未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

いすゞ自動車-期間工を正社員登用/直接雇用へ 世論・運動の成果-

2008-03-23 00:19:22 | 国内労働
いすゞ自動車
期間工を正社員登用
派遣・請負なくす
直接雇用へ 世論・運動に押され

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 いすゞ自動車(本社東京都)が、八百人いる期間社員から正社員に登用する制度を導入し、八百人の派遣社員も直接雇用に切り替えていく方針であることを二十一日、表明しました。日本共産党の小池晃参院議員、塩川鉄也衆院議員が同日、本社を訪れ、期間社員の正社員化を要請したのに対して回答したもの。試験という条件付きながら、偽装請負をやめさせて正社員化を求める世論と運動が動かした成果です。

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共産党要請に回答
 同社は、偽装請負から直接雇用した期間社員に対して雇用期限(二年十一カ月)を理由に四月からの雇い止めを通告。「寮に住んでおり職も住まいも失ってしまう」「毎日残業があるのになぜ解雇か」と批判の声が上がり、四日には小池、塩川両議員と労働者が雇い止め中止の指導を厚労省に要請していました。国会では小池氏が二〇〇六年から四回取り上げ、正社員化を求めてきました。

 同社の原田理志執行役員は、正社員募集について「今日から始める」とのべ、雇い止めを通告された人も「対象になる」と説明。年四回、職場長の推薦と選考試験をへて採用し、各回募集は数十人で年百人をこえることもあると語りました。

 この日の要請で小池、塩川両氏は「雇い止めされたら暮らしていけないと訴えが寄せられている。厚労省も雇用の安定が第一だとしている。基幹的業務は正社員にするのが企業の社会的責任ではないか」とのべました。

 原田氏は、正社員募集は社会的要請を受け止めたもので、「来年九月に大量の期間社員が期限切れとなるので正社員登用を考えた」と説明しました。さらに「派遣社員は期間社員に切り替えてなくしていく。業務請負はブラックボックスが増えて生産効率も品質も上がらないので導入しない」と表明。〇二年の大リストラ後から派遣や請負社員が増えたが、期間社員の正社員化や派遣の直接雇用、高校新卒者採用で「生産体制を再構築したい」と語りました。

 小池、塩川両氏は「派遣法の改正など規制緩和の流れを変えなければいけない。雇用に対する社会的責任を果たし、一人も漏れなく雇用確保されるようにしてほしい」と重ねて要請しました。

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解説
正社員化へ潮目変わる
 期間社員に雇い止めを通告していた、いすゞ自動車が、期間社員の正社員登用と派遣社員の直接雇用を表明したのは、偽装請負をなくして正社員化を求める労働者と日本共産党議員団のたたかいが動かしたものです。

 キヤノンも先日、派遣をなくして、直接雇用と請負への転換を表明しました。派遣から直接雇用への動きにとどまらず、正社員化に向かう潮目の変化が、世論と運動によって作り出されていることを示しています。

 偽装請負の是正を迫られた大企業はこの間、労働者派遣法が定める直接雇用の申し込み義務を無視できず、直接雇用に切り換えていますが、その実態は期間社員など最長でも二年十一カ月の有期雇用でしかありません。

 柳沢伯夫前厚労相でさえ「(偽装請負の是正には)必ず長期雇用を申し込む義務がある」という通り、雇用の安定という偽装請負是正の目的に背くことは明らかです。

 今回のいすゞの対応は無法なやり方が通用しないことを示すものです。しかし、選考試験を行うなど採用枠も小さく、労働者の願いに十分こたえるものとはいえません。希望者は全員、無条件で正社員化するなど社会的責任を果たすことが求められます。

 いすゞ側が、「生産体制を再構築したい」として派遣・請負をなくしていく考えを表明したことは重要です。

 無法な派遣労働から正社員化に向かうことは、違法な働かせ方をなくすことだけにとどまらず、貧困をなくし、日本のものづくり産業を立て直すなど、日本の社会と経済にとっても避けて通れない課題となっています。(深山直人)

(出所:日本共産党HP 2008年3月22日(土)「しんぶん赤旗」)
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非正規の待遇改善運動ー市民と協力し運動/経団連会長(御手洗冨士夫氏)のキヤノンはどうなった?ー

2008-03-23 00:17:35 | 国内労働
非正規の待遇改善を
全国センター発足
全労連 市民と協力し運動

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 パートや派遣など非正規労働者と連帯して要求実現めざす全労連の「非正規雇用労働者全国センター」(準備会)の発足集会が十九日、東京都内で開かれました。

