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強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワークが東京都内で全国集会

2008-12-09 02:42:34 | 行政裁判
強制連行追及裁判
国・企業は解決図れ
全国ネットが集会

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 強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワークは七日、東京都内で全国集会を開きました。強制連行・強制労働の被害にあった中国人や朝鮮人を支援している各地の人たち約四十人が参加しました。

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 集会では、中国人強制連行裁判で昨年四月二十七日に最高裁が被害者の請求を退ける判決を出したもとで、今後どのようにたたかいを進めるかを議論しました。

 最高裁判決は、被害者の裁判上の請求権は消滅したとしながらも、国や企業が自発的に賠償に応じることは妨げないとし、「被害者の救済に向けた努力が期待される」と述べています。集会では、この判決の付言に応じる形で福岡高裁の中国人強制連行裁判で和解が勧告され、国や企業の姿勢次第で解決の道が開ける状況になっていることが報告されました。

 各地から裁判や企業責任追及について報告がありました。

 群馬の中国人強制連行裁判の支援者は、国会議員への要請行動や加害企業である鹿島、ハザマとの交渉について報告。「個人的には中国人には大変申し訳ないことをしたと思っている」という企業の担当者もいることを語りました。

 「名古屋三菱・朝鮮女子挺身(ていしん)隊訴訟」の支援者らは、今年十一月に最高裁で敗訴が確定した後も毎週金曜日に三菱重工本社前で宣伝行動を続けていることを紹介しました。

 参加者は、日本の強制連行問題を強制労働条約違反として、来年のILO総会で審査の対象にするよう国際的な取り組みを強める必要性について議論。国と企業による基金を設けさせるなど、立法措置による被害者救済の運動の方向を話し合いました。

(出所:日本共産党HP 2008年12月8日(月)「しんぶん赤旗」)
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大和都市管財訴訟:国に15億円賠償命令 「監督放棄」と救済拡大--大阪高裁

2008-09-28 03:41:04 | 行政裁判
 大和都市管財訴訟:国に15億円賠償命令 「監督放棄」と救済拡大--大阪高裁

 抵当証券などの販売で1112億円もの被害が出た大和都市管財グループによる巨額詐欺事件の被害者が、抵当証券業の登録更新を拒否しなかった近畿財務局の対応が被害拡大の原因として国家賠償を求めた控訴審の判決が26日、大阪高裁であった。小田耕治裁判長は「登録更新は著しく合理性を欠き、購入者保護を目的とした監督規制権限の恣意(しい)的不行使」として、1審の大阪地裁に続いて国の責任を認め、6億7444万円の支払いを命じた1審判決を変更し、15億5880万円の賠償を命じた。個人財産の被害について、高裁が国の責任を認めたのは初めて。

 1審は原告260人の請求を認めたが、2審は1審で敗訴した原告を含む631人のうち627人の請求を認めた。訴訟では、大和都市管財グループ全体が債務超過に陥った中、近畿財務局が97年10月に業務改善命令を出しながら、2カ月後に登録を更新した判断が適切だったかが最大の争点となっていた。

 判決は「局長(当時)の介入により業務改善命令の内容が大幅に後退した。更新拒否を回避してあえて漫然と更新し、裁量権逸脱の程度は著しい」と局長に過失があったと判断。1審で請求を棄却された原告371人については「更新後も代金を払っていることが認められる」として、払い込みが確認できなかった4人を除き請求を認めた。【北川仁士】

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 ■ことば

 ◇大和都市管財事件
 融資先の不動産の抵当権を基に法務局から交付された抵当証券を販売していた「大和都市管財」を中心とするグループ11社が、実質的に破綻(はたん)していることを隠し「元利金保証で安全・確実・高利回り」などと偽り、金融商品を販売した詐欺事件。債務超過に陥り、近畿財務局の申し立てを受けた大阪地裁が01年4月、会社整理を命令。約1万7000人から集めた資金は1112億円に上ったが、保全された資産は約35億円にとどまった。

(出所:毎日新聞 2008年9月27日 東京朝刊)

 大和都市管財訴訟の判決要旨 大阪高裁
 大和都市管財国家賠償訴訟で、大阪高裁が26日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 大和都市管財はグループ6社を利用し、カラ融資や担保の過大評価による高額の抵当証券の販売など不適正な業務運営を続け、高金利で資金を集めて元利金の支払いに充てる詐欺的商法を組織的、継続的にしていた。

 グループ全体では1994年ごろ、約72億円の累積欠損を抱えていたが、抵当証券業規制法上の登録を受け続けるため、経理操作で大和都市管財のみは資本欠損でない状態を仮装した。

 近畿財務局は94年ごろには大和都市管財の実態を知り、95年にはいったん業務改善命令を発したが事実上撤回し、問題を先送りしていた。

 97年時点では96年経営健全化計画が大幅未達で、グループの財務状態は105億円以上の債務超過となった。改善の見込みはなく、営業を継続すればさらに悪化し、被害者が多発する危険性が切迫していることを近畿財務局は認識した。抵当証券購入者が自ら危険を回避する可能性に期待することは困難だった。

