裁判員制度
国会審議から課題浮き彫り
守秘義務に懸念相次ぐ
冤罪救済の妨げに/取り調べ可視化を
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二十一日から始まる裁判員制度について、衆・参法務委員会で集中審議がされるなど、さまざまな議論が行われています。審議から浮き彫りになった課題は何か―。
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裁判員に選ばれた人には、評議の経過などを家族にも一生漏らしてはいけないという厳しい守秘義務が課せられます。違反すると、六カ月以下の懲役または五十万円以下の罰金が科せられます。
参院法務委員会の参考人質疑(四月九日)では、守秘義務への懸念が共通して出されました。
国学院大学の四宮啓教授(弁護士)は「アメリカの陪審員は守秘義務が一切ない」「守秘義務を解除してでも、制度のよりよい定着のために国民の声を聞くという方向を考えていただきたい」と発言。
竹田昌弘共同通信編集委員は「裁判の公正や信頼を確保するために、議論の経過も聞いた方が、有権者は信頼するのではないか」と述べました。
日本共産党の仁比聡平参院議員は守秘義務について、「(多数決で死刑判決になった場合など)良心を傷つけられたまま家族や友人に話すこともできないのでは、精神的なケアもできない。生涯、刑罰をもって口外を禁止するのは過酷極まりない。裁判員制度は国民の良心を信頼し成り立つ制度だ。処罰規定は削除すべきだ」(三月三十日の参院法務委員会)と強調しています。
裁判員制度開始に伴い、刑事訴訟法が改定され、検察側が開示した証拠のコピーの目的外使用が禁止されたことも問題になっています。冤罪(えんざい)の救済が困難になるという指摘があります。
四月九日の参院法務委の参考人質疑で、仁比氏は「重大事件において、裁判上の証拠をメディアなどが入手し、批判的に分析することで、冤罪からの救済が図られることがある」と指摘。竹田氏は「なんとかしてほしい条文だ。冤罪を指摘する活動は、立件対象にならないようにしてほしい」と答えました。
裁判員制度開始が目前に迫っていますが、公正な裁判のための制度的保障は不十分なままです。とくに警察などでの取り調べ全過程の録音・録画や、検察官が収集した証拠を弁護人に全面開示することが不可欠です。
録音・録画を義務化する「可視化法案」(民主党提出)が、四月二十四日の参院本会議で、日本共産党、民主党、社民党の賛成多数で可決し、衆院に送付されました。刑事司法に対する国民的監視が求められます。 (小林拓也)
(出所:日本共産党HP 2009年5月10日(日)「しんぶん赤旗」)
全面可視化が不可欠
取り調べ 冤罪防止に重要
仁比議員
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仁比聡平議員は二十三日、参院法務委員会で、警察などでの取り調べの録音・録画を義務化する「可視化法案」(民主党提出)の質問に立ちました。
仁比氏は、「踏み字」や自白強要で冤罪(えんざい)がつくり出された志布志事件(鹿児島県)を例に、代用監獄での長期間身柄拘束や長時間の違法な取り調べ、自白偏重などの構造的な問題を放置したままでは、国民のための司法は実現できず、刑事司法の信頼回復や冤罪の防止は困難であることを強調しました。
仁比氏は、鹿児島県警が、「信頼回復の努力中」という時期(昨年三月)に、喫煙で補導した少年の態度が反抗的だとして警察署内の道場で足払いを掛けて何度も転倒させるなどした警官が特別公務員暴行陵虐容疑で書類送検された問題を指摘。「これが警察の真相の解明か、更生の意欲を引き出すやり方か」と追及しました。警察庁の米田壯刑事局長は「真相の解明でも更生の意欲を引き出すものでも到底ない。誠に遺憾だ」と謝罪しました。
仁比氏は「現場や取調官の認識がどうなっているのか、現実から出発しなければ冤罪や人権侵害をなくすことはできない。密室司法に裁判員を巻き込むことになる」として、取り調べの全面可視化の重要性を主張しました。
提案者の民主党・前川清成参院議員は、「捜査の適正化によって冤罪をなくすという意味でも、任意性の判断の上からも(全面可視化は)大変必要だ」と答えました。
同法案は、二十四日の参院本会議で、日本共産党、民主党、社民党の賛成多数で可決されました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月27日(月)「しんぶん赤旗」)
アンケートを民間委託
裁判員制度で追及
仁比議員
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五月に始まる裁判員制度について、裁判員に厳しい守秘義務を課しながら、評議の検証のために裁判員が書くアンケートの分析などが民間業者に委託されることが九日、参院法務委員会での日本共産党の仁比聡平議員の質問でわかりました。
仁比氏が「検証のためのアンケートのとりまとめを民間業者に委託するのか」とただしたのに対し、最高裁判所の小川正持刑事局長は「アンケートの実質的な作業について業者に委託する予定だ」と認めました。
