未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

「派遣切り」にあったシングルマザーが労組入り団体交渉へ

2008-12-31 02:32:55 | 国内労働
守れ雇用
母は立つ
派遣切り 労組入り団体交渉へ
新潟・上越

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 年の瀬が迫った十二月に「派遣切り」にあった新潟県上越市のシングルマザーが、「子どもたちのために、泣き寝入りはできない」と、にいがた青年ユニオンに加入してたたかっています。年明けの六日に派遣会社と団体交渉をする予定です。(海老名広信)

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 「何でわたしが解雇なの。納得いかない」。女性(35)はとつとつと語ります。来年三月十四日までの契約ですが、派遣会社から十二月八日、「一月八日で契約解除」を告げられました。

 女性は二〇〇五年七月から派遣会社・エイジェック(本社=東京都新宿区、従業員七千六百人)に登録し、日信工業(本社=長野県上田市、資本金三十七億円)の直江津工場で働いてきました。

 仕事はオートバイのブレーキの検査。「人の命にかかわる部品だから」と、入念に作業します。一時間約百個を目標に一日八時間立ちっ放し。「最初は足が痛くて痛くて。正直やめたいと思ったけど、二人の子のために歯をくいしばりました」

 基本給は月額十五万円を超える程度。社会保険料などを控除すると手取りは十三万円ほどに。月四万円の児童扶養手当を加えても「貯金はできません」。

 両親が他界したあとの実家に暮らします。子どもは育ちざかり食べざかりで一日五合、ごはんを炊きます。服はすぐ小さくなり友人に譲ってもらい、しのいでいます。

正社員と同じ
 女性は半年程度の雇用契約を更新。三年以上同じ業務に携わり、正社員と同じ仕事をしています。日信工業は女性に直接雇用の申し込みをする義務が生じていました。

 日信工業は今年春ごろから派遣社員の削減を徐々に進めていました。女性は、来年三月の契約満了で雇い止めされても、次の職に移るため、資格をとろうとしていました。

 ところが、契約途中の解雇をエイジェック社に告げられたのです。理由は「ほかに派遣先が探せないから」。子どもを保育園に送るため勤務時間に融通がきかないことを、担当者は、派遣先を紹介できない訳としてほのめかしました。

 繁忙期、子どもの発熱で休めばいやみをいわれ、職場でミスがでれば正社員と一緒に怒られました。「仕事が減ると、サクサク派遣労働者を切るのはひどい」。日信工業への憤りは隠せません。

子どもが救い
 女性は知人の紹介で、にいがた青年ユニオンに相談。「あなたは悪くない。一緒にたたかうからがんばろう」と励まされました。この間、会社との折衝には地元の上越地区労連の人たちも参加。「私ひとりのために多くの方が動いてくれて感謝します。厳しい年始となりますが、子どもたちが元気なことが救いです」と、女性は気丈に語ります。

(出所:日本共産党HP 2008年12月30日(火)「しんぶん赤旗」)
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職・住失った労働者を支援する「年越し派遣村」を開設ー三十一日から一月五日まで東京・日比谷公園ー

2008-12-31 02:29:13 | 国内労働
「年越し派遣村」あす開設
職・住失った労働者を支援
労組・市民団体など
5日まで 東京・日比谷公園

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 “派遣切り”“期間工切り”などで仕事や住まいを失った非正規労働者らのためにテントを張り、炊き出しをしながら、労働相談、住居相談に応じる「年越し派遣村」が大みそかの三十一日から一月五日まで東京・日比谷公園に開設されます。労働組合や市民団体などでつくる実行委員会が二十九日に同公園内で記者会見し、発表。新宿のハローワーク前などで宣伝しました。

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 解雇・雇い止めされた非正規労働者は厚生労働省の調べでも八万五千人にのぼっています。雇用促進住宅に六百人が入居し、一部のハローワークも三十日まで特別相談をしていますが、入居できる住宅が圧倒的に不足し、三十一日にはハローワークも福祉事務所も開いていません。このため「年越し派遣村」は三十一日に「開村」し、四日まで相談活動(午後一時から六時)を実施します。五日は、厚労省要請や国会請願デモをします。

 記者会見で「村長」の湯浅誠・NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長は、「企業はこの寒空に寮から人を追い出している。命にかかわる問題で、企業の社会的責任を問いたい。企業の人たちは、非正規労働者も人間だと学んでほしい」と語りました。宇都宮健児・反貧困ネットワーク代表が名誉村長となります。日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士が、弁護士も労働相談にかけつけるとのべ、運営ボランティアや募金、差し入れを呼びかけました。

 問い合わせは、臨時電話090(3499)5244(開催中)。寄付口座=みずほ銀行銀座支店(普通)2692964「派遣村寄付金口座 弁護士 棗一郎」。食料品、飲料水はテントへの直接持参を呼びかけています。

各地で相談・援助活動

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ハローワーク職求め次つぎ
名古屋

 雇用情勢の悪化を受けて二十九、三十の両日、全国のハローワークで求人や住居にかんする緊急相談が行われています。開いているのは主なハローワーク五十八カ所と、非正規労働者の支援を目的に東京、名古屋、大阪に新設された「キャリアアップハローワーク」。名古屋では、朝から訪れた多くの相談者が十二ある窓口をいっぱいにしました。

