
久々に心に染み渡る映画を見た。その映画は,「變臉(へんめん)~この櫂に手をそえて~(1996年・中国)」。あまり有名な映画ではないようだが,1930年代の中国の陋習とそれを乗り越える普遍的な人間愛とを見事に描いた名作だと思った。未見の方には,是非,ハンカチを片手にご覧頂きたい。
主人公は,變臉(仮面の早変わりの大道芸)の名人で,四川の人々から「變臉王」と呼ばれる老人。伝統芸である變臉は,門外不出で男子の弟子にしか伝承が許されていない。變臉王は,ある日,超人的な變臉の芸に感動した四川劇の人気俳優(女形)から劇団への入団を誘われるが,これを断る。しかし,顧みれば,妻には去られ,子供は病気で亡くし,水上生活を続ける天涯孤独な自分には,芸を伝承する弟子すらもおらず,唯一の友は,「将軍」と名付けた猿のみ。そこで,一念発起,寒村から売られてきた「男の子」を買い,芸を継がせることを決めた。その子のキラリと光る目の輝き(!)に惹かれたのである。
變臉王は,その子をクーワーと名付け,玉のように可愛がる。風邪をひけば,家宝の剣を質に入れて高価な漢方薬を買ってやる(この当たりから涙,涙の連続です…)。大道芸に行くときも,寝るときもいつも一緒。しかし,そのクーワーが,様々な騒動を巻き起こし,變臉王は窮地に追いつめられる。おまけにクーワーは…。後は是非ご自分でご覧ください!
變臉王を演じるのは,NHKのテレビドラマ「大地の子」で主人公・陸一心の養父・陸徳志を演じたズゥ・シュイ(朱旭)。朱さんが,画面に登場するだけで,「大地の子」を思い出して涙腺が緩みっぱなしになりそうなのを何とかこらえた。そして,人身売買,男女差別といった陋習の中でも,人間としての愛情を決して忘れない実直な變臉王の演技は,徳志役にも勝るとも劣らぬ名演。
監督は,「古井戸」(最近は,「LOVERS」,「HERO」等で,監督として有名になったチャン・イーモウが主演する名作)等のウー・ティエンミン(呉天明)。呉監督は,印象的なエピソードを小気味良く並べる中で,泣かせどころではジンワリとした雰囲気を上手く出しており,古典的ながらも勘所を押さえた好演出。
そして,子役の周任瑩(チョウ・レンイン)と猿の「将軍」がまた良い。變臉王の心の中まで見透かしたような「将軍」の快演,そして周囲の状況に全神経を集中させたかのような動物的な周の名演が素晴らしい。初めて登場する場面,變臉王に出会いはじめて人間として扱われた場面,大道芸を見せる場面等々,場面ごとに最適な「目」の使い方を見せる周の演技には感心した。
この映画は,現在,残念ながらDVDも出ておらず,おまけにビデオも絶版になっているようであり,レンタルビデオ店でも置いているところは少ない(私も,何件か訪ね歩いた挙げ句漸く見られた。)。ただ,呉監督の最新作「CEO(最高経営責任者)」(世界に冠たる中国の総合家電メーカー「ハイアール」のサクセスストーリーを描いた映画)が現在公開中であり,これに併せてDVDが発売にならないかなぁと淡い期待を抱いているところである。變臉の芸や四川劇の華やかな場面や,街並みのジメッとした雰囲気なんかをクッキリとデジタル処理された画面で見ると最高なんだけどなぁ。
年末年始に「感動」を味わいたい方は,是非!
