未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

サッカーくじは廃止こそスポーツ振興への道ー日本共産党が主張ー

2006-12-30 18:44:45 | 国内経済
サッカーくじ
廃止こそスポーツ振興への道

 「スポーツ振興」をうたい文句に六年前に実施されたサッカーくじが、破綻(はたん)寸前に追い込まれています。売り上げが低迷し、続ければ続けるほど赤字が増えるというドロ沼状態です。ついに禁じ手ともいうべき税金投入に踏み出しました。こんなことをしてまで継続する意味があるのでしょうか。

ついに税金投入まで
 
 サッカーくじは、「売り上げた収益をスポーツ振興に充てる」という名目で、文部科学省の指導・監督のもと、独立行政法人「日本スポーツ振興センター」によって運営されてきました。しかし、「スポーツをギャンブルで汚す」という批判はぬぐいがたく、それが売り上げの低迷にも反映しているのは疑いのないところです。

 最近になって、振興センターが赤字のため、業務委託していた「りそな銀行」への借金返済の一部にスポーツ振興基金が充てられていることが明らかになりました。基金はほとんど国が出資し、スポーツ団体や選手・指導者らに継続的に援助するためのもので、これを借金返済に充てることは、事実上の税金投入です。このようなむちゃなやり方を許すことはもうできません。

 もともとスポーツとギャンブルは相いれません。「自らの運命を偶然の結果にゆだねる」のがギャンブルの特徴であるのに対し、スポーツの本質は「自らの意志によって目標に挑戦する」ことです。両者が水と油の関係にあるのは明らかです。

 しかも、くじの対象が、青少年に強い影響をもつサッカーであることも不安感を増大させるものでした。サッカーくじが法案として国会審議された当初から、スポーツ関係をはじめ広範な団体、個人から反対の声がわき起こりました。

 これに対し推進派は「ギャンブル性は薄い」「勝ち負けなどを予想する知的ゲームで、ギャンブルではない」と強弁し、導入を強行しました。しかし、その後の事態の推移は、どちらの主張が正しかったかを証明するものとなりました。

 サッカーくじの全国販売が始まったのが二〇〇一年。その年は約六百四十億円あった売り上げがその後年々減り続け、〇五年は約百五十億円。約六十億円あったスポーツへの助成金は一億円余にまで落ち込みました。いまや、このくじに、自らの将来を託しているスポーツ団体は皆無といっていいでしょう。

 この間、文部科学省と振興センターは、コンビニエンスストアやインターネットでの販売、当せん確率の高い新くじの導入など、売り上げ増のためなりふり構わないギャンブル路線を走ってきました。

 不振打開の切り札としてことし九月に登場した「BIG(ビッグ)」には、開いた口がふさがりません。当せん金が最高三億円(従来のくじは一億円)、繰り越し時では六億円(同二億円)で、十四試合の結果をコンピューターが予想するというものです。露骨に射幸心をあおり、知的ゲームの装いも捨て、ギャンブル性をむき出しにしました。

反対貫いた党として

 サッカーくじ推進の旗振り役となった文部科学省はもちろん、積極的に賛成した自民党や、党として責任ある態度を示してこなかった他の政党の責任が厳しく問われます。

 国会審議の段階から現在に至るまで反対を貫いてきた党として、日本共産党はスポーツ振興に逆行するサッカーくじの即時廃止を強く求めるものです。

(出所:日本共産党ホームページ 2006年12月29日(金)「しんぶん赤旗」)

 ブログ主の感想

 サッカーくじは不労所得の源泉です。近年、株式売買・配当金を源泉に高額金融所得という不労所得を煽り、肯定する風潮が強まっています。毎日、社会・消費者への勤労を源泉に所得を確保している働く人々が馬鹿をみている状況です。こうした中で、日本共産党が、サッカーくじの廃止を主張しながら、勤労者の賃金と社会保障、教育費予算を向上させる政策を出していることは当然です。こうしたギャンブルを否定し、働く勤労者の生活を向上させていく方向に対し、もろ手を挙げて賛成します。
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フランスが死刑廃止を憲法に条文化する方向ー日本でも死刑は廃止せよー

2006-12-30 09:59:28 | 国内社会
 フランス
死刑廃止、憲法に
改正案で条文化

 【パリ=浅田信幸】二十五年前に死刑を廃止したフランスが、これを仏共和国憲法の条文に加えるため改正作業を進めていることが二十七日明らかにされました。憲法改正の法案は一月二十四日に閣僚会議に提案される予定です。

 条文は「何人も死刑の宣告を受けえない」だけで、現行憲法第六十六条「恣意的拘禁の禁止、個人の自由の保障」の第一項目に追加されます。これによりフランスは、死刑廃止をめざす「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第二選択議定書の批准が可能になります。

 同国は一九八一年に死刑を廃止。直後には国民の62%が死刑復活に賛成でしたが、今年九月の世論調査では52%が死刑復活に反対を表明し、国民に広く受け入れられるようになっています。

 二十五日には、日本での四人の死刑執行がフランスでは国際ニュースとして大きく報じられ、二十七日にはイラクのサダム・フセイン元大統領の死刑判決が確定しました。

 こうした中で、死刑反対を訴えるアムネスティ・インターナショナルは同日、「フランスは、この残虐で非人間的かつ下劣な懲罰を維持している各国政府に強いメッセージを送ることになる」と憲法への条文化を歓迎する声明を出しました。

(出所:日本共産党ホームページ 2006年12月29日(金)「しんぶん赤旗」)
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労働法制の規制緩和とは何かー自民・公明の議員を落選させようー

2006-12-30 09:35:17 | 国内経済
「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について」(報告)と
「今後のパートタイム労働対策について」(報告)についての談話

社会民主党政策審議会会長
阿部知子

 本日、労働政策審議会は、労働条件分科会において、労働契約法制及び労働時間法制ついての報告をまとめ、厚労大臣に建議をなした。
 
 建議には、長時間労働を野放しにし、不払い残業を合法化する「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入、労働条件の切り下げを容易にする「労働契約法」などが盛り込まれており、社民党は断じて認めることはできない。
 
 雇用をめぐる喫緊の課題は、長時間過重労働の是正と労働者の健康確保、非正規雇用労働者の均等待遇の実現、仕事と生活の両立である。しかし、建議は、これらの課題に応えていないばかりか、労働者の立場を弱くし、さらに働く環境を悪化しかねない内容である。社民党は、厚労省がこの建議を踏まえて、来年の通常国会へ関連法案を提出することに、強い懸念を表明する。


 「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」制度は、[1]一定以上の年収のある労働者の労働時間規制を外す、[2]仕事は成果で評価し、働く時間は自己責任、[3]いくら働いても残業代が支払われない、という内容である。
 
 建議は「自由度の高い働き方」にふさわしい制度というが、そもそも、自ら業務量を操作できる労働者はほとんど存在せず、モデルとなる働き方は虚構に過ぎない。報告において、対象労働者は、「管理監督者の一歩手前に位置する者が想定される…管理監督者一般の平均的な年収水準を勘案しつつ、…適正な水準を当分科会で審議した上で命令で定める」という拡大解釈が可能となる表記となっている。新制度の導入のみを決め、年収水準など具体的な要件については後で決めるというやり方は、白紙委任状を出すに等しく、無責任極まりない。
 
 過労死・過労自殺の労災請求・認定件数が過去最高水準を推移するなかで、労働者の健康と生活を確保する1日8時間かつ1週間40時間と定めた労働時間規制を無限定に外すことはあまりに危険である。時間管理も健康管理も労働者の自己責任、使用者は関知しない、さらに行政の監督権限を弱体化させるのでは、労働基準法の真髄である労働時間規制が消滅することになる。
 
 現行の労基法においても、管理監督者は法定労働時間を超えても残業代は出ておらず、またすでに導入されている裁量労働のみなし時間制などによって、時間配分を労働者の裁量に任せることは可能である。新制度の導入は、対象者を拡大し、違法な不払い残業を合法化することにほかならない。社民党は、明確に制度の導入自体に反対を表明する。


 雇用の多様化・複雑化、労働組合に加入しない非正規社員が急増し、解雇などに伴う個別紛争が増えるなか、労組と会社による集団交渉で解決できない分野について、紛争の未然防止・解決に役立つ「労働契約法」の制定が急がれる。社民党は、真に労働者と使用者が対等な立場で、雇用契約の基本ルールを明らかにする「労働契約法」が必要であると考える。
 
 しかし、建議で示された内容は、使用者が単独で作ることのできる就労規則の変更によって、労働条件の切り下げを容易にしかねないものである。労働契約法は、労働者にとって、役に立たないどころが、使用者の圧倒的な力の下、「労使自治」の名によって、労働者に不利益を受け入れさせる道具となりかねない。
 また、案の段階では挿入されていた、非正規労働者に対する労働条件の「均衡考慮」さえ入らなかった点は、極めて問題である。
 さらに、解雇の金銭解決の導入と整理解雇規制の緩和は、先送りになったものの、今後の動向を踏まえることとなり、火種は残されたままである。


 一方、労働政策審議会は、12月26日に、パート労働法の改正案についての報告をまとめた。仕事内容や責任などが正社員と同じで、長期にわたって継続的に働いている「正社員的パート」(疑似パート)に限って、「差別的取扱いの禁止」の文言が盛り込まれた。しかし、日本では、同一の労働のほかに、残業・配転・転勤などが要件に含まれているため、家族的責任を担う者が正社員になることは、非常に難しく、対象者は極一部に過ぎない。その他、大半のパートについては、意欲や成果などに応じて、賃金や教育訓練などの面で、正社員との「均衡処遇」に努めるよう企業に求めているに過ぎず、均衡処遇の内容も限定的である。「正社員的パート」とそれ以外のパートの二極分化が進むこととなる。
 
 また、正社員への転換促進に関しては、「通常の労働者の募集に応募する機会を与えること」に過ぎず、実効性がみえず、格差是正につながるかどうかは、はなはだ疑問である。
 
 パートの賃金は正社員の約6割に過ぎない。また、社会保険の加入や厚生福利の面でも、「身分差別」が生じている。社民党は、職務が同じなら同じ賃金とする「同一労働同一賃金」(国際基準)の均等待遇を強く求めていく。


 労働法制の見直しをめぐっては、経済財政諮問会議や規制改革・民間開放推進会議の強い意向が働いている。この間の労働分野の規制緩和によって、労働者の健康・生活は壊され、正規雇用者と非正規雇用者の二極化による格差の拡大は社会問題化している。社民党は、さらなる労働分野の規制緩和に道を開く動きに、全面的に抗し、人間らしい働き方を目指す決意である。

以上

(出所:社会民主党ホームページ)
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残業代11.6兆円の横取りーホワイトカラー・エグゼンプションー