 契約期間を二カ月以上残して先月、カバンの卸問屋を解雇された元派遣社員の男性(25)=名古屋市=は「このひと月で十五社くらい受けたが、正社員の仕事は決まらない。実家は九州だが、まだ高校生の妹がいるから帰れない。来月中に仕事を見つけないと家賃も払えなくなります」

 愛知県の十一月の新規求人件数は三万九千三百六件で、前年同月比32・1%減。名古屋中公共職業安定所の竹平一寿所長は「自動車などの製造業が求人を減らし、受け皿となる産業がないのが現状だ」と話します。

家賃の資金貸付け要請
神奈川

 日本共産党の、はたの君枝衆院南関東比例候補は二十九日、いすゞ自動車藤沢工場(神奈川県藤沢市)関連会社に派遣され、一方的に中途解雇された男性とともに住居確保への支援を神奈川労働局に求めました。

 要請には神奈川労連の溝口五月生副議長、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)神奈川地本の河原健二副委員長らが参加。

 要請で、男性は「この三日間、二回しかご飯を食べていない」「家賃を払えなければアパートを出ていかないとならない」と訴え、家賃のための資金の貸し付けを求めました。

 労働局側は、解雇等による住居喪失者に対する国の資金融資事業ではアパートに住居したままでは融資できないと回答。要請団は労働者が救済される制度見直しを求めました。

(出所:日本共産党HP  2008年12月30日(火)「しんぶん赤旗」)
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「非正規切り」と労働組合運動ー三菱ふそうトラック・バス/大分キヤノン・日研総業/いすゞ自動車-

2008-12-30 00:32:32 | 国内労働
三菱ふそう退寮迫る
28も空き部屋ありながら…
労働者抗議 「派遣切りするな」
労組と交渉も拒否

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 「派遣・期間工のクビを切るな! 寮から追い出すな!」。三菱ふそうトラック・バス(本社・川崎市)に契約を一方的に打ち切られた派遣・期間労働者と首都圏青年ユニオンは二十四日、川崎市の同社川崎工場前で宣伝行動し、会社側と契約解除の撤回などを求めました。前回の十七日の宣伝・抗議行動をきっかけに加盟した派遣労働者も参加しました。

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 三菱ふそう川崎工場は、二十四日がことし最後の就業日。契約を打ち切られた労働者ら同ユニオンのメンバーら約三十人が横断幕やのぼりを掲げ、同工場に出勤してくる労働者にビラを手渡し、「退職合意書・退職届にサインするのはやめましょう」「寮も出る必要はありません」などと訴え、来年三月まで契約期間が残っていながら一方的に契約解除した同社に抗議の声をあげました。

 「きのうが最後の仕事だった」という、契約を打ち切られた派遣労働者(35)は「都合のいいように会社に使われ、必要なくなったら一方的に解雇された。寮には空き部屋が二十八部屋もあるのに、月末までに寮を出ろといって追い出そうとしている」と訴えました。

 三菱ふそうは二十五日までに派遣労働者ら合わせて五百人の契約解除を計画。首都圏青年ユニオンは十七日、寮への居住継続と解雇撤回を求め、川崎工場前で宣伝行動後に団体交渉を申し入れていました。同社は「雇用関係がない派遣契約であり、派遣元との賃貸契約」として十八日付で団体交渉を拒否しました。

 同ユニオンの河添誠書記長は「労働者の声を誠実に聴くべきだ。無責任な対応だ」と本社前で抗議の声をあげました。

日研総業
謝罪し、越年資金支給
大分地域労組キヤノン分会 初団交で勝ち取る

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 大分キヤノン(大分県国東市)の大分工場(大分市)を解雇された請負労働者六人が結成した、「大分地域労組 大分キヤノン・日研総業分会」は二十四日、請負元・日研総業との初めての団体交渉を行い、「雇用に直接責任を負う日研総業として、おわびしたい」との回答を引き出しました。団交には全労連、県労連の役員らが同席しました。

 組合側によると、会社は組合員に対して「一人五万円の『越年資金』を支給する」とし、「来月十五日支給予定の給与も二十九日に前倒しして振り込む」と確約しました。

 寮については、解雇日以後は退寮の期限を定めずに「無料」とし、会社として県の家賃助成制度を百五十四人分申請するとしました。

 また、「労働契約法一七条など法律については順守する」と表明しました。契約満了までの補償については、「今後検討する」と答えるにとどまりました。

 次の団体交渉は「年明け早々」に行われる予定です。

 県労連の児玉圭史事務局長は確認事項について、「当面の生活の場と手持ち資金を(会社から)示されたことはよかった」と評価しました。

 団交後の記者会見で、分会長の平野孝治さん(47)はキヤノンが解雇後も正社員募集をかけていることを批判。「解雇された人たちは技術を持っているのに、新しく人を入れることは間違っている」とのべました。

いすゞ、中途解雇撤回
期間社員550人 世論と運動で前進
年内希望退職狙う

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 いすゞ自動車は二十四日、契約途中にもかかわらず二十六日付で解雇を通告していた期間・派遣労働者千四百人のうち、直接雇用の期間社員五百五十人について解雇を撤回するとともに、新たに事実上の希望退職を募集する方針を明らかにしました。

