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日本政府の核密約問題と「非核の日本、非核の世界」ー日本共産党の不破哲三氏の講演・その2ー

2010-03-29 00:10:41 | 国内政治
 4、これからが日本の「非核」化の正念場

核密約を否定する弁護論の数々

 「しかし」、と不破氏は続けます。

 「討論記録」の存在をはじめ、核密約をめぐる事実がこれだけ明らかになっても、日本政府は、「核密約はなかった」と言いつづけ、いろいろな議論を持ち出しています。それは、結局、核密約の弁護論になるものですが、不破氏はその一つ一つを、事実にてらして批判しました。

 弁護論その一。「文書はあったが密約ではなかった」――「討論記録」という文書の存在を認めれば、そこには、さきほど説明したように、核密約を含む「2節」の全体が日米両者の「了解」事項であることが明記されています。「了解」とは双方が合意していることであって、この文書がまさに日米両国政府の合意文書であることは、明白です。

 弁護論その二。「日米間で解釈が違っていた」――「討論記録」の「2節」を素直に読んでごらんなさい。A項で核兵器の持ち込み(地上配備)は事前協議の対象になる、としたあとで、C項で、軍艦や飛行機の出入りは事前協議の対象外だと規定したのです。これが、核兵器にかかる規定だからこそ、秘密事項にしたのではありませんか。

 弁護論その三。「アメリカは1991年以後、艦船から核兵器をはずしたから、核持ち込みは過去の話になった」――これは、岡田外相も国会でくりかえし、マスメディアでも結構言われている議論ですが、不破氏は、「それは米国の政策をまったく読み違えたものだ」と指摘しました。

密約にもとづく核持ち込みの危険はいまも続いている

 91年のアメリカの決定というのは、ブッシュ政権(父)の時代のことで、たしかに米海軍の全艦船(原子力潜水艦を含む)から戦術核兵器を撤去するというものでした。しかし、3年後の94年、クリントン政権がその政策を訂正し、「水上艦艇に核兵器を配備する能力は廃棄する」が、「潜水艦に核巡航ミサイルを配備する能力は維持する」ことを決定し、「核態勢の見直し」に明記したのです。

 不破氏は、ロサンゼルス級の攻撃型原潜のかなりの部分に、「核弾頭さえ積めば核攻撃ができるシステム」を残した、と述べ、「この型の攻撃型原潜が日本に来ていれば、94年以降も核を持ち込んでいる危険がある」ことを明らかにしました。

 では、問題のロサンゼルス級の攻撃型原潜は、日本に来ているのでしょうか。不破氏は、2003年から09年までと今年に入ってからの攻撃型原潜の寄港回数をあげました。(表(2))

 「去年1年間をとっても攻撃型原潜が来た隻数と回数は17隻59回、そのうちロサンゼルス級は13隻42回です。圧倒的多数が、核兵器積載の可能性のある原潜なのです。今年は1月と2月に3隻の原潜が10回出入りしていますが、2隻6回がロサンゼルス級。日本は、依然として、いざという時には戦術核攻撃のできる海上核戦力の基地として、ずっと使われ続けているのです。

 オバマ政権は、『核態勢の見直し』の方針をまだ発表していませんから、今後の問題としては、戦術核の配置の仕方が変わってくる、ということもあるかもしれません。しかし、核配置というものは、アメリカの戦略いかんでいつでも変えられるものですから、この危険を断ち切ろうと思ったら、核密約をきっぱり廃棄する以外に道はありません」

日本政府はなぜ、核密約の廃棄に踏みこめないのか

 日本政府はなぜ、核密約の廃棄に踏みこめないのか。不破氏は、そこには、沖縄の普天間問題で鳩山内閣がゆきづまっていることと、同じ議論――「核抑止力」論があるのではないか、と指摘しました。

 日本はアメリカの核の傘で守られているのだから、核がなくなったら困る、という「核抑止力」論です。

 「アメリカの議会が昨年5月、戦略体制についての報告書を発表しました。そこには、“アジアでは、われわれはロサンゼルス級潜水艦上の核トマホークに大きく依存している、報告をまとめる過程で、アジアの若干の同盟諸国がこれらの核の退役に懸念するだろうことが明白になった”と書いてありました。そして、この報告書には、意見を聞いた同盟諸国の外交官のリストがついていて、その筆頭に、日本大使館のメンバー4人の名前が書いてありました。結局、日本を守る『抑止力』だから、現状を認めるしかない、というのが、最後に残された理屈なのです」

アメリカの核戦力は「抑止力」ではない

 こう述べた不破氏は、「核抑止力」などとさかんにいうけれど、51年の旧安保条約の時代をふくめ、米国は日本の基地を使って計画してきた核戦争計画の相手は、50年代の中国やベトナムなど、核をもっていなかった相手ばかりだったではないか、と指摘しました。

 「日本を基地にしたアメリカの核戦力は、『抑止力』ではなく、『戦争力、侵略力』です。『抑止』という聞こえのいい看板のもとに、日本を、攻撃的、侵略的な核戦争の足場にする、これが『核密約』だということをはっきり見る必要があります」

 不破氏は、この大もとはいまも変わらないことを強調しました。

 「アメリカの軍事戦略のもっとも危険な特徴は、その基本が、核先制攻撃戦略だという点にあります。先制攻撃とは相手にやられないうちに先に攻撃する、という戦略。そしてその先制攻撃に、必要な場合には、核兵器も使うというのです。

 いま世界では、核保有国がまもるべき最小限の基準として、

 ――非核保有国には核攻撃はしない、

 ――相手が誰であれ、先制的な核兵器の使用はしない、

 という態度を求める声が世界的に起こっていますが、アメリカはどうしてもそれに応じようとはしません。それは、核先制攻撃戦略をとっているからです。

 そのことを考えても、被爆国日本の国土を、こんな危険な戦略の足場にする核密約の存続を許すわけにはゆきません。

 私は、みなさんとともに、日本政府が、ごまかしの議論はもうやめにして、日米間に核密約があったことをはっきりと認めてこれを廃棄する立場を明らかにし、『非核日本』への道を進むことを強く要求したいと思います」

5、「非核の世界」めざし被爆国の声をいまこそ

 「世界の流れはいま、核兵器の廃絶を現実のものとする方向に大きく変わろうとしています」――不破氏はこう指摘し、昨年12月の国連総会で圧倒的多数で採択された核兵器禁止・廃絶条約の早期締結を求める決議でも、今年5月にニューヨークで開催されるNPT(核不拡散条約)再検討会議でも、核廃絶条約への交渉開始あるいはそのプロセスの早期開始が問題になっていることを紹介しました。

 「いま大事なことは、核兵器廃絶という目標を、将来の目標というだけにしないこと、そこに向かって現実に足を踏みだすことです。昨年4月、オバマ米大統領が、“核兵器廃絶は米国の国家目標だ”と宣言したとき、私たちは、これを歓迎して、志位委員長が大統領あての書簡をだしました。その書簡では、大統領の宣言を評価すると同時に、これを先々の目標にして、当面はあれこれの部分措置だけをやろう、というのではまずい、合理的な部分措置はそれとしてすすめながら、核保有国が自分たちの核兵器をなくす条約の交渉を早く始めるべきだ、ということを提案しました。

 いまの世界では、国連の決議も、NPTの会議の計画も、だいたいその方向に焦点があってきています。まさに、日本国民の核兵器廃絶の願いが、世界政治に実るもっとも重要な時期を迎えています。

 そういう時に、日本がアメリカとの核密約体制を残し、自分の国土を核戦争のアジア最大の拠点にしたままでいて、どうして『核兵器のない世界を』の声を、被爆・日本国民の切実な声として世界にとどけることができるでしょうか。核密約を廃棄し、『非核三原則』が日本全体で現実のものとなる、こういう『非核日本』を実現してこそ、世界に被爆日本国民の真剣な声を発信できる、これが大事だと強調したいのです」

非核「神戸方式」が輝きを増す時代

 「核密約を廃棄したあとの日本はどうなるか」――不破氏は、その展望を語りました。

 「核密約を廃棄したあとも、残念ながら日米安保条約はまだ生きています。しかし、事前協議条項が、はじめて生命力をもつ、このことが大事です。

 そうしたら、日本に入港するアメリカの艦船は、次の二つの道のどちらかを選ばなければならなくなります。一つは、日本政府に申し入れて、事前協議の申し入れをする道です。もう一つは、自分は核兵器を持っていないという『非核証明』を関係機関に提出する道です。『非核三原則』のある国に入ろうと思えば、証明なしには入れない。つまり、日本全体が、非核『神戸方式』になるのです」

 不破氏は、いまから35年前の3月18日、神戸市議会が、「神戸港には核搭載軍艦は入れない」という決議をおこない、それを受けた神戸市が具体化の方法として「非核証明書」の提出という方式を編み出したことをふりかえり、「これはよく考えた、合理的な方式でした。実際、事前協議が空文化している日本では、神戸港の平和を守る道はこれしかなかったのです」と述べ、最後に次のように会場に呼びかけました。

 「核密約を廃棄した日本では、国土全体が非核『神戸方式』で守られます。そういう意味では、35年前に神戸のみなさんが生みだした知恵が、今日、『非核日本』の前途を照らし出しているのです。神戸での『非核』の声が日本全体のものとなり、世界でも『非核』の波が広がる、そういう新たな大きなうねりを生みだせるように、お互いに努力しあいましょう」

(出所:日本共産党HP  2010年3月25日(木)「しんぶん赤旗」)
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日本政府の核密約問題と「非核の日本、非核の世界」ー日本共産党の不破哲三氏の講演・その1ー

2010-03-29 00:05:13 | 国内政治
非核の日本、非核の世界
神戸方式35周年のつどい 不破哲三氏の講演

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 日本共産党の不破哲三・社会科学研究所所長が、20日に神戸市での「非核『神戸方式』決議35周年記念のつどい」でおこなった記念講演を詳報します。

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1、核密約問題が「非核の日本」への焦点となっている

政府の密約調査の結果は…

 不破氏は、冒頭、「米軍部が日本を拠点にアジアでの核戦争を最初に企てたのは、朝鮮戦争のさなかだった。それから約60年、国民が待望してきた『非核の日本』を現実のものにする展望が、私たちのたたかいいかんで手にできる時代がやってきた。そのためには、日本をアメリカの核戦争の計画にしばりつけ、アジア最前線の基地にしてきた『核密約』の鎖を断ち切ることがどうしても必要だ。そこに『非核の日本』に道を開く最大の関門がある」と語りました。

 では、鳩山内閣の「密約」調査の結果はどうだったのか。不破氏は、「私たちも政府に資料を提供してきたが、発表された調査結果を読んで、たいへん失望した」と述べ、「政府の調査結果の核心」として、次の3点を指摘しました。

 第一は、私たちが10年前に国会で政府に示した「核密約」の諸文書が、まぎれもない日米両国政府が取り交わした文書であることが、確認されたこと。

 第二は、岡田克也外相自身が、安保条約改定から今日までのあいだに、この文書にもとづいて核兵器を積んだアメリカの軍艦が日本に寄港していた可能性は否定できないと、政府として、「核持ち込み」の事実を認めたこと。

 第三。これがいちばん肝心だが、そこまで認めながら、報告書は、あの文書は「密約」ではないと言い張り、政府も、だから、廃棄する必要もないし、アメリカ政府とあらためて交渉するつもりもない、つまり現状のまま黙ってほうっておく、という態度を明らかにしたことです。

 不破氏は、「鳩山由紀夫首相も岡田外相も『非核三原則』を口にはするが、核問題での日米関係を変えるつもりはない、日本が核戦争計画にしばりつけられている現実には指一本ふれない、これではこれまでの自民党政治となにも変わりはないではないか」と指摘しました。

2、日米安保条約と核密約

朝鮮でベトナムで台湾海峡で。日本を拠点に核攻撃を準備

 不破氏は、核密約の本当の意味をつかむには、日米安保条約の歴史を見る必要がある、として、まず最初の安保条約(51年)下の日本の状態をふりかえりました。

 53年に成立したアメリカのアイゼンハワー政権のもとで、同年には朝鮮で、54年にはフランスとベトナムの戦争で、58年には台湾海峡で、アメリカの政府と軍部は何回も核兵器の使用をくわだて、そのたびに、日本を拠点にした第7艦隊の空母が、問題の海域に出動してゆきました。これらは、すべてアメリカの公式資料に記録されている事実です。

 たとえば、54年のベトナム戦争の最終段階、ディエンビエンフーに集結したフランス軍が包囲されて全滅の危機にさらされた時、米政府が2度にわたってベトナム軍への核攻撃を提案しました。フランス政府もそれを受け入れたのですが、結局は世界の世論を恐れて不発に終わりました。ディエンビエンフーの敗北後、野党の党首マンデス・フランス(次のフランス首相です)は、「核攻撃の日取りまで決まり、原爆を積んだアメリカの艦船はすでに航行中だったではないか」と米仏両国政府の危険な計画を糾弾しましたが、原爆を積んだ艦船とは、第7艦隊に属する2隻の空母でした。当時、第7艦隊は横須賀を拠点の一つとしていました。

 不破氏は、「当時は、日本への核兵器の持ち込みも、日本の基地からの出撃も勝手放題というのが、安保条約下の実態だった」と語ります。

 しかし、こんな状態では、日本が独立国だといっても、世界では通りません。同じ安保でも、もっと独立国の体裁をととのえよう、ということで、日米両政府が一致して、58年に始まったのが、安保条約改定の日米交渉でした。

「事前協議」と核密約の抱き合わせに安保交渉の焦点があった

 このとき、日本が「独立の証し」だといって主張したのが、日本の基地の使用について「事前協議」の制度を設けることでした。“基地は貸していても、戦争に使ったり、核兵器をもちこむような時には、事前に日本政府と相談する。これなら名実ともに独立国だといえる”。こういう仕組みです。

 この時のアメリカ政府は、まだアイゼンハワー大統領の時代です。「事前協議」の制度をつくるのはいいが、日本政府といちいち相談しないと基地を使えないようでは、日本に基地をおいておく意味がなくなる、「事前協議」の仕組みはあっても、実際の基地の使い方はこれまでどおり自由にやれるような道を見つけだそう、こういう考えで交渉をはじめました。実は、安保改定交渉のいちばんの核心の一つは、この問題の解決にあった、といってもよいでしょう。

