未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

JR採用差別 判断回避-東京地裁 「時効」口実に賠償認めず-

2008-03-17 00:25:34 | 労働裁判
JR採用差別 判断回避
東京地裁 「時効」口実に賠償認めず

--------------------------------------------------------------------------------

 国鉄分割民営化、JR発足時に国労、全動労の組合員ら千四十七人がJRに不採用・解雇された事件で、国労組合員らが、国鉄を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構に地位確認と損害賠償などを求めた裁判の判決が十三日、東京地裁でありました。

 中西茂裁判長は、時効(三年)で賠償請求権が消滅したとして原告の訴えを退けました。組合差別については判断を避けました。

 中西裁判長は、「損害が生じたのはJR不採用の一九八七年四月、あるいは遅くとも国鉄清算事業団を解雇された九〇年四月であり、原告らは法的措置をとらなかった」として、時効が完成していると判断しました。

 記者会見した原告団の川端一男代表は、「司法の恥だ。不当労働行為にふれない逃げの判決であり、許せない」とのべました。

 原告の妻の鈴木淑子さんは、「家族も大変な思いで二十年たたかってきた。機構、政府に責任をとらせるために引き続き頑張る」と発言。国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長は、「政府に政治解決を求める姿勢に変わりはなく、闘争をますます強めたい」とのべました。

 弁護団の萱野一樹弁護士は、時効論はこれまでの判決で否定されていると指摘し、「原告らの二十年の苦しい生活に思いをいたさず、司法の責任を回避した」と批判しました。

 判決について建交労鉄道本部の高橋将治書記長は、「不当労働行為がなかったとはいえなかった。不当労働行為を認定した二つの判決でつくった流れに確信をもってたたかう」とのべました。

 この裁判は、北海道、九州などの国労組合員と遺族ら三十五人が二〇〇四年十一月に提訴しました。

 これまで、〇五年の鉄建公団訴訟判決と今年一月の全動労訴訟判決(いずれも東京地裁)は、不当労働行為・不法行為を認定し、慰謝料の支払いを命令。時効についても、不当労働行為・不法行為の責任が国鉄にあると最高裁が判断した〇三年十二月が起算点であり、完成していないとしていました。

--------------------------------------------------------------------------------

解説
不当労働行為 事実消せず
 JR採用差別事件訴訟で東京地裁民事十九部が十三日出した判決は、労働者が受けた二十一年間におよぶ苦痛や損害を顧みもせず、「時効」の二文字で切り捨てるもので司法の責任を回避した不当な判決です。しかし、国が許されない不当労働行為を行った事実を消し去ることはできません。

 判決は、「損害はJRに不採用になった八七年四月か、国鉄清算事業団から解雇された九〇年四月に発生していたのに、賠償請求をとらなかった」として、時効が完成しているとしました。

 しかし、国鉄がつくった名簿にもとづき採用したのはJRであり、損害賠償よりまずJRに採用を求めたのは当然のことでした。ところが最高裁の多数意見は二〇〇三年十二月、JRに法的責任はないとする一方、不当労働行為の責任は国鉄・清算事業団が負うべきだとする判決を出しました。

 そのため労働者は国側を相手に訴訟を起こしたのであり、賠償請求権が発生するのは、不採用の責任主体が国鉄にあるとの判断が確定した最高裁判決を起算点とするのは当然のことです。

 国による不当労働行為・不法行為を認めた〇五年九月の鉄建公団訴訟判決、今年一月の全動労訴訟判決(いずれも東京地裁)も、この最高裁判決を起算点とし、時効成立を主張する国側のいいぶんを退けました。今回の判決は、こうした最高裁や二つの地裁判決の流れをまったく無視したものです。

 しかも、国をあげて不当労働行為を行った事実は、中央・地方労働委員会命令や〇五年と今年の地裁判決など数々の命令・判決で動かしがたい事実になっています。「時効」の名でこうした国家的不当労働行為を放免することは許されません。

