2008年2月25日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
遊休農地 を再生
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農家の高齢化や、後継者不足、政府の減反政策・農家切り捨てなどで全国的に未耕作・遊休地が広がっています。世界的な食糧不足にたいする対応も迫られます。そうしたなか、「豊かな自然を大切にしたい」「農業に夢がもてるようにしたい」と耕作放棄地や遊休地の再生が行われています。
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奈良・明日香村 農家が共同
新規就農者にあっせん
奈良県明日香(あすか)村は、高松塚壁画古墳をはじめ村内二十カ所の遺跡を含む文化遺産が世界遺産登録の推薦リストに載せられ、遺跡とその周辺の農村景観を守るための村ぐるみの取り組みがすすめられています。
しかし、“農業立村”での情勢はきびしいものがあります。この三年間は二十歳代で三人の後継者が新規就農したものの、それまでの約二十年間は就農者が一人もいませんでした。高齢化や担い手不足で農地の荒廃が広がり、約六百ヘクタールある農地の約三割が遊休農地となっています。
現状を打開するため、村内の専業農家を中心に十一人の農家が集まり、一昨年四月に遊休農地の利活用や新規就農者の支援を活動の柱に据えた農事組合法人「一穀あすか」が誕生しました。
観光果樹園も
基盤整備事業が行われたにもかかわらず、耕作放棄地となって荒廃していた約二ヘクタールを観光ブルーベリー園やブドウ園などに整備し、農地の再生をすすめました。収穫体験など各種イベントも行っています。
このような活動を見て、農地の活用を申し出る農家が相次いでいます。その農地を体験農園などで活用するとともに、村外から引っ越してきて村で新規就農する若い人たちに農地をあっせんしています。
昨年、大阪から引っ越して専業農家となった樽井一樹さん(30)も「『一穀あすか』の協力で五千平方メートルの農地を借りることができて本当に助かっています。新規就農者にとって一番大変な農地の確保にこんなに協力してもらえるところはほかにないと思います」と語ります。
体験者増える
「一穀あすか」のホームページを見て新規就農の相談や体験・研修に参加する若い人も増えています。「一穀あすか」や若い新規就農者の活動は、地域にも活力を生み、各集落でも団塊の退職世代を中心に営農グループが活動しはじめています。
農業再生の動きが活発化し、近鉄飛鳥駅前にある農産物直売所「夢販売所」には村内の約二百軒の農家が野菜を出荷しています。昨年の売り上げは約二億五千万円で奈良県内の直売所でトップとなりました。
村の学校給食の食材も、できる限り地元産を使うように村の地域振興公社が農家から納品された農産物を毎日給食センターに届けています。
一昨年、古民家を活用して開店したカフェ「ことだま」の地元産の農産物を食材にしたランチや、奥飛鳥で地元の女性グループが提供している「さらら膳(ぜん)」は予約を断る人気ぶりです。
価格安定制度の拡充や営農指導体制の充実など村の農政の課題は多くあります。しかし、村の地域振興公社やJAはもちろん、「一穀あすか」や「農民連・奈良産直センター」などの農事法人をはじめ、兼業・専業や自給・販売の区別なく、すべての農家が力を合わせれば、世界遺産登録にふさわしい農村景観と自立の“農業立村”をすすめることはできると確信しています。
(農事組合法人事務局長、村農業委員会長、日本共産党村議 森本吉秀)
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千葉市 青年ら「開拓隊」
荒れ地を耕し米収穫
私の住んでいる千葉市緑区は千葉県のほぼ中央にあり、市中央部から車で三十分ぐらいの林や畑・田に囲まれたところです。しかし、冬にはほかの地域は雨でも雪が降っているところから「千葉のチベット」ともいわれています。
千葉県でも、農家の高齢化と後継者不足により、耕作ができずに荒れ地になってしまい、山間地や過疎地と同様に放棄地が増えています。都心部に近いということもあり、不法投棄やゴミの最終処分場やゴルフ場になったりしています。
そんな中で露地野菜・米をつくり、暮らしています。でも農作物だけでは暮らしていけませんから、アルバイトをしながらやっているのが現状です。本当は農業だけで暮らしていけるのがよいのですが…。
今は農民連の青年部に所属し、自分たちの将来や農業を消費者にどう分かってもらうか、などを仲間と一緒に酒を酌み交わしながら交流しています。そのなかで六年前ぐらいから合唱団「わかちばーず」の人たちと交流してきました。農家の暮らしを見たり、体験して農家の現状を分かってもらいたいと始めたものです。
一昨年の秋口から農民連の青年部や合唱団の人たちと「谷津田(やつだ)開拓隊」を結成して荒れていた谷津田の休耕地に入り、柳や桑の木を切り、山からはってきたフジつるの根をとり、草を刈り、溝を掘ってあぜ道を修復して昨年ようやく田んぼにもち米の苗が植えられるようになりました。
泥にまみれて
“開拓隊”に参加した人からは「ひざまで泥にはまって仕事が思うように進まなかった」「どこからどこまでが田んぼか分からない」とか「泥んこ遊びをしているようだった」「田植えは腰にこたえた。昔の人はすごいと思った」などの感想が出されました。
十五年以上耕作していなかったので収量はあまり期待しませんでしたが、十二月には収穫祭をやり、きねつきのおもちを“開拓隊”や地域の人たちと一緒に辛み大根やきなこ・あんころもちにしておいしくいただきました。
今年も昨年同様にまた苗を植える予定ですが、地域住民からもこのお米がほしいという話があり再開拓地を増やしていかないといけない状況になりつつあります。
農薬使わずに
安心できる作物をと農薬は一切使用せず、空中散布もやっていません。除草効果と肥料を狙って生ぬかを田植え後にいれています。今後はコイの稚魚を放そうと思っています。
私は農家と消費者が手をつないでいけるような農業をしていきたいと思います。その結果として地域の環境が守られ豊かな大地と自然を残せていけたらと考えます。
(千葉県農民連青年部 熊手正幸)
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谷津田
林に囲まれた台地状の細長く入り組んだ水田。最近では、開発や未耕作地のために、豊かな自然環境が失われてきています。
列島だより
遊休農地 を再生
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農家の高齢化や、後継者不足、政府の減反政策・農家切り捨てなどで全国的に未耕作・遊休地が広がっています。世界的な食糧不足にたいする対応も迫られます。そうしたなか、「豊かな自然を大切にしたい」「農業に夢がもてるようにしたい」と耕作放棄地や遊休地の再生が行われています。
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奈良・明日香村 農家が共同
新規就農者にあっせん
奈良県明日香(あすか)村は、高松塚壁画古墳をはじめ村内二十カ所の遺跡を含む文化遺産が世界遺産登録の推薦リストに載せられ、遺跡とその周辺の農村景観を守るための村ぐるみの取り組みがすすめられています。
しかし、“農業立村”での情勢はきびしいものがあります。この三年間は二十歳代で三人の後継者が新規就農したものの、それまでの約二十年間は就農者が一人もいませんでした。高齢化や担い手不足で農地の荒廃が広がり、約六百ヘクタールある農地の約三割が遊休農地となっています。
現状を打開するため、村内の専業農家を中心に十一人の農家が集まり、一昨年四月に遊休農地の利活用や新規就農者の支援を活動の柱に据えた農事組合法人「一穀あすか」が誕生しました。
観光果樹園も
基盤整備事業が行われたにもかかわらず、耕作放棄地となって荒廃していた約二ヘクタールを観光ブルーベリー園やブドウ園などに整備し、農地の再生をすすめました。収穫体験など各種イベントも行っています。
このような活動を見て、農地の活用を申し出る農家が相次いでいます。その農地を体験農園などで活用するとともに、村外から引っ越してきて村で新規就農する若い人たちに農地をあっせんしています。
昨年、大阪から引っ越して専業農家となった樽井一樹さん(30)も「『一穀あすか』の協力で五千平方メートルの農地を借りることができて本当に助かっています。新規就農者にとって一番大変な農地の確保にこんなに協力してもらえるところはほかにないと思います」と語ります。
体験者増える
「一穀あすか」のホームページを見て新規就農の相談や体験・研修に参加する若い人も増えています。「一穀あすか」や若い新規就農者の活動は、地域にも活力を生み、各集落でも団塊の退職世代を中心に営農グループが活動しはじめています。
農業再生の動きが活発化し、近鉄飛鳥駅前にある農産物直売所「夢販売所」には村内の約二百軒の農家が野菜を出荷しています。昨年の売り上げは約二億五千万円で奈良県内の直売所でトップとなりました。
村の学校給食の食材も、できる限り地元産を使うように村の地域振興公社が農家から納品された農産物を毎日給食センターに届けています。
一昨年、古民家を活用して開店したカフェ「ことだま」の地元産の農産物を食材にしたランチや、奥飛鳥で地元の女性グループが提供している「さらら膳(ぜん)」は予約を断る人気ぶりです。
価格安定制度の拡充や営農指導体制の充実など村の農政の課題は多くあります。しかし、村の地域振興公社やJAはもちろん、「一穀あすか」や「農民連・奈良産直センター」などの農事法人をはじめ、兼業・専業や自給・販売の区別なく、すべての農家が力を合わせれば、世界遺産登録にふさわしい農村景観と自立の“農業立村”をすすめることはできると確信しています。
(農事組合法人事務局長、村農業委員会長、日本共産党村議 森本吉秀)
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千葉市 青年ら「開拓隊」
荒れ地を耕し米収穫
私の住んでいる千葉市緑区は千葉県のほぼ中央にあり、市中央部から車で三十分ぐらいの林や畑・田に囲まれたところです。しかし、冬にはほかの地域は雨でも雪が降っているところから「千葉のチベット」ともいわれています。
千葉県でも、農家の高齢化と後継者不足により、耕作ができずに荒れ地になってしまい、山間地や過疎地と同様に放棄地が増えています。都心部に近いということもあり、不法投棄やゴミの最終処分場やゴルフ場になったりしています。
そんな中で露地野菜・米をつくり、暮らしています。でも農作物だけでは暮らしていけませんから、アルバイトをしながらやっているのが現状です。本当は農業だけで暮らしていけるのがよいのですが…。
今は農民連の青年部に所属し、自分たちの将来や農業を消費者にどう分かってもらうか、などを仲間と一緒に酒を酌み交わしながら交流しています。そのなかで六年前ぐらいから合唱団「わかちばーず」の人たちと交流してきました。農家の暮らしを見たり、体験して農家の現状を分かってもらいたいと始めたものです。
一昨年の秋口から農民連の青年部や合唱団の人たちと「谷津田(やつだ)開拓隊」を結成して荒れていた谷津田の休耕地に入り、柳や桑の木を切り、山からはってきたフジつるの根をとり、草を刈り、溝を掘ってあぜ道を修復して昨年ようやく田んぼにもち米の苗が植えられるようになりました。
泥にまみれて
“開拓隊”に参加した人からは「ひざまで泥にはまって仕事が思うように進まなかった」「どこからどこまでが田んぼか分からない」とか「泥んこ遊びをしているようだった」「田植えは腰にこたえた。昔の人はすごいと思った」などの感想が出されました。
十五年以上耕作していなかったので収量はあまり期待しませんでしたが、十二月には収穫祭をやり、きねつきのおもちを“開拓隊”や地域の人たちと一緒に辛み大根やきなこ・あんころもちにしておいしくいただきました。
今年も昨年同様にまた苗を植える予定ですが、地域住民からもこのお米がほしいという話があり再開拓地を増やしていかないといけない状況になりつつあります。
農薬使わずに
安心できる作物をと農薬は一切使用せず、空中散布もやっていません。除草効果と肥料を狙って生ぬかを田植え後にいれています。今後はコイの稚魚を放そうと思っています。
私は農家と消費者が手をつないでいけるような農業をしていきたいと思います。その結果として地域の環境が守られ豊かな大地と自然を残せていけたらと考えます。
(千葉県農民連青年部 熊手正幸)
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谷津田
林に囲まれた台地状の細長く入り組んだ水田。最近では、開発や未耕作地のために、豊かな自然環境が失われてきています。