 交渉は58年10月から始まりましたが、記録によると、アメリカの交渉担当者のマッカーサー大使は、「事前協議」といっても、軍艦や飛行機の日本への出入りは従前通り協議なしでゆきますよ、という話を、交渉の最初の段階から持ち出しています。

 不破氏は、「この交渉で合意したことを文書にしたのが『討論記録』という合意文書です。『討論記録』という名前にしたのは、日本側の注文で、それが万一明るみに出たときにも言い逃れをできるように、ということだった。合意ができたのは、59年6月で、マッカーサー大使は、そのとき、『今日、完全な合意ができた』という報告の電報を本国政府に打ち、新しい安保条約や事前協議の取り決めとともに、『討論記録』も、合意した文書のリストにあげている」と語りました。

 その後、いろいろな追加的な交渉があり、新条約調印の月である60年1月6日に、日本政府を代表する藤山愛一郎外相とアメリカ政府を代表するマッカーサー大使とのあいだで、「討論記録」など三つの秘密文書を互いに頭文字署名をして、それを公式に取り交わしていたのでした。

核密約(討論記録)を読む二つのポイント

 ここで、不破氏は、「核密約」の二つのポイントを丁寧に解説しました。

 ポイントの一つは、核密約「討論記録」が、政府が結んだ条約だということです。1月6日、この文書を取り交わした日に、マッカーサー大使が本国政府に打った電報は、「藤山氏と私は、本日、以下のそれぞれについて、二つの英文の原本に頭文字署名をし、取り交わした」として、署名した文書の最初に「討論記録」をあげています。しかも、電報は続く部分で、これをそのコピーも含めて「秘」文書として指定することも約束しあった、としています。こうして文書で合意を確認しあったものは、名前がどうであっても、まぎれもない条約なのです。だからこそ、マッカーサー大使は、核密約をふくむ一連の文書の全体を「条約を構成する文書群」として本国に報告しました。

 次の重要なポイントはその中身です。不破氏は、「討論記録」の条項(表(1))にそって詳しく解説しました。「討論記録」の冒頭にある「1節」は、公表する予定の、「事前協議」についての交換公文の内容です。これだけ読むと、日本での米軍基地の使い方は、すべて事前協議にかかるかのような印象を受けますが、これはあくまで発表用の文章で、それがどう運用されるかの「実施要領」は、秘密条項である「2節」で決められる、という仕組みになっています。

 「2節」の頭には、「交換公文は、以下の諸点を考慮に入れ、かつ了解して作成された」とあります。実施要領も、たがいに「了解」しあった合意文書であることは、明白です。ここには、四つの項があって、前半の二つは、交換公文の規定の説明で、A項では核兵器の持ち込み(地上配備)、B項では日本からの戦闘作戦行動が、それぞれ事前協議の対象になることが規定されています。この部分は、ごまかしの名目をつけて日本政府は後で公開しました。

 くせ者は、次の二つの項で、そこでは、何が事前協議の対象にならないかが、規定されているのです。C項では、アメリカの飛行機や艦船の日本への出入りは、「現行の手続き」どおりにする、現行とは、これまでどおりということで、事前協議の対象にせず、アメリカの自由勝手にまかせる、ということです。D項は、戦闘作戦行動にかかわることで、米軍が日本から移動することは、アメリカの勝手ですよ、ということです。

 つまり、表向きは事前協議の条項があっても、実際は、核兵器を積んだアメリカの軍艦の日本寄港もこれまでどおり自由勝手、核を積んだ爆撃機の日本基地利用も天下御免、「移動」という名目がつけば、日本を拠点に戦争地域に出撃することも自由にできる、こういう表と裏の二重底の仕組みを、日米の合意でつくりあげてしまったのです。

 不破氏は強調します。「これは、アメリカにたいして、軍艦や飛行機に積んだものなら、事前協議なしで日本に核兵器を持ち込む権利があることを、日本が認めたことです。だから、この密約があるかぎり、アメリカの軍艦や飛行機が核兵器を積んで日本に入ってきても、日本政府は文句をつける権利がないのです」

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「討論記録」全文

 1、(日米安保)条約第6条の実施に関する交換公文案に言及された。その実効的内容は、次の通りである。

 「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更ならびに日本国からおこなわれる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定に基づいて行われるものを除く)のための基地としての日本国内の施設および区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」

 2、同交換公文は、以下の諸点を考慮に入れ、かつ了解して作成された。

 A 「装備における重要な変更」は、核兵器および中・長距離ミサイルの日本への持ち込み(イントロダクション)ならびにそれらの兵器のための基地の建設を意味するものと解釈されるが、たとえば、核物質部分をつけていない短距離ミサイルを含む非核兵器(ノン・ニュクリア・ウェポンズ)の持ち込みは、それに当たらない。

 B 「条約第5条の規定に基づいて行われるものを除く戦闘作戦行動」は、日本国以外の地域に対して日本国から起こされる戦闘作戦行動を意味するものと解される。

 C 「事前協議」は、合衆国軍隊とその装備の日本への配置、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解されない。合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更の場合を除く。

 D 交換公文のいかなる内容も、合衆国軍隊の部隊とその装備の日本からの移動(トランスファー)に関し、「事前協議」を必要とするとは解釈されない。

 (注)2000年に日本共産党の不破哲三委員長(当時)が米政府解禁文書から入手した「討論記録」の訳。これは、外務省の調査で見つかったものと「修辞的な部分を除いて同じ」(同省調査報告書)ものです。

3、核密約下の日米関係史

 この核密約は、アメリカの権利を規定した大事な合意文書ですから、アメリカ政府は、これをたいへん重視して、秘密文書ではあっても、軍事や外交で日米関係にかかわる人びとは、必ず読んで仕事をするように、きちんとした管理態勢をとっているようです。

 ところが、日本では、違いました。国会内での政党間の闇取引について、以前は、国対の関係者のあいだでは、“墓場まで持ってゆく”ということがよく言われました。60年にアメリカと密約を結んだ岸信介首相や藤山外相は、政府間の密約も同じようなものだと考えたのか、内閣がかわったときに、次の内閣にひきついだ形跡がないのです。

1963年の日米政府間危機

 その結果、密約を結んで3年後に、日米政府間に危機的な状態が起こりました。

 63年、アメリカ政府が、原子力潜水艦の寄港を日本に求めてきた時のことです。アメリカでは、ケネディ大統領の時代でした。国会で、この潜水艦の核兵器のことが問題になったとき、池田勇人首相も防衛庁長官も、「核兵器を積んだ船の寄港は絶対に認めない。それは、当然、事前協議にかかる問題だ」とくりかえし答弁しました。

 それが、アメリカで大問題になったのです。ケネディ大統領が、政府と軍の首脳を集め、いわば「御前会議」で対策を議論する、という事態にまでなりました。そこで問題になったのは、“いまの日本政府は、核密約を知っていないのではないか”ということでした。そこで、当時のライシャワー駐日大使に、大平正芳外相と至急会って実情を確かめ、問題を解決するように指示をだしました。こうして開かれたのが、核密約の歴史のなかで必ず出てくる大平―ライシャワー会談でした。ライシャワー大使は、会談の模様の詳細な報告を本国政府に送っていますが、そのなかで、「大平は秘密記録の存在を知らなかったが、知っても少しもうろたえなかった」と書き、大平外相は、今後は、自分たちが核密約にそった行動をとることを約束した、と報告しています。

核密約とベトナム戦争

 不破氏は、ケネディ政権のこの対応の背景について、次のように語りました。

 「ケネディ政権は、南ベトナムにアメリカの軍隊を送り込んで、軍事支配の計画をすすめており、その年の10月には、国家安全保障会議が、南ベトナムを維持する道は、朝鮮戦争のようにアメリカの大軍を送り込むか、核兵器を使うか、この二つしかない、という結論をだしていました。その時、拠点となるのは日本です。そういう時に、日本の基地が自由に使えないようでは困る、ということが、おそらく背景にはあったのでしょう」

 ケネディは63年11月に暗殺されますが、あとを継いだジョンソン政権は、64年、北ベトナム攻撃の戦争を開始します。この戦争は、結局、アメリカの大敗に終わるのですが、アメリカは、その間、軍事的な失敗や危機が起こるたびに、核兵器による戦局の打開を何回も計画します。ベトナム駐留米軍の総司令官だったウェストモーランドは、戦後、“核兵器を使っていれば戦争の成り行きは違っていただろう”と残念がった、とのことです。当時、核兵器の使用という場合、最大の戦力は航空母艦ですから、このときも、日本は核戦争の最前線の拠点という位置にあったのでした。

 このように、核密約というのは、核兵器を積んだ軍艦が時々日本に入ってくるというだけの話ではないのです。核密約50年のあいだに、日本は核戦争の前進基地として、何度、戦争の瀬戸際まで引き込まれたか分からないのです。

とめどなく広がる拡大解釈

 不破氏はその上で、「最初のうちは日本の対応を心配しながら、という気配のあったアメリカだが、何をやっても大丈夫だとなると、厚かましくなった」と述べ、「密約」の拡大解釈が始まった経過に話を進めました。

(1)沖縄「核密約」(69年)とは

 69年の沖縄返還交渉では、佐藤栄作首相とニクソン大統領のあいだで、新たな核密約が結ばれました。その時、沖縄返還と核兵器の撤去が合意され、日米共同声明が発表されましたが、同時に、「重大な緊急事態」が起き、核兵器を再び沖縄に持ち込むことが必要になったときには、日本は、事前協議で核持ち込み(地上配備)を認めることを約束したのです。「再持ち込み密約」です。

 不破氏は、この密約で重要なことは、再持ち込みのために、沖縄の「現存する核兵器貯蔵地を……いつでも使用できる状態に維持」しておくことが明記されていることだと指摘しました。

 「核兵器というものは、核弾頭を持ち込んだだけでは使い物になりません。核兵器を維持・管理し、使用できる状態にするシステムが必要です。アメリカは、この密約で、そういうシステムを沖縄基地に持ちつづける権利を手に入れたのです」「政府が発表した密約調査報告では、“時間がたったから密約の意味はなくなった”などと書いていますが、核兵器を管理・使用するシステムを維持する権利は、いまでもアメリカの手中にあるのです」

(2)核空母の「母港」化受け入れ(72年)

 もう一つの重大な拡大解釈は、72年に横須賀を空母ミッドウェーの母港にしたい、というアメリカの申し入れを受け入れたことです。日本政府(田中内閣)は、「母港化というのは、乗組員の家族が日本に来るというだけのこと。核兵器を積むことはありえない」といって、これを受け入れました。しかし、これは、日本に申し入れる前に、アメリカの政府内で大問題になったことでした。国務長官が、“密約があっても、母港化までは無理だ”と懸念をとなえたのです。母港なら最低3年は居座るものを、「立ち入り」「寄港」とは言えないからです。それを、国防長官が“密約でやれる、大平との合意もある、心配は要らない”といって押し切ったのですが、国防長官の見通したとおり、日本政府(この時も外相は大平氏でした)は、なんの異論もとなえないで、受け入れたのでした。ミッドウェーは横須賀「母港」に結局11年も居座り、その後も、たえず、より新鋭空母に交代して今日にいたっています。

核密約文書を政府に示しての党首討論(2000年)

 不破氏は、続いて、10年前、「討論記録」という核密約を、アメリカ政府の公文書解禁のなかで発見し、2000年3月~4月、入手した全文書を政府に示して追及した国会討論をふりかえり、次のように述べました。

 「私たちは、事前にアメリカの文書を政府に手渡した上で、クエスチョンタイム(党首討論)で4回連続の質問をしたが、政府は『なにを出されても密約はない』の一点張り、“日米関係で何十年間も、うそを隠し続けるということがあるはずがない”とまで言いました。しかし、私たちがその時政府に示した諸文書が、真実の公的文書であったことは、いま、政府の調査によっても確認されました。そして、日米関係で50年間も、密約を隠し続け、国民と世界をうそであざむいてきたことも明らかになったのです」

(出所:日本共産党HP  2010年3月25日(木)「しんぶん赤旗」)
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衆議院で可決した子ども手当法案に対する日本共産党の態度と見解-賛成に至る審議の経過ー

2010-03-17 14:14:18 | 国内政治
子ども手当法案に対する
高橋議員の賛成討論
衆院本会議

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 日本共産党の高橋ちづ子議員が16日の衆院本会議で行った子ども手当法案に対する賛成討論は次の通りです。

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 今日、子育て世帯の多くは所得が低く、政府の調査によっても、経済支援を求める声が7割にも達しています。とりわけ、子どもの7人に1人が貧困であり、日本は所得の再分配によって逆に貧困率が高まる唯一の国であることが指摘されてきました。このような現状を改善することは、今日の政治に課せられた重大な責任です。子どもを社会で育てるという理念や、先進諸国に比べ極端に少ない子ども・家族関係支出を増やすべきという認識は共有する立場です。

 日本共産党は、「小学校6年生までの児童手当を、ただちに現行の2倍に引き上げ1万円に」するとともに、「18歳までの支給をめざし改善」していくことを提案してきました。その財源は、世代間の予算の移し替えや負担増ではなく、大企業・大資産家優遇税制の是正や軍事費削減など、聖域にメスを入れるべきだと訴えてきました。

 配偶者控除の廃止等、国民の一部を犠牲にして、他の世帯にまわすようなやり方では国民の支持は得られません。今回の法案は、2010年度に限って中学生まで「子ども手当」半額の支給をするものであり、一部の控除の廃止を財源としていますが、手当を受給しない他の世帯への負担増はもりこまれていないことから、その限りで賛成としたいと思います。

 問題は、11年度以降の子ども手当をどうするのかであります。

 そもそも、2万6000円満額支給については、総理自身が財源不足で困難と発言しています。財源や支給対象の範囲など、制度の骨格に関わる事柄のほとんどが先送りされていることは、制度の信頼性に大きな不安を与えています。