 同センターは、全労連内のパートや派遣、ヘルパーなど四つの組織の運動を束ねて弁護士や医者、学者など幅広い市民と協力して運動をすすめます。集会には約百人が参加し、情報発信のため開設したホームページが披露されました。

 非正規雇用の実態やたたかいが紹介されると、場内からは「えーっ」との驚きやため息がもれました。

 自治体の学童保育指導員の実態について「正規の三分の一の年収。一時金も退職金もない。ずっと働いていても非常勤。『偽装公務員』と呼んでる」と告発。東京都内の病院で夜間当直アルバイトで働く青年(27)は、「十五時間半拘束で時給にすると六百九十五円。救急車の受け入れ要請への対応までしている。労組に入り、東京の最低賃金違反だと訴え払わせた」と報告しました。

 「日本人も外国人も一緒にたたかいたい」。こう発言したのは浜松市の自動車工場で働く外国人労働者(48)。「三カ月の有期雇用で解雇や労働災害が問題になり、労働組合をつくった。有休が自由にとれ、作業着を会社負担にさせた」

 ヘルパー労働者の実態についても「賃金が安くて結婚できないからと『寿退社』する人がいる。利用者の家までいく移動時間分が払われず、必要な研修も自己負担。国に介護報酬の改善を求めたい」と報告がありました。

 あいさつした坂内三夫議長は、「貧困をなくし、希望をもって働ける社会を取り戻すために労働組合がたたかうことが求められている」と訴えました。

非正規の待遇改善を
官製「働く貧困層」
山下議員 自治体に45万人
総務相“権利同じ”

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 日本共産党の山下芳生議員は十九日の参院予算委員会で、正規職員と同じ仕事をしながら、賃金や権利で差別されている自治体の非正規雇用職員の実態を示し、「ただちに改善の措置をとるべきだ」と主張しました。増田寛也総務相は、「同じ業務で働く人に(賃金や権利の)違いがあってはならない」と明言しました。

 全国の自治体の臨時・非常勤職員は四十五万六千人(二〇〇五年四月時点)。正規職員が減らされ、非正規職員が公務の基幹的業務を担っているにもかかわらず、その賃金は最低賃金水準にとどまっています。

 山下氏は、ある自治体では、臨時職員の時給が七百三十一円と、地域の生活保護基準より低い状態にあることを告発。「まさに『官製ワーキングプア』だ。こんな人たちを自治体が大量に生みだしていいのか」とただしました。

 増田総務相は、「臨時・非常勤職員は臨時的、補助的業務に就いている」と正規職員との違いを強調しました。これに対し山下氏は、公立保育の職場では、クラス担任をもち正規職員と同じ仕事をしながら、十年も非正規職員という事例が多くあることを具体的にあげ、「非正規が『一時的』でなく、『恒常的』に任用されているのが実態だ」「同じ仕事しているのに賃金は三分の一以下。こんな事態を放置していいのか」と迫りました。

 増田総務相は、「厳しい財政事情もあり、それぞれの自治体の判断もある」としつつも、「実態を直視する必要はある」と答弁せざるをえませんでした。

 山下氏は、さらに非正規職員が法律で「育児休業」の取得も保障されていないことを示し、改善を要求。増田総務相は、「公務員の処遇についても考えていかなければならない」と答弁しました。

(出所:日本共産党HP 2008年3月20日(木)「しんぶん赤旗」)

キヤノン 派遣解消へ
世論の批判に手直し
製造現場1万2000人 期間工・請負に

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 キヤノンは、製造現場で子会社を含めて一万二千人に及ぶ労働者派遣契約を年内に見直し、半数の六千人を期間工として直接雇用し、残りを業務請負に置き換える方針です。

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 同社によると、増産などに対応するために一時的な派遣契約はありうるとしながらも、現在契約している一万二千人の派遣契約は今年中に見直すとしています。このうち、最長二年十一カ月の期間工としてキヤノンが六千人を直接雇用。六千人以外は、業務請負に切り替えます。期間工として直接雇用した労働者の中から、試験を経て正社員に採用するとしています。正社員は今年中に千人増やす計画です。

 同社は、これまで労働コストを削減するために派遣・請負を多く受け入れるとの方針をとってきました。また、同社会長の御手洗冨士夫氏が会長を務める日本経団連は、規制改革要望として労働者派遣期間(三年)や直接雇用の申し入れ義務の撤廃など全面自由化を政府に求めていました。(別項)

