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「日の丸・君が代」-「強制おかしい」が国民の合意-

2008-03-03 22:09:13 | 国内教育
主張
「日の丸・君が代」
「強制おかしい」が国民の合意

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 卒業式や入学式で「君が代」を歌わせるためなら手段を選ばない―そんな異常な行政に「待った」をかける司法の判断が続いています。

卒業式めぐりつづく判決
 石原東京都政は「君が代」斉唱・「日の丸」掲揚を「教育正常化」のカナメと位置づけ、都教委通達をだして学校の権限を無視した画一的な卒業式や入学式の執行を命じ、従わない教職員を片っ端から処分しました。生徒には「君たちが大きな口を開けて歌わないと大好きな先生が処分されるんだよ」と陰湿な圧力が加えられます。生徒の心を土足で踏みにじる、教育にあるまじきおこないです。

 これにたいして東京地裁は二〇〇六年九月、都教委の「10・23通達」を違憲・違法と認定し、教職員らに通達に従う義務がないことを確認する判決をくだしました。

 今年二月七日には、定年を迎えた教員のうち不起立だった人だけ再任用を拒否したことを、「客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く」不法行為だと認定し、東京都に二千七百六十万円の賠償を命じました。

 通達を是認した点で不十分ですが、教育熱心で生徒からも「来年も教えて」と慕われていた教員を、「君が代」の踏み絵だけで排除した都の非道さを告発したものです。

 卒業式ではありませんが、障害のある子どもに必要な性教育を保護者の支持のもとでおこなったことへの見せしめとして、都立七生(ななお)養護学校の元校長を処分したことも二月二十五日、違法として都に処分取り消しを命じました。

 神奈川県では、県教委が県立高校などで「君が代」斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を校長に報告させる制度が問題となりました。県の個人情報保護審査会は昨年十月、条例で禁じられている「思想・信条に関する個人情報の収集」にあたるとして、氏名情報の保管や利用を中止する答申をだしました。

 こうした判断の土台には憲法があります。

 「日の丸」「君が代」は侵略戦争のシンボルでした。そのことに思いをはせて拒否の感情をもつ人々の気持ちは、憲法に照らして守られるべき「思想・良心の自由」です。この点は、政府も国会でたびたび「その通り」と答弁してきたことです。

 いま一つの土台は、「なにがなんでも歌わせろ」という行政の命令が、校長の裁量権すら奪い、まじめな教育者をさいなみ、教育の営みをこわしていくことへの深い憂慮です。

 「卒業式は最後の授業」そんな思いで卒業作品をつくり、手づくりの式を準備してきた生徒と教師。それが都の命令で作品は壇上から撤去され、格式ばった式になる。誰が考えても胸がつぶれる光景です。

 世論も、「君が代」などへの賛否をこえて、「強制はおかしい」で一致しています。異常な行政に歯止めをかけ、広げないために力をあわせようではありませんか。

学習指導要領見直しを
 強制のおおもとには、文部科学省が学習指導要領で「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めてきたことがあります。

 その結果全国でも、東京ほどではないにしても強制がすすんでいます。二月公表された新指導要領もこの規定は同じです。

 入学式や卒業式は、子どもを温かく迎え、送り出すためにこそあります。指導要領からこうした規定を削除することをつよく求めます。

(出所:日本共産党HP  2008年3月3日(月)「しんぶん赤旗」)
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国連アフガン特使の後任決まらず空席続くー治安悪化・NATO混迷ー

2008-03-03 22:04:00 | 国際政治
国連アフガン特使
後任決まらず空席続く


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 アフガニスタンの治安や復興活動の調整などで強い権限を持つ国連アフガン特使のポストが、昨年十二月以来、空白のままです。人選が難航するなか、有力候補として名前が挙がっていたカナダのマンレー元副首相も二十七日、“国内事情”を理由に就任の意図を否定しました。