 今回の「子ども手当」の財源は、年少扶養控除の廃止や特定扶養控除の上乗せの廃止によるものであり、結局のところ「増税との抱き合わせ」です。さらに、今回は見送られたものの配偶者控除や成年扶養控除の見直しが本格的に行われるなら、子育て以外の世帯に増税を押し付けることになり、認めるわけにいきません。

 控除の廃止によって、保育料の引き上げなどの「負担の連鎖」が起こります。これについて、政府は「適切な措置」を講ずるとしていますが、様々な住民サービスなど、自治体独自の判断に対しては、国が関与できないはずです。だからこそ、国の責任を明確にしなければなりません。子ども手当の地方負担相当分を、民間保育所の運営費交付金の削減という形で確保するということなどは、現金給付と車の両輪で進めるべき現物給付に、国は責任をもたないと言ったに等しいものであり、絶対に認められません。

 また、現在、子どもと家族を応援する支出のうち、企業支出はわずか0・1%にすぎず、諸外国からみても低く、企業負担はなくすべきではありません。

 「子ども手当」の満額支給に5兆4000億円も使うために、他の子育て予算が削減されたり、さらなる増税の恐れが指摘されています。

 参考人質疑でも、「子ども手当」の理念や目的の論議が十分だったのか、財源や地方負担はどうなるのかなど、さまざまな意見が出されました。同時に、手当の支給だけではなく、保育所待機児童の解消や子どもの医療費・教育費の軽減など、子育てに関わる基盤整備を抜本的に充実することの重要性が指摘され、手当も、現物給付も、ともに必要であるという認識が共通して強調されたことは重要です。

 最後に、大本にある子育て家庭の貧困や、働き方の改善も、政府全体でとりくんでいくということを強く求めて、討論を終わります。

(出所:日本共産党HP 2010年3月17日(水)「しんぶん赤旗」)

子ども手当法案を可決 衆院委

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 衆院厚生労働委員会は12日、15歳までの中学生以下の子ども1人あたり月額1万3000円を2010年度に限り支給する子ども手当法案を採決しました。民主、社民両党と公明党による修正案と修正部分を除く原案を3党と日本共産党の賛成多数で可決しました。

 修正案は(1)児童養護施設の入所者に必要な措置を講じる(2)11年度以降の子育て支援策の拡充――の付則を盛り込むというもの。

 この日の採決は、理事会での合意がなく、委員長が自民党議員の質疑時間の終了を宣告した直後に、民主党が質疑終局・採決を求める動議を提出し、与党と公明党がこれに賛成したものです。日本共産党の高橋ちづ子議員は質疑終局・採決を求める動議に反対し、委員長と与党側の強引な運営に抗議しました。

 法案については同日の質問で高橋氏は、「日本共産党は児童手当の拡充を一貫して主張し、直近の総選挙では18歳までの支給をめざしつつ、財政にも責任を持ちながら、当面手当額を倍にと主張してきた」と述べるとともに、法案は来年度に限った手当であり、控除廃止による、手当受給のない他の世帯への負担増はないので、「反対はしない」と表明しました。

(出所:日本共産党HP 2010年3月13日(土)「しんぶん赤旗」)

子育て環境整備こそ
高橋議員 子ども手当見直し迫る

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 日本共産党の高橋ちづ子議員は12日の衆院厚生労働委員会で、子ども手当法案に関し、来年度からの月額2万6000円の“満額”支給について「大胆な見直しをすべきだ」と求めました。

 高橋氏が「2万6000円で子育ての費用は基本的にまかなえると考えているのか」と質問したのに対し、長妻昭厚労相は「すべてではないが、子育ての基礎経費の相当部分に当たる」と答えました。

 高橋氏は、文部科学省のデータでは公立小学校の学習費の総額が年間30万7723円かかり、これでは子ども手当分が丸々なくなり、中学校では16万円も足が出ることを指摘しました。

 その上で「貧困の克服のためには特別の手だても必要だ。保育の充実や小学校入学前までなら3100億円でできる医療費無料化など子育てしやすい環境整備も一体に取り組む必要がある」と強調しました。そして、「月額2万6000円、予算額5兆4000億円では、どこかにしわ寄せがくるか、あるいは増税かと不安になる」と述べて、大胆な見直しをするよう求めました。

 長妻厚労相は「まず(2万6000円という)目標を設定して、それにつきすすむことが重要だ」と、見直すつもりのないことを表明しました。

(出所:日本共産党HP 2010年3月13日(土)「しんぶん赤旗」)

子育て支援を同時に
「子ども手当」 参考人が意見陳述
高橋議員質問

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 衆院厚生労働委員会は9日、子ども手当法案について参考人質疑を行いました。名古屋経営短期大学の古橋エツ子学長、三重県の山中光茂松阪市長、全日本教職員組合の関口てるみ養護教諭部長など6人の参考人が意見陳述しました。

 古橋氏は各国の制度を比較。出生率の向上は子ども手当だけでは実現できないとして、子育て世帯の女性が就労しやすい条件整備や男性も子育てしやすい環境づくりが必要だと述べました。

 関口氏は学校の保健室を通して見えてきた実態として、父子家庭の児童が学校で高熱を出したが父親は仕事で迎えに来られず、保険証もないので「受診させないでくれ」といわれた(滋賀・小学校)などの事例を報告。「子どもの貧困は深刻だ。子ども手当の支給を子育て支援に位置づけ、子育ての土台の抜本的強化とともに行うべきだ」と求めました。

 日本共産党の高橋ちづ子議員は山中氏に「保育所の運営費を国から地方に移してその分を手当の財源にするとしており、現物給付への国の責任が後退するのではないか」と述べ、見解をただしました。

 山中氏は「この間の総務省の説明によれば、現物給付への国の助成はなくなってしまう。これでは地方格差が広がると思う」と答えました。

 また、高橋氏は関口氏に「子ども手当だけでは格差の拡大にならないか」と質問。

 関口氏は「仲間のあいだからも親に配ったのでは子どもに渡るのか心配の声もある。医療費の無料化や給食費の無償化なども同時に実現してほしい」と答えました。

(出所:日本共産党HP 2010年3月10日(水)「しんぶん赤旗」)

扶養控除廃止
最大規模増税を批判
衆院委 塩川氏「公約に違反」

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 日本共産党の塩川鉄也議員は2日の衆院総務委員会で、個人住民税の年少扶養控除廃止と特定扶養控除縮減を盛り込んだ地方税法改定案は過去最大規模の増税となる問題を追及しました。

 塩川氏は、扶養控除廃止などが4569億円の大増税となり、「2006年度定率減税廃止による増税に次ぐ過去最大規模の増税だ」と指摘。小川淳也総務政務官は「(増税となることは)事実だ」と認めました。

 塩川氏は、民主党が昨年総選挙のマニフェスト(政権公約)に住民税の扶養控除廃止は掲げられていないことを示し、「その上、増税を強いられる住民に、何の説明もしていない」と政府の姿勢をただしました。小川総務政務官は政府税調での議論を紹介し「総合的な判断だ」などと述べました。塩川氏は「課税する側の都合は説明されるが、課税される側の住民にたいする説明はない」と重ねて批判をしました。

 さらに塩川氏は、増税分の使い道の問題で「子ども手当の財源としているが、子育て政策補助金の一般財源化とセットになっており、民間保育園への国庫補助の一般財源化や規制緩和を進めるものだ」と批判しました。

(出所:日本共産党HP  2010年3月3日(水)「しんぶん赤旗」)

子ども手当
全額でも増税世帯
佐々木氏追及 財務省認める

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 日本共産党の佐々木憲昭議員は26日、衆院財務金融委員会で、子ども手当導入にともなう税額控除の廃止(増税)などで、逆に負担増となる世帯が生じることを独自の試算を示して追及し、財務省は同手当の半額、全額支給ともに増税世帯が生じることを初めて認めました。

 佐々木氏はまず、2010年度に半額(月1万3000円)を支給する同手当法案について、11年度からの全額(2万6000円)支給の確約もないのに、予算関連法案では所得税や住民税の年少扶養控除廃止など、全額支給のための増税を先取りしている問題をただしました。

 菅直人財務相が「最終的には連立政権のなかで、どういう形で実現するか議論する」などと、いまだ全額支給の保証がない実態を認めました。佐々木氏は「『恒久措置』として増税を盛り込んでいるのに、全額支給を確約していないのは問題だ」と批判しました。

 また佐々木氏は、サラリーマンの片働き夫婦と3歳未満の子ども1人の3人世帯の場合、子ども手当が半額支給されただけでは、控除廃止によって大半の世帯が負担増になるとの試算を明らかにしました。財務省の古谷一之主税局長も「現状のままであれば、こういう計算が可能だ」と認めました。

 さらに佐々木氏は、税制改正大綱に「見直し」が盛り込まれた配偶者控除の廃止が実施された場合、子ども手当全額支給の場合でも、給与収入総額が700万円で年間2・2万円の増税になるなど、収入によっては負担増となる試算を示して追及。古谷局長は「収入が上がると適用税率が上がっていくので、こういう計算になる」と認めました。

(出所:日本共産党HP 2010年2月27日(土)「しんぶん赤旗」)

子育て環境整備と合わせ
高橋議員主張 子ども手当法案審議入り

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 衆院本会議で23日、中学生以下の子ども1人当たり月額1万3000円を支給する子ども手当法案の趣旨説明と質疑が行われ、日本共産党の高橋ちづ子議員が質問しました。(質問)

 高橋氏は、同法案が民主党が政権公約のトップに掲げた“目玉政策”であるにもかかわらず、与党は首相が答弁する重要広範議案にしなかったことについて「きわめて無責任だ」と批判。同時に、法案が2010年度に限ったものであり、財源や地方負担のあり方など制度の根幹にかかわる問題をすべて先送りしていると指摘しました。

 その上で、貧困と格差の拡大が子育て世代に深刻な打撃を与えていること、保育所の増設や義務教育の完全無償化など、子育ての土台を整備することとあわせてこそ、子ども手当の効果が出ることを強調しました。長妻昭厚労相は「バランスよく組み合わせたい」と述べました。

 高橋氏は法案について具体的に、11年度以降は満額支給になるのか、給食費や税金の滞納世帯について、子ども手当と相殺することはないのかとただしました。

 長妻昭厚労相は満額支給について「11年度予算編成過程において財源のあり方を含めて政府で決定する」と述べ、滞納についても、相殺しないとは明言しませんでした。

 高橋氏は財源について「増税と抱き合わせになっている」ことを批判。扶養控除の廃止・縮小による増税だけでなく、保育料なども連動して負担増になることを指摘して、その対策をただしました。

 菅直人財務相は「各府省により、措置が講じられるものだと考えている」と述べるにとどまりました。

 高橋氏は、大企業や高額所得者への応分の負担や軍事費の削減などを検討することが必要だと強調し、そうした論議を通じて「真に安心安全な子育て社会をつくる方向をめざすべきだ」と強く求めました。

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保育所設置基準
撤廃方針を再言明

 原口一博総務相は23日の衆院本会議で、国による保育所の設置基準について「中央で全部決めてそれを地方に押し付けてきた基準等を、地方自治体みずからが決定し、最適なサービスを実施できるように改める」と述べ、撤廃する方針を改めて表明しました。日本共産党の高橋ちづ子議員に対する答弁です。

 高橋氏は設置基準について、原口総務相が「最低基準がずっとあっていいのか」(16日、衆院本会議)と発言したことを批判。「(設置基準を)撤廃するなら保育の質の低下をもたらし、子どもの安全も脅かされかねない」と中止を求めました。

 長妻昭厚労相も高橋氏の質問に対し、「(保育所面積の最低基準の撤廃は)待機児童の解消を図る観点から、東京など一定の地域についての一時的な特例措置」と表明し、水準が下がるおそれのあることを事実上認めました。

子ども手当法案にたいする
高橋議員の質問
衆院本会議

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 日本共産党の高橋ちづ子議員が23日の衆院本会議で行った、子ども手当法案に対する質問は以下の通りです。

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 「子ども手当」は、民主党が総選挙の政権公約のトップにかかげた、まさに鳩山内閣の「目玉」政策であります。その法案審議にあたっては、当然、鳩山総理自身が答弁の責任をはたすべきです。総理出席がないまま審議入りすることはきわめて無責任だと言わねばなりません。

 まず法案が、なぜ2010年度に限ったものとなったのか、財源や地方負担のあり方など制度の根幹にかかわる問題をすべて先送りした上で、ともかく、6月の支給を急いだものであることは否めません。子ども手当は、将来にわたる子育て支援策の体系のなかにしっかり位置づけてこそ、その目的をはたせるのではありませんか。

 この間の「貧困と格差の拡大」は、子育て世代に深刻な打撃を与えています。

 政府の世論調査によれば、「子育てのつらさ」の一番は「子どもの将来の教育にお金がかかる」で39・2%。「子どもが小さいときの子育てにお金がかかる」も20・1%です。一方、児童のいる世帯の平均所得は1996年以降11年間で9万円も下がっています。このもとで、日本の子どものいる現役世帯の貧困率はOECD(経済協力開発機構)30カ国中19番目という水準となっており、子どもの貧困率は14・2%という状態にあることを政府も初めて認めました。

 このような現状をもたらした原因と責任がどこにあるのか。それは、自民・公明政権のもとで、保育所整備をはじめ子育て・教育への予算を削減し、また生活保護の切り捨てや社会保障費の削減、低賃金や長時間労働、非正規雇用を拡大してきたことにあると考えますが、鳩山内閣の見解をもとめます。

 いま、子育ての土台を抜本的に強化することが必要です。

 子どもの養育に対する国の責任を明らかにしたうえで、保育所を増設し待機児童を解消する、義務教育を完全に無償化し、給食費、教材費、修学旅行の費用など義務教育の必要経費については保護者の負担にしないことなど、子育ての土台の整備をすることが必要だと思いますが、政府の見解を求めます。

 子育てのための現金給付、手当の充実は、そうした土台の整備とあわせて、いわば「車の両輪」ですすめてこそ、効果が出ると考えますが、見解をうかがいます。

 その一つとして、月額2万6000円の「子ども手当」が満額支給されると、「手当」の水準はフランスやドイツを超えるものになりますが、一方、保育などその他の現物給付は最低水準です。「手当」を配ったら、あとは、「自助努力、自己責任」ということになるのでしょうか。