 法律違反の中途解雇を撤回せざるをえなくなったもので、労働者と日本共産党のたたかいによる大きな成果です。しかし、派遣社員は対象外のうえ、あくまで人員削減をすすめる姿勢は変えていません。

 記者会見したJMIU(全日本金属情報機器労組)の三木陵一書記長は、「世論と運動で勝ちとられた大きな前進」とするとともに、派遣社員も含めた人員削減計画の白紙撤回と雇用確保を求めていくとのべました。

 いすゞの新たな方針は、解雇通告を撤回するとともに、(1)労働契約を合意のうえで解約することを労働者に申し入れる。応じる人には賃金の85%の特別退職金を支払う。回答期限は二十六日(2)応じられない人は当初の契約満了まで雇うものの、休業とし、賃金の60%を支払う―というもの。同日の団体交渉で組合側に伝えられました。

 いすゞ自動車支部の松本浩利委員長は「世論や運動がこの変化をつくりだした」としたうえで、「人員削減の姿勢は変わっていない。一両日中に返事せよというのも問題だ。正社員化、派遣社員の解雇撤回などを求めて引き続きたたかっていく」と話しました。

 いすゞは十一月十七日、営業利益六百億円と株主配当を十七億円も増やしながら、法律で厳しく規制されている雇用契約の中途解約を通告。これに対し、日本共産党の志位和夫委員長が同二十六日に解雇撤回を申し入れ、国会では小池晃参院議員の質問に舛添要一厚労相が「調査し指示を出す」と答弁。期間・派遣社員が労組に加入し、解雇撤回の仮処分を起こすなど世論と運動が広がっています。

(出所:日本共産党HP  2008年12月25日(木)「しんぶん赤旗」)
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いすゞ自動車-派遣社員が横浜地裁に派遣会社に対し契約途中の解雇無効と賃金仮払いを求める仮処分申請-

2008-12-30 00:30:02 | 国内労働
派遣社員が仮処分申請
いすゞ藤沢工場 解雇撤回求める

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 いすゞ自動車藤沢工場(神奈川県藤沢市)の男性(49)ら派遣労働者五人が二十六日、各派遣会社に対し契約途中の解雇無効と賃金仮払いを求める仮処分を横浜地裁に申し立てました。

 いすゞは、期間労働者の中途解雇は撤回しましたが、派遣労働者の全員解雇(藤沢工場は五百四十人)は撤回していません。

 訴えられたのは、いすゞに派遣していた日総工産、高木工業、ジャパンクリエイトといすゞ下請け会社のロジットに派遣していたニューレイバー。いずれも来年三月までの契約でしたが、いすゞが派遣契約を打ち切ったことを理由に、ニューレイバーは十七日に解雇し、他の四社は二十六日付で解雇を通告していました。

 記者会見で高橋宏弁護士は、派遣会社には雇用契約期間の途中に労働者を解雇する「やむを得ない事由」はないとのべ、派遣会社は利益をあげており、雇用を維持する体力があることを指摘。派遣会社はいすゞに契約違反の損害賠償を求めることができるにもかかわらず、労働者に犠牲を押しつけるのは許されないと語りました。

 申し立てた男性は、派遣期間制限を逃れるために期限がくるといったん期間労働者にして再び派遣労働者に戻すという脱法行為が行われていたと指摘。「お金も住まいもなく仕事を奪われる。このままでは寒空で年が越せない」とのべました。

(出所:日本共産党HP 2008年12月27日(土)「しんぶん赤旗」)
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自動車メーカー・マツダ(本社・広島県府中町)-雇い止めされた派遣労働者の思い-

2008-12-30 00:23:10 | 国内労働
守れ雇用
広島・マツダ 派遣労働者は
解雇撤回へ私も労組に
50代男性 “家賃の払い 不安”

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 生産ラインと事務・技術部門で働く約千四百人の派遣社員の雇い止めを強行している自動車メーカー・マツダ(本社・広島県府中町)。「正社員と同じように頑張ってきたのに。なぜ…」。年の瀬、雇い止めされた派遣労働者の思いは―。(内田達朗)

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 「家賃や水光熱費の支払いなどが不安で食事ものどを通らない。夜はなかなか眠れない。どうしても眠れない時はお酒で紛らわせています」。今月五日に雇い止めされた五十代の男性は、顔を曇らせながら語ります。

 「母親には気苦労をかけたくない」と仕事を探すためハローワークに通う毎日です。「早く仕事を見つけたい。条件にはこだわらないが、派遣のような働き方はしたくない。ピンハネはごめんだ」

 関西出身。以前勤めていた会社を辞めたあと、三年前に人材派遣大手の日研総業に。同社からマツダの宇品工場(広島市南区)に派遣され、部品の運搬・仕分けの作業に従事してきました。サポート社員(期間工)への登用を一回はさんだほかは、一カ月契約の更新を三十四回繰り返してきました。

 広島県内の二十代の男性も五日付で雇い止めになりました。

 二〇〇四年一月から車体の組み立ての仕事を始めました。これまでサポート社員を六カ月経験していますが、作業の内容は全く変わらなかったといいます。

 〇四年の八月からは暑い時は四〇度にもなる職場で車種ごとに一台分の部品を一分で準備する作業を続けてきました。正社員から部品が入っていた箱を投げつけられるなどのパワハラにも耐え、働いてきました。