仁比氏は、評議に関することを漏らしてはいけないという裁判員に課せられた守秘義務を解除せずに、「評議のあり方も含めた制度の検証をするのは不可能だ。守秘義務規定の削除を検討し、裁判員を経験した方々の意見を率直に聞くべきだ」と強調しました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月11日(土)「しんぶん赤旗」)
裁判員制度
死刑判決 全員一致で
参院委 参考人が改善求める
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参院法務委員会は九日、五月から始まる裁判員制度についての参考人質疑を行いました。三人の参考人はそれぞれ「裁判員制度は、従来の公判審理のあり方に反省を迫り、公判の活性化に重要な役割を果たすものだ」(大澤裕・東京大学大学院教授)など制度導入の意義を語りました。
一方、共同通信編集委員の竹田昌弘氏は、裁判員になる人の「心理的不安が大きい」と指摘。「死刑判決だけは、裁判員と裁判官の全員一致を要件とする必要がある」などの改善点を挙げました。
国学院大学の四宮啓教授(弁護士)は、裁判員に厳格な守秘義務が課せられることについて、「少し範囲が広いと思う。運用では、守秘義務違反というのは制限的にしていただきたい」と述べました。
日本共産党の仁比聡平議員は、制度導入に伴い、検察側が開示した証拠のコピーの目的外使用が禁止された問題をとりあげ、「重大事件において、裁判上の証拠をメディアなどが入手し、批判的に分析することで、冤罪(えんざい)からの救済が図られることがあると思うが」とただしました。
竹田氏は「われわれにとっては相当よくないものだ。冤罪を指摘する活動や人権にかかわる活動については、立件対象にならないようにしていただきたい」と答えました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月10日(金)「しんぶん赤旗」)
裁判員の良心信頼を
「守秘義務」で処罰やめよ
仁比議員
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仁比聡平議員は三月三十日の参院法務委員会で、裁判員制度で裁判員に課せられる「守秘義務」の問題を取り上げました。
守秘義務によって、裁判員が自身の良心に従って死刑にすべきでないと判断しても、裁判官などの多数決で死刑判決になった場合、そのことが明らかにできないことになります。自分がどのような態度をとったのかについて、生涯誰にも話をすることは許されないことになるためです。
仁比氏は「良心を傷つけられたまま家族や友人に話すこともできないのでは、精神的なケアもできない。生涯刑罰をもって口外を禁止するのは過酷極まりない。裁判員制度は国民の良心を信頼し成り立つ制度だ。処罰規定は削除すべきだ」と迫りました。
法務省の大野恒太郎刑事局長は「守秘義務の刑罰担保の当否についてはプライバシーの保護、自由な意見表明、裁判への信頼などからやむを得ない。実際に適用するか否かは、法の趣旨・範囲を考え運用する」と答えました。
また仁比氏が、国民が参加している検察審査員や民事・家事調停員にも同様に守秘義務に関する刑事罰が課せられているが刑事罰を受けた事案があるのか尋ねたのに対し、いずれも前例のないことが明らかになりました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月2日(木)「しんぶん赤旗」)
裁判員制度
えん罪に国民の不信
仁比氏 司法の構造問題指摘
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日本共産党の仁比聡平議員は十七日の参院法務委員会で、政府が五月実施を決めている裁判員制度について質問しました。
仁比氏は、世論調査で「参加したくない」「できれば参加したくない」人の割合が七、八割に上る根底に、冤罪(えんざい)をはじめ重大な人権侵害を生み出してきた刑事司法の構造的問題がただされないまま、市民が組み込まれてしまうのではないかとの不安や不信があることを指摘。「裁判員が、職業裁判官から結論を押し付けられるようなことになってはならない。裁判官から独立して裁判にあたることができなければ裁判員制度はその根幹を失うことになるのではないか」と質問しました。
最高裁の小川正持刑事局長は「裁判員と裁判官は対等な立場で評議を行い、その結果、裁判官が考え直すことも当然ある」と答え、証拠や事実認定について裁判官と優劣がないことを認めました。
また仁比氏は、裁判員の負担軽減ばかりが強調されるなかで、「原則三日で終わるというモデルを示したのか。それぞれの事案に即して審理と評議を尽くし、真実の発見と無辜(むこ)の不処罰を達成することが刑事訴訟の第一義のはずだ」と指摘。小川局長は「原則三日で審理を終えるべきとか、モデルを示したことは一切ない。刑事裁判においては、被告人の権利を保障しつつ事案の真相を明らかにすることが原則。無辜の者の処罰があってはならない。原則を全うしなければならない」と答弁しました。
(出所:日本共産党HP 2009年3月19日(木)「しんぶん赤旗」)
陪審制度と裁判員制度の違いは?