 採用差別事件は、国鉄改革の名による国民サービス切り捨てに反対してたたかう労働組合つぶしをねらって起こされたものです。政府は「一人も路頭に迷わせない」「所属組合で選別しない」との答弁や国会決議も投げ捨て、許されない不当労働行為を働きました。

 こうした事実を否定できないため国側は裁判で労働者の「処分歴」を持ち出して不採用を正当化しようとしました。しかし、労働者から正当な組合活動への参加を理由とした不当な処分だと反論され、最高裁以来の流れにも反して「時効」論に逃げ込むしかなかったのです。逆にいえば、国が不当労働行為を行った事実と責任は争う余地がないことを示しています。

 「時効」で退けようとも不採用から二十年が過ぎ、解決を見ずに亡くなった労働者も多く、家族も含めて苦痛は極限に達しており、人道的立場からも一刻も早い全面解決が求められていることに変わりはありません。

 全国で七百以上の地方議会や七度のILO(国際労働機関)勧告など早期解決を求める世論は国内外に広がっています。国は全面解決に向けて関係者との協議を直ちに開始することこそ求められています。(深山直人)

(出所:日本共産党HP 2008年3月14日(金)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新銀行東京-石原都知事は辞職して責任を取れ/どれだけ税金をつぎ込むのか?-

2008-03-17 00:22:35 | 国内政治
新銀行東京
追加出資ノー87%
党都議団シール投票 「知事は責任とれ」

--------------------------------------------------------------------------------

 「石原は間違いを認めるべきだよ」「税金のむだづかいはやめて」―。日本共産党都議団は十五日、新宿駅東口前で新銀行東京への四百億円の追加出資の是非を問うシール投票を呼びかけました。初回(三日)は四百三十三人が投票、今回は三倍近い千二百九十八人に達しました。追加出資「反対」の欄には千百三十五人(87・4%)がシールを張りました。

 シール投票が始まるとすぐに通行人の足が止まり、駆け寄って投票する人や、党都議団に「がんばって」と声をかける人も。

 武蔵野市の女性(21)=大学生=は「最初に一千億円出資して損しているんでしょ。これ以上税金を注ぎ込むのはやめてほしい」と声を大にして話します。

 視覚障害者の男性(65)は「四百億円あったら中小企業への支援だって、障害者の負担を軽くすることだって、いろいろできるはずです」と語り、都議団の作ったビラの配布も手伝いました。

 男性(67)=新宿区=は「石原は自分の首を自分で絞めているよ。責任を認めるべきだ」といいます。八王子市からきた会社員(32)も、「民間だったらあっというまにつぶれますよ」。

 五カ月の赤ちゃんをつれた西東京市の看護師の女性(30)は、「これ以上お金を入れても経営がよくならないのがわかっているのに、その予算を自民党や公明党が通してしまおうなんてひどい」と話します

(出所:日本共産党HP 2008年3月16日(日)「しんぶん赤旗」)

個別貸倒引当金に疑惑
古館都議追及 「ゼロ」あり得ない

--------------------------------------------------------------------------------

 十四日未明の東京都議会予算特別委員会で日本共産党の古館和憲議員は、赤字を想定していた新銀行東京マスタープラン原案を黒字に書き換えた問題を追及しました。

 古館氏は、二〇〇四年二月策定のマスタープランを都議会で議論した際に当局が提出した資料(表)を示しました。

 資料は新銀行東京が開業三年後に貸出金九千二百九十二億円と想定し、黒字を達成するという計画です。それによれば融資が回収できない時に備えて計上する「一般貸倒引当金」二百四十一億円に対し、融資先が不良債権になった場合などに一般貸倒引当金から引き出して充てる「個別貸倒引当金」がゼロとなっています。これで銀行の負担が軽くなるため計算上は黒字達成となります。

 古館氏は「実際の決算では不良債権が計上されそれに対する個別貸倒引当金も積まれている。ゼロということはあり得ない。いま問題となっているマスタープランの開業三年目の黒字目標はこうしてつくられたのではないか」と追及しました。

