「慰安婦」決議39対2
米下院委可決 本会議で来月採決へ
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【ワシントン=鎌塚由美】旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案が二十六日、米下院外交委員会で圧倒的多数で採択されました。討論では、安倍晋三首相と「靖国」派国会議員への批判が続出。ペロシ下院議長は同日、同決議案の本会議可決を目指すとの声明を発表しました。
採決回避に動いた日本政府のもくろみは破たんし、安倍首相の強制性否定発言をはじめ過去の侵略戦争を正当化する「靖国」派勢力への国際的な糾弾の流れが鮮明になりました。
外交委員会は、ラントス委員長(民主党)とロスリティネン議員(共和党)が共同提案した修正案を協議し、修正案を賛成三十九、反対二で可決しました。
修正案は、日米同盟の重要性を強調する文言を挿入し、日本の首相に謝罪を求める表現を若干和らげました。しかし、日本軍による女性への性奴隷の強制を日本政府が「明確であいまいでない方法で、公式に認め、謝罪し、歴史の責任を受け入れる」との要求は変わっていません。
討論では民主、共和両党の議員が、強制性を否定した安倍首相の発言を批判、「日本の謝罪は不十分」との声が相次ぎました。
委員会を通過した決議案は本会議に上程されます。本会議を取り仕切るペロシ議長は声明で、決議案の本会議での可決を目指すと表明。七月中に本会議で採決の可能性がいっそう高まりました。
ペロシ議長は「慰安婦」問題では、「日本政府には、もっとすべきことがある」と指摘、「過去の過ちを認識し、その歴史を繰り返さないために、未来の世代を教育するのに遅すぎるということはない」と語りました。
二十六日現在、同決議案の共同提出議員は、百四十九議員を数えています。
「慰安婦」問題の米下院委決議
断罪された「靖国」派
日本政府は「謝罪を拒否」
安倍発言は「筋通らない」
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「戦後ドイツは正しい選択をした。一方、日本は歴史の健忘症を積極的に促進させている」。最上段の委員長席に座るラントス委員長が声を高めると、委員会室の空気が張り詰めました。二十六日、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議案を圧倒的多数で採択した米下院外交委員会。討論では、民主、共和両党の議員が相次いで発言を求め、安倍晋三首相や「靖国」派の国会議員を「歴史を反省しない不誠実な態度」と批判しました。(ワシントン=鎌塚由美)
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この日の外交委員会は、イラン問題などの重要法案が審議されました。「慰安婦」決議案は、それらと並ぶ重要案件として特別の討論が行われ、約二十人が発言、一時間二十分に及びました。昨年の同様の決議案が討論なしの発声採択されたのとは様変わりでした。
議員からの批判は、日本軍による強制と関与を認めた河野官房長官談話(一九九三年)を、安倍首相や、「靖国」派議員が覆そうとしていることへ集中しました。
音頭をとったラントス委員長は、日本政府が元「慰安婦」たちに「謝罪を拒否している」だけでなく、「犠牲者を非難するゲームをもてあそぶ」ようだと批判しました。
「意見広告」に批判
同委員長は、ハンガリー出身のユダヤ人で、ナチスによるホロコースト(大虐殺)の生き残り。昨年の外交委員会では、小泉首相の靖国参拝を「ナチ指導者の墓に花輪を置くに等しい」と批判していました。それだけに反省のない日本の「靖国」派勢力の主張に「非常に心かき乱される」と怒りをあらわにしました。
委員長は、ワシントン・ポスト紙に日本の「靖国」派議員が出した意見広告を取り出し、「生き残った慰安婦たちへの中傷」であり、「事実と真っ向から対抗する、ばかげた主張」だと非難。こうした主張が、国会議員によって行われたことに強い懸念を示しました。
スミス議員(共和)は、安倍首相が「(性奴隷の)強制を否定」したことは、河野談話の「正当性と誠実性に対する挑戦」だったと指摘。米国の「よき友、同盟国である日本に、人権侵害や歴史の事実を覆い隠すことをさせてはならない」と述べました。
元「慰安婦」が証言したアジア・太平洋・地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主)は、河野談話を読み上げて引用。安倍首相の発言を「筋が通っていない」と指摘。「日本政府がこの決議案を真剣に検討することを望む」と語りました。