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〈問い〉 来年5月21日から裁判員制度が施行されますが、「裁判員」と米国の陪審制度の「陪審員」との違いは何ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 どちらの制度も、刑事裁判を裁判官にまかせるのではなく、法律には素人である国民が刑事裁判に参加するものですが、その基本的な違いは、起訴された事実が有罪か無罪かについて、陪審制は裁判官から独立して陪審員だけで議論して決めるのに対し、裁判員制度は、裁判官と裁判員とがいっしょに議論し、有罪か無罪かを決めるというところにあります。
裁判員制度は、有罪の場合の刑の重さも裁判官と裁判員が決定します。アメリカの陪審制では、陪審員が有罪と決めた場合、多くの州で刑の大きさは裁判官が決めます。ただ13の州では、死刑で処罰されるべき事件について有罪と決めたら、同じ陪審員がその被告人に対する刑も決定するという例外があります。
陪審制はイギリスで発達し、世界各国に広がりましたが、ヨーロッパでは、取り調べ中心の官僚的な裁判に市民的感覚を取り入れようとの考えから、事実認定と刑の重さを国民から選ばれた参審員が裁判官とともに決める参審制に修正されて広がりました。裁判員制度は、国民と裁判官がいっしょに決めるという点で参審制の一種といわれています。
陪審制と裁判員制度を比べると、一般国民のなかから選ばれた人たちが裁判に参加するため、裁判のあり方も、法廷で見聞した証言・証拠にもとづき、集中的に審理して結論を出すことでは共通しています。アメリカの連邦および各州の陪審制は、全員一致制(または大多数の一致)が原則とされているのに対し、裁判員制度では裁判官・裁判員全体の多数決(ただし、多数の側に必ず裁判官、裁判員1名以上いることが必要)で決めることにしています。
また、陪審制では、裁判官から独立して事実を認定する陪審員が判断を誤らないように、検察官の集めた証拠は弁護人に全面開示され、警察官に述べた調書も証拠として認めず、法廷での証言や証拠についても、他人から聞いた伝聞証言は証拠としないなど、証拠を厳密に扱うルールが徹底しています。
日本の裁判員制度は、証拠の全面開示も実現しておらず、弁護側の十分な立証が制約される危険があります。警察官や検察官が作成した供述調書も証拠から排除されていません。被告人の自白が警察官の強制によるか、任意でなされたのかが一目瞭然(いちもくりょうぜん)にわかる取り調べ全過程の録画も実現するにいたっていません。
裁判員制度の施行までに、こうした問題点のよりよい改善が求められます。(光)
(出所:日本共産党HP 2008年5月21日(水)「しんぶん赤旗」)
取り調べ可視化せよ
DNA鑑定絶対視は危険
仁比議員
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DNA再鑑定によって冤罪(えんざい)が明らかになった「足利事件」をめぐり、日本共産党の仁比聡平議員は11日の参院法務委員会で、DNA鑑定の捜査上の位置づけを根本的に改めること、虚偽の自白強要を許さぬ「取り調べの全過程の可視化」の実行を強く求めました。
仁比氏は、DNA鑑定は「型の判定」でしかなく、精度がいくら向上したところで「犯人を特定」することはできないこと▽逆に「型の不一致」の鑑定はアリバイの成立と同じく犯人でないことを示すものであること―を指摘。法務省の大野恒太郎刑事局長は「その通り」と認めました。
しかし、実際の裁判ではDNA鑑定があたかも決定的な有罪証拠であるかのように使われ、危険な役割を果たしています。大野局長が精度の向上などで証拠採用も可能だと答弁。仁比氏は「それが『DNA鑑定神話』だ」と批判し、今後のDNA鑑定制度では試料の保存など再鑑定が可能なようにすることが最低限の義務だと主張しました。
仁比氏は、過去にさかのぼってDNA鑑定の技法の変遷、それぞれの件数、裁判で証拠採用された事案の内容を明らかにするよう要求。大野局長、警察庁の米田壮刑事局長はそれぞれ「努力」を約束しました。
仁比氏は、警察による自白強要が冤罪の温床となったことを指摘、こうした問題をくりかえさないために取り調べの「可視化」を実施するべきだと求めました。森英介法相は「捜査の必要」を理由に可視化の実施に消極的な態度を表明。仁比氏は「『取り調べの必要』で人の人生を奪うことは許されない」と厳しく批判し、過去の冤罪の検証と「可視化」の実現を強く要求しました。
(出所:日本共産党HP 2009年6月12日(金)「しんぶん赤旗」)
裁判員制度の延期求める
市田書記局長の記者会見(要旨)
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日本共産党の市田忠義書記局長が七日、裁判員制度の延期を求めて国会内でおこなった記者会見の要旨を紹介します。
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一、今日会見を開いたのは、裁判員制度についての日本共産党の態度について明らかにするためです。裁判員制度が、来年五月から実施されます。年内にも裁判員候補が決定され、約三十万人にその通知がなされる予定になっています。