 近畿財務局長は3年に1度の更新登録で財務状況を検査し、監督規制権限を行使して、大和都市管財が更新登録拒否事由に該当していないか審査すべき注意義務を負っている。

 にもかかわらず、近畿財務局は97年検査で帳簿類の検査を放棄し、預貯金口座の検証すら怠るなど、グループ全体の財務状況及び資金の流れを解明するための基本というべき検査を怠った。

 近畿財務局次長は警察の強制捜査が近いとの情報を得たこともあり、更新登録前に大和都市管財の破たん処理に入ることを考え、業務改善命令を準備した。

 ところが、業務改善命令の発出は局長の介入で約50日も遅らされ、内容も後退させられた。大和都市管財が97年経営健全化計画を提出するや、近畿財務局は受理。融資の架空性や抵当証券受取利息の未収受の認定も回避し、漫然と更新登録をした。監督規制権限の恣意的不行使ともいえ、その過程は不可解というしかなく、裁量逸脱の程度は著しいというほかない。

 近畿財務局長による更新登録は、抵当証券購入者の保護を目的とした抵当証券業規制法の趣旨に照らし、許容限度を逸脱して著しく合理性を欠く。大和都市管財から抵当証券を購入することで被害を受けた国民との関係で、国賠法の適用上違法となると解すべきである。近畿財務局長には少なくともこの点で過失があるから国は損害を賠償する義務がある。

 大和都市管財の営業継続を許さない場合にいかなる対応や措置を取るべきかは、近畿財務局長の裁量にかかる。本件では少なくとも55億円の融資の架空性とグループ6社からの抵当証券発行特約付き融資の利払い約37億円中の相当部分の仮装を認定することで、容易に更新登録拒否事由である重要事項の虚偽記載を認定することができたといえる。

 損害については、実損害に対し購入者が本来自ら負うべき抵当証券購入の固有のリスクを考慮すると、1審同様、6割を過失相殺する。

(出所:2008/09/26 19:01 【共同通信】http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008092601000794.html) 
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海自いじめ自殺訴訟ー福岡高裁判決が八日、防衛省の上告断念で確定ー

2008-09-14 11:07:27 | 行政裁判
海自いじめ自殺
遺族側の勝訴確定
「判決受け入れ謝罪せよ」

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 海上自衛隊佐世保基地の護衛艦「さわぎり」で一九九九年、三等海曹の男性(21)=当時=が自殺したのは、上官の侮蔑(ぶべつ)的な言動が原因だったと認定し、国に三百五十万円の賠償を命じた福岡高裁判決が八日、防衛省の上告断念で確定しました。

 増田好平事務次官が記者会見で明らかにしました。

 判決は自衛隊員の自殺で国の責任を認めた初の事例。横浜地裁、静岡地裁浜松支部でも「自殺はいじめによる」と主張する遺族による賠償請求訴訟が争われています。

 増田次官は、上告断念の理由を「法律上の上告受理に該当する事項が見当たらなかったため」と説明しました。判決が指摘した上官の行き過ぎた言動が「いじめ」に当たるかどうかについては言及を避けました。自衛隊員の自殺といじめをめぐる同様の訴訟への影響については「コメントを差し控える」としました。

 同省の上告断念について、三等海曹の遺族は「判決は息子の命そのものです。防衛省と自衛隊が、上官の違法行為が息子を自殺に追い込んだと認定した判決を受け入れるのであれば、息子に謝罪してほしい。今後は裁判へのエネルギーと同様に再発防止に本気で力をそそぎ、他の請求訴訟の原告の訴えを真剣に受け止めてほしい」と注文しました。

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解説
再発防止へ 真剣な対応を
 「判決は息子の命」。自殺の原因を上官の違法な言動と断定し、国に賠償を命じた福岡高裁判決を勝ち取った原告、三曹の母(60)の痛切な言葉です。しかし防衛省の上告断念についての増田事務次官の対応からは、年間百人前後も続出する自殺問題、とりわけ深刻ないじめ問題と真剣に対応する構えは見えてきません。

 判決が指摘した上官の「行き過ぎた(違法な)言動がいじめに当たるかどうか」について聞かれ、同次官が言及を避けたのには理由があります。

 高裁判決は、自衛隊(艦)の任務が危険を伴うことから「厳しい指導を行う合理性」を認めながらも、人格否定の言動や心理的負荷を与える行為は違法と断定しています。民間労働者と同様に使用者(上官)による安全配慮義務の適用も求めました。

 イラクやインド洋など米軍と行動を共にする憲法違反の海外派兵を「本来任務」とし、「戦争する自衛隊」に向けて態勢強化を図る自衛隊にとって、「一般扱い」は容認できることではありません。

 しかし判決は確定しました。「いじめ自殺の抜本的な再発防止の真摯(しんし)な検討と推進を求める」(原告弁護団)世論は確実に強まるでしょう。(山本眞直)

(出所:日本共産党HP  2008年9月9日(火)「しんぶん赤旗」)
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沖縄密約国賠訴訟:西山さん敗訴確定 賠償棄却、沖縄密約存在触れず--最高裁