2006-12-28 22:19:51 | 国内経済
 
2006年11月8日
労働運動総合研究所
代表理事 牧野 富夫

 労働政策審議会をめぐる動きが緊迫の度を増している。労働政策審議会の議論は労使の意見対立の溝が埋まらないにもかかわらず、政府・厚生労働省は、本来中立であるべき公益委員を巻き込み、強引な審議運営を進め、11月中旬には「建議案」を、2007年2月には「法案」を提案するといわれている。労働政策審議会での論点は多々あるが、ここでは労働時間法制・「ホワイトカラー・エグゼンプション」問題に絞って検討を加えておきたい。
 
 日本経済団体連合会など財界は「年収400万円以上のホワイトカラーには、労働基準法の労働時間規制を適用除外せよ」と主張し、政府・厚生労働省は、この財界の要求に応えようとしているが、以下の3つの理由から、我々はこれを容認してはならないと考える。

 第1の理由は賃金横取りの法理だからである。「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入は、大企業による労働時間と賃金の大幅な横取りを、政府が法制度改悪によって支援するものであり、近代的労働契約を破壊することにつながる。われわれの試算では、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入によって、年収400万円以上のホワイトカラー労働者1,013万人から横取りされる賃金(残業代)総額は11.6兆円に上る。内訳は、7.0兆円が不払い労働(サービス残業)代の横取り額、4.6兆円が所定外労働(支払い残業)代の横取り額である。これはホワイトカラー労働者1人当たり、年114万円になる。
 
 「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入は、ホワイトカラー労働者に無制限な長時間労働と賃金大幅削減を同時に強行する可能性が高く、労働者の生活と権利破壊を放任する法理である。「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入によって、「不払い残業」(サービス残業)の現実そのものが不在のものとされ、労働者は請求権を失う。さらに、新制度への移行にともなう賃金体系と水準がどうなるかは不明であるが、現在、支払われている残業代分の賃金も失われる可能性が高いと考える。

 第2の理由は健康破壊・過労死を急増させる法理だからである。過労死の遺族が主張しているように、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の法認化は、過労死、過労自殺、精神破壊、疾病を激増させる危険性がきわめて大きい。現代の労働は、IT・コンピュータを技術的基礎にして遂行されており、ホワイトカラー層の増大は技術的必然性をもっている。IT・コンピュータを技術的基礎におく労働は、短時間労働と休息・休憩が十分に保障されることが絶対的に必要である。こうした前提条件を無視して、成果主義・能率主義労務管理の下で、「自律的労働時間制」という名目で長時間労働が強制されることになれば、超過密・長時間労働に起因する過労死、過労自殺、精神破壊を含む健康破壊を急激に増大させることにならざるを得ない。
 
 日本経団連も厚生労働省も、「自律的労働」とか「創造的・専門的能力を活かす」など美辞麗句を並べ、仕事の進め方や時間配分について自由に裁量できるかのように述べているが、肝心な仕事の内容、量、期限は使用者が決定する以上、「自律的労働」との表現は、まやかしでしかない。ホワイトカラー・エグゼンプションの対象労働者は、すでに労基法上の労働時間法制を適用除外されている「管理監督者」(労基法41条2号)の下で働くことになるが、裁量権がより大きいはずの「管理監督者」ですら、実質的な裁量権はないのが実態である。
 
 現在、日本の労働者は平均して、月の所定外労働(支払い残業)時間は13時間、月の不払い残業(サービス労働)は20時間、つまり月に33時間の残業をおこなっている。厚生労働省が年間の残業時間限度基準として規定している360時間を36時間も超過していることになる。大企業の研究・技術開発、営業・販売・サービス部門、中間管理職などは、月間100時間を超える残業を強要され、過労死予備軍は1万人を超えるといわれている。こうした状態は憲法や労働基準法が規定している「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」や「人たるに値する生活」とは全く異質のものである。「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入は、労働者の生活と権利破壊を進行させることになる危険がある。

 第3の理由は労働法制を掘り崩す法理だからである。「ホワイトカラー・エグゼンプション」を労働法体系に組み込むことは、資本主義社会の下での時間法制を根本的に否定することにつながる。「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入は、労働者が使用者に労働力を時間決めで売るという、近代的労働法体系の根幹を破壊し、無制限の超過密・長労働時間を野放しにすることになる。
 
 日本政府は、日本の長時間労働はソシアル・ダンピングであり、Fair Trade(公正貿易)を破壊するという国際的批判に応える形で、年間実労働時間1,800時間(所定内労働1,653時間、所定外労働147時間)を実現すると1986年に国際公約した。日本政府の国際公約は「小泉構造改革」の下で破棄された。欧州に進出した日本企業はEU(欧州連合)と各国の労働時間規制に従い経営をおこなっている。日本政府が「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入することにより、事実上の長時間労働を放置・拡大しながら、統計上の労働時間を「短縮」し、国際的批判を回避しようとするのであれば、グローバリゼーションの下で、企業の社会的責任が強調されていく今日、日本政府は再びより厳しい国際批判を浴びることになることは間違いない。
 
 このような「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入は中止する以外にない。

以上

<試算結果>


「自律的な働き方を可能とする制度」の導入で労働者は残業代11.6兆円を失う

1.推計の前提
 
 厚生労働省が検討している新しい労働時間制度、「ホワイトカラー労働者が自律的な働き方を可能とする制度」は、労基法の労働時間規制の適用除外対象となる労働者を拡大しようとするものである。この政策が実行された場合にもたらされる重要な政策効果のひとつに、“労働者から使用者への残業代分の価値移転”がある。はたしてその金額はどの程度のものとなるのか。以下の仮定のもとに推計してみた。
 
 まず、制度の対象範囲についてである。審議途上で未確定であるが、日本経団連は05年6月に発表した「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」の中で、労使委員会の決議を要件としつつ、年収400万円以上というラインを提示している。そこで、推計にあたっては、年収400万円以上のホワイトカラー労働者が新制度の対象とされた場合を想定した。さらに、「自律的労働時間制度」の適用対象となったホワイトカラー労働者の仕事量が制度導入前よりも減り、実労働時間が短縮される可能性は少ないと仮定した。
 
 つまり、対象となった労働者は、現在不払いのままとされている残業代の請求権分を失い、使用者に手渡すことになると仮定した。さらに、新制度のもとでの賃金体系がどうなるかは不明だが、現在支払われている残業代分も、制度移行当初はともかく、ゆくゆくは削られることになると仮定した。なお、推計に利用した統計は、できるだけ厚労省が労働政策審議会・労働条件分科会に提供しているデータを使うこととした。


2.推計の結果
 
 推計の結果、年収400万円以上のホワイトカラーで、すでに管理・監督者になっている人を除いた層の残業代(支払い済み分と未払い残業代)の試算額は11兆5,851億円であった。
 
 換言すれば、労働時間規制をエクゼンプトされることによって、年収400万円以上のホワイトカラー労働者が失い、使用者に「横取り」される総金額は、11兆5,851億円(内訳:不払い残業代の総額7兆0,213億円、支払い残業代の総額4兆5,638億円)ということになる。これは1人あたりの年平均額にすると、114万3,965円(内訳:不払い残業代69万3,312円、支払い残業代45万0,653円)となる。


3.推計のプロセス(試算詳細は別表)
 
 1)年収400万円以上で、労働時間規制の適用対象となっているホワイトカラーの人数は1,013万人と推計した。国税庁の民間給与実態調査によれば年収400万円以上の労働者は2,031万人であり、この人員から労働時間規制の適用除外とされている管理監督者を除外すると1,816万人となる(管理監督者の範囲については、厚労省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」結果を用いた)。次に、この数字をもとに、総務省「労働力調査」をもとに厚生労働省が公表しているホワイトカラー比率55.2%を掛けて求めた。

 2)年収400万円以上のホワイトカラー労働者の総年収額から管理監督者の年収総額(厚労省所「賃金構造基本統計調査」結果を用いた)を除き、その金額にホワイトカラー比率を掛けて求めた額について、賞与分を除くと48兆1,325億円となる(賞与月数については日本経団連調査結果を用いたい)。これをもとに、厚労省の毎月勤労統計より、残業時間と所定内労働時間の比率から、所定内賃金と残業代との構成比を得て、残業代を算出した。

年収400万円以上のホワイトカラーにエクゼンプションが法認された場合の残業代の横取り額の試算

表1 年収400万円以上の労働者数と年間総収入
区分(万円) 平均年収(円) 人員 年収総額(円)
400~500 4,500,000 6,389,000 28,750,500,000,000
500~600 5,500,000 4,520,000 24,860,000,000,000
600~700 6,500,000 2,875,000 18,687,500,000,000
700~800 7,500,000 2,085,000 15,637,500,000,000
800~900 8,500,000 1,365,000 11,602,500,000,000
900~1,000 9,500,000 924,000 8,778,000,000,000
1,000~1,500 12,500,000 1,602,000 20,025,000,000,000
1,500~2,000 17,500,000 335,000 5,862,500,000,000
2,000~ 25,000,000 210,000 5,250,000,000,000
計 20,305,000 139,453,500,000,000
資料:出典:民間給与実態調査報告(国税庁) 2005年

表2 現行法規における労働時間規制の適用者と適用除外者の構成
構成比 人数
非役職 0.8485 11149850
係長 0.0550 722550 平均年収
課長 0.0675 887340 11,443,987,910,937 834.6
部長級 0.0289 380220 5,934,242,395,715 1,010.0
1.0000 13139960 17,378,230,306,652
資料:厚労省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」よりH17年
厚労省「賃金構造基本統計調査」H16年

表3 現行法で労働時間規制の適用除外者を除く
人数 給与総額
表1の計 20,305,000 139,453,500,000,000
適用除外者(課長+部長級) 1,958,743 17,378,230,306,652
400万円以上非管理職 18,346,257 122,075,269,693,348

非管理職の賞与月数(05年)
夏季 2.4月
冬季 2.4月
計 4.8月
日本経団連(2006年5月)

表3 賞与を除いた給与総額
表2の非管理職 18,346,257 122,075,269,693,348
賞与を除いた給与総額 18,346,257 87,196,621,209,534

表4 年収400万円以上のホワイトカラー数と総収入(賞与を除く)
表3の給与総額 18,346,257 87,196,621,209,534
ホワイトカラー比重(0.552) 10,127,134 48,132,534,907,663
資料出典:第63回労働政策審議会労働条件分科会(06年9月29日)

表5 ホワイトカラー・エクゼンプション導入によって
    年収400万円以上のホワイトカラーからの横取り額
表4のホワイトカラー 10,127,134 48,132,534,907,663
支払い残業代 10,127,134 4,563,822,612,879
不払い残業代 10,127,134 7,021,265,558,275
総横取り額 10,127,134 11,585,088,171,154

試算の経過
総実労働時間 169.0
所定内労働時間 156.0
所定外労働時間 13.0
所定内換算13.0×1.257 16.3 賃金に占める残業代の割合算出のため
総実労働時間2* 172.3
総実労働時間2=所定内労働時間+所定外労働時間×1.257
(年間総実労働時間2=所定内労働時間+所定外労働時間×1.257)×12
所定外比率 (16.3H/172.3H)*12
0.09481783

時間当たり賃金額=年間給与÷総実労働時間2
  23,273,884,773 48,132,534,907,663÷(172.3*12)