 派遣契約を見直すとしたキヤノンの今回の措置は、労働者の告発や日本共産党の国会追及など社会的な批判の高まりに追い詰められ、従来の方針の手直しを迫られたといえます。経団連会長企業が、派遣労働の拡大から転換せざるをえなかったことは、財界の規制緩和路線の破たんを示すものです。

 しかし、キヤノンが派遣から切り替えるとしている期間工は「解雇つきの雇用」といわれているもの。業務請負への置き換えも新たな偽装請負を招かないかと懸念されており、直接常用雇用こそ求められています。

抜本的法改正を
 派遣労働者は、不安定・低賃金で、そのうえ使い捨てのような扱いをうけています。「働く貧困」の温床となっており、労働者派遣法を抜本改正して、規制すべきだとの世論・運動が高まっています。

 この問題を国会でとりあげた日本共産党の志位和夫委員長の質問(二月八日)は、インターネットなどで大きな反響をよび、世論と行政を動かしています。志位委員長は、滋賀県の長浜キヤノンである製造ライン全体が派遣労働者で占められていたことを指摘、「『常用代替にしてはならない』との原則に反している」「派遣工場ではないか」と追及。福田首相が実態調査を約束し、二月末に滋賀労働局職業安定部が長浜キヤノンに調査に入りました。

 長浜キヤノンの地元、長浜市議会では、自民党の野村俊明市議が志位質問に賛同するとして、非正規雇用の問題点を指摘し、是正を求める動きに発展しています。(「赤旗」日曜版二十三日号で詳報)

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キヤノン・財界のこれまでの言い分
 ▼「外部要員の活用は…労働コストの面からも非常に有益であり…派遣労働者・請負労働者の活用の機会は今後さらに増してくる」 (同社の「外部要員適正管理の手引き」。06年2月作成)

 ▼日本経団連の規制改革要望は▽派遣禁止業務の解禁▽雇用申込義務の廃止▽派遣期間制限の撤廃―など派遣労働の全面自由化を要求。(07年6月29日)

(出所:日本共産党HP 2008年3月21日(金)「しんぶん赤旗」)
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新銀行東京への400億円追加出資問題ー石原都知事の真相隠しに手を貸す自・公・民ー

2008-03-23 00:11:38 | 国内政治
新銀行東京の追加出資
真相隠しに手を貸す自・公・民
与党議員からも批判の声

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 新銀行東京への追加出資を審議している東京都議会予算特別委員会で、日本共産党が要求した旧経営陣の参考人招致や、同行が石原慎太郎知事に提出した調査報告書全文の議会への提出要求も拒否し、真相隠しに手を貸している自民党、民主党、公明党の対応に、与党議員からも批判があがっています。(岡部裕三)

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 十三日の同委員会で大山とも子都議が提出した動議は二つで、(1)仁司泰正元代表執行役の参考人招致(2)新銀行が都に提出した調査報告書全文の提出―を求めました。三宅茂樹委員長(自民)は参考人招致だけを採決にかけ、報告書については採決せず、紛糾しました。

 同日午前に開いた同委の理事会では、日本共産党が参考人招致と報告書全文の公表を主張。民主は二項目とも賛同、公明も報告書提出に賛同していました。

 ところが同日午後の理事会では、報告書について、都産業労働局に全文提出ができるかどうか三宅委員長から問い合わせることを自民党が提案。都側から提出拒否の回答があり、自民、民主、公明の三党は報告書全文の公表を要求しない態度をとりました。当初の開会予定から七時間遅れの午後八時前に開会した委員会で、佐藤広産業労働局長が提出拒否の理由をのべました。

 日本共産党はこれに納得せず、二つの動議を提出したものです。

 動議は、経営破たんの真相究明を求める都民の声にこたえたもので、数の力で封じたあとも、自民党都議から「新銀行の再建計画はでたらめだし、追加出資の根拠もあいまいだ。報告書を提出させて審議すべきだ」「動議を採択しないのは異常だ」「裏に何かあるのではないかと疑われてしまう」との声があがっています。

 新銀行の調査報告書は現経営陣が作成したもので、経営悪化の全原因を仁司元代表らになすりつけ、石原知事はこの報告書をもとに自らの責任をたなにあげています。

 経営破たんと追加出資問題を究明するうえで、参考人招致と報告書の全容をもとに、徹底論議することは、都民の世論でもあり、都議会の責務です。真相解明にフタ隠しをしたまま審議をすることは、都議会のチェック機能を自ら投げ出すことにほかなりません。