2008-09-10 16:26:41 | 行政裁判
 沖縄密約国賠訴訟:西山さん敗訴確定 賠償棄却、沖縄密約存在触れず--最高裁

 沖縄返還を巡る日米交渉の密約を示す文書を入手して報道し、国家公務員法違反で有罪が確定した元毎日新聞記者、西山太吉さん(76)が、国に3300万円の賠償などを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(藤田宙靖(ときやす)裁判長)は2日、西山さんの上告を棄却する決定を出した。西山さん敗訴の1、2審判決が確定した。【北村和巳】

 西山さんは、違法な起訴や密約を否定する政府高官の発言で名誉を傷付けられたと主張し、密約についても判断を示すよう求めていた。小法廷は1、2審と同様に密約の存在には一切触れず、「上告理由に当たらない」とだけ述べた。

 訴えで西山さんは、00~02年の米国公文書の公開などで密約の存在が明らかになったとして、「密約は違憲行為で法の保護に値せず、有罪判決は誤り」などと訴えた。これに対し1、2審判決は、賠償請求権が消滅する民法の除斥期間(不法行為から20年)を適用して請求を退けた。

 2審・東京高裁判決(2月)は「72年の起訴から20年以内に、提訴などの権利行使が不可能だったとは認められない」と指摘。外相ら政府高官が密約を否定している発言も政府の公式見解を述べただけで、西山さんの名誉を棄損していないと判断した。密約を巡っては06年、吉野文六・元外務省アメリカ局長が存在を証言している。

 ◇「極めて政治的」と怒り
 「極めて高度な政治的決定だ。(密約を認めることは)国家権力にとって存在基盤を揺るがしかねないという認識を持っているからだ」。西山さんは2日、東京都内で記者会見し怒りを口にした。

 この日、西山さんは「沖縄返還に伴う日米の秘密合意文書・情報公開請求の会」(共同代表・奥平康弘東京大名誉教授ら)の一員として外務・財務両省に密約文書の開示を請求した。米国側が既に開示した同じ密約文書を日本側から明らかにするためだ。

 同じ日の最高裁決定に西山さんは「密約問題に関する限り行政と司法は完全に一体化している」と非難した。

 06年3月の参院予算委員会で、河相周夫・外務省北米局長(当時)が「沖縄返還に関するファイルを念のため調査したが、密約文書は見つかっていない」と答弁しており、文書を不存在と決定する可能性は高い。このため清水英夫・青山学院大名誉教授を団長とする弁護団(32人)が既に結成され、西山さんらは政府に開示を求め提訴する方針。【臺宏士】

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 ■ことば

 ◇沖縄密約事件
 71年の沖縄返還協定で、米国側が負担すべき軍用地復元補償費400万ドルについて、日本側による肩代わりを示唆した記事を西山さんが執筆。西山さんは、外務省の女性職員を唆して極秘電信文を入手したとして起訴され有罪が確定した。日本政府は密約を否定し続けている。

(出所:毎日新聞 2008年9月3日 東京朝刊)
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海自隊員自殺訴訟ー福岡高裁が上司の言動は違法だと国に賠償命令ー

2008-08-28 02:20:56 | 行政裁判
海自隊員自殺
上司の言動は違法
国に賠償命令
福岡高裁

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 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦「さわぎり」(三、五五〇トン)の艦内で一九九九年に三等海曹=当時(21)=が自殺したのは上司のいじめが原因として両親が国に謝罪と損害賠償を求めている訴訟の控訴審判決が二十五日、福岡高裁でありました。牧弘二裁判長は上司の言動と自殺の因果関係を認定、否定した一審判決を変更し、国に対し三百五十万円の賠償を命じました。

 判決は、「国家公務員が職務上、他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は、原則として国家賠償法上違法である」としたうえで、直属上司の言動を「指導の域を越える違法なもの」と認定しました。

 さらに直属上司は国に代わって隊員に対する安全配慮義務を果たすべきところ、「逆に侮辱的な言動を繰り返したもので、この義務に違反した」とし、上司の言動と自殺の因果関係を「認められる」と断定しました。

 原告側が主張した軍事オンブズマン制度の創設は棄却しました。

 自衛隊員の自殺で自衛隊に管理責任があることを認める判決は初めて。毎年百人前後の自殺者が続出する自衛隊に対し、本格的対応を迫る司法判断です。

 原告弁護団は「審理での証拠調べや原告らのメモをしっかりと受けとめ、判決では、自殺した三曹の脆弱(ぜいじゃく)な性格との国側の主張も『安定した性格』と正面から切り返し、国の安全配慮義務違反を認定したものとして恐らく初の画期的な判決」と評価しました。

息子の無念に応えた
 「被控訴人(国)は隊員の父に百五十万円を、母に二百万円をそれぞれに支払え」―。二十五日、自衛官いじめ自殺事件の控訴審で裁判長が判決主文を読み上げると、原告席の母親(60)はハンカチで目頭を押さえておえつし、隣の女性弁護士と抱き合いました。

 支援者の一人として証人にも立ち、「さわぎり」でのいじめがきっかけで退職した元自衛官(34)も「自衛隊の不法行為が一部でも認められた。うれしい」と目を真っ赤にはらして話しました。

 海上自衛隊での「いじめ」が原因でうつ病になり、神奈川県内で電車にひかれて死んだ息子=当時(24)=の父親(60)もかけつけ、「よかった。この判決に励まされ、全国で声があがるとよい」と判決をかみしめていました。