 佐藤広産業労働局長は「一般貸倒引当金を厚く積むことで個別貸倒引当金をゼロにしたと聞いている」と答弁しました。

 古館氏は、新銀行東京が発表した調査報告書のなかで仁司泰正元代表執行役が「貸倒引当金をしっかり使い込むこと」と発言し、これが不良債権の原因となったとされているが、マスタープランが論議された〇四年当時、大塚俊郎出納長(現新銀行取締役会議長)が「(貸倒引当金への)繰入額をどんどんつぎ込んでいく」と同様の答弁をしていたことを紹介。大塚氏について「元をたどれば知事の側近だったということ」と批判し、破たん原因がマスタープランにあったことを認め追加出資をやめるよう石原知事に求めました。

新銀行東京 報告書の公表拒否を知事容認

--------------------------------------------------------------------------------

 東京都の石原慎太郎知事は十四日の記者会見で、新銀行東京が経営不振の原因を分析した「調査報告書」の全容公表を拒み続けていることについて問われ、「そういう姿勢に銀行がならざるを得なかったことは、後で理解した」と、新銀行の拒否姿勢を容認しました。

 知事は十一日の都議会予算特別委員会終了後には、「報告の抄訳じゃ、みんなフラストレーション(不満)残ると思う。実名だけ消して出したらいい」とのべていました。

 石原知事は会見でまた、十一日から十四日未明にかけて行われた同特別委員会の総括質疑で、新銀行への四百億円追加出資について都民の理解を得られたかと問われ、「これはなかなか難しい」と語りながら、「議論はする余地がないところまで来ている」と、追加出資に固執する態度を示しました。

新銀行問題で都議会自・公・民
真相究明にフタ

--------------------------------------------------------------------------------

 新銀行東京への四百億円追加出資を審議している東京都議会予算特別委員会で十三日、自民党、民主党、公明党の三党が旧経営陣の参考人招致を否決したうえに、三宅茂樹委員長(自民)は新銀行の調査報告書全文の提出を求める動議は採決にも付さず、真相究明にふたをする暴挙にでて、都議会の歴史に汚点をつけました。(岡部裕三)

--------------------------------------------------------------------------------

 日本共産党の大山とも子都議が出した緊急動議は、(1)新銀行の仁司泰正元代表執行役の参考人招致(2)新銀行が知事に提出した調査報告書全文と付属資料の提出―の二点を求めたものです。

 経営破たんの真相を究明し、追加出資の是非を審議するうえで、不可欠であり、どうしても都民の前に明らかにすべきだったからです。

 ところが三宅委員長は、参考人招致についての動議のみ採決。これを自民、民主、公明の「オール与党」三党がそろって反対に回り、数の力で押しつぶしました。

 調査報告書全文の提出を求める動議は、責任逃れと真相隠しに終始する新銀行現経営陣と石原知事らに追随した、委員長の独断で採決しませんでした。動議は、必ず採決しなければならず、一存で握りつぶした委員長と、これを容認して議会制民主主義のルールを踏みにじった自民、民主、公明の責任は重大です。

8時間で一転
 与党第一党の自民党はもちろん、民主、公明両党の態度もひどいものです。

 同日午前の予算特別委理事会では、日本共産党が提案した参考人招致、報告書の提出に反対したのは自民党だけで、民主は二項目とも賛同、公明も報告書提出には賛同していたのです。

 しかし民主、公明両党は、八時間後の委員会には、自民党に追随し、石原知事と一心同体の「オール与党」の結束の深さを見せつけました。

 「与党自民、公明に加え、民主も四年前に都の一千億円の出資を認めた負い目がある、との指摘もある」(「朝日」十三日付)との報道もあります。

徹底審議こそ
 数の力を頼りに、真相究明にふたをして、四百億円の追加出資に賛成する姿勢を鮮明にした自民党ですが、都民の多数は追加出資に反対し、石原知事の責任に厳しい目を向けています。

 参考人招致動議を否決したうえに、報告書提出を求める動議を採決しないというのは、世論にそむく「レッドカード」です。

 新銀行に追加出資をしたとしても、経営再建の展望はありません。都民の税金から出資した一千億円の税金はすでに棄損状態となり、石原知事が提案した四百億円の追加出資案を認めると、都民一人あたり一万一千円をどぶに捨てたも同然となるのです。