一、日本共産党は以前から司法制度の民主的改革を主張し、民主的で公正な司法を実現する第一歩であり、国民への司法参加の出発点になるものとして、裁判員法に賛成しました。この法律は、二〇〇四年に成立したものです。
一、同時に、わが党は、裁判員制度の実施と導入にあたっては、「さまざまな環境整備」が必要であることを賛成したおりにも強調し、実施までの間に、政府や裁判所が必要な環境整備をおこなう必要があることを一貫して主張し、関係する委員会の場でもさまざまな問題点を指摘し、改善を求めてきました。
一、制度の実施まで一年を切ったにもかかわらず、この制度にたいする国民の合意がなく、このまま実施することには国民の納得をえられないこと、また国民が参加しやすい制度という点でも、この間の条件整備はけっして十分ではなかったこと、さらに、冤罪(えんざい)を生まない司法を実現するという点でも、現状のままでは重大な問題点をはらんでいるといわなければなりません。また、この問題を直接担当する法曹関係者からも、深刻な懸念が表明されています。したがって、来年からの制度の実施については再検討し、実施を延期することを強く求めます。
国民の合意・理解が得られていない
一、制度実施の延期を求める第一の理由は、裁判員になることにたいして、国民の多数が消極的、否定的な意見をもっていることです。日本世論調査会による調査(三月)によれば、裁判員を務めたくないという立場を表明した人は72%、務めてもよいと表明した人は26%で三倍に達しています。この制度を管轄する最高裁の調査でも、「参加したくない」とする意見(38%)は、「参加してもよい」(11%)の三倍以上となっています。
裁判員制度に対する国民の合意がないまま制度を実施するなら、司法制度の民主化と国民の裁判参加という制度の前向きの方向に逆行する重大な矛盾に直面することは明白です。
国民からの理解を得られていないということです。制度に賛成の人も反対の人も、世論の状況を見ると、圧倒的な国民が裁判員にはなりたくないと考えている。国民的合意が得られていないもとで、すでに決まっているからといって来年五月から実施するというのはよくない、というのが、第一の理由です。
安心して裁判員になる条件が整っていない
一、第二の理由は、国民が安心して裁判員になるための条件整備が、依然として整っていないことです。
その一つは、仕事や日常生活との関係で、裁判員になることが過大な負担となりかねないことです。裁判員になれば、最低でも三日間から五日間、場合によっては一週間や十日以上にもわたって、連続的に裁判員として裁判に参加しなければなりません。この間、どのような地域に住もうと、どんな職種であろうと「原則として裁判員を辞退できない」とされています。しかも、会社員の場合、それが「公休」扱いされるかどうかは、個々の企業の判断に委ねられることになっています。中小零細企業や自営業者の場合も、辞退できるかどうかの明確な基準はなく、それぞれの裁判所の判断に任せられています。
二つ目は、裁判員になることにともなうさまざまな罰則が設けられている問題です。その代表的な例が、裁判員の「守秘義務」です。これは、判決にいたる評議などについて、家族であれ友人であれ、その内容を明らかにすることを禁じたものですが、それに違反した場合、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が科せられることになっています。わが党は、裁判員法の採決にあたって、こうした罰則を取り除く修正案を提起しましたが、改めてこうした罰則のあり方を検討することが求められています。
三つ目は、裁判員になることの心理的な負担・重圧や、思想・信条にかかわる問題です。裁判員制度の対象となる裁判は、死刑や無期懲役・禁固刑につながる「殺人」や「強盗致死傷」、「放火」などのいわゆる「重大犯罪」です。こうした裁判では、ふだん接することのない犯罪被害者や現場の写真、証拠などに直接触れることになります。
これが心理的負担になることは、当の裁判所自身が「裁判員の心のケアが必要」というほどのものです。一方、国民の間には、死刑制度をはじめとして「人を裁くこと」にたいして、否定的な見方も含めさまざまな考え方があります。各種の世論調査でも、裁判員になりたくないとする最大の理由は、「有罪、無罪の判断が難しい」「人を裁くことをしたくない」などが挙げられます。
「冤罪」を生まない制度的保障がない
一、第三の理由は、「冤罪」を生まないための制度的な保障がないことです。この点で、最も懸念されることは、裁判の対象が重大犯罪であるにもかかわらず、最初から三日ないし五日間程度で結審すると見込んでいることです。裁判を短期間で終わらせるために、裁判員制度の導入の際に「公判前整理手続」を行うことになっていますが、これは、裁判員を除く職業裁判官と検察、弁護士の三者が、非公開で裁判の進め方と証拠、論点を事前に話し合うというものです。しかし、証拠の開示が捜査当局の一方的な意思の下に置かれ、警察や検察による被疑者の取り調べが密室で行われている現状で、こうした制度が導入されれば、裁判員裁判が「冤罪を生む新たな舞台」にさえなりかねないということです。
一、裁判員制度については、それを直接担うことになる法曹関係者からも延期を求める声があがっていることは、真摯(しんし)に受け止めなければなりません。いくつかの弁護士会もそういう意見表明をしています。