 福岡市内で開かれた報告集会には百五十人がつめかけました。

 弁護団の福留英資事務局次長が「(自殺した三曹の)人生がこのような判決文を残してくれた」と言葉をつまらせながら報告すると、参加者からすすり泣く声が漏れました。

 あいさつに立った原告の母親は「今日の判決で親として、(息子の思いに)応えられたような気がします。(自衛隊には毎年百人もの自殺者が出ていて)まだまだやらなければと思います」と語り、大きな拍手に包まれました。

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解説
戦争する部隊の体質
 毎年百人前後の自殺者が続出している自衛隊。これまで、隊内のいじめが原因だとして国に賠償請求を求めている訴訟は今回の福岡高裁のほか、横浜地裁、静岡地裁浜松支部の三件。しかし、自殺した本人が「いじめが原因」と遺書に書き残していても、自衛隊側が「いじめはなかった」などと否定するケースは後を絶ちません。

 海上自衛隊の護衛艦隊司令部幹部は内部の会議で公然とこう述べています。

 「学校で嫌いな先生を辞めさせるためには、わざと殴らせるように仕向ければいいことを知っている者がいる。それを逆手にとって殴らせるように仕向ける隊員がいるのも事実であり、優秀な隊員が処分をもらうのはもったいない」

 この発言は「私的制裁」についてのものですが、今回判決で問われた「いじめ」に対する自衛隊上層部の本音が見てとれます。

 その本音は、アメリカとともに世界の紛争に自衛隊を投入する海外派兵にむけ、「精強」「任務必遂」をスローガンにする「戦争する自衛隊」の危険な体質とつながっています。

 複数の元自衛隊幹部も共通して「いじめなどがくりかえされる不祥事も憲法違反の海外派兵の動きと無関係ではない」と指摘しています。

 「直属上司」に限定したとはいえ、隊員の安全配慮義務違反を認定した意義は大きく、原告らが主張する「再発防止策」としての軍事オンブズマンの創設を迫る世論による包囲が求められます。

 あわせて、憲法違反の海外派兵を許さないことが、最大の再発防止策でもあります。(山本眞直)

(出所:日本共産党HP 2008年8月26日(火)「しんぶん赤旗」)

海外派兵歯止めの力に
自衛隊人権問題でシンポ
福岡

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 いじめ、自殺など自衛隊内で深刻化する人権問題をテーマにしたシンポジウムが二十五日、福岡市内で開かれました。

 同日、福岡高裁の控訴審判決で逆転勝利した、海上自衛隊佐世保基地の護衛艦「さわぎり」の艦内で自殺した三曹の両親による国家賠償請求訴訟を支援する会がよびかけたもので、百五十人が参加しました。

 「さわぎり」裁判原告弁護団のほか、同様に息子を自衛隊内のいじめで自殺に追い込まれ、横浜地裁、静岡地裁浜松支部で賠償請求訴訟に取り組んでいる遺族と同弁護団代表、自衛隊問題に取り組むジャーナリストの三宅勝介氏、吉田敏浩氏らが報告、発言しました。

 共通して強調されたのが、自衛隊が憲法違反の存在であることと、自衛官の人権擁護を対立的に考えるのではなく人権問題として追及することで、イラク、インド洋など危険な海外派兵への“暴走”に歯止めをかける世論を広げる力になることへの確信でした。

 「さわぎり」事件の控訴審で自らの体験を証言した元海上自衛官(34)は「十代、二十代の隊員は知識はあっても技術がなく、上司や先輩の言動は絶対で逆らえない。今回の判決は“新しい風”でこれを“波”に変えてつらい思いをしている隊員を助ける力にしたい。今後も協力したい」と発言、参加者は大きな拍手でこたえました。

(出所:日本共産党HP 2008年8月27日(水)「しんぶん赤旗」)
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原爆症認定集団訴訟-国は全面的解決に踏み切れ-

2008-07-03 01:52:35 | 行政裁判
主張
原爆症認定集団訴訟
国は全面的解決に踏み切れ

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 原爆症認定集団訴訟での国の相次ぐ敗訴をうけ、安倍晋三首相(当時)が認定基準見直しを広島で約束してからまもなく一年になります。福田康夫内閣に代わり、新基準の決定・実施など事態は動き始めましたが、国・厚労省はなお裁判で争い続けようとしています。

無反省が解決をはばむ
 四月以降、新基準によって、集団訴訟の原告三百六人の半数余を含む四百人以上が認定されました。遠距離被爆や投下後の入市なので放射線の影響はない、疾病や障害は原爆のせいではないとされてきた人びとです。すでに従来の年間新認定者数を大幅に上回っており、いかに多くの被爆者の訴えが切り捨てられてきたかを示しています。それに加え、新基準でさえ被爆の実態に見合っていないことが、またたく間に証明されました。

 五月末の仙台・大阪高裁の判決は、新基準で「積極的認定」の対象となっていない疾病の原告をふくめ全員勝訴し、国は上告を断念しました。先月の長崎地裁判決も、新基準で対象にされていない肝機能障害の原告などについても、認定すべきだと判断しました。