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 ロイター通信によると、マンレー氏側が就任固辞の理由としたのは、「時期」が悪いということです。

 カナダは、“激戦”が続くアフガン南部に展開する二千五百人規模の駐留軍を二〇一一年までに撤退すると発表したばかりです。当初〇九年二月までとしていた駐留期限を延長したものの、他のNATO諸国が南部に千人規模の増派をしなければ、早期の撤退もありうるとの立場です。議会で多数を握る野党側が駐留延長に慎重・反対の立場だけに、政局は不安定です。

 マンレー氏周辺は「いま就任するには時期が良くない。政府のアフガンへの立場がぐらついている」とのべています。

 カナダでは、アフガン南部への展開で兵士に死傷者が増えていることに批判が高まっています。こうした声をふまえ、米国のゲーツ国防長官らはNATO諸国にアフガン南部に増派し、“荷を分かちあう”よう強く要請しました。

 しかし、アフガンへの派兵そのものに反対世論が強いドイツなどは、南部への派兵を拒否。今月開催されたNATO国防相会議では、結論がえられませんでした。

 一方、英独両国などからは、アフガン情勢の打開に向け、民生支援など政治解決を重視する声があがっています。

 こうしたNATO諸国の混迷ぶりが、国連特使人事の難航に拍車をかけています。

 マンレー氏が浮上する前には、ボスニア復興問題に取りくんだ英国のアシュダウン氏が有力視されていました。しかし、アフガニスタンのカルザイ大統領自身が反対して、つぶれました。大統領の権限と特使の権限との調整がついていないというのが理由とみられます。

 後任特使には現在、ノルウェーの外交官・エイデ氏の名前が挙がっています。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は三月六日までに新特使を指名したい意向です。

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 国連アフガン特使 国連安保理の決議に基づき設置された国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の委員長で、正式名称は国連事務総長特別代表です。復興支援全体を調整する権限を持ち、権限の強化も検討されています。〇六年二月に就任したケーニヒス氏が〇七年十二月に退任して以降、空白になっています。

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道路中期計画-生活道優先へ見直せ-

2008-03-03 22:01:58 | 国内経済
道路中期計画
地方の負担30兆円
塩川議員 生活道優先へ見直せ

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 日本共産党の塩川鉄也議員は二十八日、衆院総務委員会で、地方の道路予算が国の道路特定財源の配分に左右され、生活道路が後回しにされている仕組みを批判し、見直しを強く求めました。

 今後十年間で事業費五十九兆円の「道路中期計画」で地方負担分(地方費)は十七兆円。さらに政府は「道路中期計画」の政策目標に基づき、生活幹線道路や通学路、橋りょうなどの地方単独事業を見込んでいます。

 塩川氏は、「道路中期計画」で見込んでいる地方単独事業分が十二・九兆円にも上ることを指摘。「道路中期計画」の地方負担分十七兆円と、同計画に連動する地方単独事業分をあわせると、約三十兆円にもなることを明らかにしました。

 その上で塩川氏は、「道路中期計画」で地方負担が高速道路中心に固定化されてしまう仕組みの見直しを求めました。増田寛也総務相は、「住民との間で、どう財政負担するか、ありうる議論だ。それに伴い(負担の)見直し、変更もありうる」と答えながら、計画そのものの変更に言及しませんでした。

 塩川氏の追及で、都道府県における道路関係経費(歳出)は、一九九八年度と二〇〇六年度を比較すると総額で23・9%減少する一方で、地方の借金(公債費)は102・8%も増えた(総務省・久保信保自治財政局長の答弁)ことも明らかになりました

(出所:日本共産党HP 2008年2月29日(金)「しんぶん赤旗」)

「道路中期計画」
民意にも反する
NHK番組で穀田氏 生活道路優先を主張

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 日本共産党の穀田恵二国対委員長は二日、NHKの「日曜討論」で、道路特定財源問題やイージス艦の衝突事故などについて、各党の国会対策責任者と討論しました。