 「過酷な働かせ方にも耐えて頑張ってきたのに、こんな扱いをさせられるなんて」。就職先を探しながら「雇い止めを撤回させ、できればマツダで働き続けたい」と地域労組に加入しました。

(出所:日本共産党HP 2008年12月29日(月)「しんぶん赤旗」)
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経済時評-金融危機・世界同時不況/新しい発想の政策転換必要-

2008-12-29 00:19:14 | 国内経済
経済時評
金融危機・世界同時不況
新しい発想の政策転換必要

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 年の瀬をひかえて、京都と東京の中小企業の経営者の方々と懇談する機会がありました。

 「十一月に入るころから、売り上げが夏場に比べて半減している」

 「これまで経験したことがないすさまじい勢いで受注が減っている」

 「銀行がカネを貸さない。年末に社員の給料を払うめどがたたない」

 毎日、町工場でいっしょに汗を流している従業員とその家族の暮らしを背負っているだけに、中小業者の悩み、苦しみは、察するに余りあるものがあります。

 中小企業の経営苦境への対策で、すぐ効果のあるのは、資金面からの手当てです。

 金融庁が十月十六日に開設した、「貸し渋り・貸しはがし」についての大臣直通の情報受付窓口(「大臣目安箱」)には、さまざまな苦情が寄せられているといいます。金融危機のツケを絶対に中小企業に押し付けることにならないよう政府は全力を挙げるべきです。

なぜ、V字形の市場収縮がすすむのか
 減産体制は、自動車、電機、工作機械、精密機械など、製造業の広範な分野に及びはじめています。大企業は、非正規労働者の解雇とともに、それと同じスピードで下請けへの部品発注を減らしています。それは、現実の信用収縮よりもはるかに急速なテンポで、大規模にすすんでいるかのようにみえます。

 「日経」紙の「社長百人アンケート」によると、「景気は急速に悪化している」と答えた経営者は、今年十月の10・8%から十二月には86・8%に大幅に増えています(注1)。

 また、『週刊東洋経済』(電子版)の「産業天気図」では、次のように述べています。

 「ほんの3カ月のうちに、天気はあっという間に下り坂へ向かった。…今や日本の産業界を覆うのは真っ黒な雨雲で、あまりの豪雨の襲来に傘すらもまるで役に立たないずぶ濡(ぬ)れ状態といったところ」(注2)

 いったいなぜ、こんなにV字形に市場が収縮しはじめているのか。減産体制の先陣を切ったトヨタ、日産、ホンダなど自動車業界では、「現在考えられる悪材料を極力織り込む方針」をたて、在庫を徹底的に減らし、「手元資金の拡充を最優先し、体力の温存に努める」と言います(注3)。

 もともと資本主義的市場経済では、いったん金融危機や不況の兆しがみえると、個別企業は、自分の「損失」を回避するために、われ先にと信用を収縮、生産・在庫を収縮するため、市場収縮の悪循環が生まれてきます。

 市場まかせ、個別企業まかせでは、こうした無政府的な市場収縮競争の悪循環を断ち切ることはできません。国家や自治体が産業再生、地域再生の長期的、計画的な政策構想を提起して、経済再生の全体的展望を示していくことが必要です。

金融危機、世界不況の打開と世界的軍縮
 「百年に一度」という金融危機と世界的不況の悪循環に対処するには、従来にない新しい発想で、思い切った政策転換が求められます。本欄でも先に、「一九三〇年代の「ニューディール」より、さらに革新的な『二十一世紀型ニューディール』とでもいうべき政策体系」が必要だと提起しました(注4)。

 米国のオバマ次期大統領が提唱する「グリーン・ニューディール」は、大規模な環境・エネルギー投資、たとえば自然エネルギー・次世代バイオ燃料・省エネ・エコカー・エコハウスなどの事業に十五兆円(十年間)を投資し、五百万人の「グリーンジョブ(緑の仕事)」を創出する戦略構想だといいます。これも、新たな発想の一つといえるでしょう。

 しかし、米国経済の再生のためには、こうした新たな需要創出策だけでなく、軍産複合体でゆがめられた米国の産業構造を抜本的に改革する計画が必要でしょう。

 この問題を考えているとき、一般紙に掲載された投書がふと目にとまりました。

 「世界的な経済不況が懸念されているが、その克服策の一つとして、各国が思い切った軍縮策をとることを提唱したい。…世界で費やされる途方もない額の軍備費が日々の生活を資する方向に転換されれば、経済は元気づけられる。…軍縮は理想に過ぎないと片づけず、進行中の不況を奇貨として国際的な軍縮会議を開き、各国が協調し軍縮へ思い切って舵(かじ)を切るべきだ」(注5)

 これは、長野県で農業をやっている八十歳の方の投書です。憲法九条を持つ日本が、率先して世界に大不況打開と軍縮のための国際会議を呼びかけるという政策構想は、いま傾聴に値するアイデアかもしれません。

 日本が日米安保条約を条約一〇条(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、日米友好条約を結ぶことは、ただ日本の真の自立のために必要なだけではなく、米国が軍産複合体でゆがめられた経済を改革して、真に平和的な産業構造を再建していくために、米国にとっても有効な課題になっているといえるでしょう。(友寄英隆)