 被爆者は国・厚労省に、新基準の再見直し、集団訴訟の全面解決に踏み出せと強く求めました。しかし国は、長崎地裁判決で「積極的認定」対象外の疾病・障害で国が敗訴した原告について、またも控訴したのです。切り捨ての認定行政を根本的に転換しようとする姿勢の欠如にほかなりません。

 厚労省は新基準の策定にあたり、これまでの判決できびしく批判された従来の切り捨て審査方針を「改める」としましたが、誤っていたとは認めません。「科学的には間違っていない」と正当化しつづけ、基準の見直しは高齢化する被爆者の「救済のため」といいます。

 しかし新基準の「積極的認定」の対象は、これまでのどの判決より厳しく疾病や被爆距離、時間などを線引きしています。対象外の場合は個別に総合的に判断するとしていますが、長崎判決の控訴は、新たな線引きが切り捨てにつながる危険を示しています。

 厚労省は肝機能障害についてまだ高裁段階の結論がないことを、控訴の理由にしています。しかし、これまでの地裁判決で肝機能障害の原告はほとんど勝訴し、放射線の影響を否定した判決はありません。しかもこの問題は、集団訴訟以前に東京高裁で国の敗訴が確定しているのです。

 判決も認めるように、原爆の人体への影響は、未解明です。だからこそ、これまでの判決が指摘しているように、被爆時の状況や行動、その後の健康状況などを全体的、総合的に検討し、疾病や障害の発症、悪化、治癒の遅れについて放射線の影響を否定できなければ認定するようにすべきです。そうしてこそ「救済」といえます。

国民の世論で決着を
 多くの原告が病とたたかいながら、「ふたたび被爆者をつくるな」との決意に支えられ、つらい体験を証言し、国・厚労省をここまで追いつめてきました。すでに五十人余の原告が亡くなり、これ以上の先延ばしは許されません。

 新基準の問題も明白になったもとで、さらに世論、運動を高め全面的解決をはからなければなりません。そのために、核兵器のない世界を求める広範な国民の力をいっそう結集することが必要です。

(出所:日本共産党HP 2008年7月2日(水)「しんぶん赤旗」)
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クローズアップ2008:諫早干拓訴訟判決 4度目の開門催促、国側に立証責任

2008-06-29 01:20:20 | 行政裁判
 クローズアップ2008:諫早干拓訴訟判決 4度目の開門催促、国側に立証責任

 長崎県の国営諫早湾干拓事業を巡る27日の佐賀地裁判決が厳しく指弾したのは、中・長期の開門調査を拒む農林水産省のかたくなな姿勢だった。有明海の環境変化が何に由来するかの立証責任は、漁業被害を訴える漁民ではなく、国の側にあるという論理だ。国が開門調査を催促されたのは、これで4度目。判決は一度動き始めたら止まらない巨大公共事業に一石を投じたが、開門が実現するにはなおハードルがある。

 諫早湾干拓事業の開門調査の実施を司法などが促したことは、これまでも3例ある。

 最初は01年12月。農水省が設置したノリ第三者委員会が実施を提言した。その後、農水省OBらが委員を務める検討会議が否定的な見解を示し、04年5月に亀井善之農相(当時)が調査を見送った。

 次は佐賀地裁が04年8月、工事差し止めの仮処分決定の際、第三者委が提言した調査をしていないと指摘。このために生じた「より高度の証明が困難になる不利益」が、原告だけの負担になるのは不公平という指摘だ。

 仮処分決定を取り消した05年5月の福岡高裁も、国側に「中・長期開門調査を含めた調査、研究を今後とも実施すべき責務を負っている」と付言した。

 今回の判決は、中・長期開門調査を直接命じるものでないとしつつも、「速やかな調査実施、適切な施策」を求める異例の言及をした。さらに、調査をしない農水省の姿勢を「立証妨害に等しい」と批判した。排水門の開閉権が国にある以上、現状では漁民側が一方的に立証の不利益を被るというわけだ。

 原告弁護団は、「漁民らにこれ以上の立証を求めることは不可能を強いる」として「人員や費用を負担しうる」農水省に因果関係がないことの証明を求めた点で、画期的な判決と評価する。馬奈木昭雄弁護団長は「佐賀地裁の仮処分決定も同じ理論。最高裁で否定されたことをまた原点に戻した」と話す。

 五十嵐敬喜・法政大教授(公共事業論)は「完成後の公共事業については、これまで損害賠償を求めるしかなかったが、今回は裁判所が開門という措置を求めた点が画期的だ」とし、全国の公共事業を巡る問題への影響力を強調する。【姜弘修、関谷俊介】

 ◇県「高潮の阻止難しい」/専門家「海よみがえる」--分かれる評価
 開門を求めた判決に対し、県側は「現実無視だ」と猛反発するが、専門家からは「今ならまだ海はよみがえる」という声も。中・長期開門による防災、水質、農業などに対する影響について、専門家らの評価も分かれる。

 干拓地周辺は大雨や高潮の被害が絶えない地域だ。長崎県は「常時開門となれば、高潮被害を食い止めることが難しくなる」と訴える。

 調整池は水質調査で一度も目標値を達成していない。開門されれば「汚い水」が有明海に流出するため、漁業関係者からは逆に影響を心配する声もある。

 干拓地では41の個人・法人が今春から営農を始めた。戸原義男・九州大名誉教授(干拓工学)は「地下水の塩分濃度が上がり、麦や大豆の栽培が難しくなる。営農へのマイナス面は大きい」と話す。