 冒頭、二〇〇八年度予算案と歳入関連法案を自民・公明が衆院で採決強行したことについて議論になりました。

 穀田氏は、予算案などの審議の過程で、政府自身が、社会保障費の抑制路線や「道路中期計画」などについて「見直し」を表明しはじめたことを指摘。「政府自らが、『変える』といっているときに、(政府案をそのまま)しゃにむに押し通すのは許されない」と与党の姿勢を厳しく批判。与党側が昨年の審議時間と比較して、「十分な審議時間を確保した」と主張したことに対し、「昨年は(与党が)強行採決の連発でまともな審議時間をとらなかった。これを引き合いにだすのは、常識的ではない」と指摘しました。

 さらに、穀田氏は、十年間で五十九兆円を高速道路中心の道路建設に費やす「道路中期計画」について、「肝心な問題は、国民がどうみているのかということだ」と指摘。NHKの世論調査でも、「中期計画」について、「妥当」11%に対し、「妥当でない」は51%と過半数を超え、道路特定財源の一般財源化も「賛成」42%と「反対」22%を上回っているとして、「多くの方が、今の政府案については、おかしいと思っている」と強調しました。

 一方、自民党の大島理森国対委員長は、「一般財源化というが、それでは課税根拠も見直さなければならなくなる」と主張。穀田氏は、「わが党は暫定税率をやめるべきだという立場だ」と述べたうえで、一般財源化に向けた課税根拠の議論については、小泉、安倍両内閣のとき、国民全体を自動車ユーザー(利用者)と考えるべきとすることですでに決着していることを強調しました。

 また、穀田氏は、「中期計画」が、バブル期に作られた一万四千キロの高速道路計画のほかにも、地域高規格道路として七千キロの大型道路を建設する計画や、候補路線として東京湾口道路など六海峡横断道路計画まで含んでいることを指摘。「際限ない道路づくりの計画は、やめるべきだ」と述べました。さらに、与党側から「修正協議」の求めが出されたことについて、「修正の場合は、まず五十九兆円先にありきというのはやめ、六海峡横断道路計画は中止し、地域高規格道路については凍結して見直す。そのうえで、コストも含めて生活道路優先に切り替える。こういう体系のなかで、議論すべきだ」と主張しました。

(出所:日本共産党HP 2008年3月3日(月)「しんぶん赤旗」)

道路特定財源の論戦
固執する論拠 次々崩れる
政府も「見直し」を口に

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 政府・与党が二月二十九日、衆院で強行採決した二〇〇八年度予算案と歳入関連法案。ガソリン税などの暫定税率を十年延長し、五十九兆円もの税金を道路建設に注ぎ込むのが狙いの一つです。しかし、この間の国会論戦では、日本共産党などの追及で、道路特定財源に固執する政府・与党の論拠が次々崩れています。(佐藤高志)

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道路中期計画積算根拠なし
 道路特定財源問題の核心である「道路中期計画」(十年で五十九兆円)。国会審議では、その積算根拠さえ極めていいかげんなことが明らかになりました。

 積算根拠をただした仁比聡平議員に対し、国土交通省は、〇七年度実績をそのまま機械的に各年度の事業量として積算しただけであることを明らかにしました(二月一日の参院予算委員会)。しかも、額賀福志郎財務相は、毎年度の査定も「個別にきちっとやっているわけではない」(二月十九日、衆院財務金融委員会)などと答弁。総額をどう使うかは、「国土交通省のさじ加減」という状況が浮き彫りになりました。

 「中期計画」の問題は、それにとどまりません。バブル時に計画された一万四千キロの高速道路建設に加え、約七千キロの大型道路や東京湾口道路など六つの横断道路まで整備の対象、候補にしていることも論戦で明らかになりました。