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(注1)「日経」十二月二十二日付。
(注2)『週刊東洋経済』(電子版)十二月十九日。
(注3)「日経」十二月十八日付。
(注4)本紙、十月二十一日付。
(注5)「朝日」十二月六日付の「声」欄。

(出所:日本共産党HP 2008年12月26日(金)「しんぶん赤旗」)
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ホンダ期間工-2カ月きざみの人生/「細切れ契約」で「継続雇用隠し」-

2008-12-29 00:13:28 | 国内労働
クローズアップ
ホンダ期間工 2カ月きざみの人生
「細切れ契約」で「継続雇用隠し」

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 ホンダは二月上旬までに埼玉、鈴鹿、熊本、栃木、浜松の国内五工場で千二百十人の期間社員を削減し、円高が続けば「期間社員は限りなくゼロ」(福井威夫社長)としています。年越し前の寒空の下に放り出そうというのか。埼玉県狭山市にある埼玉製作所狭山工場に向かいました。(本田祐典)

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 西武鉄道・新狭山駅を降りると、「HONDA」のロゴをかかげた建物が見えます。三十八万五千平方メートルの敷地面積をほこるホンダ自動車生産の主要工場「埼玉製作所」です。

 午後三時半、早朝からの勤務を終え、寮に帰ろうとする三十代後半の男性に声をかけると、「ぼくは十二月末でアウト。寮も出ないといけない」。二十代前半の女性は「ホンダはあこがれだった。きつい仕事にやっと慣れたばかりだったのに」と声を落とします。

 アコード、オデッセイなど人気車種を製造する埼玉製作所は、今年十一月下旬まで製造ラインで働く従業員の三分の一(約千五百人)を期間社員が占めていました。このうち六百人が削減対象で、段階的に雇い止めを通知されています。

妻にいえず
 「これを理由に、ホンダはモノをいわせようとしない」。二十代後半の女性は、財布の中から小さく折りたたんだ紙を取り出しました。「期間契約社員雇用契約書」です。

 「○月○日~○月○日」と記された契約期間は二カ月。女性は「私たちはブルーカラー(肉体労働者)の底辺で、使い捨ての負け組集団」と語ります。

 ホンダのような大企業がたった二カ月の雇用契約で使い捨てにしていいのか。労働契約法の趣旨について二〇〇七年五月三十一日、柳澤伯夫厚生労働相(当時)が「非常に短期間の細切れ的な期間を設定してそれを更新すると、頻繁に更新するというような雇用契約というものが望ましいとは、これは全く考えておりません」と国会で答弁しています。

 不安定雇用でも作業は正社員と同じ。ホンダ本社の広報担当者も「期間社員の作業内容が異なればラインはまわらず、車は完成しない」と説明します。

 埼玉製作所では「人を中心とした理想の生産現場」をうたっていましたが、減産が打ち出された十一月、一変しました。

 三十代の男性は、雇い止めにおびえる日々に耐え切れなかったと、この一カ月間を悔しそうに振り返ります。ストレスから契約更新を自ら希望せず、一月末の雇い止めが決まりました。「まだ、かあちゃん(妻)には言えていない。次の仕事も見つからないし、どう説明したらいいのか」

 「車のローン返済が月十万円」(二十代男性)、「家のローン、子育てがある」(三十代男性)―など工場周辺で困窮した声を聞くと、期間社員の人生は決して短期で刻めないことがわかります。

 当然のように更新を繰り返し、五年、十年と働いてきた期間社員もいます。

 二十代からの青春を期間社員として過ごした三十代男性は、ホンダの車づくりに誇りを感じてきました。今月五日発売の新型アコードのパンフレットも一度は開きましたが、「今のオレにどこの銀行だってローンを組んでくれないよ」。

奇妙な更新
 この男性はホンダの契約更新に奇妙な点があると指摘します。「二カ月の契約更新を繰り返して二年半がたつと、いったん契約を切るんです。そして一カ月ぐらい間をあけてまた入り直させる。その繰り返しです」

 なぜ二年半で区切るのか。ホンダ本社は「二年半や二年十一カ月働いた方には、継続雇用と混同されないように数週間あけていただいている」(広報担当者)と説明します。

 更新を繰り返した有期雇用労働者については常用雇用と同様にみなし、雇い止めを認めなかった判例(東芝柳町工場事件東京高裁判決)があります。ホンダの行為は、長期間継続した雇用をごまかすものです。

 厚労省労働基準局の担当者は「一部の製造業で判例のような事態を恐れ、形式的に間をあける行為が見られるが、それで雇い止めが認められる法的根拠はない。裁判では労働の実態が判断される」と話しています。

内部留保は6兆円超

 自動車メーカー十四社で構成する「日本自動車工業会」(自工会)の会長企業でもあるホンダは「企業の競争力を維持していく観点からの苦渋の決断」(青木哲ホンダ・自工会会長)と非正規切りを正当化しています。

 しかしホンダの内部留保は六兆五百八十八億円(連結、二〇〇七年度)で、製造大企業ではトヨタグループの十三兆九千億円に次ぐためこみです。

 厚生労働省は「有期雇用を常用雇用の代替とするのは好ましくない」としていますが、ホンダは手取り月約二十万円で働く期間社員をもうけを生み出す道具として増やし続けてきました。(グラフ)