 一方、東幹夫・長崎大名誉教授(水域生態学)は「02年に実施した27日間の短期開門調査ですら、明確に水質改善が見られた。5年あれば生物による浄化作用などが観測できるはず」と期待する。

 小松利光・九州大大学院教授(沿岸域環境学)は「台風接近時などは排水門を閉めればよい。水位に応じた対応で防災は可能」と指摘する。【宮下正己、阿部周一】

 ◇「なお干拓」矛盾--耕作放棄地、農地の1割
 「中・長期の開門は困難。短期開門や実証調査、シミュレーションなどあらゆる努力をしてきた。これまでの調査で十分だ」。農水省農村振興局の斎藤晴美整備部長は27日の会見で、判決が命じた5年間の開門調査に応じない姿勢を強調した。

 強気の背景に、04年に佐賀地裁が出した工事差し止めの仮処分決定を福岡高裁が取り消し、最高裁で確定した経緯がある。省内では「今回も上級審で覆る」との見方が大勢だ。

 しかし、国営干拓事業は過去にも多くの問題点が指摘されてきた。環境破壊や漁業被害だけでなく、事業自体の「無駄」も行政監察や会計検査などで取りざたされた。

 諫早など干拓事業の多くは1950~60年代、コメ増産のために構想された。だが70年ごろからコメは過剰に転じ、干拓で64年に誕生した秋田県大潟村では、入植者が減反政策に反発しヤミ米の出荷を強行した。

 宍道湖・中海の淡水化を伴う島根県の中海干拓事業では、シジミの大量死などが問題になり、03年に中止に追い込まれた。造成された農地約331ヘクタールの約2割は農業以外に転用されたり、今も売れ残る。三重・愛知県の木曽岬干拓(74年完了)で生まれた土地は、県境争いも絡んで長年放置された。約370ヘクタールの土地は、土捨て場やスポーツ施設など、すべて農業以外の用途に充てられる計画だ。

 国内では農地面積の1割近い38万ヘクタールが耕作放棄地になっている。その解消が課題になる中、国のメンツで進められた干拓事業は、農政の矛盾を象徴している。【行友弥】

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 ◆諫早湾干拓事業の変遷◆

1952年 国が長崎大干拓構想を立案

      閉め切り面積約1万ヘクタール。米作地6718ヘクタールを造るとした

  70年 長崎南部地域総合開発事業に変更

      規模は変えず、陸地は畑と工業用地とし淡水湖の水は上水道にも利用

  77年 着工予算がつく

  82年 着工できないまま農水相(当時)が打ち切りを宣言

  83年 諫早湾防災総合干拓事業に変更

  86年 事業着手

  89年 諫早湾干拓事業として着工

  97年 潮受け堤防閉め切り

2001年 干拓規模を見直し、農地を縮小

  07年 完工。総事業費は当初予定の約2倍の2533億円

(出所:毎日新聞 2008年6月28日 東京朝刊)

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諫早湾干拓事業訴訟:佐賀地裁判決(要旨)

2008-06-29 01:18:38 | 行政裁判
 諫早湾干拓事業訴訟:佐賀地裁判決(要旨)

 有明海沿岸4県の漁業者ら約2500人が国を相手取り国営諫早湾干拓事業(諫干)による潮受け堤防排水門の常時開門などを求めた諫干開門訴訟で佐賀地裁が27日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 1 漁業権または漁業を営む権利に基づく妨害予防及び妨害排除請求の可否について

 (1)現行漁業法のもとにおける漁業権においては、組合員の地位は、いわば社員権的権利にすぎないから、漁業権自体が個々の組合員に帰属すると解することは困難である。

 (2)漁業法8条1項の定める漁業行使権は、物権的性格を有し、第三者がその権利の存在を争いまたは権利行使の円満な状態を侵害したときには、組合員はその第三者に対し妨害予防請求権や妨害排除請求権を行使することができる。

 2 人格権、環境権及び自然享有権に基づく請求の可否について

 略

 3 有明海における環境変化と本件事業との因果関係の有無について

 (1)本件潮受け堤防の閉め切りの前後で明らかに変化が認められる環境要因としては、諫早湾、有明海湾奥部及び熊本県海域における赤潮の年間発生期間等の増大があるものの、赤潮の増大については、消去法によりその原因を特定できるほどに科学的知見の集成が行われていない。

 その余の点についても、結局のところ、全体として潮受け堤防の閉め切り前のデータが不足しており、閉め切りによる環境因子に対する暴露(閉め切り後)群と非暴露(閉め切り前)群の統計的有意差及び相対的危険度・寄与危険割合を確証する方法がなく、量と効果の条件や消去の条件を定量的に示すことはできないから、本件潮受け堤防の閉め切りと有明海の環境変化について因果関係を認めることは困難であり、高度の蓋然(がいぜん)性をもって認定するのは困難といわざるを得ない。