支払い残業代=時間当たり賃金×所定外労働時間×1.257
  4,563,822,612,879 23,273,884,773×13.0×1.257×12

不払い残業代=時間当たり賃金額×不払い残業時間×割り増し賃率
  7,021,265,558,275 23,273,884,773×20.0×1.257×12

ホワイトカラー全体からの総横取り額
総横取り額 11,585,088,171,154
支払い残業代 4,563,822,612,879
不払い残業代 7,021,265,558,275

ホワイトカラー1人当たり
総横取り額 1,143,965
支払い残業代 450,653
不払い残業代 693,312

毎月勤労統計報告に見る
月間労働時間
所定内 156.0
所定外 13.0
総実労働時間 169.0

労働力調査報告に見る
月間労働時間
平均就労時間 189.0
総実労働時間 169.0
不払い労働時間 20.0

(出所:全国労働組合総連合ホームページ)
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労働契約法制とは何かー自民・公明の議員を落選させようー

2006-12-28 22:13:10 | 国内経済
 Ⅱ 労働契約法制について 

1.労働契約の成立及び変更について

 現行法では、就業規則の作成・変更をするさいに、「労働者の過半数を代表するもの」の「意見を聞く」という手続きをとれば、あとは使用者の判断で制定・改廃を行うことができるようになっており、労働者代表の意見への「尊重」や「配慮」も求められていない。労働契約は労使の合意によって成立し、または変更されるという「労使合意原則」を、労働契約法の基礎におくというのであれば、合意を成立させる上で重要な、労使の実質的対等の保障についての規定を充実させることが必要である。現行制度では、団結権規定が労使対等保障の核となっているが、現場では労働者の団結権行使を嫌悪した使用者の嫌がらせが横行している。この実態をどう解消するのか、罰則強化を含めた法改正が求められる。

 また、未組織の職場においては、労働者代表制度のあり方、過半数労働者代表の民主的な選出方法のあり方、その実効性を担保するための制度的保障(労働者代表の身分の保障や能力開発、活動のための時間的経済的保障など)についての十分な検討が必要である。だが、今回の労働契約法制の検討にあたっては、「在り方研究会」も含め、これらのことは何ら検討されていない。

 就業規則に法的効力を与えるのであれば、少なくとも、上記の条件整備を先に整えなければならない。ところが、「報告案」は、現行の就業規則をめぐる法的措置の問題は放置したまま、「合理的な労働条件」を定めた就業規則がある場合には、「就業規則に定める労働条件が、労働契約の内容となるものとする」とし、そこを基盤に、使用者に有利な変更法理を築いている。使用者が就業規則の変更を行い、その内容を労働者に「周知」させていた場合、「変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容は、変更後の就業規則に定めるところによるものとする」という言い方は、かつて「合意が成立しているものと推定する」等としていた、「推定」規定でもなく、法律によって“みなしてしまう”規定となっている。合意成立が「推定」されるかどうか、にかかわる反論・反証の余地も、これによって封じられ、以前の提案より、さらに労働者にとって不利なものとなっている。
「『合理的なもの』であるかどうかの判断要素」が、ここで重要となるが、「報告案」がその中身として挙げているのは、「労働組合との合意その他の労働者との調整の状況(労使の協議の状況)」、「労働条件の変更の必要性」、「就業規則の変更の内容」の3つと、「変更に係る事情」にすぎない。

 の「労働者との調整の状況(労使の協議の状況)」などというものは、“協議はしたが、物別れにおわった”ケースでも該当し、使用者の一方的な労働条件切り下げを正当化することになる。また、に関しては、「変更の内容」などと曖昧書き方にとどめており、最高裁判例で示された、労働者に対する「代償措置の有無」や「不利益の程度」の明示は避けられている。これでは、現行の判例法理の水準を後退させるものであり、認められない。

 「報告案」は、自ら「労働契約は、労働者及び使用者の合意によって」成立・改廃されるというが、以上の規定は、自ら掲げた労働条件の労使対等決定原則を、自ら崩すものといわざるをえない。

2.労働契約の終了等について

(1)整理解雇について

 経営上の理由による解雇(整理解雇)については、「人員削減の必要性」「回避するための措置の実施状況」「対象労働者の選定方法の合理性」「整理解雇に至るまでの手続き」のひとつひとつをきちんと「要件」と認め、安易なリストラ解雇をさせないことが大切である。ところが、「報告案」は、整理解雇についての規定をすべて削除している。「素案」では、上記の4点の重要性については認めながら、それらが「要件」なのか「要素」なのかを明らかにしようとせず、その他の事情を含めて「総合的に考慮」するという立場をとっていた。これでは、判断ポイントを明示しながら、運用面で曖昧にされてしまう可能性があるため、4「要件」を厳格に適用した上で、初めて整理解雇は認められることとする規定を労働契約法の中に盛り込むべきである。

(2)解雇に関する労働関係紛争の解決方法について

 「報告案」は、多くの労働組合のみならず、中小企業からも反対がでている解雇の金銭的解決の仕組みを、再び検討の俎上にのせている。裁判において解雇が無効と判断された場合、職場復帰をとるか、金銭的解決をとるかは、勝訴した労働者側の選択に任されるべきことがらである。労働者の意向にかかわらず、違法解雇を行った使用者側の発意によって、一定の金銭給付によって職場から労働者を排除することを可能とするような制度などというものは、そもそも正義の観念に適わないものである。さらにいえば、排除したい労働者がいた場合、裁判で違法・無効と判断されうるような手段によってでも、その労働者を解雇し、金を払って企てを完遂しようとする使用者は、今の職場の実態を考慮すれば、いくらでも現れるであろう。そうなれば、職場でまともに意見を言おうとする労働者は存在できなくなる。本制度は、日本の労使の力関係を大きくゆがめる可能性があり、絶対に認めるわけにはいかない。

 なお「報告案」は、「労使の納得できる解決方法」として、この制度を追求してはどうかと提案しているが、労使が実質的対等を保障されない場面で、この制度を利用する合意がとりつけられる恐れがあるため、こうした提案でも認めるわけにはいかない。例えば、就業規則に設定される労働条件の中の一条項として、金銭解決制度の活用が設けられたとしたらどうなるか。労働市場で労使が出会う場面において、労働者は、使用者に比べて圧倒的に弱い立場にある。

 大半の労働者は、明日からの生活のため、就業するに際して、解雇の金銭解決制度などの不利な条件を提示されても、それに同意せざるをえない。それをもって、解雇の金銭的解決制度が発動されるということになれば、訴権の侵害につながる。労使の納得などというものは要件にならず、あくまでも、この制度の提案は廃棄するべきである。

(3)有期労働契約について

 「報告案」は、期間の定めのある労働契約について、「不必要に短期の有期労働契約を反復更新することのないよう配慮しなければならないこと」と実に控えめな提案をしているにすぎない。全労連は、すでに「有期労働契約の在り方に関する意見書」を労働条件分科会に提出しているが、そこでも述べたように、有期労働契約が年々増加している理由は、労働者のニーズが増えているからではなく、もっぱら、使用者にとって都合のいい契約形態だからである。労働市場に正規雇用の求人が十分にない今日、多くの労働者は「やむをえず」有期労働契約で就業している。こうした場合、使用者は、雇い止めを脅しにして、労働者の交渉力を低下させつつ、反復更新で勤続の長期化をはかり、労働者のスキル・アップの果実を、低廉な賃金で手中にすることができる。つまり、有期労働契約は、労働者の団結権行使や交渉力を阻害する手段として、使用者本位に活用されているのが実情である。解雇規制をいくら高めても、有期労働契約の規制を強めなければ、雇用をめぐる労使の対等は成立しない。したがって、労働契約法制で提案された、「報告案」の不十分な内容は、取り下げ、強制力のある労働基準法において、以下の法的整備を行うべきである。

 ①恒常的業務をおこなう労働者の労働契約は、フルタイム勤務者であろうと、短時間勤務者であろうと、期限の定めのない労働契約でなければならないとすること、②有期労働契約は、短期間に終了する業務に限定すること、③有期労働契約を一定回数反復更新した場合は期限の定めのない雇用契約とみなすこと。

 多くの「非正規」雇用労働者が、ワーキング・プア状態に陥っている現状を改善するために、全労連は、有期労働契約に係るこれらの法規制を至急行なうよう、強く求めるものである。

以上

(出所:全国労働組合総連合ホームページ)
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日本版ホワイトカラー・イグゼンプションとは何かー自民・公明の議員を落選させようー

2006-12-28 22:09:19 | 国内経済
2006年12月12日
労働政策審議会労働条件分科会御中

「今後の労働契約法制及び労働時間法制の
在り方について(報告)」(案)の撤回を求める

全国労働組合総連合
議長 坂内 三夫

 12月8日の第70回労働条件分科会において、厚生労働省は「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を提案した。これまでにも事務局は幾度か論点・素案を示しており、それらに対して、全労連はその都度、問題点を指摘してきたが、今回提出された「報告案」は以前の文書に比して、あまりにも使用者の要求に配慮したものとなっている点が特徴である。

 労働時間法制についての「報告案」では、30代男性の25%が週60時間以上の長時間労働をしていることを指摘し、「過労死防止や少子化対策の観点から、長時間労働の抑制を図ることが課題となっている」と前文に記している。ところが「報告案」が提起する各々の内容をみると、労働時間の上限規制の強化はなされず、時間外の割増率引上げについては具体的数値が消され、他方で「自由度の高い働き方にふさわしい制度」(日本版ホワイトカラー・イグゼンプション)の創設と「管理監督者の明確化」(スタッフ職の追加)によって労働時間規制の適用除外の対象を拡大することや、企画業務型裁量労働制の対象業務や要件を緩和することなど、課題解決どころか問題をさらに深刻化させる提案が目白押しである。

 労働契約法制については、従来から強い批判のあった「就業規則の変更による労働条件の(使用者にとって有利な)変更」の仕組みなどを盛り込む一方、これまでの審議において労働者側委員や労働組合、弁護士団体などが要望してきた、有期労働契約の濫用の規制、均等待遇原則や同一労働同一賃金の原則の明示、安全配慮義務、整理解雇「4要件」(4要素ではない)の実定法化、就労請求権の確立、対象労働者の範囲の検討(雇用関係を偽装された請負・委託労働問題対策)等、今回の立法にあたって最も重視すべき課題については取り上げていない。

 今回の「報告案」は、財界・使用者代表の利益至上主義に影響され、労働者保護法制を掘り崩そうとする意図が濃厚に読み取れる、極めて不当な内容といえる。現行の法制度や判例法理による労働者保護の水準を大きく後退させる、この「報告案」をもとにした法案づくりは断じて認められない。労働条件分科会における労使の意見のはなはだしい乖離からみても、「報告案」が妥当性を欠くものであることは明白であり、即時撤回を申し入れる。