(出所:日本共産党HP 2008年12月28日(日)「しんぶん赤旗」)
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非正規切りの引き金を引いたトヨタ自動車-人間使い捨てて大もうけは人権侵害の無法な力、暴力、違法-

2008-12-29 00:10:40 | 国内労働
守れ雇用
非正規6000人 削減計画 トヨタの雇用・地域破壊
「人間使い捨てて大もうけ。ひどい」

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 今年一月に九千人いた期間従業員を来年三月には三千人にまで削減する計画を打ち出し、非正規切りの引き金を引いたトヨタ自動車(愛知県豊田市)。年の瀬を迎えた労働者や下請け企業、地域住民の思いは―。(酒井慎太郎)

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 「次から次へと雇い止め。正社員をめざして頑張ってきたのに、『いらない』と言われるのは我慢できない。自分から満期で辞める」

 二十代の男性はこう語りました。トヨタで働くのは二度目。前回は今春、一年数カ月で雇い止めされました。故郷の九州に帰っても派遣しかなく、再びトヨタで働くしかありませんでした。

 一年前は期間従業員が足りず、十万円の特別手当を上乗せして募集されていたのに、今回は真っ先に余剰人員にされました。「もういやだ。散々、都合よく使われた」

 「明日は自分がホームレス。首をくくりたくなる」と語るのは、八月に雇い止めされ、出身の九州に帰った五十代の男性です。まだ仕事に就けていません。

 トヨタに来た当初は、即戦力の経験者と期待された存在。しかし、人減らしの配置転換が始まると、期間満了の一週間前まで、持ち場を転々と変えられました。

 契約更新を強く求めましたが、半年で雇い止めされました。「人間に対する扱いでない。トヨタは調整弁にして使い捨て、大もうけ。ひどいよ」と訴えました。


 トヨタは、減益を理由に期間従業員の新規採用を中止し、契約期間は更新していません。三月に八千八百人いた期間従業員は今では四千七百人まで減り、来年三月末で三千人にする方針です。

 正社員にも不安が広がっています。

 職場で上司は、「これから残業やボーナスをあてにした生活はしないように」と発言。労働者からは、「家や車のローンがある。今さら、『あてにしないでくれ』と言われても困る」「二兆円の利益があったのと比べると減っているが、大もうけしてきたのに」との声が上がっています。

 市内の高岡工場で働く正社員(59)は、「トヨタは低賃金の期間従業員を使い、正社員は過労死するほど働かせて世界一にのしあがった。それが減益になるとモノのように使い捨てるなど許されません。職場から雇用を守れという運動を強めたい」と話します。


 トヨタの下請け業者の営業も深刻です。

 ある業者は昨年、親会社から、「増産計画が来ている」とすすめられ、数千万円を投じて準備してきた新工場が完成。ところが、あてにした仕事は消え、新品の工作機械を動かせない事態です。

 「トヨタは今度、発注単価を何%、下げてくるのか」。下請け業者の間ではこんなうわさが絶えません。刈谷民主商工会(刈谷市)の新野高規事務局長は「トヨタは利益を減らすなか、いかにもうけるかを考えている。この情勢をチャンスととらえ必ず単価を切り下げてくる。下請けをこれ以上、苦しめる横暴は許されない」と話します。

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トヨタは責任果たせ
労組など反撃 包囲行動
 豊田市は、法人市民税が当初予算の九割の減収になる見通しです。市はトヨタ一社にこの三年間で産業立地交付金総額の六割にあたる十八億七千万円を出しています。

 日本共産党の大村義則市議は、「地域住民に支えられ、市の支援を受けてきたトヨタは雇用と営業を守る責任を果たすべきです」と強調。市に対しても、中小企業や農林業などバランスのとれた地域経済へ転換するよう求めていくと話します。

 日本共産党トヨタ自動車委員会は職場新聞「ワイパー」で、「雇い止めをやめ今こそ正社員に」と訴え、工場門前などで宣伝しています。

 愛知県労働組合総連合は、十二月のトヨタ包囲の地域大宣伝に続き、年明けからも包囲行動に取り組みます。

 榑松(くれまつ)佐一事務局長は、トヨタが十年間で巨額の利益をため込む一方、中小下請けは単価の切り下げで利益は増えていないと指摘。下請けは圧倒的に派遣が多く、下請けの大幅な受注減で、大規模な「派遣切り」が行われていると言います。

 「トヨタは労働者も下請けも使い捨てにしています。トヨタは千五百億円の赤字と発表しましたが、十四兆円もの内部留保(ため込み利益)があり、雇用と中小企業の営業を守る体力は十分にあります。社会的責任を追及していきたい」

(出所:日本共産党HP 2008年12月28日(日)「しんぶん赤旗」)
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正規雇用求め46歳の決断ー実態としてメーカーが使い続けているのだから直接雇って責任を果たすのは当然ー