国民の間に合意がなく、法曹関係者の中にもさまざまな意見があります。
こういう主張や現状を無視したまま制度を実施するなら、重大な禍根を残す結果にならざるを得ません。したがって、再検討をして実施の延期を求めるというのが、わが党の立場です。
(出所:日本共産党HP 2008年8月8日(金)「しんぶん赤旗」)
国会審議から課題浮き彫り
守秘義務に懸念相次ぐ
冤罪救済の妨げに/取り調べ可視化を
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二十一日から始まる裁判員制度について、衆・参法務委員会で集中審議がされるなど、さまざまな議論が行われています。審議から浮き彫りになった課題は何か―。
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裁判員に選ばれた人には、評議の経過などを家族にも一生漏らしてはいけないという厳しい守秘義務が課せられます。違反すると、六カ月以下の懲役または五十万円以下の罰金が科せられます。
参院法務委員会の参考人質疑(四月九日)では、守秘義務への懸念が共通して出されました。
国学院大学の四宮啓教授(弁護士)は「アメリカの陪審員は守秘義務が一切ない」「守秘義務を解除してでも、制度のよりよい定着のために国民の声を聞くという方向を考えていただきたい」と発言。
竹田昌弘共同通信編集委員は「裁判の公正や信頼を確保するために、議論の経過も聞いた方が、有権者は信頼するのではないか」と述べました。
日本共産党の仁比聡平参院議員は守秘義務について、「(多数決で死刑判決になった場合など)良心を傷つけられたまま家族や友人に話すこともできないのでは、精神的なケアもできない。生涯、刑罰をもって口外を禁止するのは過酷極まりない。裁判員制度は国民の良心を信頼し成り立つ制度だ。処罰規定は削除すべきだ」(三月三十日の参院法務委員会)と強調しています。
裁判員制度開始に伴い、刑事訴訟法が改定され、検察側が開示した証拠のコピーの目的外使用が禁止されたことも問題になっています。冤罪(えんざい)の救済が困難になるという指摘があります。
四月九日の参院法務委の参考人質疑で、仁比氏は「重大事件において、裁判上の証拠をメディアなどが入手し、批判的に分析することで、冤罪からの救済が図られることがある」と指摘。竹田氏は「なんとかしてほしい条文だ。冤罪を指摘する活動は、立件対象にならないようにしてほしい」と答えました。
裁判員制度開始が目前に迫っていますが、公正な裁判のための制度的保障は不十分なままです。とくに警察などでの取り調べ全過程の録音・録画や、検察官が収集した証拠を弁護人に全面開示することが不可欠です。
録音・録画を義務化する「可視化法案」(民主党提出)が、四月二十四日の参院本会議で、日本共産党、民主党、社民党の賛成多数で可決し、衆院に送付されました。刑事司法に対する国民的監視が求められます。 (小林拓也)
(出所:日本共産党HP 2009年5月10日(日)「しんぶん赤旗」)
全面可視化が不可欠
取り調べ 冤罪防止に重要
仁比議員
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仁比聡平議員は二十三日、参院法務委員会で、警察などでの取り調べの録音・録画を義務化する「可視化法案」(民主党提出)の質問に立ちました。
仁比氏は、「踏み字」や自白強要で冤罪(えんざい)がつくり出された志布志事件(鹿児島県)を例に、代用監獄での長期間身柄拘束や長時間の違法な取り調べ、自白偏重などの構造的な問題を放置したままでは、国民のための司法は実現できず、刑事司法の信頼回復や冤罪の防止は困難であることを強調しました。
仁比氏は、鹿児島県警が、「信頼回復の努力中」という時期(昨年三月)に、喫煙で補導した少年の態度が反抗的だとして警察署内の道場で足払いを掛けて何度も転倒させるなどした警官が特別公務員暴行陵虐容疑で書類送検された問題を指摘。「これが警察の真相の解明か、更生の意欲を引き出すやり方か」と追及しました。警察庁の米田壯刑事局長は「真相の解明でも更生の意欲を引き出すものでも到底ない。誠に遺憾だ」と謝罪しました。
仁比氏は「現場や取調官の認識がどうなっているのか、現実から出発しなければ冤罪や人権侵害をなくすことはできない。密室司法に裁判員を巻き込むことになる」として、取り調べの全面可視化の重要性を主張しました。
提案者の民主党・前川清成参院議員は、「捜査の適正化によって冤罪をなくすという意味でも、任意性の判断の上からも(全面可視化は)大変必要だ」と答えました。
同法案は、二十四日の参院本会議で、日本共産党、民主党、社民党の賛成多数で可決されました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月27日(月)「しんぶん赤旗」)
アンケートを民間委託
裁判員制度で追及
仁比議員
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五月に始まる裁判員制度について、裁判員に厳しい守秘義務を課しながら、評議の検証のために裁判員が書くアンケートの分析などが民間業者に委託されることが九日、参院法務委員会での日本共産党の仁比聡平議員の質問でわかりました。