 以下、「報告案」の各論点について、その不当性を指摘する。

Ⅰ 労働時間法制について
 
 1.「時間外労働削減のための法制度の整備」について
現行労基法の労働時間の時間外規制とその限度基準の扱いは、今でも不十分なものである。36協定を結び、25%の低い割増賃金を払えば、法定労働時間を越える時間外労働が認められる。労使協定で労働時間の延長を定めるに当たっては、協定が厚労大臣の定めた基準に「適合したものとなるようにしなければならない」(労基法36条3項)と、罰則抜きで定められているにすぎない。さらに、過去20年における労働時間規制の緩和によって、各種の変更労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制などさまざまな弾力的労働時間制度が導入されており、長時間労働による労働者の健康破壊が顕著になってきている。だからこそ、今求められているのは、残業規制に向けた実効性のある法整備である。ところが、今回の「報告案」は、以下に見るように、使用者に対する規制の観点はきわめて弱く、他方で、規制の網から除外される労働者を大幅に増やそうとしている。

(1)時間外労働の限度基準について
時間外労働の限度基準については、特別条項付き協定を締結する場合、延長時間を「できる限り短くするように努め」ることや、法定を超える割増賃金率とするように「努める」などと記しているにすぎない。また、この努力義務の主体は、使用者ではなく労使双方にかかる構造となっている。これでは、“協定があれば青天井”と揶揄される長時間残業の実態を是正することはできない。

 なお、特別条項付き協定において法定を超える割増率に言及しているということは、1ヶ月単位でいえば45時間超から法定割増率を越える設定をするよう努めよ、ということになる。努力規定にとどめられたことに加えて、6月27日の第59回労働条件分科会において厚労省が提示した、「30時間以上で50%割増率」という水準に比べても、はるかに後退している。「報告案」は撤回し、限度基準は数値で絶対的上限を明示し、労使合意でもそれは突破できないこととして、基準法本来の性格を取り戻す法改正をすべきである。また、違反には罰則を付けるべきである。

(2)長時間労働者に対する割増賃金率の引き上げについて
 
 「一定時間を越える時間外を行なった労働者に対し、現行より高い割増賃金を支払うこととする」とあるが、その「一定時間」の修飾語として「労働者の健康を確保する観点から」とされている。これは月80~100時間を想定したものと推測される。このような設定では義務規定にしたとしても、大半の労働者は現行どおりの残業規制下におかれることになり、企業の残業発令を抑止する力とはなりえない。

 そもそも、80時間超におよぶ労働時間は、脳・心臓疾患を引き起こす可能性が高く、なくさなければならないというのが、この間、厚労省が示した過重労働通達の指導内容である。割増率を引き上げて、過労死ラインの労働をさせたとしても、安全配慮義務が免責されるわけではない。本末転倒の考え方を助長しかねない法改正は慎むべきである。
 
 また、「引き上げ分」の割増賃金の支払いに代え、有給の休日付与ですまそうとする制度は、公益委員の荒木教授が審議会で高く評価していたが、有給休暇取得が年々減少し、5割にも届かない現状からみて、実効性に乏しいといわざるをえない。結局、休日返上で働くこととなり、割増賃金が支払われない状況を、労働者が是認したかのような状態が広がりかねない。

 また、日数に換算する場合、割増率の高い時間外労働時間が、割増率1.0の所定労働時間とみなされてしまわないかという懸念もある。仮にそうなるとすれば、使用者にとって使い勝手のよい、新しい変形労働時間制ができることになる。この案も撤回し、時間外割増率は一律で現行の25%を50%とするべきである。

(3)長時間労働削減のための支援策の充実について
 
 現在、特別条項を含む36協定を締結している100人以下の中小企業等に対し、助成金をふるまう支援策が概算要求されている(H18年8月「働き方改革トータルプロジェクト」)。その根拠とするために「報告案」に記したと思われるが、36協定を若干見直しただけで助成金を与えるくらいなら、指導監督にあたる職員を増員して行政指導を強化すべきである。

2.「自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設」について
 
 厚生労働省事務局は、これまで「自律的労働時間制度」と称していたものを「自由度の高い働き方にふさわしい制度」へと突然、名称変更した。その理由について、担当課長は「自律的というのは“自分で考えて実行”するという意味だが、“自由奔放”なイメージも含む。そういう労働者が制度の対象ではない。誤解を招くので“自由度が比較的高い人”に修正した」と回答した。これはイメージの訂正ではなく、制度対象となる労働者の範囲を広げたことを意味する。実際、今回の提案の要件をみると、従来繰り返し示してきた、①労働者が追加の業務指示について一定範囲で拒絶できるようにすること、②労使で業務量を計画的に調整する仕組みを設けていること、など、長時間労働の最大の要因とされる「業務量コントロール要件」を削除している。これは従来の主張との大幅な違いであり、審議経緯を無視した暴挙である。

 また、審議会で労働者側委員から再三質問があったにもかかわらず、「ホワイトカラー労働者」の具体像・概念規定はぼかしたままとしている。対象労働者は、労使委員会などの労使自治で決定する枠組みとしていることからみて、意図的にそうしていると考えられる。これでは営業職、研究職などの職種による歯止めはきかなくなり、広範な職種に適用されるおそれがある。

 とにかく、考えていただきたい。業務量を自分の権限では制御できない労働者が、時間の使い方の自由だけを与えられ、成果をあげることを求められたら、何が起こるか。使用者委員が審議会で述べたような「早く仕事を仕上げたら、所定内労働時間を気にしないで、早く帰宅できる」などという牧歌的な労働世界は、まず、実現しないだろう。早く仕事を仕上げようものなら、使用者は、次々と業務量を追加していき、それをこなして成果をあげることを当該労働者に求めるだろう。その結果、健康を損なうところまで追い込まれてしまう労働者が大量に生み出されることになるだろう。なにせ、残業支払いというコストを気にせず、健康障害を引き起こすことに対する使用者責任も気にしないで、「自由度の高い労働者」に仕事を任せることができるのだから。

 もちろん、労働者が健康を損ない、労働能力を失ってしまうことは、企業にとってマイナスである。しかし、昨今の経営者は、そうした中期にわたる問題を念頭において経営にあたることが苦手である。従業員軽視、株主重視のスタンスで、短期間に業績を上げることを目標としてしまい、企業の持続可能な発展を実現するための条件を、見据えることができないからである。

 なお、この制度の対象要件に合致した労働者は、労基法32条を含め、労働時間の規定をすべて除外する構成となっている。「制度の要件」に合致しない場合は、32条や37条(割増賃金)違反が成立するが、逆に言えば要件さえクリアしていれば、後述する「決議事項」の不履行や「休日確保等」の不履行があっても、直ちには違反を問えず、改善命令を経て、従わなかった場合にだけ、罰則があるとの構成になっている。罰則付きの強行規定である労基法を大きく変質させる法改悪といわざるをえない。

(1)制度の要件について

 適用除外制度の対象者の要件には、取締りにはまったく向かない項目が並んでいる。の「労働時間では成果を適切に評価できない業務」という表現は、今日の人事考課の実態にそくしていえば、あらゆる業務にあてはまる。技能系の時給労働者であってもその単価は能力の伸長に応じて決められるとされているケースは多く、要件に該当してしまう。そもそも、人事考課上の扱いをもって、労働基準法の適用除外の対象要件としようする発想が間違っている。労働時間で評価しない労働者に対しても、労働時間を規制し、健康を確保することは大切であり、それこそが労基法の役割ではないか。

 については「業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う」とあるが、相当程度とはどういうことか。刑罰法規として運用不可能であり、不適切である。

 「業務遂行の手段および時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこと」も、実態としてほぼ全ての労働者に当てはまりかねず、要件として成立しない。

 結局、の年収要件のみで労働時間規制を全面的に適用除外するものと見ざるをえない。

(2)労使委員会の決議事項について
 
 決議事項の医師の面談について、申出要件を求めていることは問題である。申出を行わずに過労性疾患にかかったときには、自己責任を問われかねない構造となっている。しかも80時間を超えて働く労働者は多忙ゆえに受診しない傾向にあることが、厚労省調査でも明らかとなっており、申出要件では、健康・福祉確保措置は機能しないことは明らかである。これでは使用者の安全配慮義務を軽減し、労働者だけに健康管理の責任を押し付けることになってしまう。

 使用者が、無理な業務量や納期などを命ずることで、労働者の健康を損なうことが問題の根幹にあることをふまえない措置である。また、医師との面談を行ない、「今のところは問題なし」と診断された労働者は、引き続き80時間を超えて働いていいとなるのか。健康障害が発見されて、はじめて長時間労働を抑制する診断がだされるというような仕組みでは、「報告案」の前書きの趣旨にそぐわないのではないか。

(3)制度の履行確保について

 休日の確保については、4週4日以上、年末年始、祝日、夏休みなどを含めて年間104日を確保できるような法的措置を講ずるとしているが、このハードルはきわめて低いといわざるをえない。この規定の範囲内でも、休日をかためて、特定期間に集中して長時間労働をさせるようなことが起きた場合、健康障害がおきる可能性は否めない。労働者が当然享受してしかるべき程度の休日日数保障をもって、時間規制を適用除外され、時間外割増賃金を失い、さらに健康障害がおきる可能性も高くなるなどというのでは、あまりに労働者にとって不利な条件といわざるをえない。
 
 実効性があるかどうかについても、疑問がある。行政官庁が、使用者に対し改善命令の指導をし、それに対し「従わなかった場合には、罰則を付す」とあるが、企業が従う姿勢を示してさえいれば、違反と扱うのは難しい文案となっている。また、改善命令は行政不服審査法の対象となり、60日以内に不服申立をしておけば時間が稼げる。この間、企業は監督官の臨検によって直ちに違反を指摘されることを徹底して嫌ってきた。「報告案」の方法なら、ただちに違反の是正を指導されることはなく、使用者は、いいかげんな管理をしていても、「安心」していられる。
 
3.「企画業務型裁量労働制の見直し」について
 
 本事項は、企画業務型裁量労働制が、中小企業での使い勝手をよくするために規制を緩和せよ、との中小企業の使用者委員の要求をそのまま取り入れたものである。
そもそも「みなし労働時間」は労基法の例外規定である。管理がとりわけ困難な業務や、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に関して、例外的に認めるものであり、適用するにしても、労使委員会での協議からはじまって多くの制約を課すことで、労働時間規制の緩和が不当に拡大することを防いでいる。

 それを、中小企業に限っては、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に「主として従事する」労働者については、「当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定める」ことを可能とするなどということは、例外規定という性格を180度変質しかねない。「主として」との文言が、刑罰法規としての規制力を無にするに等しく、実務上、違反を断定できなくなることも含め、みなし時間で多くの不払い残業を生むものであり、認めるわけにはいかない。

 労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止するなどというのは、「報告案」の目的である「長時間労働の抑制」にそぐわない措置であることはいうまでもない。