2008-12-28 02:27:17 | 国内労働
 ニュースUP:現場で考える 正規雇用求め46歳の決断=樋口岳大、日野行介

 ◇「使い捨て、許さない」
 米国発の金融危機を受け、日本国内でも多くのメーカーが次々と人員削減を明らかにしている。真っ先に削減の対象になるのは「派遣」などの非正規労働者たち。派遣会社との契約を打ち切るだけで簡単に削減できるからだ。しかし、こうした「派遣切り」の陰には、生活不安におびえる多数の派遣労働者と家族の人生がある。「正社員になって安心して働きたい」。そんな思いで、巨大メーカーに一人で直訴した46歳の派遣労働者の闘いに密着した。

 「真っ先に首を切られるのは、我々非正規労働者。法律も行政も私たちを守ってくれない」。兵庫県加古川市の圓山(まるやま)浩典さん(46)は00年から、大手重機メーカー「三菱重工業」の高砂製作所(兵庫県高砂市)で請負、派遣の労働者として8年半働いてきた。

 11月20日、日本弁護士連合会が主催した労働者派遣法の抜本改正を求める集会に出席。機械油で汚れた青い作業服姿で、国会議員や弁護士ら約130人を前に声を震わせて訴えた。「私たちを使い捨てにする企業、それを放置する国を許せない。仕事の合間にふと目を閉じると、家族の顔を思い出す。私は家族を守りたいだけ。力を貸してください」。会場から、もらい泣きする声が漏れた。

 圓山さんは当初、請負会社の社員だったが、三菱重工の正社員から直接指示を受けており、実質的な派遣労働を隠す「偽装請負」の状態だった。06年4月、自分も知らない間に「派遣」になっていた。06年は松下電器産業(現パナソニック)やキヤノンなどの巨大メーカーで偽装請負が次々と発覚し、その状態を形式的に解消するため、派遣に切り替えるメーカーが相次いでいた。

 しかし、派遣労働者の受け入れ期限は3年間。高砂製作所は、09年4月の期限が来れば、基本的に再度請負に戻す方針で、このままでは非正規雇用を脱することができない。仕事は重さ数キロの大型研削機を使い、発電用ガスタービンの部品を加工する重労働。機械の振動で首の筋肉を断裂したこともある。それでも圓山さんの時給は1600円、月収にすると25万円程度で、ボーナスは年14万円。正社員とは大きな格差がある。

 低賃金に加え、不安定な雇用が将来への不安をかきたてる。米国エネルギー会社「エンロン」の破綻(はたん)(01年)を受け、製作所の受注が減った際、圓山さんと同じ請負の労働者たちが次々と職場を追われた。その時、正社員から浴びせられた言葉が忘れられない。「お前らは雇用の調整弁や」。「お前らは代わりが何ぼでもおる。ティッシュペーパーと同じや」と言われた同僚もいたという。製作所で派遣労働者を管轄するのは「資材部」。当初は有給休暇すらなく、社会保険もなかった。人間として大事に扱われていないと感じてきた。

     ◇

 今春、請負に戻されると知り、直訴を決心した。もちろん、立場の弱い自分がメーカーに物申せば、いじめを受けたり、解雇されるのではないかという不安はあった。いったん職を失えば、46歳という年齢からも安定した再就職先を見つけるのは難しい。94年に購入した自宅のローンは返済がまだ10年間残っている。

 妻雅子さん(46)は時給750円のパートをし、高校3年生の長女(18)は進学を希望している。家族に相談すると、圓山さんと同じ製作所で、やはり派遣労働者として働く長男(20)は「俺もおやじと気持ちは一緒や」と言った。雅子さんも「子どもや若者たちのため頑張ってほしい。信じているので最後まで一緒に闘いたい」と後押ししてくれた。踏ん切りがついた。

 毎日新聞が10月25日、「直訴」を報道した直後、圓山さんは職場で、三菱重工の社員から声をかけられたという。「新聞見たで、頑張りや」。決断は間違っていなかったと確信した。

 圓山さんは地域労組に加入し、11月6日、「三菱重工との間には実質的な雇用関係が成立している」として、労組メンバーとともに正社員としての直接雇用を三菱重工に申し入れた。応対したのは「勤労課」の初めて会う正社員だった。しかし、「行政指導を受けていないので偽装請負とは思っていない」と繰り返すばかりで、名刺すらもらえなかった。

 初めての話し合いが持たれた12月2日。会社側は「直接の雇用関係にない」との姿勢を崩さず、議論は平行線だった。闘いは始まったばかりだ。

     ◇

 三菱重工のように同じ業務で派遣と請負、期間工を繰り返すケースについて、厚生労働省は「法の趣旨に反する」と問題があることを認めるものの、「直ちに違法とはならない」と規制する姿勢を示していない。

 また、違法派遣や低賃金によるワーキングプア(働く貧困層)の増加などが問題となり、厚労省は労働者派遣法の改正案を今国会に提出している。しかし、改正案は「長く偽装請負で働いてきた労働者と派遣先メーカーの間には、直接の雇用契約が自動的に成立している」とする「みなし雇用」の考え方を否定。正社員として雇用されるには、労働者が自ら偽装請負を立証したうえで、行政が派遣先に勧告する必要がある。このままでは、圓山さんは救済されない。

 非正規労働の問題に詳しい村田浩治弁護士(大阪弁護士会)は「圓山さんのように非正規労働者として長く同じ工場で働くケースは珍しくない。実態としてメーカーが使い続けているのだから、直接雇って責任を果たすのは当然。国として救済するよう法律を改正すべきだ」と指摘する。<阪神支局・樋口岳大、社会部・日野行介>