 マスコミ各社も社説でこぞって石原知事を批判し、都議会に「税金投入の最少化が期待できる事業清算を正面から論議すべき」(東京)、「都議会のこれまでの審議で増資の妥当性は明らかになっていない」(日経)と徹底審議を求めています。

(出所:日本共産党HP 2008年3月15日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後期高齢者医療制度-参院予算委 日本共産党・小池政策委員長の質問ー

2008-03-17 00:17:57 | 国内政治
長寿を祝える社会 それこそが政治の責務
後期高齢者医療制度
小池政策委員長の質問 参院予算委

--------------------------------------------------------------------------------

 日本共産党の小池晃政策委員長が、十四日の参院予算委員会でおこなった基本的質疑を紹介します。

--------------------------------------------------------------------------------

自治体の中止・見直しの意見書は484件

 小池晃議員 四月から実施予定の後期高齢者医療制度についてお聞きしたいと思います。制度の実施が近づくにつれて、怒りが広がっています。全国の自治体から政府に寄せられた中止・見直しの意見書がどれだけか、お答えください。

 舛添要一厚生労働相 三月十一日までに本省、当局に届いたものの総数で四百八十四件です。

 小池 全国の自治体の三割近くです。岐阜県の大垣市では、これは自民党の市議会会派が配ったチラシですが、(チラシを示す)「後期高齢者医療制度に断固反対」「国に対し制度の廃止を強力に要望してまいります」と書いてあるんですね。

 このように反対の声が大きく広がっている現状をどのようにお考えか、最初にうかがいたいと思います。

 厚労相 新しい制度が入る時は、どういう制度だろうかという不安の声があるのは確かですし、もう少しこの制度について、政府広報などで徹底周知をしないといけないと思っています。

小池 世界でこういう制度の国があるか
舛添厚労相 皆保険のもとでは把握していない
 小池 新しい制度でも、いい制度だったら歓迎するんです。制度が悪いから、これだけ怒りが広がっているんです。

 後期高齢者医療制度というのは、七十五歳という特定の年齢以上の方のみを対象にする新たな保険制度です。世界の国民皆保険制度の国で、こういう制度をとっている国はありますか。

 厚労相 アメリカ合衆国では、六十五歳以上の高齢者を対象とするメディケア制度はありますが、国民皆保険制度のもとで高齢者の医療を別建てにしている国の例は把握していません。

 小池 ないんですね。みなさんが怒っているのは、負担増に対する怒りだけではないと思うんです。七十五歳以上の方を「後期高齢者」と呼んで、七十五歳になったとたんに、現在加入している医療保険から全員が脱退させられ、新しい制度に囲い込まれていく。今まで扶養家族になっていた方も例外ではないわけです。

 具体例を聞きますが、例えば息子夫婦が会社員として働いていて健康保険に加入している、扶養家族のおじいさんは七十五歳、おばあさんは六十八歳―こういうケースはどうなりますか。

 厚労相 息子の被扶養者だった七十五歳のおじいさんは、健康保険の資格を喪失して、後期高齢者医療制度に加入することになります。六十八歳のおばあさんは、七十五歳に達していませんから、引き続き息子の健康保険の被扶養者となります。

 小池 扶養家族からも引き離される形になるわけですね。

 では、七十七歳の夫と七十歳の妻だけの世帯で、夫が働いて健康保険に加入している、妻は扶養家族だというケースはどうなりますか。

 厚労相 この場合、七十七歳の夫は健康保険の資格を喪失し、後期高齢者医療制度に加入することになります。一方、被扶養者である七十歳の妻も健康保険の資格を喪失し、国民健康保険に加入することになります。

小池 75歳超えたらなぜ扶養家族にしてはいけないのか
厚労相 心身の特性がある
小池 それに合わせた医療を行えばいい話
 小池 日本の健康保険は年齢に関係なく加入できたわけですが、これからは七十五歳になったら、全員が脱退させられるわけですね。家族みんなが一緒に入っていた保険から、追い出してしまう。まるで家族一緒に暮らしていた“母屋”から、七十五歳過ぎた人だけ、“離れ”に移すようなやり方なんですよ。

