570~571)


最後には、一冊目の「震災復興 後藤新平の120日」
から1日~2日の様子を引用しておきます。

「この日、山本は海軍の社交クラブである築地の水交社に陣取って
 組閣の準備をしていた。そこへ大揺れが来てやむを得ず自宅へ帰った。
 翌日の9月2日の模様について、山本はこう回想している。

   火につつまれた地震の一夜が明けると、
   どこからともなく流言蜚語が伝わって来た。
   思う人を呼びにやっても、なかなか来ないし、
   又情報すらない。実に気が気でなかった処へ、
   来たのが後藤伯爵であった。伯とは、既に
   それとなく話もしてあったのであって、伯が来て、
   大体の様子も判った。依って自分は、これでは、
   完全の組織を望む訳には参らぬ。しかし、
   内閣は一日もむなしくすべからず、2、3の人とでも
   一緒となって働こうというと、伯は勿論やります、というた。 」
                          (p18~19)

「 こうして後藤新平は山本内閣の内務大臣に就任し、
  以後、『帝都復興』に主導的な役割を果たすことになる。
  9月2日、山本や後藤の活動により、どうにか閣僚の
  人選が進んできた。・・・・・・・

 大蔵大臣には後藤みずからが時の日銀総裁である
  井上準之助の説得に出かけた。井上はこう語っている。

    内閣の顔触れも揃わぬ所に後藤子爵が行って、
    こうなった以上は何が何でも内閣を組織しなければならぬ、
    こういうことを非常に力説されて、その足で私の所に
    2日の日に来られて、とにかく内閣を拵えなくては仕様がない、
    前内閣の人はそれだけの責任は負わないし、
    この惨状を眼の前に見て躊躇して居る場合ではない、
    山本伯にもそう話して賛成して居られるということであったのです。」
                    ( p21~22 )
    

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