4.「管理監督者の明確化」について
 
 名ばかりの管理職が労基法の「管理監督者」とされ、労働時間規制の適用を除外されている問題は広範に見られ、裁判も起きている。審議会においても、使用者委員ですら、そうした不当な運用実態があることを認める発言をしていたはずである。厚労省はこの点について、肩書きでなく実態で判断するとして一定の基準を示している。「明確化」が必要なのは、各企業が雇用管理・労働時間管理の実践の場面で、厚労省基準に従った「管理監督者」の範囲確定をしているかどうか、である。ところが、「論点報告案」はこうした問題には目もくれず、現在、都市銀行の管理監督者の解釈(昭52.2.28)で認められている「スタッフ職への適用除外」を、他産業へと一般化しようとしている。

 このことは、「スタッフ職」と呼称される多くの労働者が、不当に時間規制の適用除外とされる可能性を招くものであり、「自由度の高い働き方にふさわしい労働時間制度」とあいまって、時間規制の適用除外の範囲を拡大し、長時間労働・過労死・少子化を助長するものである。

(出所:全国労働組合総連合ホームページ)
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労政審・労働条件分科会に対する要請書ー自民・公明の議員を落選させようー

2006-12-27 17:58:25 | 国内経済
労政審・労働条件分科会に対する要請書

 労政審委員の皆様におかれましては、ご多忙のなかご苦労様です。
 さて、中断されていた労政審・労働条件分科会が再開されましたが、9月11日の分科会には、厚労省側から「労働契約法制及び労働時間法制の今後の検討について(案)」が提示され、今後は月3回という速いペースで分科会の開催が決まりました。 
 
 今回、厚労省側から提示された検討項目は、6月に提示された厚労省「素案」とほぼ同じ課題項目であり、どの課題項目も「検討を深める」として労政審委員の検討・判断に基づくようにしていますが、すでに厚労省側の模範解答は出されており、厚労省「素案」へと結論を導こうとしているのがよくわかります。
 
 この「労働契約法」の制定や「労働時間規制」の適用除外等の課題は、労働法制の根幹的な課題であり、拙速な結論は避けるべきであります。私たちは、労政審・労働条件分科会が早期結論を出すことに「反対」であり、厚労省「素案」をベースとした結論を出すことにも「反対」であります。 
 
1、労働契約法制につて

 (1)「基本的な考え方」について 

 提起されているように産業構造の変化や就業形態の多様化、個別的労使紛争の激増  等の状況にあるなかで労働契約法制の必要性については認めるものです。その場合、  「労使対等」の原則の上に、労働者の採用(内定・本採用)と取消の規制、賃金・配  転・出向・転籍等の労働条件変更の規制、解雇の規制、有期労働契約の規制、個人請  負・業務委託などを労働者として規定、安全配慮義務の明確化等のルール化が検討さ  れるべきです。
 
 しかし、「研究会」報告や厚労省「素案」等で示されたものは、企業  リストラで使用者側による一方的な労働条件の「不利益変更」が横行している実態、  「長時間労働」が蔓延し「過労死・疾病・労災事故」の多発等の劣悪な労働現場の実  態、「労使対等」の原則も形骸化している実態等について、その原因を指摘し、改善  しようとしていない。むしろ、市場原理の「経営の論理」が先行して、そのような実  態にあることを前提として、労働者・労働組合の「権利」を後退させるものとして新  たなルール化が検討されているのである。このような労働契約法制には反対である。

(2)「労働契約の成立、変更等」について
   
 ここでは、「労働契約の成立、変更」と合わせ、「就業規則の効力、変更」等につ  いて「検討を深める」となっている。
  
 ①ここでの重要課題は、「就業規則の変更」という「労働条件の改悪」のルール化で   ある。「素案」では、「過半数組合」との合意があれば「合理的」なものとするこ   と。また、「過半数組合」がない場合は「すべての労働者を適正に代表する者」と   いう表現で「労使委員会」の決議があれば「法的効果」を与えるとしている。
 
 ②これは、組合の組織率が18.7%という状況のなかでは、職場に「労使委員会」を設   置することを基本とするものであり、「労使対等」の原則と言いながら実質的には   経営者側の独断決定を容認するものである。また、「過半数組合」がある場合は「労   使合意」方式に変更することにより、「過半数組合」を取り組もうとするやり方で   ある。これは、職場の団結権や少数派組合を形骸化するものである。
 
 ③ましてや、就業規則の変更で「不利益変更」となる個別労働者も「合意」したもの   とされる。これは、不服がある場合の裁判での「立証責任」が労働者側に求められ   るという不当なものである。また、労働条件の「本人同意原則」を無視し、労働者   の権利を侵害するものである。

(3)「主な労働条件に関するルール」について

 ここでは、「判例や実務に即して、安全配慮義務、出向、配転、懲戒等についてル  ールを明確にする」ことについて「深く検討する」となっている。
  
 ①この課題について「素案」では、転勤・出向は「就業規則が不合理」でない限り、   労働者の個別承諾は「不必要」、転籍は承諾が「必要」としている。転勤・出向に   ついても他の都道府県などの遠距離転勤、他社への出向等は、労働条件の「不利益   変更」を伴う例が多いのである。それが就業規則に記されていれば経営者側の判断   でできるということであり、労働条件の「本人同意原則」に反し、労働者の権利を   侵害するものである。
  
 ②また、「素案」では、個別の「労働契約の変更」(勤務地・賃金等の変更)につい   て、労働者が異議をとどめて承諾した場合、「異議をとどめたことを理由に解雇は   できない」としている。これは、当然のことである。しかし、別な言い方をすれば、   労働条件の「不利益変更」に反対し、応じなかった場合は「解雇」できるというこ   とである。これは、「研究会」報告にある労働条件の「本人同意原則」を無視する   「雇用継続型契約変更制度」が生きているということであり、使用者側の権限を一   方的に強化し、労働者の権利を侵害するものである。

(4)「労働契約の終了等」について
   
 ここでは、「整理解雇の4要素」についてと解雇の「金銭解決の仕組み」について  「検討を深める」となっている。
  
 ①今回の提示では、整理解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相   当であると認められない場合」の4要素(人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇   対象者の選定方法、解雇に至る手続き)を含めて「総合的に考慮して判断されるこ   ととする」ことを「検討を深める」としている。これは、整理解雇の「4要件」を   「4要素」と後退した表現して、それぞれ「個別判断」するのではなく、総合的に   「考慮・判断」するものへと後退させるものである。
  
 ②解雇の「金銭解決」方式について、「素案」の考え方では、「紛争の早期解決」、「原職復帰が困難」等を理由に解雇の「金銭解決」の仕組みを検討するとしている。し   かしこれは、裁判で不当解雇の判決が出されても「金銭解決」し、原職復帰させな   いということである。これは、「組合役員」や会社に「不都合な者」等を職場か    ら排除することを可能とするものであり、労働者の職場復帰の権利を奪い、経営者   側の「解雇権の濫用」を助長させるものである。

(5)「有期労働契約」について
  
 ここでは、有期労働契約について、やむえない理由がない限り「中途解約」はでき  ないこと、「反復更新」のないよう十分配慮することを「検討を深める」としている。
  
 ①有期労働契約について、「素案」では「一定期間(例えば1年)」又は「一定回数(例えば3回)」を超えて雇用が継続している場合は、「期間を定めない契約の優先的な   応募機会の付与」と「雇止め予告」の対象を「検討」としていたが、「規制改革・   民間開放推進会議」等の圧力ですでに大きく後退したものとなっている。
 
 ②パート・派遣・契約等の非正規労働(有期労働契約)が「偽装請負」の脱法行為に   も象徴されるように、いかに「不安定雇用」で、「低賃金・低処遇」の実態にある   かを明らかにされておらず、労政審委員の共通認識にしていないことである。実態   を共通認識にすれば、非正規労働(有期労働契約)の範囲を規制することであり、   また、賃金、休暇制度、社会保険、年金等で均等待遇化を法制化すべきである。

(6)「国の役割」について

 ここでは、労働契約法は「罰則をもって担保」されたり、「監督指導」が行われる  ものではないこと。国の役割は、労働契約法の「解釈」・「周知」を行うことについ  て「検討を深める」としている。

 ①これは、「労使自治」が原則であり、そのための労働契約法であると言いながら国   の責任放棄である。「労使が実質的に対等な立場で労働条件を決定する」ことが原   則であるが、多くの場合、「経営者と労働者」、「経営者と労働組合」という労使の   「力関係」が対等ではなく、就業規則の改悪や労働条件の不利益変更が経営者側の   独断決定で行われている実態が多いのである。

 ②このことからも労使関係の安定的・健全な発展のためには、労働契約法は「強行規   定」を中心に作られるべきである。そして、法の「解釈」・「周知」にとどまらず、   監督・指導が行われるべきである。そして、法を守らない悪質企業を公表したり、   改善勧告などを行うべきである。

2、労働基準法について

 (1)「働き方を見直し仕事と生活のバランスを実現するための方策」について
   
 ここでは、長時間労働対策として「一定時間数を超えて時間外労働させた場合の割  増賃金の引き上げ」について、「経営環境や中小企業の実態を踏まえ」つつ「検討を  深める」、また、当該割増率の引き上げ分について「休日付与」の選択の「検討を深  める」としている。
  
 ①これは、「素案」では、長時間労働の抑制と疲労回復の手段として、①月40時間以   上の時間外労働に「1日の休日」、②月75時間以上の時間外労働に「2日の休日」   の付与、②月30時間を超えた時間外労働の割増賃金を2.5割~5割へ引き上げ、ま   た、割増賃金の引き上げ分について、金銭ではなく「休日付与」を検討するとして   いました。しかしこれも、「規制改革・民間開放推進会議」等の圧力で全面後退し   た検討となっていることである。
 
 ②労働現場の実態は、労働時間の二極化が進み、長時間労働は月60~100時間とい   う残業(過労死予備軍)をせざるを得ない労働者が増えており、「土日」休みや有   給休暇も取れないという職場の実態をどう見ているのかである。それは、企業リス   トラで人員削減と非正規の拡大で、少ない人員で増大する業務量の処理を競争主義   ・成果主義の下で酷使されているのです。むしろ、経営の安定化のためにも、仕事   と生活のバランスのためにも、「1日8時間・週40時間」という労働時間規制を守   らせること、そのためには必要人員を配置させ、悪しき競争主義・成果主義をやめ   させて、労基法違反の経営者への罰則の強化と違反企業を公表する体制の強化こそ   必要である。

 (2)「就業形態の多様化に対応し、仕事と生活のバランスを確保しつつ、
  
 新しい働き方ができるようにするための方策」について
   
 ここでは、「スタッフ職等の中間層の労働者に権限や裁量を与える」例が見られる「一層の自己実現や能力発揮」のために「ホワイトカラー労働者の自律的な働き方を  可能とする制度の創設」について「検討を深める」と、また、企画業務型裁量労働制  について、中小企業においても活用できるように「対象業務の範囲やその手続き」の  見直しの「検討を深める」としている。
  
 ①つまり、「自律的労働制度」を創設し、法定休日(労基法35条)と年次有給休暇(同59条)を除いて労働時間規制を適用除外することを検討するというのである。この「自   律的労働制度」は、「研究会」報告では「係長級」「チームリーダー級」を対象と   し、日本経団連は「年収400万円以上」を対象と主張してきている。また、先の「素   案」では「労働時間や業務指示について自己調整できる者、年収が一定以上の者」「全労働者の一定割合以内」としている。
  