仁比氏が「検証のためのアンケートのとりまとめを民間業者に委託するのか」とただしたのに対し、最高裁判所の小川正持刑事局長は「アンケートの実質的な作業について業者に委託する予定だ」と認めました。
仁比氏は、評議に関することを漏らしてはいけないという裁判員に課せられた守秘義務を解除せずに、「評議のあり方も含めた制度の検証をするのは不可能だ。守秘義務規定の削除を検討し、裁判員を経験した方々の意見を率直に聞くべきだ」と強調しました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月11日(土)「しんぶん赤旗」)
裁判員制度
死刑判決 全員一致で
参院委 参考人が改善求める
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参院法務委員会は九日、五月から始まる裁判員制度についての参考人質疑を行いました。三人の参考人はそれぞれ「裁判員制度は、従来の公判審理のあり方に反省を迫り、公判の活性化に重要な役割を果たすものだ」(大澤裕・東京大学大学院教授)など制度導入の意義を語りました。
一方、共同通信編集委員の竹田昌弘氏は、裁判員になる人の「心理的不安が大きい」と指摘。「死刑判決だけは、裁判員と裁判官の全員一致を要件とする必要がある」などの改善点を挙げました。
国学院大学の四宮啓教授(弁護士)は、裁判員に厳格な守秘義務が課せられることについて、「少し範囲が広いと思う。運用では、守秘義務違反というのは制限的にしていただきたい」と述べました。
日本共産党の仁比聡平議員は、制度導入に伴い、検察側が開示した証拠のコピーの目的外使用が禁止された問題をとりあげ、「重大事件において、裁判上の証拠をメディアなどが入手し、批判的に分析することで、冤罪(えんざい)からの救済が図られることがあると思うが」とただしました。
竹田氏は「われわれにとっては相当よくないものだ。冤罪を指摘する活動や人権にかかわる活動については、立件対象にならないようにしていただきたい」と答えました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月10日(金)「しんぶん赤旗」)
裁判員の良心信頼を
「守秘義務」で処罰やめよ
仁比議員
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仁比聡平議員は三月三十日の参院法務委員会で、裁判員制度で裁判員に課せられる「守秘義務」の問題を取り上げました。
守秘義務によって、裁判員が自身の良心に従って死刑にすべきでないと判断しても、裁判官などの多数決で死刑判決になった場合、そのことが明らかにできないことになります。自分がどのような態度をとったのかについて、生涯誰にも話をすることは許されないことになるためです。
仁比氏は「良心を傷つけられたまま家族や友人に話すこともできないのでは、精神的なケアもできない。生涯刑罰をもって口外を禁止するのは過酷極まりない。裁判員制度は国民の良心を信頼し成り立つ制度だ。処罰規定は削除すべきだ」と迫りました。
法務省の大野恒太郎刑事局長は「守秘義務の刑罰担保の当否についてはプライバシーの保護、自由な意見表明、裁判への信頼などからやむを得ない。実際に適用するか否かは、法の趣旨・範囲を考え運用する」と答えました。
また仁比氏が、国民が参加している検察審査員や民事・家事調停員にも同様に守秘義務に関する刑事罰が課せられているが刑事罰を受けた事案があるのか尋ねたのに対し、いずれも前例のないことが明らかになりました。
(出所:日本共産党HP 2009年4月2日(木)「しんぶん赤旗」)
裁判員制度
えん罪に国民の不信
仁比氏 司法の構造問題指摘
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日本共産党の仁比聡平議員は十七日の参院法務委員会で、政府が五月実施を決めている裁判員制度について質問しました。
仁比氏は、世論調査で「参加したくない」「できれば参加したくない」人の割合が七、八割に上る根底に、冤罪(えんざい)をはじめ重大な人権侵害を生み出してきた刑事司法の構造的問題がただされないまま、市民が組み込まれてしまうのではないかとの不安や不信があることを指摘。「裁判員が、職業裁判官から結論を押し付けられるようなことになってはならない。裁判官から独立して裁判にあたることができなければ裁判員制度はその根幹を失うことになるのではないか」と質問しました。
最高裁の小川正持刑事局長は「裁判員と裁判官は対等な立場で評議を行い、その結果、裁判官が考え直すことも当然ある」と答え、証拠や事実認定について裁判官と優劣がないことを認めました。
また仁比氏は、裁判員の負担軽減ばかりが強調されるなかで、「原則三日で終わるというモデルを示したのか。それぞれの事案に即して審理と評議を尽くし、真実の発見と無辜(むこ)の不処罰を達成することが刑事訴訟の第一義のはずだ」と指摘。小川局長は「原則三日で審理を終えるべきとか、モデルを示したことは一切ない。刑事裁判においては、被告人の権利を保障しつつ事案の真相を明らかにすることが原則。無辜の者の処罰があってはならない。原則を全うしなければならない」と答弁しました。
(出所:日本共産党HP 2009年3月19日(木)「しんぶん赤旗」)
陪審制度と裁判員制度の違いは?
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〈問い〉 来年5月21日から裁判員制度が施行されますが、「裁判員」と米国の陪審制度の「陪審員」との違いは何ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 どちらの制度も、刑事裁判を裁判官にまかせるのではなく、法律には素人である国民が刑事裁判に参加するものですが、その基本的な違いは、起訴された事実が有罪か無罪かについて、陪審制は裁判官から独立して陪審員だけで議論して決めるのに対し、裁判員制度は、裁判官と裁判員とがいっしょに議論し、有罪か無罪かを決めるというところにあります。
裁判員制度は、有罪の場合の刑の重さも裁判官と裁判員が決定します。アメリカの陪審制では、陪審員が有罪と決めた場合、多くの州で刑の大きさは裁判官が決めます。ただ13の州では、死刑で処罰されるべき事件について有罪と決めたら、同じ陪審員がその被告人に対する刑も決定するという例外があります。
陪審制はイギリスで発達し、世界各国に広がりましたが、ヨーロッパでは、取り調べ中心の官僚的な裁判に市民的感覚を取り入れようとの考えから、事実認定と刑の重さを国民から選ばれた参審員が裁判官とともに決める参審制に修正されて広がりました。裁判員制度は、国民と裁判官がいっしょに決めるという点で参審制の一種といわれています。
陪審制と裁判員制度を比べると、一般国民のなかから選ばれた人たちが裁判に参加するため、裁判のあり方も、法廷で見聞した証言・証拠にもとづき、集中的に審理して結論を出すことでは共通しています。アメリカの連邦および各州の陪審制は、全員一致制(または大多数の一致)が原則とされているのに対し、裁判員制度では裁判官・裁判員全体の多数決(ただし、多数の側に必ず裁判官、裁判員1名以上いることが必要)で決めることにしています。
また、陪審制では、裁判官から独立して事実を認定する陪審員が判断を誤らないように、検察官の集めた証拠は弁護人に全面開示され、警察官に述べた調書も証拠として認めず、法廷での証言や証拠についても、他人から聞いた伝聞証言は証拠としないなど、証拠を厳密に扱うルールが徹底しています。
日本の裁判員制度は、証拠の全面開示も実現しておらず、弁護側の十分な立証が制約される危険があります。警察官や検察官が作成した供述調書も証拠から排除されていません。被告人の自白が警察官の強制によるか、任意でなされたのかが一目瞭然(いちもくりょうぜん)にわかる取り調べ全過程の録画も実現するにいたっていません。
裁判員制度の施行までに、こうした問題点のよりよい改善が求められます。(光)
(出所:日本共産党HP 2008年5月21日(水)「しんぶん赤旗」)
取り調べ可視化せよ
DNA鑑定絶対視は危険
仁比議員
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DNA再鑑定によって冤罪(えんざい)が明らかになった「足利事件」をめぐり、日本共産党の仁比聡平議員は11日の参院法務委員会で、DNA鑑定の捜査上の位置づけを根本的に改めること、虚偽の自白強要を許さぬ「取り調べの全過程の可視化」の実行を強く求めました。
仁比氏は、DNA鑑定は「型の判定」でしかなく、精度がいくら向上したところで「犯人を特定」することはできないこと▽逆に「型の不一致」の鑑定はアリバイの成立と同じく犯人でないことを示すものであること―を指摘。法務省の大野恒太郎刑事局長は「その通り」と認めました。
しかし、実際の裁判ではDNA鑑定があたかも決定的な有罪証拠であるかのように使われ、危険な役割を果たしています。大野局長が精度の向上などで証拠採用も可能だと答弁。仁比氏は「それが『DNA鑑定神話』だ」と批判し、今後のDNA鑑定制度では試料の保存など再鑑定が可能なようにすることが最低限の義務だと主張しました。
仁比氏は、過去にさかのぼってDNA鑑定の技法の変遷、それぞれの件数、裁判で証拠採用された事案の内容を明らかにするよう要求。大野局長、警察庁の米田壮刑事局長はそれぞれ「努力」を約束しました。
仁比氏は、警察による自白強要が冤罪の温床となったことを指摘、こうした問題をくりかえさないために取り調べの「可視化」を実施するべきだと求めました。森英介法相は「捜査の必要」を理由に可視化の実施に消極的な態度を表明。仁比氏は「『取り調べの必要』で人の人生を奪うことは許されない」と厳しく批判し、過去の冤罪の検証と「可視化」の実現を強く要求しました。
(出所:日本共産党HP 2009年6月12日(金)「しんぶん赤旗」)
裁判員制度の延期求める
市田書記局長の記者会見(要旨)
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日本共産党の市田忠義書記局長が七日、裁判員制度の延期を求めて国会内でおこなった記者会見の要旨を紹介します。
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一、今日会見を開いたのは、裁判員制度についての日本共産党の態度について明らかにするためです。裁判員制度が、来年五月から実施されます。年内にも裁判員候補が決定され、約三十万人にその通知がなされる予定になっています。
一、日本共産党は以前から司法制度の民主的改革を主張し、民主的で公正な司法を実現する第一歩であり、国民への司法参加の出発点になるものとして、裁判員法に賛成しました。この法律は、二〇〇四年に成立したものです。
一、同時に、わが党は、裁判員制度の実施と導入にあたっては、「さまざまな環境整備」が必要であることを賛成したおりにも強調し、実施までの間に、政府や裁判所が必要な環境整備をおこなう必要があることを一貫して主張し、関係する委員会の場でもさまざまな問題点を指摘し、改善を求めてきました。
一、制度の実施まで一年を切ったにもかかわらず、この制度にたいする国民の合意がなく、このまま実施することには国民の納得をえられないこと、また国民が参加しやすい制度という点でも、この間の条件整備はけっして十分ではなかったこと、さらに、冤罪(えんざい)を生まない司法を実現するという点でも、現状のままでは重大な問題点をはらんでいるといわなければなりません。また、この問題を直接担当する法曹関係者からも、深刻な懸念が表明されています。したがって、来年からの制度の実施については再検討し、実施を延期することを強く求めます。
国民の合意・理解が得られていない
一、制度実施の延期を求める第一の理由は、裁判員になることにたいして、国民の多数が消極的、否定的な意見をもっていることです。日本世論調査会による調査(三月)によれば、裁判員を務めたくないという立場を表明した人は72%、務めてもよいと表明した人は26%で三倍に達しています。この制度を管轄する最高裁の調査でも、「参加したくない」とする意見(38%)は、「参加してもよい」(11%)の三倍以上となっています。
裁判員制度に対する国民の合意がないまま制度を実施するなら、司法制度の民主化と国民の裁判参加という制度の前向きの方向に逆行する重大な矛盾に直面することは明白です。
国民からの理解を得られていないということです。制度に賛成の人も反対の人も、世論の状況を見ると、圧倒的な国民が裁判員にはなりたくないと考えている。国民的合意が得られていないもとで、すでに決まっているからといって来年五月から実施するというのはよくない、というのが、第一の理由です。
安心して裁判員になる条件が整っていない
一、第二の理由は、国民が安心して裁判員になるための条件整備が、依然として整っていないことです。
その一つは、仕事や日常生活との関係で、裁判員になることが過大な負担となりかねないことです。裁判員になれば、最低でも三日間から五日間、場合によっては一週間や十日以上にもわたって、連続的に裁判員として裁判に参加しなければなりません。この間、どのような地域に住もうと、どんな職種であろうと「原則として裁判員を辞退できない」とされています。しかも、会社員の場合、それが「公休」扱いされるかどうかは、個々の企業の判断に委ねられることになっています。中小零細企業や自営業者の場合も、辞退できるかどうかの明確な基準はなく、それぞれの裁判所の判断に任せられています。
二つ目は、裁判員になることにともなうさまざまな罰則が設けられている問題です。その代表的な例が、裁判員の「守秘義務」です。これは、判決にいたる評議などについて、家族であれ友人であれ、その内容を明らかにすることを禁じたものですが、それに違反した場合、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が科せられることになっています。わが党は、裁判員法の採決にあたって、こうした罰則を取り除く修正案を提起しましたが、改めてこうした罰則のあり方を検討することが求められています。
三つ目は、裁判員になることの心理的な負担・重圧や、思想・信条にかかわる問題です。裁判員制度の対象となる裁判は、死刑や無期懲役・禁固刑につながる「殺人」や「強盗致死傷」、「放火」などのいわゆる「重大犯罪」です。こうした裁判では、ふだん接することのない犯罪被害者や現場の写真、証拠などに直接触れることになります。
これが心理的負担になることは、当の裁判所自身が「裁判員の心のケアが必要」というほどのものです。一方、国民の間には、死刑制度をはじめとして「人を裁くこと」にたいして、否定的な見方も含めさまざまな考え方があります。各種の世論調査でも、裁判員になりたくないとする最大の理由は、「有罪、無罪の判断が難しい」「人を裁くことをしたくない」などが挙げられます。
「冤罪」を生まない制度的保障がない
一、第三の理由は、「冤罪」を生まないための制度的な保障がないことです。この点で、最も懸念されることは、裁判の対象が重大犯罪であるにもかかわらず、最初から三日ないし五日間程度で結審すると見込んでいることです。裁判を短期間で終わらせるために、裁判員制度の導入の際に「公判前整理手続」を行うことになっていますが、これは、裁判員を除く職業裁判官と検察、弁護士の三者が、非公開で裁判の進め方と証拠、論点を事前に話し合うというものです。しかし、証拠の開示が捜査当局の一方的な意思の下に置かれ、警察や検察による被疑者の取り調べが密室で行われている現状で、こうした制度が導入されれば、裁判員裁判が「冤罪を生む新たな舞台」にさえなりかねないということです。
一、裁判員制度については、それを直接担うことになる法曹関係者からも延期を求める声があがっていることは、真摯(しんし)に受け止めなければなりません。いくつかの弁護士会もそういう意見表明をしています。
国民の間に合意がなく、法曹関係者の中にもさまざまな意見があります。
こういう主張や現状を無視したまま制度を実施するなら、重大な禍根を残す結果にならざるを得ません。したがって、再検討をして実施の延期を求めるというのが、わが党の立場です。
(出所:日本共産党HP 2008年8月8日(金)「しんぶん赤旗」)