 保育所については、先日の本会議で、総務大臣が「最低基準がずっとあっていいのか」と述べたことは問題です。保育所の設置基準や定員の上限を撤廃するならば、保育の質の低下をもたらし、子どもの安全も脅かされかねません。このようなことはただちに中止すべきです。

 すでに、ほとんどの自治体で取り組まれている乳幼児の医療費の無料化などは国の制度として行うべきではありませんか。

 次に法案について具体的にお聞きします。

 そもそも2万6000円という支給額の根拠について、ご説明ください。10年度はとりあえず、半額の1万3000円を支給するといいますが、次年度以降は満額になるのか、うかがいます。

 支給対象については、15歳以下のすべての子どもを対象に支給することでいいですか。里親や児童福祉施設など、社会的養護にあたる子どもへの支給についても分け隔てなくすべきです。子ども自身が実質的な利益を受けるように、丁寧な制度設計と扱いがなされるべきですが、見解をお聞きします。

 給食費や税金の滞納世帯に対して、滞納分を手当と相殺するという発言も聞こえてきます。子育てを「社会全体で支える」という制度の趣旨からいっても行うべきではないと考えます。

 最大の問題は、子ども手当の財源が増税とだきあわせになっていることです。

 控除の廃止による増税の影響についてですが、民主党は、増税と手当とで、手取りが減るのは全体の「4%未満」と説明しました。これに対して、全国5000万世帯のうち18%にあたる約920万世帯で増税となるとの試算がだされています。世帯別の影響とその根拠について説明してください。

 今回見送られた、配偶者控除の廃止や、23歳から69歳までの成年扶養控除の廃止については、次年度以降行うつもりですか。

 さらに、扶養控除の廃止・縮小にともなう増税だけでなく、保育料など23項目について連動して負担増が起こることが指摘されています。地方のさまざまな軽減策にも当然、連動します。この負担増はどれほどになるのでしょうか。負担増にならない対応とは具体的にどのようなものですか。

 政府は当初、国庫負担でといってきましたが、現行の児童手当の仕組みを残しました。総理は、「財源に余裕ができた分だけ支給する仕組み」をつくりたいと発言していますが、今後、地方負担、企業負担は、それぞれどうなりますか。

 また、財源として、民間保育所の運営費国庫補助分をあてることが検討されていますが、それは、絶対認められません。

 手当の支給ありきで、後から増税。しかも、その安定した財源を口実に、消費税の引き上げなどもってのほかです。

 わが党は、財源について、聖域扱いされてきた大企業や高額所得者への応分の負担や、軍事費は削減するという真剣な検討が必要であると考えています。その論議を通じて、真に安心安全な子育て社会をつくる方向をめざすべきだということを強く求めます。

(出所:日本共産党HP 2010年2月24日(水)「しんぶん赤旗」)
コメント (4)
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国庫負担増やし、高すぎる国保料下げよ-日本共産党の小池晃政策委員長が民主党政権に国会で質問ー

2010-03-07 08:28:57 | 国内政治
国庫負担増やし、高すぎる国保料下げよ
参院予算委 小池政策委員長の質問

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 日本共産党の小池晃政策委員長が4日の参院予算委員会でおこなった質問は次の通りです。

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貧富の格差是正という、社会保障本来の役割が弱まっている

 小池晃政策委員長 日本共産党の小池晃です。政府は相対的貧困率の数字を初めて発表いたしました。1997年以降、最悪であることが明らかになったわけです。雇用破壊による非正規労働者の低賃金などの配分の問題、これに加えて所得の再分配、すなわち税や社会保障の問題、そういった再分配の機能を果たしていないということが明らかになってきています。

 これはOECD(経済協力開発機構)が発表した数字をグラフにしたものでありますけれども、これを見ますと、そもそも税や社会保障の負担や給付を入れない、いわゆる市場所得での貧困率は日本はそんなに高くないんです。ところが、税や社会保障を加味すると高くなってしまう。言い換えると、まさに、本来は税や社会保障というのは貧富の格差をなくす、貧困率を減らす役割があるにもかかわらず、その役割が発揮をされていない。

 総理にお聞きしたいんですが、これはまさに長年の自民党、公明党の政治の下で社会保障の負担増、これがやはりこういう事態を生み出した。だったら、根本的な転換が求められていると思いますが、総理、いかがですか。

 鳩山由紀夫首相 今拝見させていただいて、確かに、税や社会保障、保険料、こういったものが所得再分配機能をうまく果たしていないなと。むしろ、そのことによって、世界的に貧困率を比較的に高い状況にしてしまっているということは、これは事実として認めなければならないことだと思っております。

 それが、旧政権にすべての責任というものを見いだすというのもいかがなものかと思ってはおりますが、この問題の解決に向けて努力をする必要がある、すなわち所得再分配機能というものをもっとうまく働かせていくようなシステムを構築する必要があると、そのように考えます。

小池 所得300万円で保険料40万円、下げる手だてを
首相 低所得者の保険料に知恵出したい
保険料収納率8割台、原因は高すぎる保険料

 小池 そうだとすると、この重い負担をどう考えていくのかということが問われます。今日は最も重い負担の典型として、国民健康保険の保険料の問題を取り上げたいんですが、収納状況をご説明ください。

 長妻昭厚生労働相 平成20年度の保険料の収納率というのは全国平均で88・35%となりまして、前年度比2・14ポイント低下しております。

 小池 国民皆保険制度となって以来、最低、ついに8割台になりました。その根本が高過ぎる保険料にあるわけで、今パネルでお示ししておりますが、例えば所得300万円の夫婦と子ども2人の4人世帯で見ると、札幌市で41万3000円、さいたま市で37万200円、京都市で44万500円、大阪市で42万8700円、福岡市で44万8500円です。

 総理、この数字をご覧になって、率直な所感で結構ですから、これ払える水準の保険料だと思いますか。

 首相 所得300万円の方が、その1割以上の保険料を払わなければならないというのは、やはりこれは率直に申し上げて相当高いなという実感はございます。

 小池 そのとおり、本当に払える能力を超えている保険料になっている。問題は、この原因は一体どこにあるのかということなわけです。最大の原因は、やっぱり国保会計に対する国庫負担を引き下げてきたことにあるのではないか。

50%だった国庫負担が半減し、保険料は倍になった

 小池 今グラフ(図(1))をお示ししておりますが、84年には約5割、50%だった国庫負担率が、ついに25%にまで下がりました。これは国保会計全体に占める国庫負担の比率です。その間、1人当たりの保険料が約4万円から8万円に2倍になっているわけですね。

 来年度予算についてお聞きしたいんですが、この保険料を引き下げるための手だては新たに何か盛り込まれていますか。

 厚労相 平成22年度予算では、根っこからいいますと3兆円以上の国庫負担の予算を付けさせていただいて、それに加えて、これまでも暫定措置が切れる市町村に対する低所得者の人数に応じて支援する制度を継続をするというようなことも盛り込んでいます。そして一つの目玉というかポイントといたしましては、自発的な離職者じゃない方、つまりこれは、解雇をされた、あるいは雇い止めになった方というのは保険料が前年の所得で計算されますので、無職になってもかなり高い保険料を払わなきゃいけないと、こういうようなことがございまして、それに関して優遇措置を設けようということです。前の年の所得の7割を引いた額、つまり前の所得の3割に保険料の算定をするということで、実質的に保険料が多くの方が半額程度になると、こういうような措置も盛り込ませていただいているところです。

 小池 いろいろ並べられたんですけれども、かなりの部分は自公政権時代の継続なんですね。

 新しくやるのは失業者の保険料軽減なんですけど、これは国費としてはいくら投入するんですか。

 厚労相 国費としては40億円で、そこに地方財政措置をいたしますので、トータルでは280億円投じますけれども、これは私どもが選挙の前にも申し上げていたことでございまして、期せずして失業された方の国保の保険料につきまして軽減をする、おおむね半分になるという措置であります。

 小池 40億円ですからね、これはもうほとんどスズメの涙の話なわけです。

 今まで低く保険料を抑えてきた自治体の中にも、この春から引き上げの動きがありまして、私たちは全国調査をやったんですが、新潟市は先ほど示したケースで36万8900円が39万7800円に値上げ、東京23区も平均で7・2%の引き上げということになっている。

 しかも、この高い保険料を払った上、病院にかかると3割負担。こんな国は世界にないわけですよね。

 厚労省の国保収納率向上アドバイザーを務めている小金丸良さんは、「国保新聞」の紙上でこう言っているんです。「国保は社会的弱者が多いという最ももろい体なのに、最も重い負担になっているという矛盾が最初からあった」と。「そもそも、担当者がこれほどにも収納率の維持向上に血道を上げざるを得ないこと自体が、社会福祉の制度としてはどこかに欠陥があることを物語っている」と。

 そして、これは派遣労働の規制緩和など、「“緩和、緩和の20年”という国策がもたらした結果でもあるのだから、国策すなわち公費によって国保を少しでも福祉の基本としてのあるべき姿に近づける努力をすべきではなかろうか」と。

 私ももう本当にそのとおりだというふうに思うんですよ。

 総理、国庫負担率をこう下げてきた、ここに原因あるわけだから、命を守る政治をやると言うのであれば、やはりここを引き上げていく、そして保険料を下げていく、こういう姿勢を示すべきではないですか。総理、いかがですか。

 厚労相 グラフでは、全体の国保財政の中に占める国の負担ということで、かなり減っている。比率が減っているということになっておりますけれども、実額としては、国庫負担の実額を減らしているわけではありません。非常に国保財政が厳しいので、健保連とかあるいは共済とか、そういうところのご支援もいただいて全体の比率がそういうふうになっているわけでありますけれども、いずれにしましても、医療の適正ということにも努めながら、これらの問題についても医療の質を上げると同時に取り組むべき課題だと思っております。

 首相 命を守るという立場から申し上げれば、特に所得の低い方々にとって相当厳しい保険料になっているなというのは実感として私も伺ったところでございます。

 ただ、財政の厳しい状況の中という問題があります。その中でどのように工面をするかということでございまして、国庫の負担率がここまで下がっているからもっと上げるべきではないかというお話も、それはある意味で、上げることができればそのとおりではないかというふうにも考えているわけでございますが、今、長妻大臣が申したとおり、大変財政的な額の厳しさということを考えた中で、それほど簡単な話ではないと思っておりますが、まずは特に低所得者の方々の保険料というものに対して何らかのさらなる知恵というものを編み出すことが必要ではないか、そのように考えます。

小池 国庫負担を上げる方向を示すべきだ 
首相 財源確保に努力したい
民主は予算措置を約束していた。先送りはだめ

 小池 おととしの国会で後期高齢者医療制度廃止法案を出したときには、民主党の提出者である鈴木寛議員は市町村国保について、「一番ダムの危ないところは国民健康保険だ」「制度上は手当てされているけれども、本来そこに真水が投入されなければいけないのに断水がされている」「9000億円弱の予算措置を我が党が政権を取った暁にはさせていただく」と、こうおっしゃっていた。

 ところが、実際に政権について最初の予算で後期高齢者医療制度の廃止も先送りになっている。そして、国保料、この財政措置もわずか40億円という制度が入れられただけだということであります。

 例えば、4000億円の国庫負担を投入すれば国保料を1人1万円下げることができる、私どもはこういう提案をしていますが、いきなり(25年前の水準に)戻すということはできないとしても、やはり、国庫負担を下げたことが国保料を引き上げてきた原因なのだから、政治の意思として国庫負担を上げていくという方向、これを示していただきたいと思うんですが、その政治の意思、ございますか。どうですか。あるのかないのか、はっきり総理にお答えいただきたい。総理ですよ。

 厚労相 一点だけ申し上げますと、今年の4月からまた新たな保険料について、年収の高い方については最高保険料の額を上げようということで、そういうところからもご協力をいただいて、何とかこの国保について負担の軽減ということにも取り組んでいるところであります。

 小池 聞いていないことに答えないでくださいよ。長妻さん、野党のときだったら絶対そう言っていますよ、聞いていないことに答えるなって。もう官僚があきれるほどの官僚答弁だと私は思います。

 総理、私は政治の意思を総理に聞いているんです。引き上げようという方向をやはり示すべきじゃないですか。いかがでしょう。

 首相 ご案内のとおり、財政状況が大変厳しいという現実はございます。しかし、このような中で、今、小池委員からお話がありました。この問題は看過できない部分だと、そのように考えておりまして、財源の確保に努力をしてまいりたいと、そのように思います。

 小池 4月から、国保だけではなくて、政管健保、今は「協会けんぽ」ですが、中小企業の保険料の引き上げも平均で4万3000円もの大幅なものです。労働者だけではなく、これは中小企業事業主にも重い負担増になるわけで、こういう負担増はもってのほかです。こうした問題を解決する方向をしっかり示していただきたい。

小池 保険証取り上げ、亡くなる人も。こんな国でいいのか
資格証は増えたが収納率は下がっている

 小池 それから、高過ぎる保険料を払えない方からの保険証の取り上げも続いていて、深刻な事態が生まれているわけです。

 全日本民主医療機関連合会が保険証の取り上げなどによる無保険状態の死亡者について全国調査をやっております。

 札幌市で大工を営んでいたEさんは、1年半前からおなかの痛みを感じていたけれども、日給月給の仕事で国保料が払えない。保険証を取り上げられて「資格証明書」になった。資格証だと10割払わなければいけないから病院には行けない。痛みは強まり、食事ものどを通らなくなって62キロの体重が48キロになったが、お金がないので受診できない。知人の紹介で北海道勤医協の病院で無料低額診療をやっていることを知って受診したけれども、既に膵臓(すいぞう)がんが進行していて全身転移で間もなく亡くなられた。こういうケースが40件以上寄せられております。

 それから、保険料を払えずに、その保険料の厳しい督促、保険証の取り上げで自殺に追い込まれた方もいらっしゃいます。

 東京・板橋区の29歳の男性は、食べるのがやっとで国保料も国民年金保険料も払えなかった。滞納していて、毎月のように督促状が届いていた。区役所に行って分納する約束もしたんだけれども、結局支払うことができなかった。差し押さえもあり得るという厳しい督促状が送られ、保険証の代わりに資格証が送られ、その1カ月後に自ら命を絶っています。男性の部屋にはこの督促状の束が置かれていた。総理、見てください。これがその督促状の束です。破り捨てられた督促状もお部屋には残されていたそうです。