(出所:毎日新聞 2008年12月10日 大阪朝刊)
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社説ウオッチング:大量失業の危機 派遣法の見直しを

2008-12-28 02:25:19 | 国内労働
 社説ウオッチング:大量失業の危機 派遣法の見直しを

 ◇派遣法の見直しを--毎日
 ◇「雇用対策法成立、今国会で」--朝日
 1年が早い。志位和夫・共産党委員長が衆院予算委員会で派遣労働者差別、雇用格差を追及、インターネット「2ちゃんねる」をはじめ若者から好意的な反響を受けたのは2月8日のこと、首相は福田康夫氏だった。9月に表面化した米金融危機があっという間に世界に広がり、「100年に一度」の不況が日本列島を襲い始めた。このままでは家と職を失ったまま越年する非正規労働者は相当数に上るという。志位氏が追及した時より、状況はさらに悪化している。

 志位質問を思い出させてくれたのが「労働者派遣法を抜本的に見直すことも緊急の課題だ」と書いた毎日社説(19日)だった。

 民主、社民、国民新の野党3党が共同提出した雇用対策関連法案が参院厚生労働委員会で可決されたが、与党の反対で成立の見通しが立たない現状について「野党3党案は与党案と重複した内容もある」「直ちに議論を始め、法案の成立を図ってもらいたい。生活ができないという失業者への生活支援金貸与や住宅対策はすぐにでも行うべきだ。雇用対策を来年の通常国会に先送りにしてはならない」と法案の年内成立を求めた。

 この問題は朝日が17日に「法案に修正すべき点があるならば手直しして、会期末までに成立させるべきだ。政治は苦しむ国民を放置してはいけない」と書き、20日にも「大事なのは対策を実行に移すスピードであり、職を失った人々に早く手当てが届くことだ」と政府・与党の第2次補正先送り姿勢を批判していた。

 ◇産経は民主党批判
 日経も19日「非正規労働者の失業保険の受給要件緩和や、再就職が困難な人への給付日数の延長など、与野党ともに必要と認め、かつ急がれる政策については今国会の会期内に審議を進められないものだろうか。国民の目線に立ちあらゆる可能性を探る必要がある」と求め、東京も「首相に決断を求めたい。評判の悪い定額給付金などを盛り込んだ二次補正のうち、雇用対策部分を取り出して今国会に提出することはできないものか。……与野党が雇用部分を速やかに処理する。それが政治の信頼回復への一歩である」と提案した。

 一方、産経は20日「より責めを負うべきは、政府の対応の遅れを浮き彫りにするねらいで法案を提出した民主党などだ。思惑を優先させ、話し合いを無視する民主党の対応は、共産党ですら批判している」と民主党批判に終始したが、小沢一郎・民主党代表からの党首会談呼びかけを麻生太郎首相が断ったことには触れずじまい。「与野党協議でより効果的な雇用対策の具体案をまとめることこそ、国会の責務ではないのか」とはいうものの他紙とニュアンスが違う。

 毎日の19日社説は一歩踏み込んで「ハケン切り」の「元凶」である労働者派遣法の抜本見直しを求めた。

 「派遣法改正によって、04年に製造業派遣が解禁されて以降、もの作りの現場で正社員から派遣への切り替えが進んだ。しかし、不況となれば非正規社員は真っ先に解約され、ポイと捨てられた。非正規社員は『使い捨て』労働者だったことが、だれの目にも明らかになった」「製造業派遣の禁止や登録型派遣の是非をも含めて、派遣法を全面的に見直す時がきている」と提言したのだ。

 実は政府・自民党や財界でも雇用の規制緩和を見直す動きが始まっている。小泉純一郎首相時代の04年、労働者派遣法が改正され、製造業の派遣が解禁された。しかし、07年1月には安倍晋三首相が財界が求めた「ホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ)」導入の労働基準法改正を非難の嵐の中で断念した。経済財政諮問会議や政府の規制改革会議がもくろんだ一層の労働規制緩和は抑え込まれた。逆に厚労省主導で最低賃金引き上げが行われるなど、労働規制緩和から強化へと「06年に潮目が変わった」(五十嵐仁・法政大学教授「労働再規制-反転の構図を読みとく」)という。

 ◇労使で「非正規」支援を
 日本経団連は昨年、賃上げ容認に転じたが、16日まとめた来年の春闘方針ではベア要求に答えなかった。雇用は「安定に努力」としたものの、具体策はなかった。労働分配率が6年連続で低下した中、連合は昨年の日本経団連の方針転換を受けて8年ぶりのベースアップ要求を目玉にしたが、深まる不況で「非正規社員は解雇し正社員だけ賃上げという構図に、違和感を覚える人も多いだろう」(読売)という国民感情も根強い。

 「全体の雇用を守ることで内需の崩壊をどう防ぐかが問われている」(朝日)、「労使も非正規労働者の解雇について条件や支援策に手を尽くすべきである」(日経)という意見が強まっている。本来は「政労使一体」での敏速な行動が今こそ求められるのだが、「機能マヒ」の麻生政権には何を言っても無駄なのだろうか。【紙面研究本部・長田達治】

(出所:毎日新聞 2008年12月21日 東京朝刊)
コメント (3)
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