 日本共産党の穀田恵二衆院議員は、この問題を指摘して、「(大型道路は)全部で二万一千キロ。これを全部つくるつもりか」と追及。冬柴鉄三国交相は、「大変要望が強い」などと答弁しました。(二月十二日の衆院予算委員会)

 しかし、「中期計画」では、住民が切実に求めている通学路の整備やバリアフリー化、防災対策はあわせても一割程度。高速道路・大型道路の建設ばかりに大盤振る舞いを続ける内容です。

 これには、専門家からも「生活道路は(国の)補助の対象になりにくく、後回しにされているのが実情」(二月二十二日の衆院予算委員会公聴会、「構想日本」の加藤秀樹代表)など批判が相次いでいます。

一般財源化のごまかしも
 政府は、こうした批判に対し、「道路特定財源の余った部分は一般財源化する」と言い訳しています。しかし、この主張も、道路特定財源を固定化するだけで、一般財源化につながるものではないことがすでに明らかになっています。

 佐々木憲昭議員は「政府の主張は、三重に国民をごまかすものだ」と批判(二月二十日の衆院財務金融委員会)。(1)道路特定財源のうち、実際に一般財源にまわる税収割合は、わずか千九百億円(〇八年度予算案)で全体(三兆三千億円)のわずか6%(2)その税収も信号機の設置など道路関係費にしか充てられない(3)「一般財源」にまわした税収相当額は、翌年度の道路整備費に繰り越される―の三点をあげ、「結局、道路整備費を増やす仕組みになっている」と告発しました。額賀財務相は、「計算上はそういうようになる」と認めました。

 論戦がすすみ、道路特定財源の根幹にかかわる問題点が次々と明らかになるなかで、政府自身も「見直し」や「修正」を口にせざるを得ない事態も生まれています。

 笠井亮議員が六大横断道路建設を盛り込んだ「国土形成計画」の閣議決定をやめるよう追及すると、冬柴国交相は「検討する」と表明しました。(二月二十一日の衆院予算委員会)

 さらに笠井氏は、この建設計画の調査を請け負う団体の役員には、ゼネコンや国交省の天下りが占めていることを告発。冬柴国交相は「庶民の目で見ておかしいと思うものは、改革する」と述べ、道路特定財源の使途や決定過程の透明化・見直しのための改革本部の設置にも言及せざるをえなくなっています。

 道路特定財源に固執する政府・与党への国民の不信は、審議を通じてより深まっています。今、必要なことは参院での徹底審議を通じて道路特定財源の問題点をさらに明らかにし、一般財源化に足を踏み出すことです。

(出所:日本共産党HP 2008年3月3日(月)「しんぶん赤旗」)
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続消費税なぜなぜ問答-社会保障の財源を考える(22)-

2008-03-03 21:57:56 | 国内経済
続消費税なぜなぜ問答
社会保障の財源を考える(22)
Q 高速道路どこまでつくるの?

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 「道路の中期計画(素案)」では、全国一万四千キロの高速道路を、すべて建設する方針が示されたといわれます。これは、どういうことでしょうか。

 いわゆる「高速道路」の一万四千キロというのは、一九八七年に策定された「第四次全国総合開発計画(四全総)」で示されたもので、政府は「高規格幹線道路」と呼んでいます。「高規格幹線道路」には二種類あります。一つは、「国土開発幹線自動車道建設法」という法律で路線が指定された高速自動車国道(一万一千五百二十キロ)で、もう一つは、国土交通大臣が指定する一般国道自動車専用道路(二千四百八十キロ)です。前者は、東名高速道路や東北自動車道など、後者は、首都圏中央連絡道(圏央道)や本四架橋道路などです。