 ②これは、「日本型エグゼンプション」として、多くの労働組合や労働弁護団等の反   対意見が強いなかで、今回は制度として発足させ「小さく産んで、大きく育てる」   という戦略なのである。これまでもパート等非正規労働は「一時的・臨時的」業務   として限定してスタートしたものが、いつの間にか全労働者の33%までにも拡大   してきました。派遣労働についても「専門的知識・業種」としてスタートしながら、05   年度から製造業にまで拡大してきたことからも明らかです。
  
 ③この「自律的労働」の対象とされる「係長級」「チームリーダー級」や「30才代」   「40才代」は、働き盛りで月60時間~100時間を超えて残業をしている者が多い   実態にある。つまり、「自律的労働」を創設し、「1日8時間・週40時間」労働と   いう労働時間規制から適用除外することは、現実の「長時間労働、サービス残業・   タダ働き」を容認し、合法化することとなり、「過労死・過労自殺」や「脳・心臓   疾患」、「疾病・労災事故」等を増大する結果になるだけなのです。
  
 ④企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲やその手続きを見直すということは、使い   かってのよい企画業務型裁量労働制にして、中小企業レベルでも活用できるように   し、「1日8時間・週40時間」労働の労働時間規制の適用除外を拡大する以外の何   ものでもありません。企業リストラで長時間労働と過労死や健康障害が多発してい   る労働現場の実態をしっかりと把握するならば、企業のモラルを問い、規制を強化   すべきなのです。
   等々。                            以上 

(出所:全国労働組合連絡協議会ホームページ)
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解雇を含む労働条件決定において労働者個人の同意を無視。-労働契約法制導入を阻止しようー

2006-12-26 18:21:19 | 国内経済
 「今後の労働契約法制について検討すべき具体的論点(1)(素案)」
に対する意見

労働政策審議会
労働条件分科会 御中

06年11月28日

日本労働弁護団
幹事長 鴨 田 哲 郎

はじめに

 厚生労働省は、11月21日、労働契約法制定に関し「素案(1)」を貴分科会に提示した。本意見は、労働契約法に求められる基本的役割とその中での就業規則の効力を中心に意見を述べるものである。

1.労働契約法は労使対等の実現に資するものでなければならない


 「素案(1)」は前文で「労働契約の内容が自主的に決定され」るための「ルールを明確化」すると契約法制定の目的を述べる。
しかし、労働契約は労使対等の立場で決定されるもの(労基法2条1項)でなければならず、「在り方研報告」(05年9月)もこれを強調していたところである。労使、ことに労働者個人と使用者との力関係が現状において対等性につき心配するほどのこともないというのであればともかく、前記「在り方研報告」を引用するまでもなく、また、当弁護団が機会ある毎に強調してきたように、その間の力関係の格差は圧倒的、歴然たるものがあり、それは単に情報量の差などといって済ませられる性格のものではない。この点を考慮せず、ただ単に「自主決定」(労使自治)によるルールづくりのみを立法目的とするのであれば、その結果は力が圧倒的に強い使用者が、力の弱い労働者(又はその集団)の意思を抑圧して労働条件を一方的に決定することとなり、法(国家)がこれを容認することとなる。

 今次労働契約法は、労使対等による自主決定を促進するためにも、これが可能となる環境を、まず整備しなければならない。とりわけ就業規則に契約上の効力を法認する方向を目指すのであれば、この点は避けて通れない大前提である。
この点の検討――まずは、現行法上の過半数代表者制度を過半数組合と同等のものに抜本的に改革する――を何ら行わないままに労働契約法に就業規則の契約上の位置付けを盛り込むならば、それは労使の合意を規律する契約法ではなく、就業規則万能法となりかねない。

 なお、貴分科会の審議においては、労使合意とか労使自治なる表現が頻繁に使われるところ、これを使用する各委員は、相当程度の規模の企業において、過半数を上回る労働組合が組織され、使用者と労働組合が団交、労使協議を重ねつつ労働条件の設定・変更を行っていくことをイメージしていると想定される。しかし、このような企業は極く少数であって、労働契約法が適用される事業場の圧倒的多数は過半数組合など存在せず、かつ、過半数代表者が民主的に選出されることもなく、使用者の意向に沿った者が過半数代表者となっているのが実状である。労働契約法は、このような事業場や労働者に適用される法であることに心して審議を尽くされるよう、強く要望する。

2 労働契約の合意原則は明確に定めるべきである

 「素案(1)」も提起するように、労働契約が、労働者個人と使用者との合意によって、成立・変更されるものであることは、極めて当然のことである。
しかしながら、これを認識しない、あるいは潜脱しようとする使用者は多数にのぼる。ことに契約成立時の労働条件内容や労働条件の変更は自由に決定できると思い込んでいる使用者は極めて多い。合意原則の法定は、これら使用者に、労働条件の一方的決定はできないことを実定法に定めることによって知らしめる意義がある。
また、労働契約を締結した使用者は賃金支払義務を負うのはもちろんのこと、生身の人間をその指揮命令下におき労働させる以上、当然に、安全配慮義務を初め、労働契約に付随する様々な義務を負い、これを誠実に果たす責任を負う。これら付随義務は判例法理として形成されているが、これを実定法において明記し、使用者に知らしめる必要がある。合意原則に続けて、労働契約上の付随義務に関しても立法上の定めを置くべきである。

3 就業規則の契約上の効力を一律に定める前提を欠く

「素案(1)」は、労働契約締結時(1、(2)、③)及び就業規則変更時(1、(3)、①)の就業規則の労働契約法上の効力を定める規定を設けることを提起する。しかし、「素案(1)」は就業規則の現状に関する十分な考察をしておらず、効力規定を置く前提を欠いている。

(1)就業規則の機能と制改定手続

 就業規則の内容は大きく、労働者に契約上の権利を請求する根拠を付与する規定(所定労働時間等労働時制、賃金制度、退職金等。事業場内最低労働条件設定機能といいうる)と労働者に義務や不利益を課す規定(服務、配転・出向等の人事条項、懲戒・解雇等)とに分かれる。そして、就業規則が労働契約の一方当事者たる使用者が一方的に決定するものとの枠組みを維持――しかも、現行過半数代表への意見聴取というほとんど実効のない制度の改善・強化を全く検討しないばかりか、意見聴取を欠いても契約上の効力を認めうるとの「素案(1)」の立論によるとすれば、なおさらのこと――する以上、両者の規定の効力は明確に区別して論ぜられるべきであって、これを一律に論ずるのは、論議を混乱させる。

 この点は、手続に関しても同様であって、労働者に義務等を課す規定に関しては、労基法上の手続が遵守されていることを絶対的な効力要件とすべきである。「素案(1)」の如く、この手続を欠いても義務付け規定の契約上の効力を認めうるとすれば、使用者に労基法遵守のインセンティブが働かないことは明らか――現在の使用者側委員の分科会での発言から容易に推認できる――であり、同じく厚労省の所管である労基法については手続の遵守を求めつつ、他方契約法では手続不要と宣言するに等しく、甚しく統一性を欠く。これでは監督官庁たる厚労省に労基法を遵守させる意思・意欲があるのか根本から疑わせる事態を招くことになる。

(2)過半数代表者制度の抜本的改革は不可欠

 就業規則の制改定に際し過半数代表への意見聴取義務が定められたのは、「限りなく同意に近い」協議義務を課すことにより当該事業場の様々な意見を吸い上げ、労働者の「集団意思」のチェックをかけ、もって、就業規則内容の合理性を担保する一方策とすべく意図されたからに他ならない。そして、そこで想定された「集団意思」の表示者は過半数組合であった。過半数組合であれば、当該就業規則条項に関し、団体交渉を求め、ストライキ権を行使しうるのであるから実質的には協議義務を課したと同様である。過半数代表者の意見にも同一の効力を付与する以上、過半数代表者に過半数組合と同等の力を付与する方策が整備されねばならない。

 その上で、労基法がチェック機能を期待したのは「集団意思」であって、労働者個々人の意思ではないのであるから、就業規則内容を労働者の「個人意思」に基づく契約内容にまで高めるのであれば、何らかの労働者個人の関与が考えられねばならない(過半数組合の場合における非組合員を想定するだけでも、その必要性は十分に理解しうるはずである。過半数代表者の場合にはなおさらである)。

(3)労働契約締結時の効力

 素案(1)」は、「合理的な労働条件を定めて労働者に周知させていた就業規則」はその内容が「労働契約の内容となる」と提起する。
労働契約として、即ち、自ら約束したことを根拠として労働者に義務の履行を強制しうるとするのであれば、当該条項が発動される時点で当該条項を当該労働者が認知していたことが少なくとも不可欠である。換言すれば、「集団的」周知だけでは不十分で、「個人的」認知が必要である。かかる規定を設けるのであれば、個々の労働契約締結前に就業規則内容が知らしめられており、かつ、就労開始時に就業規則書が交付されているべきである。

 「周知の方法は就業規則書の交付による」と具体的に明定すべきであり、このことによって、周知の徹底を図りうると共に労働条件明示義務(労基法15条)の実効を上げることにもなり、さらに、就業規則を上回る「特約」を締結する前提条件でもある(就業規則内容を知らなければ、「特約」と認識しての合意などなしえない)。
なお、当然のことながら、「特約」が効力を有するのは就業規則内容を上回る労働条件に限られること(素案1、(2)、①(現行労基法93条と同旨)は絶対的基準であること)を条文上明示すべきである。

(4)変更就業規則の効力

 「素案(1)」は、「就業規則の変更が合理的なものであり」これを周知させていた場合は、「労働契約の内容は変更就業規則に定めるところによる」と提起し、「合理的なもの」の判断要素として、 i労使の協議状況、ii変更の必要性、iii変更の内容を挙げ、就業規則改定手続については「変更ルールとの関係で重要であることを明らかにする」とする(以下、判例法理を前提に意見を述べるが、本意見は判例法理を法文化せよとするものではない)。

①原則規定が必要

 「素案(1)」は、就業規則の不利益変更に関する判例法理を意識したものであろう。であるとすればまず第1に、就業規則変更によって既得の労働条件を不利益に変更することはできないという大原則を明確に規定すべきである。判例法理は例外として効力を認めうる場合の法理に過ぎず、例外である以上その要件は厳格に解されねばならないからである。

 「素案(1)」の「判断要素」の指摘及びその序列には重大な疑問がある。最も重要な要素は、不利益変更の程度とそれとの関連による変更の必要性である。一番目に労使の協議状況を挙げるのは判例法理に沿ったものとはいえず、「合理性推定」に代替させようとの意図も感じられる。

②「定めるところ」の法的意義は?