 もっとも潮受け堤防の閉め切りと諫早湾内及びその近傍場の環境変化との間の因果関係は、相当程度の蓋然性の立証はされているというべきである。

 (2)現状において、中・長期開門調査を除いて、本件潮受け堤防による影響を軽減した状況における観測結果及びこれに基づく科学的知見を得る手段は見いだし難いにもかかわらず、漁民原告らにとって、被告管理にかかわる本件各排水門の操作を行うことができないのは明らかである上、多大な人員費用の負担を必要とする有明海の海況に関する詳細な調査を漁民原告らに要求することも酷に過ぎるから漁民原告らにこれ以上の立証を求めることは、もはや不可能を強いるものといわざるを得ない。

 これに対し被告は、本件各排水門を管理している上、信頼性の高い観測を行うための人員や費用を負担し得ることは明らかであり、また中・長期開門調査は、諫早湾内の流動を回復させるなどして本件事業と有明海における環境変化との因果関係に関する知見を得るための調査として有用性が一応認められており、その実施についても不可能を強いるものではない。

 加えて、第1次仮処分決定における抗告審や公調委からも、中・長期開門調査等の実施を求められていることに照らせば、とりわけ、原告らにより、相当程度の蓋然性の立証がされている、諫早湾内及びその近傍場の環境変化に関する限りは、被告が中・長期開門調査を実施して上記因果関係の立証に有益な観測結果及びこれに基づく知見を得ることにつき協力しないことは、もはや立証妨害と同視できると言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反するものといわざるを得ない。したがって、被告において、信義則上、中・長期の開門調査を実施して、因果関係がないことについて反証する義務を負担しており、これが行われていない現状においては、諫早湾内及びその近傍場の環境変化と本件事業との間に因果関係を推認することが許されるというべきである。

 もっとも、上記推認は、現時点での科学的知見及び被告が中・長期開門調査を実施していない現状を前提とするものであり、上記推認の基礎とした事情が今後変化する可能性があることは当然に予測されるところである。

 そして、中・長期開門調査による観測・現地調査については、予備的請求のうち、上記推認の基礎とした事情が継続することが予測される5年間に限り本件各排水門を開放する限度で認容できる。

 4 漁業被害と本件事業との間の因果関係の有無について

 (1)略

 (2)本件事業は、諫早湾内及びその近傍場においては、魚類の漁船漁業並びにアサリ採取または養殖漁業の漁業環境を悪化させていると認められる。

 その余の漁業については、本件事業により漁業環境の悪化が生じているとは認められない。

 5 本件潮受け堤防の閉め切りの公共性の有無について

 潮受け堤防が発揮している防災機能等については新たな工事を施工すれば代替しうる。農業生産についても、漁業行使権の侵害に対して、優越する公共性ないし公益上の必要性があるとは言い難い。

 防災機能等を代替するための工事には短くとも3年間の工期を必要とすることも考慮すれば、原告らは本判決確定の日から3年間は本件各排水門の開放を求めることはできない。

 6 原告らの中・長期開門調査に対する期待権侵害の有無について

 略

 7 結論

 (1)よって、主文のとおり判決する。

 (2)なお、本件訴訟は、中・長期の開門調査自体を求めるものではなく、もとより本判決もこれを直接的に命じるものではないが、当裁判所としては、本判決を契機に、すみやかに中・長期の開門調査が実施されて、その結果に基づき適切な施策が講じられることを願ってやまない。

(出所:毎日新聞 2008年6月28日 東京朝刊)
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婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その2止) 家族の結びつき、重い

2008-06-06 05:41:27 | 行政裁判
 婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その2止) 家族の結びつき、重い

 ◇「婚姻要件」主要国では異例
 国籍制度には、親と同じ国籍を得る「血統主義」と、生まれた国の国籍を得る「生地主義」がある。日本は血統主義を採用し、単純な「血のつながり」だけでなく家族の結びつきを重視してきた。

 1950年施行の国籍法は父系優先主義で、出生時に日本人父と法律上の親子関係がある子は国籍を得るが、日本人母と外国人父の子には「帰化」しか認めていなかった。84年に法改正され、現行の父母両系主義が採用された。外国人定住者や国際結婚の増加も背景にあり、日本人母と外国人父の子に常に国籍が認められるようになった。

 この際に設けられたのが3条1項で、両親の婚姻が出生の前か後かで日本人父の子の国籍に差が生じないようにするためだった。しかし、生後認知の子を婚姻の有無で区別することには、国会審議でも疑問が示され、国連子どもの権利委員会が懸念を表明した。

 国は「父母が婚姻している子の方が父とのつながりが強く、法律婚尊重主義が国民感情に沿う」と説明。(1)父の認知があれば「帰化」の許可条件が緩和される(2)婚姻要件を外すと、不法滞在の外国人母が偽装認知で子の日本国籍を得て、違法に在留特別許可を受けるケースが増える--とも主張した。

 主要国のうち、日本と同様に血統主義を採用しているのはフランス、ドイツ、イタリア、ベルギーなどだが、婚姻要件は必要としていない。米国やオーストラリアなどは生地主義を採用している。

 ◇「多様化」を考慮
 国籍法3条1項の規定を巡っては、最高裁第2小法廷が02年に出した判決でも、合憲性に強い疑問が示されていた。今回と同様に、婚姻関係のない日本人父とフィリピン人母の子が日本国籍を求めた訴訟で、小法廷は請求を退けたものの、5人中3人の裁判官が補足意見で3条の規定を疑問視した。