 融資先21%が都外企業
新銀行東京 設立趣旨にそぐわず

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 新銀行東京(東京都千代田区大手町、津島隆一代表執行役)の融資・保証取引件数の二割強が東京都外の企業で、金利負担が大きすぎて倒産、融資が焦げ付いたケースも生じていたことが十九日までにわかりました。同行は累積赤字が一千十六億円(三月末見込み)と経営破たん状態に陥り、四百億円追加出資を提案している石原慎太郎都知事の責任が問われています。

 東京都によると、新銀行の二〇〇七年十二月末時点の融資・保証残高は一万一千六百十一件、二千五百四十五億円にのぼります。このうち設立趣旨にそぐわない都外の企業の残高は二千四百六十件(21・2%)、金額は三百十九億円(12・5%)ありました。

 新銀行から融資を受けた神奈川県川崎市の建設関連企業(資本金五千万円)は、二〇〇六年十月に倒産、同行の債権額は三千万円で、破たん原因は金利負担の増加でした。富山県富山市の印刷関連企業(資本金三百万円)は〇六年十二月に破産、新銀行の債権一千三百万円余が回収不能となりました。岐阜県恵那市の食品関連企業(資本金約四億九千万円)は〇七年九月に破産し、同行からの一千九百万円余の融資が焦げ付きました。

 新銀行東京は、都内の中小企業への融資を目的に、東京都が一千億円を支出して設立したものの、高金利で中小業者には不評でした。石原都政は、新銀行設立前に作成したマスタープランで過大な融資目標と、「スピード審査」を売り物にしたずさんな融資審査システムをつくり、新銀行の取締役会や株主総会で「融資目標の達成を」と、はっぱをかけてきました。

新銀行追加出資
知事に撤回要求
革新都政の会

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 「革新都政をつくる会」は十九日、新銀行東京への四百億円追加出資を撤回するよう、東京都の石原慎太郎知事に要請しました。

 要請で中山伸、高畠素昭、大橋光雄の各代表世話人と相楽茂治事務局長、会沢立示同代理は、「いま都民の暮らしと営業が苦しく、医療・福祉・教育の充実を求める声が噴き出しているときに、税金の無駄遣いは許されない」と批判。知事自らの責任と新銀行の経営実態を都民に明らかにするよう求めました。都知事本局の藤久吉浩秘書事務担当副参事は「ご意見は知事に話したい」と答えました。

(出所:日本共産党HP 2008年3月21日(金)「しんぶん赤旗」)

新銀行東京
中小企業に役立たず
都議会委で小竹議員 追加出資撤回せよ

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 十九日の東京都議会経済・港湾委員会で日本共産党の小竹ひろ子都議は、二〇〇八年度都予算案と補正予算案への意見をのべ、新銀行東京に対する四百億円の追加出資は都民の税金をドブに捨てるものだと批判し、撤回を求めました。

 小竹氏は、石原慎太郎知事が設立した新銀行が開業後、資金繰りに苦しむ中小業者には貸し渋り、融資しても10%を超える高金利を取るなど、「中小企業に冷たい銀行だった」と批判。再建計画も融資規模を四分の一に圧縮し、企業支援はハイリスクなものが中心になっているとして、「むしろ都が行うべきは制度融資の拡充や特別融資だ」とのべました。

 また、追加出資の根拠や裏付けをまともに示そうとしない都の異常さを「都議会と都民に白紙委任を求めるものだ」と批判。「知事は私財を投げ打ってでも責任を取れ」という都民の声を紹介するとともに、都議会で真相解明のため参考人招致や調査報告書全容の提出などを求めたにもかかわらず、実現しなかったことは遺憾だとのべました。

 同委員会で自民党は追加出資を容認し、公明党は賛否を明言しませんでした。民主党は「都民に一番負担の少ない形で撤退を」と述べ、生活者ネットワークは「現時点では追加出資をしないこと」を求めました。

 同日の財政委員会でも、日本共産党の曽根はじめ都議が四百億円の追加出資を批判しました。

(出所:日本共産党HP 2008年3月20日(木)「しんぶん赤旗」)
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マスメディア時評-読売と産経は、無法な戦争をなお正当化かー

2008-03-23 00:06:06 | 国内報道
マスメディア時評
無法な戦争をなお正当化か

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 アメリカがイラクへの侵略戦争を始めてから、五年になりました。

