VIVIEN住生活総研

住生活ジャーナリストVivienこと藤井繁子が、公私を交えて住まいや暮らしの情報をお届けします!

逗子の景観を守るために、平井市長とパネルディスカッション

2009年10月10日 | 住宅業界
「緑豊かなゆとりあるまちを守るために」と題し逗子市まちづくり課主催のシンポジウムが開催された。

これは私が市民委員をしている[まちづくり審議会]が逗子市まちづくり条例の見直しを進める中で
住宅地における敷地面積の最低限度を指定(都市計画法)しようとする検討過程の一イベントである。

ところで市役所の会場に、手話(中)に加えて見慣れぬスクリーン表示(右)があると思ったら要約筆記が行われているのだ。
   
話を追って白手袋の手が動く・・・あれっ同じ方向から2つ目の手が?! と思ったら、こんな風に4人がかりで筆記中。
  

シンポジウムの基調講演は、住宅業界でお馴染みの浅見泰司教授(東京大学空間情報科学研究センター)。「住環境評価とまちづくりルール」と題して、
 
住環境を構成する要素についてや、宅地が細分化されることで結果的に周辺宅地やまち全体の不動産価値を下げてしまう事を紹介。
 
解釈すれば、周辺住宅の資産価値を下げるという結果を招いても、自分の土地は細分化すれば高めに売れるので細分化の流れは進む。
それを阻止するには住民や市の強い意志が無ければ、どの都市も同じような街並みになってしまう。
浅見先生からも「逗子らしさ、ブランドを維持する」努力にエールが送られた。

基調講演を受けて、平井竜一逗子市長からプレゼンテーション。
逗子へ転居してきた市民は「自然環境に恵まれている」事を、その選択理由の一位と紹介。
人口の変遷を1965年~2040年予測までグラフ化し(現5.87万人)、

現在27.5%の65歳以上高齢者が、2040年には37%まで割合が増える予測を再確認。
また、赤い所が市街化したエリア(昭和40年と平成6年比較)駅周辺から小坪地区などに住宅開発が広がった様子も。

公示地価の推移では、バブル前水準にある現在(18.7万円・住宅地平均)が今後も下降し続けるかどうかは
街の市場価値・ブランド力であることを示唆した。

また敷地面積が細分化されている具体的な数字を、【上】市内既存住宅の敷地規模 【下】H18―20年の新築戸建(建築確認申請)の敷地規模
を比較して、140㎡未満が半数以上(既存約35%)という傾向を見せた。逆に既存200㎡以上(約35%)が約20%と減少している。

ちなみに、敷地面積の最低限度を指定している東京・神奈川の自治体は22市町あるが
積極的な面積指定は箱根町(一部200㎡)横浜市(一部165㎡)ほどで、県庁から言わせると逗子が指定することのハードルは低くないと。

シンポジウム後半は、パネルディスカッション。
浅見教授・平井市長に加えて市民団体[ほととぎす隊]景観部会の白鳥悦子さん(建築家)と私(住生活ジャーナリスト&まちづくり審議会委員という立場)
が加わり、コーディネーターの柳沢厚さん(まちづくり審議会会長)司会で意見交換。

白鳥さんからは市民活動で行った、まち歩きによって再確認・発見された逗子らしい景観が紹介され
今後その保存や新規の開発に対するガイドラインを提案できるような‘まち並デザイン推進委員会’の設置に向けて動いていることも紹介された。

私の方からは、‘住みたい憧れの地域’で[鎌倉・逗子・葉山]地区がダントツ1位に上がった調査結果(東急住生活研究所調べ)や
まちなみ景観評価(プレハブ建築協会)に使われている緑視率を、その率によってどう景観がどう違ってくるのかなどを紹介した。
                            (終了後、市長に別件で依頼事・・・)
       
80名以上の参加者からの質疑では、現状最低限度以下の敷地に対する不安や(既存宅地には適用しない)宅地内の樹木保存も指導すべき等ご意見も活発に出た。

既にまちづくり条例では地域毎に最低敷地面積を定めているが、対象になる土地が300㎡以上のものに限られるため
条例逃れの開発含め、日に日に逗子市内の土地は狭小細分化されているのが現状である。
この事を危惧する市民は多いものの条例だけでは細分化進行が免れない。
そこで都市計画法による指定という手段の検討に至ったのである。

今月末、敷地面積に最低限度を指定について、住民アンケート(3000戸)調査を実施する予定。
狭小住宅の開発業者や売買に関わる地元不動産業者から反対の意見もあるだろうが
大地主にとっても簡単に売却し難くなるのでは?という不安が出るかも知れないが

逗子の豊かな住生活やまちの価値を次世代に継承できるか、我々今の住民に託されている。