 高速自動車国道のうち、整備計画が策定されたのは九千三百四十二キロで、そのうち七千五百五十三キロが、今年度末までに供用される予定です。二〇〇五年の道路公団民営化に際して、政府は、当時未着工だった区間を含め、九千三百四十二キロについては、すべて建設することを決めました。そのうち八百二十二キロについては、借金をして有料道路としてつくったのでは採算が合わず、借金返済の見通しが立たないため、「新直轄方式」といって、すべて税金(国と地方が三対一で負担)で建設することにしました。整備計画が立っていない区間については、さらに採算の見通しがないため、つくるかどうかも含めて「白紙」(小泉首相、当時)とされていました。ただし、実際には表のように、整備計画外の区間でも「A´路線」(表の注釈参照)として一千キロ以上が事業化され、そのうち七百十二キロは、すでに供用されています。

 今回の素案では、当時「白紙」とされた区間についてもすべて建設し、一般国道自動車専用道路の未整備の分も含めて、一万四千キロの高規格幹線道路すべてを建設する方針を打ち出しています。素案では、新たに整備する区間については、第二東名道路や圏央道など一部の路線を除いて、ほとんどの路線を有料道路ではなく無料の道路として建設するとしています。つまり、すべてを税金に頼って建設するというわけです。これまで以上に、道路特定財源が高速道路建設に注ぎ込まれることになります。

 さらに、この一万四千キロとは別に、「地域高規格道路」の整備が予定されています。地域高規格道路は、すでに大臣が指定した路線だけでも約七千キロもあります。この中には、東京の首都高速道路(整備中の区間を含む総延長三百二十二キロ)、阪神高速道路(二百六十四キロ)、名古屋高速道路(八十一キロ)、福岡高速道路(五十七キロ)、北九州高速道路(五十キロ)、東京湾アクアラインなども含まれており、広い意味では、これも高速道路です。まだ指定されていない「候補路線」には、東京湾口道路、伊勢湾口道路など、六つの巨大横断道計画まで含まれています。

 地域高規格道路も含めれば二万キロを超え、地球を半周する距離です。この狭い日本の中に、地球の裏側まで届くような距離の高速道路を建設する必要性が、いったいどこにあるのでしょうか。(つづく)

(出所:日本共産党HP 2008年2月29日(金)「しんぶん赤旗」)
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派遣労働とキヤノンと観音様

2008-03-03 20:34:17 | 国内経済
経済時評
派遣労働とキヤノンと観音様

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 日本共産党の志位和夫委員長が衆院予算委員会で派遣労働の問題をとりあげた質問(二月八日)が、大きな反響を呼んでいます。

 ちょうど一年半前に、NHKのワーキングプア(働く貧困層)の特集番組が、やはり大きな反響を呼んだことがありました。それは、メディアとして初めて正面からワーキングプアの実態をとりあげ、この問題の社会的重大性を警鐘したという意味で画期となった番組でした。

 今回の志位委員長の質問は、全国各地のたたかいの発展をふまえて、ワーキングプアの根源には大企業による雇用の破壊があることを明確にし、政治の課題として「派遣法を改正し“労働者保護法”に」という道筋を示しました。それは、「貧困とのたたかい」の発展にとって、新たな画期をなす質問となったといっても過言ではないでしょう。

日本流と米国流の搾取方法を結合して
 志位質問は、キヤノンの内部資料をとりあげ、大企業による正社員から派遣労働者への置き換えの具体的な実態を追及しました。

 志位委員長は、詳細な調査をもとに、「人間をモノのように使い捨てにする働かせ方」を告発し、「キヤノンは一九九九年の派遣労働の原則自由化以後、八年連続で増収、増益、史上最高の利益をあげ」、「二〇〇七年の純利益は、九九年の何と七倍にもなっている」と指摘しました。

 別表は、キヤノンの異常なもうけぶりを示す経営指標です。総資本営業利益率は、資本がどれだけ効率的に利潤をあげるかを表わしています。キヤノンは、以前から他の大企業の二倍から三倍の利益率でしたが、さらに、最近は利益率が二倍以上に増えています。

 キヤノンの御手洗冨士夫会長は、キヤノンUSAで二十三年間、米国流の経営方法を徹底的に学んで帰国し、九五年にキヤノン社長に就任してからは、米国流の利益最優先の経営改革を断行してきました。