「歴史の事実」強調
傍聴には、「慰安婦」決議案の採択を求めてきた諸団体の代表が詰めかけました。アムネスティ・インターナショナル米国のクマール氏は、「決議案は日本たたきではなく、道義的責任の問題です。戦場での人権侵害を未来に起こさせないためにも、引き続き本会議での採決に向け頑張りたい」と語りました。
「慰安婦問題ワシントン連合」のソ・オクチャ会長は、決議案の採択について「生き残った元『慰安婦』の女性たちは、涙を流して歓喜しているに違いない」と述べ、「『慰安婦』は性奴隷であり人権侵害だと、議員たちが深く理解して議論してくれたことが印象深かった」と議員の発言を歓迎しました。
各議員は、日本軍がアジアの女性たちを強制的に性奴隷である「慰安婦」にしたことは「歴史の事実」だと繰り返し指摘。また、米議会で証言した元「慰安婦」の女性たちの勇気をたたえました。アッカーマン議員(民主)は、元「慰安婦」の女性たちは、「過ちを繰り返してはならないと沈黙を破りホロコーストを告発したユダヤ人たちと同じだ」と語りました。
「慰安婦」問題
「強制性ない」の首相発言 撤回せよ
共産党、一貫して追及
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日本共産党は、「従軍慰安婦」問題で早くから元被害者の立場に寄り添いながら、「従軍慰安婦」が強制連行された事実を認めるよう繰り返し政府に迫り、実態調査を要求してきました。こうした追及の結果、政府が、日本軍の関与・強制を公式に認め、反省とおわびを表明したのが一九九三年の「河野官房長官談話」です。
安倍政権が誕生してからも、この「河野談話」を継承するのかどうか、きびしく迫ってきました。安倍首相が中堅議員だった九七年、国会質問で「強制性を検証する文書が出ていない」などと強制性を否定し、「河野談話の根拠が崩れている」と主張するなど、「従軍慰安婦」問題の存在を否定する「靖国」派の立場に立っていたからです。
「河野談話」継承を
日本共産党の志位和夫委員長は、安倍首相が就任した直後の二〇〇六年十月の国会で、ただちに首相の認識を追及。首相のかつての質問も引用しながら、「いまでも『河野談話の根拠は崩れている』という認識なのか」とただしました。
本会議、衆院予算委員会での繰り返しの追及に、首相は、「『河野談話』を引き継ぐ」と答えざるを得ませんでしたが、強制に「狭義」「広義」をもちだして、「狭義の強制性を裏付けるものはない」と答弁しました。
志位氏は、河野談話は、首相のいう「狭義の強制」も認めていると指摘し、首相を批判。「この非人間的な犯罪行為によって犠牲となったアジアの方々、とりわけ直接被害にあわれた方々にたいして謝罪をされるべきではないか」と迫りました。
下村氏の罷免要求
今年二月、米下院で「慰安婦」問題の決議案採択の動きが再び起こると、安倍首相は、「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言。下村博文官房副長官にいたっては「従軍慰安婦はいなかった。日本軍が関与していたわけではない」と、河野談話を全面否定する発言を公然と行いました。
日本共産党は、市田忠義書記局長が記者会見し、「首相の発言は、事実上、河野談話の否定につながる」と批判。吉川春子参院議員は、予算委員会で、首相に「強制性はない」という発言を撤回するよう追及しました。
首相は、「おわび申し上げている」「河野談話を継承する」といいながら、発言の撤回をせず、吉川質問は外国の報道機関によって世界に伝えられました。
志位氏は記者会見し、強制性を否定した首相発言の撤回と、政府見解を真っ向から否定する下村官房副長官の罷免を要求しました。
「矛盾の拡大」警告
志位氏はさらに、「河野談話を覆そうという動きが底流にある。河野談話では『慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった』といっており、ここに強制性の核心がある」(三月二十七日CS放送・朝日ニュースター)と指摘。
首相発言の撤回と下村副長官の罷免について、「そうしない限り、おわびは本物と受けとめられない。従軍慰安婦問題で、歴史をゆがめ、元慰安婦を傷つける発言に固執することは、拉致問題の解決も遠ざける」と厳しく迫りました。
ことし五月の日本共産党第四回中央委員会総会で、志位氏は「従軍慰安婦」問題での「強制連行はなかった」とする「靖国」派が安倍政権の中枢を握ったことの危険性を警告。「自民党政治のゆきづまりをいっそう深刻なものとするとともに、アジアや世界との矛盾を拡大せざるを得ません」と指摘しました。
(出所:日本共産党HP 2007年6月28日(木)「しんぶん赤旗」)
米下院委可決 本会議で来月採決へ
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【ワシントン=鎌塚由美】旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案が二十六日、米下院外交委員会で圧倒的多数で採択されました。討論では、安倍晋三首相と「靖国」派国会議員への批判が続出。ペロシ下院議長は同日、同決議案の本会議可決を目指すとの声明を発表しました。
採決回避に動いた日本政府のもくろみは破たんし、安倍首相の強制性否定発言をはじめ過去の侵略戦争を正当化する「靖国」派勢力への国際的な糾弾の流れが鮮明になりました。
外交委員会は、ラントス委員長(民主党)とロスリティネン議員(共和党)が共同提案した修正案を協議し、修正案を賛成三十九、反対二で可決しました。
修正案は、日米同盟の重要性を強調する文言を挿入し、日本の首相に謝罪を求める表現を若干和らげました。しかし、日本軍による女性への性奴隷の強制を日本政府が「明確であいまいでない方法で、公式に認め、謝罪し、歴史の責任を受け入れる」との要求は変わっていません。
討論では民主、共和両党の議員が、強制性を否定した安倍首相の発言を批判、「日本の謝罪は不十分」との声が相次ぎました。
委員会を通過した決議案は本会議に上程されます。本会議を取り仕切るペロシ議長は声明で、決議案の本会議での可決を目指すと表明。七月中に本会議で採決の可能性がいっそう高まりました。
ペロシ議長は「慰安婦」問題では、「日本政府には、もっとすべきことがある」と指摘、「過去の過ちを認識し、その歴史を繰り返さないために、未来の世代を教育するのに遅すぎるということはない」と語りました。
二十六日現在、同決議案の共同提出議員は、百四十九議員を数えています。
「慰安婦」問題の米下院委決議
断罪された「靖国」派
日本政府は「謝罪を拒否」
安倍発言は「筋通らない」
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「戦後ドイツは正しい選択をした。一方、日本は歴史の健忘症を積極的に促進させている」。最上段の委員長席に座るラントス委員長が声を高めると、委員会室の空気が張り詰めました。二十六日、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式の謝罪を求める決議案を圧倒的多数で採択した米下院外交委員会。討論では、民主、共和両党の議員が相次いで発言を求め、安倍晋三首相や「靖国」派の国会議員を「歴史を反省しない不誠実な態度」と批判しました。(ワシントン=鎌塚由美)
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この日の外交委員会は、イラン問題などの重要法案が審議されました。「慰安婦」決議案は、それらと並ぶ重要案件として特別の討論が行われ、約二十人が発言、一時間二十分に及びました。昨年の同様の決議案が討論なしの発声採択されたのとは様変わりでした。
議員からの批判は、日本軍による強制と関与を認めた河野官房長官談話(一九九三年)を、安倍首相や、「靖国」派議員が覆そうとしていることへ集中しました。
音頭をとったラントス委員長は、日本政府が元「慰安婦」たちに「謝罪を拒否している」だけでなく、「犠牲者を非難するゲームをもてあそぶ」ようだと批判しました。
「意見広告」に批判
同委員長は、ハンガリー出身のユダヤ人で、ナチスによるホロコースト(大虐殺)の生き残り。昨年の外交委員会では、小泉首相の靖国参拝を「ナチ指導者の墓に花輪を置くに等しい」と批判していました。それだけに反省のない日本の「靖国」派勢力の主張に「非常に心かき乱される」と怒りをあらわにしました。
委員長は、ワシントン・ポスト紙に日本の「靖国」派議員が出した意見広告を取り出し、「生き残った慰安婦たちへの中傷」であり、「事実と真っ向から対抗する、ばかげた主張」だと非難。こうした主張が、国会議員によって行われたことに強い懸念を示しました。
スミス議員(共和)は、安倍首相が「(性奴隷の)強制を否定」したことは、河野談話の「正当性と誠実性に対する挑戦」だったと指摘。米国の「よき友、同盟国である日本に、人権侵害や歴史の事実を覆い隠すことをさせてはならない」と述べました。
元「慰安婦」が証言したアジア・太平洋・地球環境小委員会のファレオマバエガ委員長(民主)は、河野談話を読み上げて引用。安倍首相の発言を「筋が通っていない」と指摘。「日本政府がこの決議案を真剣に検討することを望む」と語りました。
「歴史の事実」強調
傍聴には、「慰安婦」決議案の採択を求めてきた諸団体の代表が詰めかけました。アムネスティ・インターナショナル米国のクマール氏は、「決議案は日本たたきではなく、道義的責任の問題です。戦場での人権侵害を未来に起こさせないためにも、引き続き本会議での採決に向け頑張りたい」と語りました。
「慰安婦問題ワシントン連合」のソ・オクチャ会長は、決議案の採択について「生き残った元『慰安婦』の女性たちは、涙を流して歓喜しているに違いない」と述べ、「『慰安婦』は性奴隷であり人権侵害だと、議員たちが深く理解して議論してくれたことが印象深かった」と議員の発言を歓迎しました。
各議員は、日本軍がアジアの女性たちを強制的に性奴隷である「慰安婦」にしたことは「歴史の事実」だと繰り返し指摘。また、米議会で証言した元「慰安婦」の女性たちの勇気をたたえました。アッカーマン議員(民主)は、元「慰安婦」の女性たちは、「過ちを繰り返してはならないと沈黙を破りホロコーストを告発したユダヤ人たちと同じだ」と語りました。
「慰安婦」問題
「強制性ない」の首相発言 撤回せよ
共産党、一貫して追及
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日本共産党は、「従軍慰安婦」問題で早くから元被害者の立場に寄り添いながら、「従軍慰安婦」が強制連行された事実を認めるよう繰り返し政府に迫り、実態調査を要求してきました。こうした追及の結果、政府が、日本軍の関与・強制を公式に認め、反省とおわびを表明したのが一九九三年の「河野官房長官談話」です。
安倍政権が誕生してからも、この「河野談話」を継承するのかどうか、きびしく迫ってきました。安倍首相が中堅議員だった九七年、国会質問で「強制性を検証する文書が出ていない」などと強制性を否定し、「河野談話の根拠が崩れている」と主張するなど、「従軍慰安婦」問題の存在を否定する「靖国」派の立場に立っていたからです。
「河野談話」継承を
日本共産党の志位和夫委員長は、安倍首相が就任した直後の二〇〇六年十月の国会で、ただちに首相の認識を追及。首相のかつての質問も引用しながら、「いまでも『河野談話の根拠は崩れている』という認識なのか」とただしました。
本会議、衆院予算委員会での繰り返しの追及に、首相は、「『河野談話』を引き継ぐ」と答えざるを得ませんでしたが、強制に「狭義」「広義」をもちだして、「狭義の強制性を裏付けるものはない」と答弁しました。
志位氏は、河野談話は、首相のいう「狭義の強制」も認めていると指摘し、首相を批判。「この非人間的な犯罪行為によって犠牲となったアジアの方々、とりわけ直接被害にあわれた方々にたいして謝罪をされるべきではないか」と迫りました。
下村氏の罷免要求
今年二月、米下院で「慰安婦」問題の決議案採択の動きが再び起こると、安倍首相は、「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言。下村博文官房副長官にいたっては「従軍慰安婦はいなかった。日本軍が関与していたわけではない」と、河野談話を全面否定する発言を公然と行いました。
日本共産党は、市田忠義書記局長が記者会見し、「首相の発言は、事実上、河野談話の否定につながる」と批判。吉川春子参院議員は、予算委員会で、首相に「強制性はない」という発言を撤回するよう追及しました。
首相は、「おわび申し上げている」「河野談話を継承する」といいながら、発言の撤回をせず、吉川質問は外国の報道機関によって世界に伝えられました。
志位氏は記者会見し、強制性を否定した首相発言の撤回と、政府見解を真っ向から否定する下村官房副長官の罷免を要求しました。
「矛盾の拡大」警告
志位氏はさらに、「河野談話を覆そうという動きが底流にある。河野談話では『慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった』といっており、ここに強制性の核心がある」(三月二十七日CS放送・朝日ニュースター)と指摘。
首相発言の撤回と下村副長官の罷免について、「そうしない限り、おわびは本物と受けとめられない。従軍慰安婦問題で、歴史をゆがめ、元慰安婦を傷つける発言に固執することは、拉致問題の解決も遠ざける」と厳しく迫りました。
ことし五月の日本共産党第四回中央委員会総会で、志位氏は「従軍慰安婦」問題での「強制連行はなかった」とする「靖国」派が安倍政権の中枢を握ったことの危険性を警告。「自民党政治のゆきづまりをいっそう深刻なものとするとともに、アジアや世界との矛盾を拡大せざるを得ません」と指摘しました。
(出所:日本共産党HP 2007年6月28日(木)「しんぶん赤旗」)