 開戦から五周年の二十日を中心に、各紙が社説を掲げ、あるいは特集や連載などで取り上げています。共通しているのは、「大失敗をどう克服するか」(「朝日」十八日付)、「不安定さを増した世界」(「毎日」十七日付)、「『誤り』のつけが市民に」(「東京」十九日付)などの社説見出しが示しているように、イラク戦争が出口のない泥沼に陥っていることへの、きびしい現状認識です。

侵略者の論理で
 それにもかかわらず、アメリカが戦争を始め日本が支持したこと自体は、やむをえなかったとして弁護する論調が依然として残っています。代表的なのは「読売」十七日付社説で、大量破壊兵器がなかったのならそれを挙証すれば戦争を回避できたはずなのに、「それをしなかったフセイン政権の側に、戦争を招いた非がある」、国連安保理が機能していなかったのだから、米英が武力行使に踏み切り日本が支持したのは「やむを得ない選択だった」というのがその言い分です。「大義なき戦争」という判断は、「あまりに短絡的」という「産経」二十一日付主張もほぼ同じ立場です。

 一方的に戦争を始めたアメリカの肩を持って、攻撃された方が悪いというのは、侵略する側の論理です。「読売」をはじめ日本のマスメディアの多くは開戦のさい、同じような論理でアメリカを擁護しました。

 実際には、国連の監視検証査察委員会が大量破壊兵器の査察を継続することで事態を解決する見通しを示し、国連安保理はアメリカなどの武力行使容認の要求を拒否していたのに、一方的に開戦に踏み切ったのはアメリカとその「有志連合」です。悪いのはフセインだ、開戦はやむをえなかったと弁護するのは、歴史の事実に反します。

 なぜ五年もの長きにわたって十数万もの大軍がイラクに駐留し大きな犠牲を生んでも、治安の維持も復興の見通しも立たないのか。それは戦争そのものが大義のない無法な戦争でイラク国民の反発を買っているからです。戦争そのものが間違っていたからこそ、暴力の応酬が繰り返されるのです。

 この点では「朝日」社説が、ブッシュ大統領のことしの一般教書演説を引きながら、「この歴史的な大失敗をまだ正当化しようとする人々がいる」と批判しているのは正論です。本来ならアラブ・イスラム世界の支持を得つつ、国際テロ組織アルカイダを孤立させ、追い詰めなければならなかったのに、「敵」を間違えて、アルカイダと無関係のフセイン政権を相手に説得力のない戦争を起こしたために、国際社会を分裂させ、穏健なイスラム教徒まで敵に回してしまったという指摘は、説得力があります。

 残念なのは、その「朝日」にも、事態をどう打開するのかという点になると、確かな立場がないことです。

米の消耗を心配
 「朝日」社説は、「この混迷をただすのに特効薬はありそうにない」といいます。「米軍の大部隊が駐留したままでは反米テロはおさまらない。だが、現地が安定しないままでの撤退は、内戦の引き金になりかねない。文字通りのジレンマである」として、「心配なのは…米国自身が消耗していくことだ」「日本にとっても、唯一の同盟国である米国の衰えは好ましくない」と論じます。

 長引く戦争によって最も被害を受けているのはだれよりもイラクの国民ではないのか。イラク国民のことを考えるなら、最優先すべきなのは、無法な戦争をやめ、暴力による応酬をやめることではないのか。その問題には正面から向き合わないで、アメリカと日米同盟への影響を心配するというのでは、事態を打開するまともな立場に立っているとはいえません。

 実はこの「朝日」の立場は、戦争そのものの評価は違っても、「読売」の立場と大きな違いがありません。ずばり「米国の力の低下が心配だ」と見出しを立てた十七日付「読売」社説は、イラクでの戦争をやめさせることは一切言及せず、問題は「イラクの混迷」による「米国の指導力低下」であり、「米国がイラク情勢に足をとられ、東アジアでの影響力が減退していく状況は、日本として看過できない」ので、「日米同盟強化が大事」と結論付けています。

 ここにあるのは、世界でどんな大問題が起きても、日米同盟の立場からしかものを見ず、日米同盟さえ強化すれば安心だという究極の保守主義です。軍事同盟ではなく平和の共同体へという世界の流れに目を向けずこうした論調を繰り返す限り、アメリカのブッシュ政権や日本政府と同じく、日本の巨大マスメディアも、世界から孤立することになるのは避けられません。(宮坂一男)

(出所:日本共産党HP 2008年3月22日(土)「しんぶん赤旗」)
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