 キヤノンの高利潤の秘密は、一言でいえば、従来の日本流の「ルールなき搾取のやり方」に、米国流の「労働者を効率的に流動させる搾取のやり方」を結びつけて、利益最優先の企業体質を徹底させた点にあります。

IT革命を利用したフレキシブルな生産管理=雇用管理
 キヤノンの異常なまでの搾取強化は、最新のIT(情報技術)を製造工程にとりいれた「セル方式」(注)というフレキシブル(柔軟)な生産管理とともに推進されてきました。

 キヤノンは、ITを使って販売実績の動向にフレキシブルに対応できる生産管理システムを構築し、生産―流通―販売のムダを徹底して省きました。さらに同社は、M&A(合併と買収)を繰り返して、金型メーカーや自動化装置メーカーを自社グループに吸収し、主要部品や製造装置を内部生産することによってコスト削減をフレキシブルに追求する体制もつくりあげてきました。

 こうしたキヤノンのフレキシブルな生産管理のカギをにぎってきたのが、派遣や請負を大量に利用するフレキシブルな雇用管理でした。IT革命による最新の生産力を活用して、生産管理=雇用管理を徹底的にフレキシブルなシステムに革新する―ここにキヤノンの高利潤の最深の秘密があったのです。

どんな意味で「業界の規範」になるか
 キヤノンのホームページによると、キヤノンという社名は、一九三三年の最初のカメラ試作機に、観音様にちなんで「カンノン」と名付けたことに由来するといいます。また、キヤノン(Canon)には、「規範」という意味があり、「業界の規範になるように」という願いも込められているといいます。

 たしかに、キヤノンは、日本でもっとも効率的に利潤をあげる最優秀企業に成長し、その意味では「業界の規範」になっているのかもしれません。しかし、あくなき利潤追求のために、働く人たちを使い捨てにすることは、けっして観音様の本意ではないでしょう。

 志位質問からしばらく後の二月二十日、キヤノンは、同社とグループ各社の派遣と請負の労働者を年内に直接雇用に切り替えると明らかにしました。この決定が確実に実行され、こうした流れこそ「業界の規範」になることを望みたいものです。

※  ※  ※  ※
 今年一月、東京で、EU(欧州連合)と日本の厚労省が共催して「雇用・就労形態の多様化」のシンポジウムがおこなわれました。

 このシンポで印象的だったのは、EUの代表が、「IT革命に対応した雇用・就労形態は、単なるフレキシブルではなく、ルールあるフレキシキュリティーなものでなければならない」と強調したことでした。フレキシキュリティーとは、《柔軟性を意味するフレキシブル》と、《労働者の保護・安定を意味するセキュリティー》を合成したEUの最新の造語です。

 EUの提唱する雇用のフレキシキュリティーは、IT化による労働市場の柔軟性を一面的に求める「市場原理主義」とは異なり、労働者の権利・保護を守りながら、ITの発展を労働市場に取り込もうとする「社会的市場経済」の立場からきています。

 科学技術の進歩による生産力の発展は、資本主義のもとでは、新たな搾取強化の手段に利用されます。しかし、同時に、生産力の発展は、労働条件を改善・向上させる可能性をも示しています。

 ITなどの発展を真に人類の幸福のために役立てるためには、二十一世紀という時代にふさわしく労働者保護立法を再確立し、発展させることが必要です。派遣法を労働者保護の立場から改正することは、その重要な試金石ともなるでしょう。(友寄英隆)

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 (注)「セル方式」とは、「長大なコンベヤラインを廃止し、数人あるいは一人で製品を組み付け、完成させる生産システム」のこと。詳しくは藤田実「キヤノン高収益の陰で何が起きているか」(『経済』〇七年三月号)を参照。

(出所:日本共産党HP  2008年3月1日(土)「しんぶん赤旗」)
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