【評価】10点(10点満点)ちょっと甘いかなあと思ったが,私は涙ものには弱いのであった…
主人公は,變臉(仮面の早変わりの大道芸)の名人で,四川の人々から「變臉王」と呼ばれる老人。伝統芸である變臉は,門外不出で男子の弟子にしか伝承が許されていない。變臉王は,ある日,超人的な變臉の芸に感動した四川劇の人気俳優(女形)から劇団への入団を誘われるが,これを断る。しかし,顧みれば,妻には去られ,子供は病気で亡くし,水上生活を続ける天涯孤独な自分には,芸を伝承する弟子すらもおらず,唯一の友は,「将軍」と名付けた猿のみ。そこで,一念発起,寒村から売られてきた「男の子」を買い,芸を継がせることを決めた。その子のキラリと光る目の輝き(!)に惹かれたのである。
變臉王は,その子をクーワーと名付け,玉のように可愛がる。風邪をひけば,家宝の剣を質に入れて高価な漢方薬を買ってやる(この当たりから涙,涙の連続です…)。大道芸に行くときも,寝るときもいつも一緒。しかし,そのクーワーが,様々な騒動を巻き起こし,變臉王は窮地に追いつめられる。おまけにクーワーは…。後は是非ご自分でご覧ください!
變臉王を演じるのは,NHKのテレビドラマ「大地の子」で主人公・陸一心の養父・陸徳志を演じたズゥ・シュイ(朱旭)。朱さんが,画面に登場するだけで,「大地の子」を思い出して涙腺が緩みっぱなしになりそうなのを何とかこらえた。そして,人身売買,男女差別といった陋習の中でも,人間としての愛情を決して忘れない実直な變臉王の演技は,徳志役にも勝るとも劣らぬ名演。
監督は,「古井戸」(最近は,「LOVERS」,「HERO」等で,監督として有名になったチャン・イーモウが主演する名作)等のウー・ティエンミン(呉天明)。呉監督は,印象的なエピソードを小気味良く並べる中で,泣かせどころではジンワリとした雰囲気を上手く出しており,古典的ながらも勘所を押さえた好演出。
そして,子役の周任瑩(チョウ・レンイン)と猿の「将軍」がまた良い。變臉王の心の中まで見透かしたような「将軍」の快演,そして周囲の状況に全神経を集中させたかのような動物的な周の名演が素晴らしい。初めて登場する場面,變臉王に出会いはじめて人間として扱われた場面,大道芸を見せる場面等々,場面ごとに最適な「目」の使い方を見せる周の演技には感心した。
この映画は,現在,残念ながらDVDも出ておらず,おまけにビデオも絶版になっているようであり,レンタルビデオ店でも置いているところは少ない(私も,何件か訪ね歩いた挙げ句漸く見られた。)。ただ,呉監督の最新作「CEO(最高経営責任者)」(世界に冠たる中国の総合家電メーカー「ハイアール」のサクセスストーリーを描いた映画)が現在公開中であり,これに併せてDVDが発売にならないかなぁと淡い期待を抱いているところである。變臉の芸や四川劇の華やかな場面や,街並みのジメッとした雰囲気なんかをクッキリとデジタル処理された画面で見ると最高なんだけどなぁ。
年末年始に「感動」を味わいたい方は,是非!
【評価】10点(10点満点)ちょっと甘いかなあと思ったが,私は涙ものには弱いのであった…
「大地の子」つながりで、中国映画にも興味がありました。
お互いに一人ぼっちで、強がるところや、頼ってしまうところ、なんだかとても切なくなった記憶です。
vagabond67さんはどういういきさつでこの作品を?
年末年始→感動→「北京ヴァイオリン」もありですね。
「變臉」は丁度仕事が忙しかったころに公開されたようで,ノーチェックでした。
私がこの映画を見ようと思ったのは,みんなのシネマレビュー(http://www.jtnews.jp/index.html)というHPで上位にランキングされている映画のうち,見たことがなかったのが,「切腹」と「變臉」だったからです。「切腹」の方は,まだ未見ですが近いうちに見たいと思っています。
このHP,マイナー作品にはちょっと弱いのですが,なかなか面白いですよ。
「北京ヴァイオリン」もなかなか良さそうですね。近いうちに見てみたいと思います