 なぜこんなことをするのか、お答えいただきたいんです。七十五歳以上の高齢者だけは、なぜ外さないといけないのか。七十五歳をすぎた親は、なぜ扶養家族にしてはいけないんですか。理由を説明してください。

 厚労相 一つは、七十五歳以上の高齢者は、心身の特性がある。それに応じて医療制度もきめ細かく変えていった方がいい。それから病気になった後期高齢者の方々に対して一番いい形でやっていく。

 それが第一ですけれども、高齢者の医療費はやはり維持可能でなければならない。当然、高齢化に伴って、病気にかかる確率も高まるでしょう。今の問題は、市町村ごとに国民健康保険になっていて、保険料も高いところ、安いところが出てくる。保険料を公平に高齢者にも負担していただくために明確な分担ルール―高齢の方々に一割出していただく、あとは若い方々、それから公的なものを出していく―をつくる。

 それから運営主体を都道府県単位にする。集める方と使う方が一元化されますから、財政的な観点からも、運営責任の明確化と安定化をやることができる。

 そういう意味で、こういう独立の医療制度を創設する。なぜか。それは日本が世界でもっとも高齢化が進んでいるわけで、私たちはモデルを提示する。アジア諸国が同じ高齢化の道を歩んでいる時に、維持可能で高齢者にきめ細かい手当てができる制度の創設だと思って、政府・与党で決めたわけです。

75歳といっても、いろんな方がいらっしゃる
 小池 今の説明は七十五歳以上だけを別建ての保険にする説明にはまったくなっていない。心身の特性があるならば、それにあわせた医療をすればいいだけの話で、別の保険に切り離す理由はなにもない。

 厚労省は後期高齢者の特性をどのようにまとめていますか。

 厚労相 社会保障審議会の中の後期高齢者医療のあり方に関する特別部会で議論し、骨子をまとめてもらったものです。特性として、第一に、老化に伴う生理的機能の低下により、治療の長期化、複数疾患への罹患(りかん)、特に慢性疾患が見られること。第二に、症状の軽重は別として、多くの方に認知症が見られること。第三番に、後期高齢者は、いずれ避けることのできない死を迎えることなどがあげられている。

 これに応じて、生活を重視した医療、尊厳に配慮した医療、後期高齢者およびその家族が安心・納得できる医療を前提に、新しい体制を組もうということです。

 小池 胸をはっておっしゃいましたが、私は、ひどいと思いますよ。一口に七十五歳といっても、本当にいろんな方がいらっしゃる。元気に働いている方も一割近くおられるし、町内会長とか老人クラブの会長も、後期高齢者の方がたくさんおられます。なにより人生の達人ですから、私たちも学ぶことがたくさんあるわけです。

 (パネルを示しながら)それを「長期化する、複数疾患だ、認知症だ、いずれ死が避けられない」とひとくくりにして、一つの保険制度に投げ込んでしまう。こんなことがあっていいのか、と思うんです。


年齢による差別が起こるのではないか
 総理にうかがいたい。

 こういうまとめ方をして、別の保険に切り離すことになれば、結局、必要な医療が受けられなくなるのではないか。年齢による差別が起こるのではないか。こういう心配が広がるのは、当然だと思うんです。

 総理、七十五歳という年齢を重ねただけで、差別される、別枠の制度に囲い込まれる、こんなことは許せないという声に、どうお答えになりますか。社会保障制度の財源のあり方には議論があります。しかし、財源問題を論じる前に、こういうやり方は、私は、人の道に反するやり方ではないかと思います。総理、答えてください。

 (首相は答弁に立たず)

 厚労相 人の道に反するのではなく、きめの細かい手当てをする。特性を考え、生活全体を見ていかないと。もちろん、元気な方はおられます。しかし、一般的な特性としてですね。