 総理、保険料を払えなければ医療保険の保険証まで取り上げられ、まともに病院にもかかれずに命を落としてしまう。あるいは保険証を取り上げられて、厳しい督促で自殺に追い込まれる。私はこんな国であってはいけないと思うんですよ。国民健康保険法は改悪されて、保険証の取り上げが市町村の義務になる、これは97年、自社さ政権のときです。総理も、この法案には旧民主党におられて賛成をしております。

 総理、こういう事態が全国に広がったということについて胸の痛みを感じませんか。いかがですか。総理、お答えください。胸の痛みは総理しか分からないでしょうから。

 厚労相 まず現状を。本当に今おっしゃられるように、そういう措置で自殺に追い込まれるということは、これは、こういうことはもうあってはならないというふうに考えております。

 今現在とっている措置としては、これは野党時代、私どもも与党の皆さんとも協力して、まずは中学生までについては保険証を取り上げるということはしないと、こういうことになりました。それでも不十分だということで、今年の7月からは、高校生までの方については保険証はもう取り上げないということにいたしました。そして、政権交代後、私が通知を出させたのは、後期高齢者、75歳以上の方についても実質的に保険証を取り上げることはやめましょうというような措置の通知を出しまして、そういうものもした上で、それ以外の方に関しては、払えるのに払わないということが本当に証明できた場合以外は慎重に取り扱っていただきたいということをお願いをしているところであります。

 首相 胸の痛みは、当然人間ならば感じると思います。

 ただ、今お話がありましたように、徐々に広げていっているということでございまして、これを取り上げる制度をすべて廃止をしてしまうということになると、だれが保険料を払うかという話になりかねないわけでございまして、やはり保険料を払っていただかなければならない制度でございますので、その制度自身を残すために何らかの措置は必要だということで広げているところでありますが、根幹の部分をなくすということはまだ今の段階ではできないのではないかと。

 そして、今、長妻大臣からお話ありましたように、本当に払えないんだということが証明をされるかどうかということが一つの観点としてあるのではないかと思います。

 小池 胸の痛み、一般的に聞いたんじゃないんです。この法律を作ったわけですよ。(資格証の発行を市町村に)義務化すると。悪質だと言うけど、34万世帯ですよ。日本の34万世帯がそんなに悪質な人ばかりなんですか。私は、日本というのはそんな国じゃないと思います。かなり機械的に(資格証が)出されている自治体があるんですよ。子どもに出さなくなった、それは前進です、われわれも要求してきた。それが一歩一歩進んでいる。

 しかし、私は、やはりこういうやり方はやめるべきではないか。(パネル=図(2)=を)見てください。資格証の発行がどんどん増えているけれども、その増え方に対して収納率下がっているわけですから、これは滞納対策としても破綻(はたん)しているんですよ、こんなやり方は。

保険証取り上げをやめる決断をせよ

 小池 実際、私はさいたま市の国保の担当者に聞きました。「医療保険を継続するのが優先だ。保険料の滞納があれば窓口に来ていただく。支払い能力がある方にはきちんと措置をとる。払いたくても払えない人には事情をお聞きして、分納するなど相談に乗る。いずれにしても、とにかく滞納者に会う。これが大事。滞納者に会えば、解決するから、だから資格証は必要ないんだ」と。そう言っておられました。そして、さいたま市では今、資格証の発行はゼロなんですよ。

 私は、こういう自治体の努力を後押しすることこそ求められていると思うのです。「友愛の政治」だ、「いのちを守る」んだと言うのだったら、もうこういうことはやめていこうじゃないですか。どうですか。総理、お答えいただきたい、最後に。

 首相 さいたまの状況などもよく勉強させていただきたいと思っています。

 小池 命を守るべき医療保険の負担が重過ぎて病院にかかれずに命を落とす、あるいはそのことを苦にして自ら命を絶つ、こんな国じゃいけませんよ。これを正すのが新しい政権の責任じゃないですか。そのことをきちっとやっていただきたいということを求めて、質問を終わります。

(出所:日本共産党HP  2010年3月6日(土)「しんぶん赤旗」)
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労働者派遣法改正にあたっての修正提案を日本共産党が発表

2010-03-07 08:25:15 | 国内政治
労働者派遣法改正にあたっての修正提案
派遣から正規雇用への道を開き、派遣労働者を守る改正に
2010年3月3日 日本共産党

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 日本共産党が3日、発表した「労働者派遣法改正にあたっての修正提案 派遣から正規雇用への道を開き、派遣労働者を守る改正に」は次の通りです。

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 労働者派遣法の「改正案」が、今国会に提出されようとしています。しかし、政府が発表した派遣法「改正案」は、「製造業派遣や登録型派遣の原則禁止」を言いながら、「例外」という形で「大穴」をあけ、実際には「原則容認」にするなど、重大かつ深刻な問題点があります。この「改正案」のままでは、派遣労働の現場は、これまでと同じような「使い捨て」がまかり通り、低賃金で劣悪な労働条件も改善されません。

 “非人道的な「派遣切り」を再び起こさない”“「派遣だから」と安い時給で働かせ、いらなくなったら「使い捨て」、こんな働かせ方はおかしい”“いつまでも派遣でなく正社員になりたい”……こんな思いが労働者派遣法の改正への大きな世論になり、政治を動かしてきました。これを裏切るようなことがあってはなりません。

 雇用は、期限の定めのない直接雇用――正社員が当たり前であり、労働者派遣は、臨時的・一時的な業務に限定し、本来、正社員として直接雇用すべき労働者を派遣に置き換える常用代替にしてはならないという原則にたった派遣法改正が求められています。

 日本共産党は、今国会での労働者派遣法改正を、派遣から正規雇用への道を開く、派遣労働者の雇用と権利、生活を守る保護法に変えていく、この二つの要の問題で、労働者の願いにそくしたものとする立場から、以下の修正を提案します。

1 「使い捨て」雇用が深刻な製造業派遣はきっぱり禁止にする――「常用型派遣」を「禁止の例外」とする規定の撤回を

 鳩山首相は、今国会の施政方針演説で「製造業への派遣を原則禁止する」としました。ところが「改正案」では、「常用型派遣」(派遣会社に「常時雇用されている労働者」を派遣する)を「禁止の例外」にしてしまいました。「雇用の安定性が比較的高い」からというのがその「理由」です。

 しかし、製造業における労働者派遣の実態は、「常用型」でも、「登録型」でも、派遣先企業が派遣契約を解除すれば解雇されるという不安定さは同じです。厚生労働省の調査でも、派遣先企業が派遣契約を中途解除した場合に、解雇された派遣労働者は、「常用型」で76・7%、「登録型」で75・8%と変わりません(調査対象の約9割が製造業派遣)。「常用型」にすれば「雇用が安定する」などという根拠はどこにもありません。

 大きな社会的批判をあびた「派遣切り」を全国各地で引き起こしたのも自動車や電機などの製造業です。この反省もなく、製造業の大企業は、生産が回復し始めた昨年秋ごろから、派遣を復活させています。低賃金で社会保険にもまともに加入できないという劣悪な労働条件も、そのままです。

 どんな形であっても製造業での派遣を存続させれば、生産の変動が、生身の人間の「首切り」に直結します。製造業では、派遣労働者を寮などに住まわせて働かせることが常態化していますから、“仕事を奪われただけでなく、住居からも追い出される”という非人道的な事態も繰り返されます。さらに、製造業派遣を容認・存続させれば、生産が回復しても、派遣労働が「復活」するだけで、非正規から正規雇用へという流れの障害にしかなりません。

 現在でも、製造業で働く56万人の派遣労働者のうち、63%は「常用型」派遣です。「製造業への派遣の原則禁止」をいいながら、「常用型」を禁止の例外とすれば、「原則容認」となってしまいます。「常用型」派遣を禁止の例外とする規定を撤回し、製造業への派遣は例外なしに禁止すべきです。

2 「専門26業務」を見直し、派遣のまま使い続けるだけでなく、正社員を派遣に置き換える「抜け道」にさせない

 政府は、「登録型派遣の禁止」と言いますが、ここでも「雇用の安定等の観点から問題が少ない」などとして、「専門26業務」を「禁止の例外」としています。

 「専門26業務」で働いている派遣労働者は100万人にのぼります。専門性が高い職種だから派遣であっても雇用は安定するし、給料も高く、派遣先企業との交渉力もあるなどという理由で、派遣の上限期間(原則1年、最長3年)も適用されず、何年働いても、派遣先企業の直接雇用になることもできません。

 しかし、「専門26業務」の中には、通訳など専門性が高い業務もありますが、建築物の清掃、ビルの受付なども含まれています。とくに、45万人の派遣労働者が対象となっている「事務用機器の操作業務」は、1985年に定められた「電子計算機、タイプライター、テレックスほか、これらに準じるワードプロセッサー、テレタイプ等の事務用機器についての操作の業務」という基準が一字一句変わっていません。そのためにパソコンを使う仕事ならなんでも「専門業務」として例外扱いにされてしまうのです。

 「専門業務」という看板があれば、いつまでも派遣で使い続けることが許されることが、直接雇用から派遣社員への置き換えをすすめる、大きな「抜け道」にもなっています。今年1月にNTTは、北海道で直接雇用の契約社員約700人を解雇して、子会社の派遣会社に転籍させ、派遣社員として同じ仕事をさせるという「派遣化」を強行しましたが、この「手口」となったのが「専門業務」です。

 厚生労働省は、2月8日にあわてて「専門業務適正化」の通達を出し、手直しをはかっていますが、根本にある法律や政省令が25年前のままでは、問題は解決しません。「専門26業務」は抜本的に見直し、専門性が高く、そのために派遣労働者に交渉力がある業務に限定すべきです。

3 事前面接の解禁など規制緩和をすすめる改悪部分を撤回する

 政府の「改正案」には、自公政権が、派遣先企業の要求を受けてつくった規制緩和案をそのまま踏襲した改悪が含まれています。

 その一つが、派遣先企業による事前面接を解禁することです。事前面接の解禁は、派遣先企業に労働者の採用権限を与えながら、雇用責任は免除することになります。これでは禁止されている労働者供給事業(いわゆる「口入れ稼業」)と変わりません。労働者派遣の根本原則をなし崩し的に変えてしまう重大問題です。現実には、事務系の派遣を中心に、「事前面接」という違法行為が当たり前のように行われていますが、「改正案」は違法行為をなくすのではなく、違法を合法化するものです。これは、「派遣は40歳になったら定年」「子どもがいると不採用」など年齢や容姿、家族構成などによる不当な差別をさらに助長することになります。

 また、現行法では、専門業務の派遣労働者を受け入れている企業が、同じ業務に正社員を採用する場合は、そこで働いている派遣労働者に優先的に直接雇用を申し込む義務があります。ところが「改正案」では、この派遣先企業の義務を削除し、正社員への道を閉ざしてしまいました。

 派遣法の「改正」を言いながら、いっそうの規制緩和をすすめる改悪を潜り込ませることは許されません。

4 派遣労働者の雇用と権利を守るうえで、実効ある改正案に

 名ばかり「常時雇用」でなく期限の定めのない雇用に……政府は、「派遣労働者の雇用の安定を図る」ために「登録型派遣を原則禁止」し、労働者派遣は、派遣会社に「常時雇用」されている労働者だけにするとしています。

 しかし、この「常時雇用」について厚労省は、「1年以上、雇用されているか、雇用される見通し」であれば、短期の雇用契約を反復していても「常時雇用」だとしています。これでは雇用契約は3カ月だけど、派遣会社が「1年以上働いてもらうつもり」といえば、派遣が可能になり、いつ「雇い止め」されるのかわからない、という不安定な派遣労働の実態は変わりません。

 名ばかり「常時雇用」で不安定な派遣労働を許容しつづけることは、許されません。労働者派遣は、期限の定めのない雇用の労働者だけにするべきです。

 実効ある「みなし雇用」規定に……偽装請負や期間制限違反などの違法派遣の場合は、派遣先企業が直接雇用をしていたものとする「みなし雇用」の規定が盛り込まれました。しかし、その労働条件は「派遣元と同一」とされているために、偽装請負を告発した労働者を、6カ月契約などという名ばかりの直接雇用にして、「契約満了」を理由に解雇できるようになっています。半年先に解雇されるのがわかっていて、誰が違法行為を告発できるでしょうか。「みなし雇用」は、期限の定めのない雇用にすべきです。また、派遣先企業が「違法だとは知らなかった」などとして適用を逃れる道を残さないことが必要です。

 派遣労働者への不当な差別や格差を是正するために均等待遇原則の明記を……「改正案」では、派遣元に「均衡を考慮した待遇」を「配慮」するよう求めているだけです。派遣労働者への差別が起きるのは派遣先企業の職場であり、賃金などの労働条件も派遣先企業が支払う派遣料金が基本にあります。派遣元に「均衡」の「配慮」にとどまる「改正案」では極めて不十分です。派遣先企業の責任を明確にした均等待遇原則を明記すべきです。

5 3年~5年先への「先送り」をしない

 製造業派遣と登録型派遣の規制に「大穴」をあけたうえに、その施行は、法律の公布後3年間も「先送り」されます。さらに、「登録型派遣の原則禁止」は、今後検討して「比較的問題が少ない」などとされた業務は、あと2年間、合計5年間も「先送り」するのです。

 政府が派遣法の改正、規制強化に、二重三重の「及び腰」になっている姿が、この「先送り」に示されています。公布後、すみやかに施行すべきです。

「使い捨て」労働をなくすため、国民的なたたかいを

 国民の大きな世論と運動が、派遣法の規制緩和から労働者保護の規制強化へと「潮目の変化」をつくり出しました。日本有数の大企業が、体力も財力も十分あるにもかかわらず、非道な「派遣切り」を大規模に行ったことへの社会的批判と、その中で、多くの派遣労働者がたたかいに立ち上がり、労働組合をはじめ社会的な連帯が広がったことが、政治を動かしてきたのです。

 このたたかいの中で、政治的な立場や労働組合のナショナルセンターの違いを乗りこえた共同が広がりました。その大きな一致点が、労働者派遣を原則自由化した“1999年の改悪前に戻せ”ということでした。しかし、政府の「改正案」が現状のまま成立すれば、製造業派遣も、登録型派遣も、「原則禁止」は言葉だけで、派遣労働の実態は、今と変わらないという事態になってしまいます。「使い捨て」できる派遣労働を手放したくない財界・大企業の「抵抗と圧力」に屈するなら、重大な汚点となるでしょう。

 この間の労働者と国民の運動の成果が結実するのかどうか、重要な局面を迎えています。「使い捨て」の働かせ方をやめさせ、派遣法を労働者保護法へと前進させるために、対話と共同を広げ、一致点での国民的なたたかいを広げようではありませんか。日本共産党は、その立場で奮闘するものです。

(出所:日本共産党HP  2010年3月4日(木)「しんぶん赤旗」)
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BSイレブンの政治番組「篠原文也の直撃! 日本」で志位和夫委員長が語るー大企業の内部留保問題ー

2010-03-07 08:23:28 | 国内政治
どうみる、どうする、大企業の内部留保問題
BSイレブン 志位委員長が語る

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 日本共産党の志位和夫委員長は、2月28日放送のBSイレブンの政治番組「篠原文也の直撃! 日本」に出演し、約50分間にわたって、大企業の内部留保問題、鳩山政権の評価、「政治とカネ」の問題、夏の参議院選挙への戦略などについて、政治解説者の篠原氏のインタビューに答えました。そのなかから、いま政治の焦点の一つとなりつつある大企業の内部留保問題について質問に答えてのべた部分を紹介します。

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党首会談――過剰な内部留保の還元という提起を否定できなくなった

 篠原 共産党の綱領を読ましていただいたら、大企業について、横暴な経済支配を抑えると、こういうようなことが入っていますね。この間、話題になりましたけれど、鳩山(首相)さんとお会いになりましたよね。そのときに大企業の内部留保を吐き出させろと。どうも(内部留保に)課税をするという話で伝わってきまして。僕は実は、共産党は時々良いこと言うなって感心していたんですよ。ところがこれはいただけないなと。何を考えているんだろうと思って、今日はぜひそれをお聞きしたいと思ったんですよ。

 志位 これは、実は、私が(2月17日の鳩山首相との会談で)提起したのは、いまの日本経済を良くしていくうえで、大企業に過剰な内部留保が蓄積するというシステムができてしまっている。とくにこの間、労働者についていえば正規雇用から非正規雇用、派遣とかパートなどに置き換える。賃下げ、リストラをやる。中小企業を搾り上げる。こういうことで国民から搾ったお金で、過剰な内部留保が形成される。そして生きた経済、日本経済にお金が回らない。この仕組みを変える必要があるということを提起したのです。

 この(内部留保の)過剰な部分を雇用や中小企業に還元する。そしてそういうものが過剰にたまっていかないようなルールをつくっていく必要がある。たとえば雇用だったら、「人間らしい労働」を保障するルール、「正社員が当たり前」の社会をつくる。あるいは中小企業と大企業の取引を公正なものにして、下請けいじめなどをやめさせる。そういうことをしっかりやる必要があるというのが私の問題提起だったんです。

 篠原 それじゃ、(内部留保に)課税をしようというんじゃないのですか。

 志位 (わが党の提起に対して)鳩山首相が、「内部留保を還元させる具体的な方法を検討してみたい」とおっしゃった。そこで私は、いま言ったように、雇用と中小企業でまともな(暮らしと営業を守る)ルールをつくることで(内部留保を)還元する、そしておのずとそういうところに過剰にお金がたまらないような仕組みをつくる必要があるという提起をしました。そうしたところ、鳩山首相の側から「(留保金への)課税という手段もある」というようなことをおっしゃった。

 篠原 (鳩山首相が)自分のほうから課税という言葉を使われた。

 志位 ええ。私たちは課税ということでいえば、大企業へのたとえば研究開発減税とか、優遇税制をなくして、利益にきちんと課税するということを考えていますが、内部留保への課税ということは私から提起したのではないのです。

 ただ、私が大事だと思ったのは、私が(大企業の)内部留保があまりに過剰だと。この過剰な内部留保を社会に還元して、とくに国内経済に回るようにして、内需を活発にしていく、そういうものとして活用していく必要があるという問題提起に対して、先方が、その問題提起を否定しないで、検討しなければならないとなってきたのは、一つの変化だと思います。

国民から吸い上げたお金を、もっぱら海外に回す――ここに問題がある

 篠原 まあ鳩山さんの言葉っていうのは、結構そのときの思いつきで出てくるから、課税といったから本当に課税を考えているというわけでもないと思いますが、ただ内部留保っていうのは、現ナマが全部積みあがっているわけじゃないし、資産もあるし、しかも1回課税されている部分もあるわけで、また課税するとなるとこれは二重課税という問題もある。それよりも大きいのは所得税の最高税率の引き上げも言われていますけども、これだってそうなんですが、企業とか富裕層の人たちをそういうふうにぐんぐん締めていきますと、やっぱりその租税というものが、海外逃避する恐れっていうのがあると思うんですよ。そうすると今の日本経済っていうのは一番のポイントは、土台になる日本経済そのもののパイをどうやって大きくしていくんだというのが一方できちんとないと、今の限られた小さなパイだけの取り合いの話だけだと、一時的な増収策にしかならないと思うんですよ。

 志位 二つほど言いたいんですけど、一つは、(大企業への)課税という点で言いますと、私たちは内部留保というよりも、利益に適正な課税をすべきだということを言っているのですが、それを考えるさいに、日本の大企業の負担と欧州の大企業の負担とどっちが重いか。これは政府のデータがあるのですが、負担を考えるさいには、税の負担と社会保険料の負担と合わせた負担が当然カウントされなければならないんですけども、たとえば日本の製造業大企業(自動車産業)の場合は、だいたいフランスの7割、ドイツの8割しか負担していないんですよ。日本の方が実は軽いんですよ。とくに社会保険料(負担)が少ないですから。

 篠原 法人税率は非常に高い、40%。

 志位 法人税率はそんなに違いがありません。法人税率はだいたいそろっている。でも社会保険料(負担)がたいへんに低いんですよ。これを合わせたらヨーロッパに比べると実際の負担は低いという問題がある。これは事実の問題として言っておきたいですね。すぐ財界筋からは税負担のことを言いますと、海外に逃げて行っちゃうと言いますけれども、ヨーロッパではちゃんとそうやって負担をしながら世界の舞台で商売しているわけですから、これは理屈にならないではないかというのが一つなんですね。

 それから内部留保という問題について言いますと、内部留保がどういう形で現存しているかと言いますと、大企業の内部留保は、だいたい10年間(1997年から2007年)で、百数十兆円から約200兆円を超えて急増したんですけれども、国内でのいわゆる固定資産――工場とか機械とか土地とか(「有形固定資産」)は、ほとんど増えていないのですよ。どこが増えているかというと、海外の子会社などに対する直接投資の部分(関係会社株式の保有額)がうんと増えているわけです。

 つまり、国内で労働者や中小企業から吸い上げたお金を、(設備)投資にせよ、あるいは(家計の)所得にせよ、国内経済にきちんと回して、内需を良くしていくというところに使わないで、外国に投資してそこでもうければいいという。外国頼みの経済にしちゃっている。ここが私は、一番の問題だと思います。

 篠原 だけどそれは、これだけ経済がグローバル化しますと、しかもアジアの内需を取り込むなんて時代で、日本だけで全部完了しろっていうのは無理でしょう。そりゃ、グローバルに考えて企業というのは動きますよ。

 志位 外国頼みのバランスが、あまりにひどすぎる(ことを問題にしています)。(08年秋の)リーマン・ショックにさいして、世界の経済のなかでも、日本が一番落ち込みがひどいですよね。ヨーロッパよりひどい。アメリカよりひどい。世界で一番落ち込みがひどいというのは、あまりに外国頼みの経済だったからです。私は、外国に投資するのは全部だめだとか言うつもりは、まったくありません。それは当然グローバル化した経済のなかでありうるんだけど、あまりに外国頼みで、もっぱらそちらのほうにのみお金を回して、そして国内にはお金が回らないと。これがいまの内部留保問題の非常に大きな問題だと思います。

「強い企業を応援すれば、家計に回り、経済が成長する」――この路線は失敗した

 篠原 僕は、志位さんたちが言っている、経常利益がこの10年間で企業全体で2倍に増えていると。しかし勤労者所得(報酬)というのは減っているんだと。そういう指摘はたしかにその通りだと。だからそういうことのもう少しバランスを考えていかなきゃならんというのはその通りだと思うんですけど、ただ一番僕が今、共産党の主張のなかで欠けていると思うのは、このパイを外国であろうと国内であろうと全部含めて、日本経済のパイをどうやって大きくするかっていうところに、もう少しビシッと重点がないとですね。

 志位 だからそれを、私は提案しているんですよ。つまり、逆に言いますと、この10年間がどうだったか。リーマン・ショックの前の10年間というのは、日本のGDP(国内総生産)はまったく伸びていないんですよ。10年間の単位で見ますと横ばいなんです。そして、勤労者の雇用者報酬は落ちているわけですよ。つまり、よく自民党の人たちは、「成長戦略」が必要だといいますけれども、「成長」をしてないんですよ、10年間も。(この間)巨大企業は利益を伸ばしたわけです。空前の利益を伸ばしたけれど、GDPは成長していないんです。なぜそうなっちゃったかというと、さっき言ったようにあまりにひどい外国頼みの経済になってしまって、国内に、内需に、お金が回らない仕組みになってしまった。それを転換しなくちゃいけない。内需の中で中心は家計ですから。家計と所得にお金が回らなければいけない。それをしっかりと、土台からたて直していくということをやりませんと、日本の経済の発展はありませんよと言っているんです。

 篠原 海外に行ったということだけで日本の成長が止まっているということではないと思う。成長そのものの戦略、政策が、やっぱ不十分だったということが一方であると思うんです。

 志位 いや、(これまで)「成長戦略」といって、強い企業を応援する、そうすればいずれは家計に回ってくる、経済は成長するということを言ってきたけども、回らなかったわけですね。それはさっき言ったような海外頼み、そして外需依存、こういうやり方をずっとやってきた。このやり方が失敗したということです。

小泉・竹中「サプライ(供給)サイド」路線で、日本経済の「パイ」は大きくならなかった

 篠原 本当に企業を強くしてないんですよ。実際強くしていないから、そこの問題をもういっぺん、どうやったら強くできるのと、パイをどうやって大きくするんだと。パイさえ大きくなれば……。

 志位 中長期にみれば、そういうやり方が企業をだめにしているとも、私は言えると思います。

 篠原 そうですかね。

 志位 たとえば、トヨタのリコール問題一つ考えても、もちろんいろいろな要因がありますよ。いろいろな要因があるけど、トヨタが正社員を期間工や派遣に置き換えていく、あるいは「乾いたタオルを絞る」というやり方で中小企業を絞り上げる。こういうやり方をずっとやってきて、その結果、製品の劣化という問題が起こってきている。私は、前に(08年12月)、この問題はそういうことになりますよと、トヨタにも直接言ったことがあります。こういうやり方していったら、ほんとうの意味で、企業にとっても将来がなくなる道だっていうことを、私は言いたいですね。

 やはり働く人、そしてサプライヤー(部品供給企業=下請け中小企業)、中小企業を大事にして、そしてその所得が増えてですね、家計があったかくなって、内需が良くなっていかなかったら、日本経済の発展はありません。

 篠原 トヨタの問題はいろいろあったけども、やっぱりサプライヤーを大きくしなければだめなんですよ。サプライサイドを。それを大企業抜きで、志位さんはいつもこう大企業は別で、中小企業のサプライをっていうのじゃ、それじゃね、日本経済よくならないですよ。

 志位 事実の問題として、今おっしゃったサプライサイドの経済学、サプライサイド(供給サイド)を大きくする、とくに強い企業をより強くすれば、必ず「パイ」が膨らむんだということをやってきたわけですよ。小泉・竹中路線で。しかしやったけど、10年間、結局「パイ」は膨らまなかったわけですよ。この事実をしっかりと見なくてはいけない。

 ですから、たとえばイギリスの「フィナンシャル・タイムズ」がですね、日本の経済はあまりに異常だと。あまりにこの内部留保は過剰だと。この過剰な部分は削減していくという方法をとらなければ内需は良くならないと。過剰な内部留保を削減して、もっと内需主導のものにしていく必要があるということを言っている。イギリスの経済紙からも、日本の(大企業の)あり方はあまりに異常ですよということが言われているんですね。

 篠原 いや、小泉「構造改革」の最大の失敗は、そっちの路線ばっかりに行って、出てきたいろんなひずみがありますよね。しわよせが。そっちの方の手当てが足りなかった、おこたったっていうことで、社会の全体がいびつな感じになったんであって、この最初にまずこれをやるってこと自体が、僕はそんなに間違っていなかったと思う。

 志位 私は、その(経済政策の)大本が間違えたからこういう結果になったと思います。

「大企業=敵」ではない。社会的責任を果たすことを求めている
 篠原 大企業を悪者にしているかのことをやると、大企業のサラリーマンが離れていくのでは。

 志位 私たちは、大企業は悪者だと、敵だといっているのではありません。大企業があまりに社会に対する責任を果たさないで、自分の目先のもうけだけに熱中して、そしてここから先が大切ですけれど、自分の企業の労働者を大事にしていないじゃないですかと。働く人たちを。大企業の労働者だって、いま今度の春闘の状況をみても、(経営者側は)ベースアップはおろか、定期昇給すらしていないでしょう。むしろこういうときこそ、内需を良くするうえで、労働者に利益を還元する英断が必要なんですよ。

 ところがいま多くの企業がやっているのは、株主への配当は内部留保を崩してまでやっていますよ。たとえば、ブリヂストンは、(09年度決算で)10億円しか利益が出ていないのに、125億円もの株主への配当をやっているんです。12・5倍です。そういうやり方でなく、大企業で働く人をもっと大事にするべきだというのが私たちの主張であって、大企業は敵でもなければ、ましてや大企業で働いている人は、私たちは一番大事にしなければならない仲間だと思っています。

(出所:日本共産党HP 2010年3月2日(火)「しんぶん赤旗」)

内部留保 雇用のため使えないのか
大企業の言い分を検証する

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 「減益」や「赤字予想」を理由に、輸出大企業を中心とした「非正規労働者切り」が横行しています。「これまで空前の利益をあげてきた大企業のもうけはどこにいったのか」「ため込んだお金の一部を使えば雇用は守れるはず」という声が、世論となっています。しかし、財界・大企業は、内部留保を取り崩すことは難しいという姿勢です。一部の商業メディアも財界・大企業の言い分に同調しています。内部留保は、本当に取り崩せないものなのでしょうか。(吉川方人)

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経営が大変になる?

 Q 内部留保を取り崩すと経営が大変になる?

 A 雇用を維持するためには、内部留保のほんの一部分を取り崩すだけで十分です。経営に影響するような額ではありません。

 今、人間を使い捨てにする「非正規労働者切り」や解雇・リストラをくり返している輸出大企業はこれまで、非正規労働者を安く使うことで、バブル期を超えるばく大な利益をあげてきました。

 このもうけは、巨大な内部留保としてため込まれています。

 その額は、製造業の大企業(資本金十億円以上)だけで、一九九七年度末の八十七・九兆円から二〇〇七年度末までの十年間に三十二・一兆円も増え、積み上がった額は百二十兆円に達しています。

 派遣業の業界団体は、三月末までに職を失う非正規労働者を約四十万人と推計しています。非正規労働者の平均年収を三百万円とすると、四十万人分で一兆二千億円です。

 製造業大企業の内部留保のわずか1%にすぎません。

 これだけで経営が大変になるとは考えられません。それなのに大企業経営者は、内部留保を使うことをかたくなに拒み、無情に非正規労働者の解雇を続けているのです。

設備投資に回ってる?

 Q 設備投資に回っている?

 A 内部留保は設備投資などに使って機械などになっているし、内部留保がなければ設備投資ができないという主張もあります。

 しかし、実際に大企業の内部留保などを使った新規投資の動きを見ると、新しい機械などへの設備投資よりも、投機を含む有価証券などへの投資に多くの金額が回されているのが実態です。

 製造業の大企業の内部留保が九七年度から十年間で三十二・一兆円も増えているのに、工場や設備などの資産は逆に減少しています。

 機械や土地、建物などの「有形固定資産」は、九七年度の六十八・七兆円から〇七年度の六十七・二兆円と一・五兆円減少しています。

 これに対して、「投資有価証券」は、九七年度の三十二・七兆円から〇七年度の六十六・七兆円に倍増しています。

 設備投資に必要な額よりもはるかに多くの資金が企業内部にたくわえられ、その多くが金融資産への投資に使われているのです。

 内部留保を多少取り崩したとしても、設備投資ができないなどということはありません。

手元資金は少ない?

 Q 手元資金は少ない?

 A 大企業の内部留保は、現金などの流動性の高い形では保有していないので、資金繰りが困るという主張もあります。

 確かに現金や預金などの「手元資金」は、製造業の大企業で〇七年度末に二十一・一兆円と十年前の三十四・八兆円から減少しています。しかし、これは、「手元資金」を投資有価証券などの金融資産への投資に振り向けてきた結果です。

 投資有価証券は、〇七年度の六十六・七兆円に十年間で二倍にまで膨張しています。

 今ある「手元資金」だけでも、非正規労働者四十万人の雇用維持分の一・二兆円などは、十分捻出(ねんしゅつ)できるはずです。どうしても足りないというのであれば、公社債など現金化できる金融資産も多く、金融資産などを担保に資金を調達することもできるはずです。

 巨大な資産を持つ大企業が、手元資金がないからと立場の弱い非正規労働者の解雇を強行するのは、豪邸に住む資産家が、現金を株式などへ投資しておきながら、現金が手元にないからと家政婦を解雇するようなものです。

労働者使い捨て 株主配当は急増

 大企業が労働者の使い捨てをする一方で、株主への配当は急増しています。

 東京証券取引所の統計によると、上場企業製造業の配当総額は、九七年度の約一・三兆円から、〇七年度の約三・七兆円に急増しています。

 新光総合研究所のまとめによると、〇八年度は製造業の経常利益が前年度よりも82・4%の減少となることが予想されています。しかし、年間の予想配当金総額は前年度より一割程度しか減っていません。

 ソニーのように一万六千人ものリストラを計画し、赤字を予測しているのに、配当は増額する計画の大企業まであります。

 株主への配当ばかりが増えていることでは、「貯蓄から投資へ」などといって、投機をあおった政府の責任も重大です。

 政府は、〇三年五月十四日の証券市場活性化関係閣僚等による会合で、企業自らによる「配当性向の向上」を求め、同年の「骨太方針」で、その着実な実施を閣議決定しました。また、証券優遇税制で、配当にかかる税金を本則20%から10%に軽減しました。こうした政府の旗振りのもとで企業は配当ばかりを優先して増やす一方、賃金や下請け単価は抑え付けてきました。異常に増えた配当をもとに戻すだけでも、雇用を維持する資金は十分にできます。

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 内部留保 企業が年々のもうけをため込んだもの。各年の利益から配当を引いた部分をため込む「利益剰余金」、資本取引などでのもうけをため込む「資本剰余金」、実際には支出していないのに隠し利益としてため込む各種引当金などが含まれます。

 これらは、企業の財務諸表の中の貸借対照表の「純資産の部」「負債の部」で計算することができます。しかし、内部留保をどのような形の資産で持っているかはこれだけでは分かりません。

 しかし、同じ貸借対照表の「資産の部」に示されている企業資産全体での内訳を見れば、設備や現金、金融資産の増減の傾向から、ため込みがどのような資産で増えているのか分かります。

(出所:日本共産党HP 2009年2月13日(金)「しんぶん赤旗」)
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民主党政権の「子ども手当法案」の問題点、教育財政政策の問題点、その改善策を建設的に提起する日本共産党

2010-03-01 01:39:13 | 国内政治
「子ども手当法案」の問題点

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 民主党政権の目玉政策である「子ども手当法」案が国会で審議されています。民主党は、中学生以下の子ども1人に月額2万6000円を支給すると公約していますが、2010年度は半額の1万3000円(年額15万6000円)で実施します。同法案のただすべき問題点は―。(西沢亨子)

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支給でも負担増世帯

 鳩山内閣は、子ども手当の財源にするため、所得税と住民税の年少扶養控除(16歳未満)を廃止します。所得税は11年1月から、住民税は12年6月から増税になります。

 そうなると、子ども手当が支給されても、控除廃止で支給額が大幅に目減りします。

 これまであった児童手当は、子ども手当支給にともない、子ども手当に含まれます。児童手当を月額1万円受けていた世帯は、子ども手当が半額支給のままでは、月3000円しか収入増になりません。こうした世帯は、増税が始まる11年1月以降、負担増になります。相当数の世帯がこれに当てはまります。

 増税がのしかかる11年度以降、子ども手当が全額支給されるかどうかは、「財源のあり方も含め、改めて検討する」(長妻昭厚生労働相、23日の衆院本会議)というだけで、まったく不透明です。財務副大臣らからは全額支給に否定的な発言が相次いでいます。

 というのも、財源の見込みがまったくないからです。10年度(約2兆3000億円)については1年限りとして地方などに負担を求め、残りは国債と埋蔵金でまかなっています。11年度については、まったく財源のめどがありません。

雪だるま増税の火種

 所得税・住民税の増税が保育料などに連動し“雪だるま式”の負担増を招く恐れもあります。政府は「適切な措置を検討中」(菅直人財務相)としますが、保障はありません。

 政府は、「庶民増税抱き合わせ」という国民の批判を受けて、当初考えていた配偶者控除の廃止と23~69歳の成年扶養控除の廃止について、10年度は見送りました。しかし今後、それらの庶民増税が持ち出される恐れがあります。

 配偶者控除が廃止されると、かりに子ども手当が全額支給された場合でも差し引きで負担増になる世帯が出ることが日本共産党の佐々木憲昭議員の質問で明らかになりました(26日、衆院財金委)。

総合的施策が不可欠

 子育てを支えるには、認可保育所を抜本的に増やし、深刻な状況にある待機児童を解消する、義務教育の完全無償化―などの総合的な施策が欠かせません。

 日本共産党の高橋ちづ子議員は23日の衆院本会議で、「保育所整備などが遅れたまま、子ども手当を配ったら、あとは『自助努力、自己責任』ということにならないか」とただしました。

 長妻厚労相は「そういう発想ではない。『子ども・子育てビジョン』にもとづいて保育所を増やす」と答えました。しかし、同ビジョンは保育への公的な責任を大幅に後退させ保育を市場化する方向を盛り込んだものです。

給食費天引きの恐れ

 鳩山由紀夫首相は長妻厚労相に、親が滞納している学校給食費や保育料、税金などを子ども手当から天引きする仕組みの検討を指示しています。

 23日の衆院本会議で高橋議員が「すべきではない」と迫ったのに対し、長妻厚労相は「(子どものためという)趣旨が生かせるよう議論する」とのべ、天引きの方向をにじませました。

 児童福祉施設などにいる子どもに支給されないことも、子ども手当の趣旨に反し、大きな問題です。

子ども手当
全額でも増税世帯
佐々木氏追及 財務省認める

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 日本共産党の佐々木憲昭議員は26日、衆院財務金融委員会で、子ども手当導入にともなう税額控除の廃止(増税)などで、逆に負担増となる世帯が生じることを独自の試算を示して追及し、財務省は同手当の半額、全額支給ともに増税世帯が生じることを初めて認めました。

 佐々木氏はまず、2010年度に半額(月1万3000円)を支給する同手当法案について、11年度からの全額(2万6000円)支給の確約もないのに、予算関連法案では所得税や住民税の年少扶養控除廃止など、全額支給のための増税を先取りしている問題をただしました。

 菅直人財務相が「最終的には連立政権のなかで、どういう形で実現するか議論する」などと、いまだ全額支給の保証がない実態を認めました。佐々木氏は「『恒久措置』として増税を盛り込んでいるのに、全額支給を確約していないのは問題だ」と批判しました。

 また佐々木氏は、サラリーマンの片働き夫婦と3歳未満の子ども1人の3人世帯の場合、子ども手当が半額支給されただけでは、控除廃止によって大半の世帯が負担増になるとの試算を明らかにしました。財務省の古谷一之主税局長も「現状のままであれば、こういう計算が可能だ」と認めました。

 さらに佐々木氏は、税制改正大綱に「見直し」が盛り込まれた配偶者控除の廃止が実施された場合、子ども手当全額支給の場合でも、給与収入総額が700万円で年間2・2万円の増税になるなど、収入によっては負担増となる試算を示して追及。古谷局長は「収入が上がると適用税率が上がっていくので、こういう計算になる」と認めました。

(出所:日本共産党HP 2010年2月27日(土)「しんぶん赤旗」)

卒業前中退生徒生むな
衆院委 宮本氏、修学支援求める

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 「卒業を目の前にして、学費が払えないからと中退の危機にさらされている生徒を救う緊急策が必要だ」―日本共産党の宮本岳志議員は24日、衆院文部科学委員会で政府に迫りました。

 宮本氏が、社会福祉協議会を主体に行っている教育支援基金の貸し付け対象を、授業料以外に生徒から徴収する施設設備費などにも広げることを求めたのに対し、厚生労働省の清水美智夫社会援護局長は「それを払わなければ卒業できないという費用は貸し付け対象にする」と答弁しました。

 宮本氏が「貸し付けの審査に1カ月かかる。これでは卒業に間に合わない」と改善を求めたのに対し同局長は、「卒業に間に合うように迅速な審査を社会福祉協議会に求めた」と答弁しました。

 また宮本氏は、国の高校生修学支援基金について、地方自治体が基金を取り崩して減免対象を拡充しようとすると、取り崩し分の2分の1が自治体負担になることを指摘。「これが自治体に二の足を踏ませることになっている」と、自治体負担をなくすことを求めました。川端達夫文部科学相は「制度拡充へ関係当局と引き続き協議したいが、現段階は今の制度の周知徹底で対応する」と述べました。

 宮本氏が重ねて、「経済的理由で卒業証書を受け取れなかったという生徒を出してはいけない」と迫ったのに対し、川端文科相は「ご指摘の事態が起こらないよう万全を尽くす」と答えました。

(出所:日本共産党HP 2010年2月26日(金)「しんぶん赤旗」)

衆院本会議
高校無償化法案審議入り
宮本議員“さらなる拡充を”

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 衆院本会議は25日、公立高校の授業料無料化などを柱とする高校無償化法案の趣旨説明と質疑を行い、日本共産党の宮本岳志議員が質問に立ちました。

 宮本氏は、「高校教育無償化の方向が打ち出されたことは、国民の粘り強い運動の成果であり、当然のこと」としたうえで、いくつかの問題点を指摘しました。

 宮本氏は、全体の3割を占める私立高校生については、1生徒あたり年額11万8800円(年収350万円以下は2倍)の補助にすぎず、私立高校の初年度納入金が平均71万円であることを考えれば、「差し引き約60万円ものお金を支払わなければならない」と指摘。また、同制度導入により「都道府県が行ってきた私学授業料減免予算を減額する動きが広がり、保護者負担軽減につながらない」事実を示しました。

 川端達夫文科相は、「公私格差は縮小する」「(都道府県の)適切な対応を期待している」などと答えるにとどまりました。

 宮本氏はまた、公立高校の無料化にしても、修学旅行費、通学費など、授業料以外に23万8000円の父母負担が残る事実をあげ、「貧困が広がるなか返還の必要のない給付制奨学金を創設すべきだ」と迫りました。川端文科相は、「給付制奨学金は大変重要な課題と認識。今後とも検討したい」と答えました。