 うち2人は「国際化と価値観の多様化で家族の在り方は一様でなく、婚姻で親子関係の緊密さを判断するのは現実に合わない」と、違憲の疑いが極めて濃いと指摘した。別の1人も「合理性に疑問がある」と述べた。

 今回の大法廷判決はこの判断に沿ったものとも言え、「家族生活や親子関係に関する意識の変化やその実態の多様化を考慮すれば、日本人父と外国人母の子が、両親の婚姻で日本との密接な結びつきを認められるというのは、現在の実態に合わない」と指摘している。

 さらに(1)諸外国は婚外子への差別を解消したり、認知による父子関係成立で国籍を認めている(2)同じ婚外子でも、出生前に認知されていれば国籍が認められる--ことも違憲判断の理由とした。

 判決は裁判官15人中9人の多数意見だが、国籍法がもたらす婚外子差別の憲法判断では、「違憲」が12人で「合憲」の3人を大きく上回った。婚外子差別が問題視される中、司法も社会情勢や国際的な潮流を意識したとみられる。

(出所:毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊)
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婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その1) 子どもの願い、応えた

2008-06-06 05:40:09 | 行政裁判
 婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その1) 子どもの願い、応えた

 ◇夢じゃない?やっと日本人
 日本人と認めてほしい--素朴で当然の願いに、司法が応えた。日本人父と外国人母の婚外子に国籍を認めない法の規定を違憲と断じた4日の最高裁判決。日本人の血が流れ、日本で生まれ育ち、日本語を話しながら、日本国籍を認められなかった子どもたち。判決後、母と一緒に抱き合って涙を浮かべ、はじけるような笑顔をみせた。【北村和巳、銭場裕司】

 原告の子どもたちは母とともに傍聴席で判決を聞いた。主文の意味を弁護団から知らされると大きな拍手がわき起こり、東海地方に住む原告のマサミさん(10)=小学5年=は「マジで勝ったの? 夢じゃない?」と笑った。

 母ロサーナさん(43)は88年にフィリピンから来日し、仕事で知り合った日本人男性との間にマサミさんが生まれた。1年後、父の認知が得られ市役所に「正美」の名で出生届を出した。担当者は「日本国籍ではない」と冷たくローマ字への書き直しを命じた。

 「何で私は日本人じゃないの?」。小学2年のころ、マサミさんは日本国籍でないことを知って驚き、泣いた。「外国人」と友達にからかわれ、「学校に行きたくない。転校したい」と漏らしたこともあった。

 妹の直美ちゃん(6)=小学1年=は、出生前に父の認知を受けたため日本国籍。同じ両親を持つのに、国籍法の規定が姉妹の境遇を冷たく分けた。「私は日本人と呼ばれたい。妹と同じ国籍になりたい」。控訴審の法廷でマサミさんは訴えた。

 日本国籍が必要な警察官になる夢を持つマサミさん。判決後の会見で「うれしくて言葉にできない。日本人でしかかなえられない夢をかなえたい」と笑顔をみせた。直美ちゃんも「お姉ちゃんと一緒の国籍になってうれしい」とほほ笑んだ。

 同じく日本国籍が認められたジュリアンさん(14)の母チャーレッテさん(46)は「親の都合で結婚しないで子供を産んで、娘に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今日やっと日本人になって幸せで安心です」とほっとした表情をみせた。

 ◇実情踏まえた判断--棚村政行・早稲田大大学院教授(家族法)の話
 画期的な判決で、婚外子差別を禁じた国際人権B規約や子どもの権利条約を尊重した判断だ。価値観の多様化やグローバル化の中で国際的な家族が増えている日本の実情を踏まえている点も妥当。重要な権利でもある国籍について、結婚しているかどうかという親の事情で差別するのは問題だ。婚外子差別の合理性を問う判決で、民法の相続分の差別などにも大きな影響を与えるだろう。

 ◇国籍取りに行きたい--マニラ在住の母子も歓迎
 【マニラ矢野純一】フィリピンでも判決を歓迎する声が上がった。「すぐにでもこの子を(国籍取得のため)日本に連れて行きたい」。マニラ近郊に住むエロイサ・スエリイラさん(37)はリュウタロウ君(6)の手を握りしめた。

 01年に興行ビザで日本に渡り、常連客の日本人男性(59)と知り合い、妊娠した。ビザの期限切れ前に帰国し、リュウタロウ君を出産した。しかし、男性の妻は離婚に同意せず、男性は子供の認知だけしかできなかった。

 「今の生活を抜け出したい」とエロイサさん。実家に居候する代わりに、両親や兄弟の子供ら計10人の食事や身の回りの世話をする生活だ。自由に使える金もなく、肩身の狭い暮らしをしている。

 エロイサさんが、日本行きを希望するもう一つの理由を話してくれた。今年1月電話で男性ががんを患い余命1年と知った。「子供の将来と男性のためにも早く日本行きが実現できれば」と話した。

 フィリピンのNPO「新日系人ネットワーク」の川平健一専務理事によると、同国内で確認できた日本人とフィリピン人の間に生まれた子供は約700人。うち約2割は父母が婚姻していないが、フィリピンの出生証明書には日本人父の名前があるという。

(出所:毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊)

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