 それから、財源の問題。市町村ごとにばらつきがある。地域の財政は非常に難しい状況にある。そういうなかで、やはり、いま、人生八十五年時代ですから、長生きしていく。そのなかで、最後の命綱である、この保険制度をしっかりと確保していくのは重要ですから、そういう総合的な観点から申し上げているわけです。

 小池 財源の問題があるからと言って、医療を差別することをやっていいのか、と聞いているんですよ。答えてないじゃないですか。

 厚労相 差別という言葉をお使いになりましたけれど、特性に応じた手当てをする。そのためには、かかりつけのお医者さんを決め、その高齢者について生活全体を見る。そういうことは決して、悪いことではありません。ですから、差別ということではなくて、積極的な側面があるわけですから、ご理解いただけたらと思います。

小池 健診の対象から、なぜ75歳以上を外すのか
厚労相 残存能力を生かす
小池 「残存能力」とは失礼だ
 小池 いい面があるとおっしゃるんで、具体例でお聞きします。

 後期高齢者医療制度に伴って、新たな健康診断制度もできるわけです。特定健診、特定保健指導。しかし、この新しい健診制度の対象は、四十歳から七十四歳までだけです。今までの住民基本健診は四十歳以上であれば誰でも受けられたのに、今度はなぜ、七十五歳以上の方は対象から外したんですか。

 厚労相 何度も申し上げますように、一般的に、生活習慣の改善が困難だということもあり、予防効果が特定健診でどこまであるか。むしろ、クオリティーオブライフ(生活の質)を確保して、本人の“残存能力”とわれわれは言っていますけれども、残された能力をいかにするか。

 例えば、介護の予防をやっていく、そういう観点からやっていっているわけで、その意味で現実にきっちりと見ているわけで、特定検診をやらないから、後期高齢者をほったらかしているということではございません。

 しかし、七十五歳以上の高齢者でも、糖尿病などは早期発見が必要です。従いまして、後期高齢者の広域連合の保険事業として、法律上、この健診を義務づけておりまして、来年度はすべての後期高齢者医療広域連合において、七十五歳以上の高齢者も対象とする健診を行うことに決めました。

 小池 法律上の実施義務は七十四歳までですね。七十五歳以上は努力義務ですね。

 厚労相 法律上は努力義務として位置づけておりますが、来年度はすべての広域連合で行います。

高齢者の方は本当に体のこと大切にしている
 小池 実施するかどうかというより、問題は、法律上義務からはずしたということなんですよ。

 いま、いろんなことをおっしゃいましたけど、例えば生活習慣の改善が困難だと。いまテレビを見ている高齢者の方は怒ってらっしゃると思いますよ。七十五歳過ぎたって、健康づくり、一生懸命やってる人はいっぱいいますよ。山にいったら、ハイキングしている後期高齢者にたくさん出会いますよ。みんな元気でね、本当に体のこと大切にしているわけです。

 それから、残存能力だとおっしゃった。失礼じゃないですか。残存能力の一言で片付けていいのですか。みんな、いくつになったって人生最後まで、本当に花開かせようって頑張っていらっしゃるんですよ。私は、いまの答弁の中に後期高齢者医療制度に対する厚生労働省の考え方が、はっきり出ていると思います。

 しかも、診療報酬の問題です。四月から後期高齢者終末期相談支援料が新設されます。どういうものか説明してください。

 厚労相 これは、終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインなどを踏まえて、患者本人が、希望する終末期の療養内容の決定を支援するための適切な情報提供や、それに基づいた話し合いを行い、患者が終末期における療養について十分理解した上で診療を進めることを評価したものでございます。終末期における診療方針について取りまとめた文書等を提供した場合に算定できるという仕組みになっております。

 小池 患者本人の意思を最優先して、家族や医療従事者がよく話し合って、尊厳ある死を迎える。これは多くの人の願いだと思います。私は、それをお金で誘導するやり方が果たしていいのかという疑問は持ちます。

 しかし、何よりも納得できないのは、何でこれが七十五歳以上の方だけを対象にした制度として始められるのかということなんです。尊厳ある死を迎えたいという願いは年齢に関係ないはずです。なぜ七十五歳以上に限っているのですか。