 「定めるところによる」とは、判例法理の「拘束する」を踏襲するものであるのか不明確であるが、労働契約締結時と異なる書きぶりをするのであれば、その違いと理由を具体的かつ明快に説明すべきである。

③「合理性」判断の基準を明定せよ

 例外の要件である「合理性」とは何に対する、あるいは何に関しての合理性であろうか。個々の労働者が負わされる具体的な不利益を容認するに足る合理性であることが明確に規定されるべきである。

④変更の「高度の」必要性を要す

 合理性判断要素としての「変更の必要性」については、通常、賃金又は労働時間という基幹的な労働条件が対象になるのであるから、判例法理に沿って高度の必要性とすべきである。

⑤変更内容の「相当性」

 合理性判断要素としての「変更の内容」はあまりに抽象的で規範的評価基準を含まない表現となっている。変更内容の「相当性」としたうえ、代償措置、経過(激変緩和)措置等、判例法理で指摘されている相当性判断に当たっての考慮事項を示すべきである。

(5)小括

「素案(1)」は就業規則に契約上の効力を付与しようとするものであるが、そのためには当弁護団がこれまで指摘してきたとおり、過半数代表制度の問題をはじめ多くの問題点の十分な検討を要する。これらの問題についての十分な検討を欠いたまま、今次立法において就業規則の契約上の効力に関する規定を置くことは、拙速に過ぎるものであり、反対である。

4 労働条件ルールについて

(1)はじめに

 労働条件に関するルールとして「素案(1)」が提示するのは、以下の、わずか4項目に過ぎない。日々の労働契約の展開に限っても、労働時制の一時的変更、所定外・休日労働、配転や応援、成績査定、業務上与えた損害に関する賠償等々、本来、労使合意によって運用されるべき多くの事項が現実には使用者の一方的決定・命令によって処理されている。これらに関し、労使対等を実現すべく使用者の恣意・裁量を規制するルールを定めるのが契約法の制定趣旨である。政策提起者の及び腰はさびしい限りである。

(2)安全配慮義務

 安全配慮義務は確定した判例法理であり、法定は当然である。

(3)出向

「出向を命じることができる場合」(出向要件)として、新日鉄事件最高裁判決の基準に基づき具体的に法定すべきである。

(4)転籍

 合意とは、転籍の内容、条件を具体的に明示したうえでの個別合意を指すものであることを明示し、かつ、雇用主の変更という労働契約の根本に係わるものであるから書面によるものとすべきである。

(5)懲戒

 「懲戒することができる場合」(懲戒要件)として①就業規則又はこれに準じるものにより、予め、対象行為と懲戒の種類及び程度が明定され、これが集団的に周知されると共に個人的に認知されていること、②行為と懲戒内容のバランスが取れていること、③事前の弁明機会の付与、調査義務等懲戒手続を整備すること等を法定すべきである。

5 労働契約の終了について

(1)整理解雇は4要件で

「素案(1)」は、労働者の数を削減する必要性等の事情を「総合的に考慮して」濫用性を判断するとの規定を置くことを提起し「4要素」論の実定法化を図ろうとする。
しかし、労働者に非があることを理由とする普通解雇と労働者に非はなく会社経営上の都合による解雇である整理解雇とは性格が大きく異なるのであり、規範としての明確性を確保するという点からも4要件として立法化すべきである。

(2)解雇の金銭的解決は、断固反対

 素案(1)」は、「解雇の金銭的解決の仕組みに関し、さらに労使が納得できる解決方法を設ける」と提起するが、その枠組みすら示されていない。
使用者申立による解雇の金銭的解決制度は、当弁護団が何度も指摘してきたように、その本質は「金で解雇を買う制度」である。解雇規制の存在は、法定されあるいは約定された労働条件を使用者に遵守させる必須の条件であり、解雇規制の空洞化をもたらす金銭解決制度は、労働契約法の意義を没却させるものであって、いかなる意味でもこれを立法的に導入することには断固、反対である。

以上

(出所:日本労働弁護団ホームページ)
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07通常国会・ホワイトカラー・エグゼンプション導入阻止ー自民・公明の議員を落選させようー

2006-12-26 18:07:43 | 国内経済
「今後の労働時間法制について検討すべき具体的論点(素案)」
に対する意見

06年11月24日

日本労働弁護団
幹事長 鴨 田 哲 郎

はじめに

 厚労省は、11月10日、労政審労働条件分科会に、これまでの討議をふまえてとして、労働時間制度「改正」についての「素案」を示したが、本意見は、素案の中に示された「自由度の高い働き方にふさわしい制度」(新・適用除外という)を中心に、意見を述べるものである。

第1 新・適用除外は容認できない

1 二分論の根本的な誤り

 「素案」は、前文で「長時間労働を抑制しながら働き方の多様化に対応するため」と言いつつ、相も変わらず、「時間外労働削減」の対象となる通常労働者と新・適用除外の対象者や管理監督者を分け、前者には、ほとんど実効が期待できない「法制度の整備」を提起し、後者にはほぼ全面的な適用除外を提起する。当弁護団が既に指摘したように、現在、企業実務において管理監督者あるいは裁量労働者と処遇されている労働者は過大な業務量と重い責任、そして成果主義賃金制度の下、無限定な労働を強いられ、多くが心身共に疲弊しており、企業側の見通しですら、今後、脳・心臓疾患や精神障害の危険が高まるとする割合が7割を超えている。

 「素案」の二分論は、この重い事実を全く無視するものであって、到底許されない(なお、新・適用除外者に対する健康確保措置に実効が期待できないことは後述)。

2 適用除外の本質は不変――名で体を隠すネーミングの変遷

「素案」は、従来の自律的労働なる用語を捨て、「自由度の高い働き方にふさわしい制度」なる新たなネーミングをなした。何度目のネーミング変更であろうか。名は体を表すではなく、名を以て体を隠す類であり、「袈裟の下の鎧」の本質は変わらない。
どんなにネーミングを変えようが、既に適用除外となっている管理監督者――そのルーズな運用と全く監督権限を行使しない厚労省の姿勢に対する何らの反省も示されていない(なお、日本労務研究会「管理監督者の実態に関する調査研究報告書」参照)――に加えて、新たに適用除外を拡大するという本質・狙いには何の変更もない。

3 適用除外拡大の必要性は全く示されていない

 当弁護団は、適用除外者拡大の立法事実、根拠を具体的に示すべきであると何度も強調してきた。しかし、相変わらず、「働き方の多様化(への)対応」など抽象的文言が舞うのみである(なお、なぜか、今回は「自律的」なる用語は一切使われていない)。
導入論は、無駄な拘束を受けているとか、労働時間の境界があいまいだとかと導入理由を主張するが、前者についていえば、現行法は労働時間の長さの上限を規制するのみであり、かつ、様々な弾力化制度が既に用意されているのであるから企業内での制度の工夫により、無駄な拘束をなくすことは十分に可能である。また、後者は、だから適用除外というのは余りにも短絡的な考えである。

 結局、現行法による「不合理」は残業代支払義務しか残らない。いうまでもなく、この「不合理」は専ら使用者にとっての「不合理」である。分科会において労側委員が残業代削減目的と批判する由縁である。要は、実労働時間を直接規制する現行労基法(これがILO基準でもあり、グローバルスタンダードである)を、実労働時間規制は行わない米・公正労働基準法体制へ質的に転換せよという、使用者側の「都合」に応えるものにすぎない。

4 新適用除外制度の重大な危険

 しかし、残業代削減は、適用除外拡大の本質ではない。換言すれば、現在横行している違法な不払(サービス)残業を合法化させるという点にとどまらない、労働時間規制の本質に係わる重大な危険を持つ制度である。

(1) 法的手掛りの喪失

 人間らしい生活のための最低基準として保障されている、8時間、40時間労働制の適用が法的に主張しえなくなることが第1の本質である。長時間・無限定な労働時間から免れる術が法的に存在しなくなるのである。裏を返せば、休む権利が剥奪される。その上、健康管理は自己責任との誤まった論が強調されることになる(石嵜信憲「日本版ホワイトカラー・エグゼンプションとメンタルヘルスをめぐる法的視点」季労213号)。
8時間労働制は、人間らしく、健康で、個人生活・家庭生活・地域や仲間との生活を享受するために、労働時間と非労働時間を峻別し、労働時間を短縮させる人類の運動の一つの到達点であり、全ての労働者に保障されるべきものである。そして、様々なレベル、局面での技術革新が進む中、8時間はもっと短縮されるべきであり、その基盤は十分あるはずなのに、そうはなっていない。資本が欲求する効率、スピード優先の思想を根本的に切換えることが、今求められているのである。

(2) 監督排除による治外法権化

 もう1つの本質は、労使自治(労使委員会決議)の美名による、労働行政(国家)の監督の排除である。監督の排除により企業内労使関係は治外法権となる。
労使自治の当事者である労の代表が自由かつ主体的に使と対等に渡り合えるのであれば、骨格だけの法規制でもよいかもしれない。しかし、労の代表の大半は、過半数組合ではなく過半数代表者とこれが推薦(指名)する者である。過半数代表者が使用者の御用機関にすぎない実状にあることはつとに指摘されてきたところであり、労使委員会決議にせよ、労使協定にせよ、使用者の自己契約にすぎない。過半数代表者制度を抜本改革しないままでの労使自治は、使用者の専制の容認と同義である(なお、労弁06.8.8付「規制改革・民間開放推進会議の『意見』に対する見解」参照)。

5 今、必要なことは、実効ある時短政策

 日経ビジネス誌(11月6日号)は、「管理職が壊れる」とタイトルした特集を組んだ(なお、同誌は05年10月24日号で「社員が壊れる」を特集した)。7割を超える企業が30代を中心とした脳・心臓疾患や精神障害の深刻化を予測している。
今、必要な労働時間政策は、無限定な労働時間を容認・拡大する適用除外の拡大ではなく、全ての労働者に実効ある時間規制をかぶせ、大幅かつ抜本的な時間短縮を実現することである。

 時短を進めるにあたっては、現行法の適用除外規定が極めてルーズに運用され、これに対して何らの監督権限が発動されてこなかった労基法運用の60年の歴史を真摯に反省し、法を厳格に適用することから始めなければならない。しかるに、「素案」にはこの点について検証する姿勢がみられない。

第2 新・適用除外の要件と効果

 当弁護団は、新・適用除外に断固反対であり、その要件をいかに定めたとしても問題の本質を解消するものではないと考える。提起されている要件と効果の検討からも、このことは明らかである。

1 要件のあいまいさ

(1) 「素案」は新・適用除外の要件として、a.業務、b.地位、c.業務遂行の裁量性、d.年収を挙げる。
 
 業務  「労働時間では成果を適切に評価できない」業務とは、そもそも法的要件足りえているのか。他の業務と明瞭に区別ができ、その範囲を限定・画定することが要件を定める意義であるが、「素案」の表記では、これを満たすとは到底言えず、使用者の恣意を許すこと明らかである。

 地位  「業務上の重要な」権限と責任を伴う地位とするが、「相当程度」でよいばかりか、「業務上」とはどの範囲・場面を指すのか極めて不明確である。企業全体か、事業場か、配属部署か、当該人が担当している業務か明確にしなければならず、他の制度とのバランス上、企業全体でみて当該地位が企業の業務上重要な権限と責任を有すことが必要であると考えるが、具体的な対象者の決定を労使委員会決議に委ねるとすれば、要件の意義が大きく失われる危険は極めて高いといわざるをえない。
業務遂行の裁量性  裁量労働のみなし時間制の要件と同様の表現であるが、抽象的に与えられた裁量性が現実に、会社・上司・同僚らに何ら気がねなく、日常的に行使しえていることが必須の要件である(平15.10.22厚労省告示353号第3.1.(2).ハ参照)ところ、自ら業務量をコントロールしうる労働者は現実にはほとんど存在しない。

 年収  年収を1要件とすることは、当該年収以下の者が一律に制度の適用外となって明確である反面、年収要件が一人歩きしてそれだけが要件のように労働現場で扱われる危険性が高いと危惧せざるをえない。ところで、「相当程度高い」とは、具体的にどの程度を指すのか。1075万か1000万か700万か。年収を要件とするのであれば、具体的数字を法の本則で定めるべきであり、規則等に委ねてはならない。規則等に委ねた場合には容易に改訂が出来、要件としての意義が失われる。

 (2) 以上からすると、成果主義賃金を前提に裁量労働制と管理監督者の要件をミックスしたもののように評価されるが、だとすれば、現行法での対応が可能なはずで、ここでも、新制度の必要性が存しないことを露呈しているといわざるをえない。

2 手続(労使委員会決議事項)

 (1) aの一般決議事項は、企画型裁量労働制における決議事項を踏襲したものと考えられるが、の休日の確保と特定は、決議に意義があるのではなく、結果として現実に(心身共に)休めたかが問題となるのであり、次項で触れる。の健康・福祉確保措置は、具体的請求権が民事上認められるものでなければほとんど絵に画いたもちにすぎないのであって、「素案」はこの点の理解をまったく欠いている。

 (2) 「労働者の申出による医師の面接指導」を健康確保措置と呼ぶこと自体、おこがましく、また、労働契約に付随する信義則上の使用者の安全配慮義務の免脱を許すことになりかねないものである(企画型裁量労働制における定時報告の廃止の提起からみても、「素案」が真剣に健康確保やそのための指導・監督の強化を検討しているとは考えられない)。

3 実効性(履行確保)はあるのか

「休日を確実に確保できるような法的措置」とは、具体的にいかなる方策なのであろうか。これが明示されるまで論評はひとまず留保するが、この点は新・適用除外が長時間労働の抑制と両立するとする政策提起者にとってまさに要であり、これについて具体策を明らかにしないのは甚だ遺憾である。一般労働者の時間外削減方策として休日労働の回数規制すら提起しない姿勢からして、実効ある方策が提起されるとは到底考えられない。
また、形式上休日が付与されるだけでは、極めて不十分であることが深く留意されねばならない。休日に自宅等で業務を行う事例は厚労省調査においても相当な割合にのぼっており、さらには、精神的にも業務から完全に開放された24時間(48時間)を確保しうる法的措置が真剣に検討されねばならない。

4 効果の拡大

「素案」は従来提起されていた法35条(休日)を削除し、法39条(年休)だけを適用すると提起する。
これは極めて重大な後退であり、前記休日確保策を真摯に検討しているのかを強く疑わせる。
また、深夜業規制(法37条)の排除の提起は従前通りだが、管理監督者とのバランスを欠く(「素案」には、管理監督者について法37条排除は表記されていない)ものであり、長時間労働妨止、健康確保の視点からも法37条は適用されるべきである。

5 まとめ

「素案」は総じて、新適用除外制度、企画型裁量労働制度及び管理監督者制度が混同され、相互に連関し合い、不分明なものとなっており、労働現場で、また監督行政においても混乱・濫用を来たす――その被害者は労働者である――こと必至である。

第3 スタッフ職の管理監督者性

 適用除外の拡大との対応で方針が180度転換された(当初は、適用除外となるべきスタッフ職は新制度でカバーする構想であった)ところであるが、提起された「考え方」はまず業務の点において、企画型裁量労働制とどう異なるのであろうか(「事業の運営に関する事項」と「経営上の重要事項」とはどう違うのか)。政策提起者自身、明確な区分けができていないと評さざるをえない。
また、「ラインの管理監督者と同格以上」とあるが、まず前提として企業実務の実状である「課長職は管理監督者」は誤まりであることを明確に示すべきである。

第4 企画型裁量労働制の拡大

「素案」は、中小企業につき、対象労働者の範囲の拡大(対象業務に「主として」従事する者―「従」として対象業務外、あるいは定型的業務を行う者も対象とする)を提起する。
中小企業は一人何役も担当せざるをえない実状にあるとの理由であろうが、容認できない。最低基準たる労働条件を企業規模で異なるものとするのは平等・公平に反し、ふさわしくない。また、中小企業では、労働者代表による企業内での規制力の発揮は全く期待できないのであり、使用者の恣意を許すことになる。

第5 時間外労働削減案

「長時間労働(の)抑制」が今次改正の最大の目的・目玉であるはずにも拘らず、「素案」が提起する施策は、努力義務(その実効性のないことは明々白々)、支援策の充実、助言指導の推進というものばかりで、「検討の視点」(6月13日付)からの後退も甚だしく、唯一、民事上の義務となりうるのは「一定時間を超える時間外労働」に対する「現行より高い一定率の割増賃金の支払」だけである。何ともさびしい限りであり、時間外労働抑制への政策提起者の意欲のなさは目を覆うばかりである。
「一定時間」とは恐らく現行基準時間と同一と思われ、「高い」といっても現行法令で50%までの割増率は設定できるのであるから、「法制度の整備」などとはおこがましい限りである。

おわりに

 市場主義万能政策が厳しく批判されている(例えば、高梨昌「ゼミナール日本の雇用戦略」)。長時間化の傾向が強まる現在の労働時間の実状をふまえるならば、労働時間規制の緩和は市場主義への加担とこれを促進するものといわざるをえない。また、男女共同参画社会、少子高齢化対策、ワークライフバランスなどの政策との整合性も欠く。厚生労働省は「国民生活の保障及び向上」、「労働者の働く環境の整備」とのその設置の趣旨・任務(厚労省設置法3条)に沿った役割を果たすべきである。

(出所:日本労働弁護団ホームページ)
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残業による長時間労働の及ぼす様々な影響ー07通常国会・ホワイトカラー・エグゼンプション導入阻止へー

2006-12-25 01:48:41 | 国内経済
 長時間労働は健康や家庭生活に重大な影響を及ぼしています。厚生労働省は2001年12月に脳・心臓疾患の労災認定基準(いわゆる過労死認定基準)を改正し、2002年2月に「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」を出し、事業主に対し時間外労働を月45時間以下とするよう適切な労働時間管理に努めること等を求めています。

参考資料過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等

(2002.2.2 厚生労働省労働基準局発行 第0212001号 別添)

趣旨
 
 近年の医学研究等を踏まえ、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、これまで発症前1週間以内を中心とする発症に近接した時期における負荷を重視してきたところを、長期間にわたる疲労の蓄積についても業務による明らかな過重負荷として考慮することとした。この新認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果によると、長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせ、その結果、血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させるとの観点から、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間の評価の目安が次のとおり示された。

 発症前1か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと判断されるが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるものと判断されること

 発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと判断されること
 
 この考え方に基づき、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、以下のとおり事業者が講ずべき措置等を定めたものである。

時間外労働の削減

 時間外労働は本来臨時的な場合に行われるものであること、また、時間外労働(1週間当たり40時間を超えて行わせる労働をいう。以下同じ。)が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まると判断されることを踏まえ、事業者は、労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の締結に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者とともにその内容が「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)(以下「限度基準」という。)に適合したものとなるようにする。

 また、36協定において、限度基準第3条ただし書に定める「特別な事情」が生じた場合に限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めているなど月45時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合についても、事業者は、実際の時間外労働を月45時間以下とするよう努めるものとする。

 発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと判断されること

 その際、時間外労働が月45時間以下の場合においても、健康に悪影響を及ぼすことのないように時間外労働のさらなる短縮について配意するものとする。

 また、事業者は、裁量労働制対象労働者及び管理・監督者についても、健康確保のための責務があることなどにも十分留意し、過重労働とならないよう努めるものとする。
事業者は、平成13年4月6日付け基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」に基づき、労働時間の適正な把握を行うものとする。

年次有給休暇の取得促進
 
 事業者は、各種助成制度の活用などにより、年次有給休暇の取得しやすい職場環境づくり及び具体的な年次有給休暇の取得促進を図るものとする。

労働者の健康管理に係る措置の徹底

(1)健康診断の実施等の徹底
 
 事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の健康診断、同法第66条の4の健康診断結果についての医師からの意見聴取、同法第66条の5の健康診断実施後の措置、同法第66条の7の保健指導等を確実に実施する。

 特に、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、労働安全衛生規則第45条に基づき、6月以内ごとに1回、定期に、特定業務従事者の健康診断を実施しなければならないことに留意するものとする。

 また、深夜業に従事する労働者の健康管理に資するための自発的健康診断受診支援助成金制度や一定の健康診断項目について異常の所見がある労働者に対する二次健康診断等給付制度の活用につき、事業者は労働者に周知するとともに、労働者からこれらの健康診断の結果の提出があったときには、事業者は、これらの健康診断についてもその結果に基づく事後措置を講ずる必要があることについて留意するものとする。

 さらに、事業者は、労働安全衛生法第69条による労働者の健康保持増進を図るための措置の継続的かつ計画的な実施に努めるものとする。

(2)産業医等による助言指導等

 月45時間を超える時間外労働をさせた場合については、事業者は、当該労働をした労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等に関する情報を、産業医(産業医を選任する義務のない事業場にあっては、地域産業保健センター事業により登録されている医師等の産業医として選任される要件を備えた医師。)(以下「産業医等」という。)に提供し、事業場における健康管理について産業医等による助言指導を受けるものとする。

 月100時間を超える時間外労働を行わせた場合又は2か月間ないし6月間の1か月平均の時間外労働を80時間を超えて行わせた場合については、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断されることから、事業者は、上記aの措置に加えて、作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等の当該労働をした労働者に関する情報を産業医等に提供し、当該労働を行った労働者に産業医等の面接による保健指導を受けさせるものとする。また、産業医等が必要と認める場合にあっては産業医等が必要と認める項目について健康診断を受診させ、その結果に基づき、当該産業医等の意見を聴き、必要な事後措置を行うものとする。

 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、事業者は、産業医等の助言を受け、又は必要に応じて労働衛生コンサルタントの活用を図りながら、次のとおり原因の究明及び再発防止の徹底を図るものとする。

原因の究明

 労働時間及び勤務の不規則性、拘束時間の状況、出張業務の状況、交替制勤務・深夜勤務の状況、作業環境の状況、精神的緊張を伴う勤務の状況等について、多角的に原因の究明を行うこと。

再発防止

上記の結果に基づき、再発防止対策を樹立すること

(出所:連合ホームページ)
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