 政府は、財源として、所得税・住民税の特定扶養控除の18歳以下上乗せ部分を廃止する方針です。宮本氏が、「無償化の代償で増税の負担増を生み出してはならない」と質問。川端文科相は、「実際に家計に影響が生じる来年度末に向け必要な対策が行われるよう検討する」と答弁しました。

 宮本氏は最後に、「教育に対する公的支出を世界水準まで引き上げ、高校無償化を私学へ広げ、大学の学費も段階的に無償化に向かうべきだ」と強調しました。

 川端文科相は、「大学の授業料減免や奨学金の充実に取り組み、学費軽減に努める」と答えました。

(出所:日本共産党HP 2010年2月26日(金)「しんぶん赤旗」)

子ども手当法案にたいする
高橋議員の質問
衆院本会議

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 日本共産党の高橋ちづ子議員が23日の衆院本会議で行った、子ども手当法案に対する質問は以下の通りです。

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 「子ども手当」は、民主党が総選挙の政権公約のトップにかかげた、まさに鳩山内閣の「目玉」政策であります。その法案審議にあたっては、当然、鳩山総理自身が答弁の責任をはたすべきです。総理出席がないまま審議入りすることはきわめて無責任だと言わねばなりません。

 まず法案が、なぜ2010年度に限ったものとなったのか、財源や地方負担のあり方など制度の根幹にかかわる問題をすべて先送りした上で、ともかく、6月の支給を急いだものであることは否めません。子ども手当は、将来にわたる子育て支援策の体系のなかにしっかり位置づけてこそ、その目的をはたせるのではありませんか。

 この間の「貧困と格差の拡大」は、子育て世代に深刻な打撃を与えています。

 政府の世論調査によれば、「子育てのつらさ」の一番は「子どもの将来の教育にお金がかかる」で39・2%。「子どもが小さいときの子育てにお金がかかる」も20・1%です。一方、児童のいる世帯の平均所得は1996年以降11年間で9万円も下がっています。このもとで、日本の子どものいる現役世帯の貧困率はOECD(経済協力開発機構)30カ国中19番目という水準となっており、子どもの貧困率は14・2%という状態にあることを政府も初めて認めました。

 このような現状をもたらした原因と責任がどこにあるのか。それは、自民・公明政権のもとで、保育所整備をはじめ子育て・教育への予算を削減し、また生活保護の切り捨てや社会保障費の削減、低賃金や長時間労働、非正規雇用を拡大してきたことにあると考えますが、鳩山内閣の見解をもとめます。

 いま、子育ての土台を抜本的に強化することが必要です。

 子どもの養育に対する国の責任を明らかにしたうえで、保育所を増設し待機児童を解消する、義務教育を完全に無償化し、給食費、教材費、修学旅行の費用など義務教育の必要経費については保護者の負担にしないことなど、子育ての土台の整備をすることが必要だと思いますが、政府の見解を求めます。

 子育てのための現金給付、手当の充実は、そうした土台の整備とあわせて、いわば「車の両輪」ですすめてこそ、効果が出ると考えますが、見解をうかがいます。

 その一つとして、月額2万6000円の「子ども手当」が満額支給されると、「手当」の水準はフランスやドイツを超えるものになりますが、一方、保育などその他の現物給付は最低水準です。「手当」を配ったら、あとは、「自助努力、自己責任」ということになるのでしょうか。

 保育所については、先日の本会議で、総務大臣が「最低基準がずっとあっていいのか」と述べたことは問題です。保育所の設置基準や定員の上限を撤廃するならば、保育の質の低下をもたらし、子どもの安全も脅かされかねません。このようなことはただちに中止すべきです。

 すでに、ほとんどの自治体で取り組まれている乳幼児の医療費の無料化などは国の制度として行うべきではありませんか。

 次に法案について具体的にお聞きします。

 そもそも2万6000円という支給額の根拠について、ご説明ください。10年度はとりあえず、半額の1万3000円を支給するといいますが、次年度以降は満額になるのか、うかがいます。

 支給対象については、15歳以下のすべての子どもを対象に支給することでいいですか。里親や児童福祉施設など、社会的養護にあたる子どもへの支給についても分け隔てなくすべきです。子ども自身が実質的な利益を受けるように、丁寧な制度設計と扱いがなされるべきですが、見解をお聞きします。

 給食費や税金の滞納世帯に対して、滞納分を手当と相殺するという発言も聞こえてきます。子育てを「社会全体で支える」という制度の趣旨からいっても行うべきではないと考えます。

 最大の問題は、子ども手当の財源が増税とだきあわせになっていることです。

 控除の廃止による増税の影響についてですが、民主党は、増税と手当とで、手取りが減るのは全体の「4%未満」と説明しました。これに対して、全国5000万世帯のうち18%にあたる約920万世帯で増税となるとの試算がだされています。世帯別の影響とその根拠について説明してください。

 今回見送られた、配偶者控除の廃止や、23歳から69歳までの成年扶養控除の廃止については、次年度以降行うつもりですか。

 さらに、扶養控除の廃止・縮小にともなう増税だけでなく、保育料など23項目について連動して負担増が起こることが指摘されています。地方のさまざまな軽減策にも当然、連動します。この負担増はどれほどになるのでしょうか。負担増にならない対応とは具体的にどのようなものですか。

 政府は当初、国庫負担でといってきましたが、現行の児童手当の仕組みを残しました。総理は、「財源に余裕ができた分だけ支給する仕組み」をつくりたいと発言していますが、今後、地方負担、企業負担は、それぞれどうなりますか。

 また、財源として、民間保育所の運営費国庫補助分をあてることが検討されていますが、それは、絶対認められません。

 手当の支給ありきで、後から増税。しかも、その安定した財源を口実に、消費税の引き上げなどもってのほかです。

 わが党は、財源について、聖域扱いされてきた大企業や高額所得者への応分の負担や、軍事費は削減するという真剣な検討が必要であると考えています。その論議を通じて、真に安心安全な子育て社会をつくる方向をめざすべきだということを強く求めます。

(出所:日本共産党HP 2010年2月24日(水)「しんぶん赤旗」)
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民主党政権は切実な医療を奪い庶民負担を増大させるのかー企業優先社会から人間優先の社会へー

2010-03-01 01:38:20 | 国内政治
切実な医療 奪うのか
介護療養病床の廃止方針継続
「民主は公約破るな」

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 「大量の医療・介護難民が生まれる」―長期の療養を必要とする患者が入院する介護療養病床の廃止方針が深刻な不安を与えています。旧自公政権が決めた廃止方針ですが、民主党政権が引き継ごうとしているため、批判の声が上がっています。(杉本恒如)

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 民主党は昨年の総選挙前の政策集に「療養病床を削減する介護療養病床再編計画を中止」すると明記。政権公約(マニフェスト)にも「療養病床削減計画を凍結」と書きました。ところが1月27日の参院予算委員会で長妻昭厚生労働相が「基本的に(介護療養病床の)廃止というような方向性は変わりません」と答弁したのです。

 療養病床を削減する方針を決めたのは、社会保障費の削減を進めた自公政権です。2011年度末までに医療保険適用の医療療養病床を25万床から15万床に減らし、介護保険適用の介護療養病床を13万床からゼロにするという計画を06年に決定しました。国民の反撃を受け、医療療養病床は各都道府県の目標に即して22万床程度残す方針に転換しましたが、介護療養病床の廃止は変更されていません。

 廃止方針を追認した長妻厚労相の答弁に、高齢者医療に力を注ぐ福岡県大牟田市みさき病院の山田智院長は憤ります。「公約違反ですよ。療養病床を残すという政策を民主党が出して私は歓迎したんです。それなのになくすなんて、おかしい」

 介護療養病床をなくすと、胃ろうの人など医療と介護の両方を必要とする患者の行き場所が本当になくなってしまう―。山田院長は強く懸念しています。

 医療療養病床では、胃ろうの患者は「医療の必要性が低い」とされて診療報酬が低いため入院を敬遠されがちです。しかし、実態は要介護度が高いだけでなく、嘔吐(おうと)への対応など医療行為が必要なため、特養ホームにも入れません。介護療養病床の転換先とされる転換型老健(介護療養型老人保健施設)には、転換前に比べ医師が3分の1しかおらず、24時間の対応ができません。

 「こういう患者の受け皿が介護療養病床なのです。この人たちを難民にしないために、民主党は公約を守って介護療養病床を残すべきです」と山田院長は話します。

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 療養病床 緊急の治療が必要な患者は一般病床に入院した後、回復期リハビリ病床での治療を経て、長期にわたり療養を必要とする場合に療養病床に移ります。介護療養病床が廃止されると、医療の必要性が低いと区分された患者は介護施設か在宅に移るしかありません。

 胃ろう 口から十分に栄養を取れない場合に、おなかと胃に小さな穴をつくり、チューブを通して栄養を摂取すること。

(出所:日本共産党HP  2010年2月22日(月)「しんぶん赤旗」)

病院追い出し全年齢に
衆院予算委 高橋議員 廃止訴え
後期医療の差別を拡大

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 民主党自身がかつて「病院追い出しにつながる」と批判していた高齢者の差別医療の仕組みを全年齢に拡大するのか―。日本共産党の高橋ちづ子議員は22日の衆院予算委員会で、75歳以上の患者が90日を超えて入院すると病院の収入が激減する後期高齢者特定入院基本料について、政府が廃止するどころか4月からの診療報酬改定で全年齢に拡大しようとしている問題を厳しく追及しました。

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 高橋氏は、長妻昭厚生労働相が野党時代にこの仕組みを批判していたことを指摘し、「あなたが『早期退院を迫るものだ』と指摘していたこの基本料を全年齢に拡大することが、差別的扱いをなくすという意味なのか」と迫りました。

 長妻氏は、病院が退院支援状況報告書を出せば診療報酬は下がらないと弁明しつつ、「限られた病床数の中で急性期・亜急性期の方に入っていただくという趣旨」などと、全年齢にわたって早期退院を迫る狙いであることを認めました。

 退院支援状況報告書は、退院や転院へ向けての努力を毎月示せというものです。高橋氏は、「結局、病院ではみ出す人は介護へ行けということだ」と批判。介護分野では特別養護老人ホームの入所待機者が42万人にのぼる中、「さらに多数の医療難民、介護難民が生まれることになる。特定入院基本料はやめ、(介護療養病床全廃などの)療養病床削減計画もやめるべきだ」と迫りました。

 長妻氏は特定入院基本料については弁明を繰り返し、療養病床削減計画についても「(計画の)猶予(ゆうよ)も含めて練り直す」と述べるにとどまり、中止を明言しませんでした。

 高橋氏は、民主党政権がやめるといってきた社会保障の2200億円削減路線と、本当に決別できるかどうかは、この問題でこそ試されていると力説し、後期高齢者医療制度そのものの即時廃止を強く求めました。

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 後期高齢者特定入院基本料 75歳以上の患者が一般病棟に90日を超えて入院すると、高密度の医療を必要とする12の場合を除き、医療機関への診療報酬が大幅に減額される仕組み。1998年に導入されましたが、2008年の後期高齢者医療制度創設に伴い、認知症や脳卒中の後遺症のある患者にまで対象が拡大されました。診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)は12日、この仕組みを全年齢に拡大することを長妻厚労相に答申しました。

(出所:日本共産党HP 2010年2月23日(火)「しんぶん赤旗」)

後期医療保険料 20都道府県で増
国が「補助金」ださず
徳島7.7%・広島5.8%・大阪5.1%
本紙全国調査

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 4月に改定される後期高齢者医療制度の保険料について、少なくとも20都道府県で引き上げが予定されていることが本紙の集計で27日までに分かりました。1人当たりの平均保険料額(年間)でみると、徳島3478円(7・7%)増、広島3491円(5・8%)増、大阪3895円(5・1%)増、愛知3660円(5%)増、北海道3102円(5%)増など大幅アップが相次ぐ見込みです。

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 後期高齢者医療制度の保険料は2年ごとに改定され、医療費と75歳以上の人口増加に伴って際限なく上がる仕組みです。

 政府は、何も手だてを講じなければ全国平均で14%程度上がると説明。制度を運営する各都道府県の広域連合に対して、2008~09年度の保険財政収支の剰余金や、保険料収納額の不足などに備えた財政安定化基金を使って値上げを抑制するよう呼びかけると同時に、さらなる抑制のために「国庫補助を行うことを検討」すると昨年10月に事務連絡していました。

 ところが、この言明をほごにして政府が国庫補助を行わなかったため、剰余金などを使っても保険料が大幅に上がる都道府県が続出しています。

 愛知の場合、医療費と75歳以上人口の増加などによって、1人当たり平均保険料額が12%程度上がると計算。剰余金と財政安定化基金を投じても5%上がり、年間7万7658円となる見込みです。

 すでに重い保険料負担のため、保険料を滞納して保険証を取り上げられ、有効期限を縮めた短期保険証を発行された全国の高齢者は2万8203人に上っています(09年10月1日時点)。短期証の期限が切れて次の保険証が交付されなければ無保険状態になり、医療を受ける権利の侵害につながっています。

 他方で、15県の広域連合が保険料を据え置き、8県の広域連合が引き下げを決めたことには、住民運動が反映しています。

10年度 後期高齢者医療保険料

 4月から後期高齢者医療制度の保険料(均等割額と所得割率、またはどちらか)を引き上げるのは21都道府県です。ただし栃木は被保険者の所得が減るため一人当たり平均保険料額は減る見込み。保険料を据え置くのは15県。引き下げるのは8県です。(表)

 後期高齢者医療保険料 保険料が際限なく上がっていく二つの仕組みがあります。一つは、医療給付費の一定割合(当初10%)を75歳以上の保険料でまかなうと決めていることです(後期高齢者負担率)。このため、医療費が増えると保険料にはね返ります。もう一つは、75歳以上の人口増加に応じて後期高齢者負担率が医療給付費の10%から自動的に引き上げられる決まりになっていることです。

 財政安定化基金 保険料の収入額の不足や見込みを上回る給付増などで財源不足が生じたときにつかうために設けられた基金。国、都道府県、広域連合で3分の1ずつ拠出。保険料軽減のために同基金を活用するためには、関連法の改正が必要です。

(出所:日本共産党HP 2010年2月28日(日)「しんぶん赤旗」)
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