 厚労相 尊厳ある死を迎える、これは若くてもそういうことが制度化できないかなと、私など、日ごろ考えておりました。しかし、現役でバリバリしているときには、なかなかできません。どうしても終末期になって、そういうことに逢着(ほうちゃく)するわけですから。いま、委員は大変、いいことをおっしゃっているので、そういうことの第一歩として、やっていきたいと。

 七十五だって八十だってこんなに元気だ、という方、たくさんおられます。しかし、一般的な形で、そういう制度の中で診療報酬改定で、終末期、死に直面してきちんとできることを考えていく。そういう相談体制というのは医療提供者の側からも言いにくい。たとえば自分が末期がんだと宣告されたときに、そういう制度があるということは実は、死に直面する。そして、自分の生き方を最後に自分の意思で決めるということにおいて非常に大切ですから、私はその第一歩として位置づけたわけです。

 小池 私の聞いたことに何も答えてないじゃないですか。ごまかしているだけじゃないですか。第一歩だろうとなんだろうと、何で七十五歳に限って、こういうことをやるんだと聞いているんです。答えてください。

 厚労相 何で七十五歳以上を別建てにするのかとおっしゃいましたから、理由を答えました。

健康診断の法律上義務がなくなるのはまさに差別
 小池 説明になっていないですね。

 健康診断は七十五歳過ぎたら法律上の実施義務はなくなる。まさに差別じゃないですか。いくつになっても健康な体でいたいのは、みんなの願いじゃないですか。これでは、七十五歳過ぎたら、病気になってもかまわないということになるではありませんか。

 それから、尊厳死の問題でも、七十五歳以上だけに限って、終末期には尊厳死の証文を書かせる仕組みをつくると。「終末期は全力で治療しなくていい、あまりお金かけることはしないでくれ」、こういうことになるんじゃないか。この制度を見たら、後期高齢者の方は、そうなるんじゃないかと受けとめるのは、当然だと思います。どうですか。

 厚労相 八十になっても九十になっても、ぴんぴん元気であれば、それが理想ですよ。しかし、六十歳の人と比べれば、八十歳の人のほうが罹患する率は非常に多い。そのときに、より心のこもったケアをしたい、と。そういうことでいっているわけであります。ですから七十五という線を引いたということでありまして、私は逃げておりません。ちゃんと答えているつもりでございます。

 小池 後期高齢者というのは、合併症などの問題をかかえている。だからこそ、人生の最後を迎えるときに、医療は最高のものを受けられる制度にしよう。そのためにお金をしっかりかけよう、という制度であれば、私は、賛成できますよ。

 しかし、実際にやろうとしていることはどういうことか。

 医療費の今後の削減額の見込みをパネルにしてみました(パネルを示す)。これを見ますと、二〇一五年には、三兆円の医療費の削減を予定している。そのうち二兆円は後期高齢者分です。二〇二五年には、八兆円の削減額のうち五兆円が後期高齢者分です。この推計のなかには、今後診療報酬をいろいろと改悪する動きは含まれていないのですから、もっと悪い制度にしていこうと思えば、削減額はもっと大きくできることになるでしょう。

 大臣、なにか後期高齢者のためになるようにおもんばかってつくった制度のようにおっしゃるけれど、実際に数字を見れば、まさに後期高齢者が医療費削減の対象、ねらいうちにされている。そういう計画になっていることは、間違いないんじゃないですか。

 厚労相 おおまかに言って、国家予算が八十兆、医療費は三十兆、高齢者の医療費十兆。この問題をどうするか。医療費をべらぼうに伸ばし続ければいいというものではない。(「そんなこといっていない」の声)どうすれば削減できるかを考えるときに、なるべく予防して減らしましょう、そして後期高齢者に早く死ねとか、医療の手を抜いて安上がりにしようなんて、そういう意図でなんてまったくやってませんよ。

 国民皆保険を守るためには財源をしっかりしなければならない。維持可能な医療制度をどうしていくのか。そのことをやっぱり無視してはいけません。

福田首相 よりよい制度に直していくのも必要
小池 長生きしたら「医療費の心配はない」とするのが本来の姿だ
 小池 私は、医療費をべらぼうに伸ばせとはいっていないんです。削減するときに、まず一番の高齢者から削減の対象にしていくことが、社会のあり方として、どうなのかと申し上げている。しかも、高齢者から一人残らず、強制的に年金から天引きして保険料をとることまで始めようとしていますね。

 厚労省の担当者が、石川県で講演しているんです。なんといっているか。「この制度は、医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者がみずから自分の感覚で感じとっていただくものだ」と。説明会でこういう話をしているんですよ。(「それはひどい」「だれだ、そんなことを言ったのは」の声)

 総理、しっかり答えていただきたいと思うんです。きょうの朝日新聞にも投書が出ていました。「私自身、来年からこの制度に組み込まれる。有無を言わさず、『あの世に早く行け組』に編入される感じだ」と。こういう投書です。

 高齢者のみなさんというのは、まさにあの悲惨な戦争を体験されたわけです。戦後は、日本の復興のために必死になって働いてこられた世代ですよ。そういう世代のみなさんが、いよいよ高齢期になったら、自分は国から捨てられようとしているんじゃないかという思いにさせている。後期高齢者医療保険証が送られて、そんな思いをさせることを、私は政治がやってはいけないと思うんです。

高齢者の命をおろそかにする国に未来はない
 総理、高齢者だけ切り離して、肩身の狭い思いをさせるような社会、医療を受けることをためらわせるような社会、日本をこんな社会にしていいと思いますか。

 日本の社会というのは、高齢期を迎えれば、七十七歳ならば喜寿だ、八十八歳ならば米寿だ、卒寿(九十歳)だ、白寿(九十九歳)だ、高齢をみんなで祝う社会だったじゃないですか。それが高齢を迎えたら、この社会に居心地が悪くなるような、そんな制度をつくっていいのかということを、私は率直に総理に問いたい。

 福田康夫首相 制度は誰にとってもいいものであってほしいと思います。しかし、限界があるということもお分かりですよね。お金もかかるし、それを社会でどこまで支えられるかという問題がありますから。その点も配慮しながら、できるだけ、高齢者といえども十分な対応をしてもらえるような、そういう社会が必要だと私は思います。

 高齢化の中で医療費が増えていく。現役世代と高齢者の負担のルールを明確にして、高齢者にも若い人にも、納得して負担してもらえる仕組みでなければいけない。そういう仕組みの医療保険制度を、持続可能なものにしなければいけない。そういう必要性はお分かりになると思います。

 そういう理由から今回の制度をつくったもので、後期高齢者の心身の特性に応じた適切な医療を提供する、きめの細かい対応ができるような取り組みをすすめていくと。こういうふうに考えているわけです。

 高齢者担当医の仕組みも、あくまでも高齢者本人の選択によって利用されるものです。

 もし、不満があるというならば、よりよい制度に直していくのも必要なことです。これで最後ではない。工夫して対応していくことが必要ではないかと思っています。

 小池 持続可能というけれども、私は高齢者のみなさんが、この国に生まれてよかったと思えないような政治、こんな政治に未来はないと思います。お金のことをいろいろ言うが、財源を理由にして、まず真っ先に高齢者の命をおろそかにする。高齢者の医療から削る。こんな国に未来はないですよ。

 「暮らしが苦しいから、まず年寄りの暮らしから削ろう」、こんな家庭は日本中一つもありません。

 私は、後期高齢者の制度を新たにつくるというのなら、「七十五歳まで長生きしておめでとうございます。今日から医療費は心配ありません、最高の医療が受けられます」。これが私は政治というものだと思います。

 国会には、後期高齢者医療制度廃止の法案も、私たち出しておりますし、ぜひこれも議論しましょう。(首相は)問題があるということを、先ほど認めるような発言もしています。始まってからの見直しでは遅いんです。ただちに四月の実施を中止をし、撤回をすることを求めて質問を終わります。

(出所:日本共産党HP 2008年3月16日(日)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする