■えんぶりとは?
八戸地方で毎年2月17日~20日に開催される祭り。
馬の頭をかたどった烏帽子をかぶった太夫が稲作の動作を模した『摺り』と呼ばれる舞いを披露し、その年の豊作を祈願するためのものである。
1979年(昭和54年)に国の重要無形民俗文化財に指定された。
かつて甲斐の国からやってきた南部氏の始祖、南部光行の家来たちが始めた祭とする説が有力で、800年以上の歴史があるとされる。
えんぶりの語源は
朳木へんに八で「えぶり(語源は揺すぶり)」と呼ばれる農機具から来ているとされる。
えぶりはT字型で、グラウンドをならすトンボに似た形をしている。ゴルフ好きのお父さんならしょっちゅう手にしているかもしてません・・・。えっ?俺は上手いから使わないって?失礼しました。
太夫達はジャンギやナリゴ、カンダイといった棒で地面を摺ることで、冬の大地を目覚めさせる。
八戸の人たちはえんぶりが終わると春の訪れを感じるのである。祭りが終わるころ、蕪島のウミネコが遠い北国からやってくる。
でもえんぶり期間中はなぜか急に寒くなって雪が降ったりするのが不思議なところ。
■摺りとはどんな舞いなのか?
太夫は米作りの動作である、種まき、田植え、畦(くろ)止め(田から水が漏れない様、土をつき固める)を模した摺りを見せる。
その摺りは地面を踏みしめ、大きな烏帽子(重さ1.2kg~2.0kg)をかぶった頭を激しく振り動かすというダイナミックなものである。太夫が持つジャンギには金輪がついていて、振るたびに鳴るシャンシャンという音が寒空に響く様が郷愁を誘うのである。
太夫は通常、3人で構成され、成人男性が務める場合が多い。組によっては5人だったり、大人と子供の2組で計6人の組があったりと様々。
摺りと摺りの合間には子供たちが演じる祝福芸が披露される。
■摺りには2種類ある
伝統に則ったもので、動作がゆるやかな「ながえんぶり」
動作が激しく、早い「どうさいえんぶり」
の2種類がある。
平成23年度は33のえんぶり組と8組の小中学校のえんぶりクラブが参加しているが、ながえんぶりは売市、重地、中居林、横町、尻内、石堂、平内の7つの組と中居林小、第一中学校の2つの学校のみで、現在ではどうさいえんぶりの組が圧倒的に多い。
「ながえんぶり」
3人の太夫のうちの1人は『藤九郎』というリーダーを務める。藤九郎の烏帽子の左右両側には赤いボタンや白いウツギの花がついていることから見分けられる。
藤九郎は手にナリゴ(絵馬のような板に金具がついた棒)を持って摺りを行い、その間、カンダイ(先がかぎ状に曲がった棒)を持った他の2人の太夫が両脇で首を振る。烏帽子は馬の首を模したものとされるが、キョロキョロする様子は鶏のようにも見える。
「どうさいえんぶり」
手にジャンギを持つ3人の太夫が同じ動作の摺りを行う。烏帽子についた前髪という5色の紙テープの束を振り乱して舞う様が美しい。動きが早く勇壮な摺りを見せる。
■祝福芸にはどんなものがあるのか?
※松の舞い・・・松の葉をイメージさせる扇子を持って踊る舞。小学生、幼児が演じることが多い。
「松の舞とも囃せやい!松の舞やァ見さいや 松の舞や~見っさいやァ!」などと歌いながら舞う。
酔っ払った男が松の枝を手に踊ったのが始まりとされる。
※喜び舞い・・・小学生、幼児が扇子片手におめでたい歌詞を歌いながら舞う。
「何を舞ったらよかろうか。何を舞っても喜びだ。」「ハァ喜び舞いや見っさいや 喜び舞いや見っさいや」ここの歌詞松の舞と同じですね。恵比寿舞いにも「何を舞ったらよかろうか 何を舞ってもお夷(いびす)だ」という歌詞がある。もともとは共通していたのだろうか?
※エンコエンコ・・・銭太鼓を両手に持って踊る。幼い女児が演じることが多い。
※恵比寿舞い・・・恵比寿様が鯛を釣り上げ、旦那様に献上するまでを演じた踊り。小学生の少年が演じることが多いが、ベテランが演じる組も。
「よそへはやらぬ。隣さんにもやらぬ。これの旦那様にそっくり収めた~」
※大黒舞い・・・打出の小槌型マラカス(?)をもった大黒様をイメージさせる舞い。女性、女児や女子中高生が演じることが多い。
「春の初めに福大黒は金をどっさりしょって、舞い込んだや~コラひとつとせ」
「しんしょはのぼりてのびまわす(?)ふたつとせ」
「宝の山へと登らるる。コラ三つとせ」「今年は豊年、万作だ」
「恵比寿が舞うやら踊るやら コラ四つとせ」
「お宝子宝積み重ね。コラ五つとせ」
「大鯛小鯛を釣り上げて」
と、めでたい歌詞の数え歌となっている。
※大道芸(金輪切り、玉すだれ、漫才等)・・・えんぶり組によって様々である。演じるのも老若男女様々。
えんぶりに用いられる道具がよくわかる三浦福壽さんの絵。
絵の中央あたりに「えぶり」も見られる。木へんに發の字でえぶりと読んだみたい。
太夫の勇壮な摺りと、その合間に挟まれる子供たちの微笑ましい舞いが対照的である。
2歳という小さな子が参加することもあり、お兄さんお姉さんについていこうと短い手足で必死にがんばる姿はかわいらしく、ユーモラスである。
反対に上は76歳の男性というのが最高齢だそうである。高齢男性が恵比寿舞、親方、囃子方を演じることが多いのに対し、高齢女性が出てくるのは見たことが無い。
■えんぶりを見るには?
平成23年度1日目、2日目に行われるイベントから紹介
2月17日(木)
7:00~
●奉納摺り 長者山新羅神社
その後、「長者まつりんぐ広場」 全えんぶり組
8:00~9:00
●えんぶり撮影会 長者山新羅神社
10:00
●えんぶり行列 鍛冶町出発・・・すべてのえんぶり組が列をなして街中を練り歩く。
10:40~11:20
●一斉摺り(三日町・六日町・十三日町・ヤグラ横丁)
全てのえんぶり組が勢ぞろいし、摺りを行う。午前中で明るいので、写真を撮るのには最適。
12:30~
●御前えんぶり 市庁前市民広場・・・市庁前の特設ステージにてえんぶりを披露
13:00~16:00
●えんぶり公演(有料 前売券900円、当日券1,000円)八戸市公会堂 ・・・これ行った事ないんですが、公会堂のステージ上で雪景色の農村の絵をバックにえんぶりが見られるみたいです。
17:00~
●八戸ポータルミュージアム「はっち」でのえんぶり披露・・・23年から新たに始まった。1階ホールで行われるが、2階3階まで立ち見のお客さんでいっぱいだったみたい。
18:00~19:00
●かがり火えんぶり 市庁前市民広場・・・特設ステージ上でのえんぶり披露と撮影会
かがり火が幻想的なえんぶり。早めにスタンバイしないと、前列で見るのが難しい。
夜なのでとにかく寒い。屋台も出てるので、せんべい汁などで暖を取るのもよいでしょう。最近ではくじら汁を食べられないので悲しい。
16:00~、18:00~、20:00~
●お庭えんぶり 更上閣(有料 2,000円)・・・大正時代の邸宅『更上閣』の庭でえんぶり披露。昔、お金持ちの庭先で演じられたというえんぶりを再現。大旦那様になった気分でえんぶりを見られちゃいます。
お庭えんぶり事前予約
公演日時:平成23年2月17日(木)~22日(火)①16:00~(17日、18日のみ) ②18:00~ ③20:00~
人数:1公演あたり120席
料金:1席 2,000円(甘酒・せんべい汁付き)※全席前売制
販売開始:平成23年1月12日(水)午前9時~(土日祝日を除く)
販売所 (社)八戸観光コンベンション協会
八戸市大字堀端町2-3 商工会館1F
TEL 0178-41-1661
庭に向いた窓を開け放した半室内から見るえんぶり。使い捨てカイロ、レンタルひざ掛けが用意されてます。せんべい汁と甘酒が振舞われ、体を温められます。
2組のえんぶりが披露されるが、「どうさいえんぶり」と「ながえんぶり」2種類を見られるのがよい。ラジオ「おもしろ南部弁講座」にも出演している柾谷伸夫さんの面白くてためになる解説もついている。個人的にはいちばんオススメ。約1時間。
18日
11:00~12:00
●史跡根城・えんぶり撮影会(有料:入場料250円)史跡根城の広場主殿前(有料・・・安土桃山時代の南部のお殿様の居城、根城を再現した根城の広場でのえんぶり公演。駐車場24台、八戸駅前からバスで12分。根城バス停下車。
昼で明るいのに加え、歴史を感じさせる建物をバックにしての摺りはタイムスリップしたかのような感覚に陥る。こちらも写真を撮るまたとないチャンス。
19:30~
●かがり火摺り 市庁前市民広場・・・かがり火が焚かれた中で複数のえんぶり組が同時に摺りを行う、いわば夜の一斉摺り。どの組を見ていいのか迷っちゃいます。
※他に八食センター等でもえんぶりが行われる他、ホテルのディナーショー等でも見ることができる。
また期間中は民家や商店の門前で摺りを行う「門付け」を行うえんぶり組を市内各地で見ることができる。
どうでしょう?えんぶりの魅力が少しでも伝わればうれしいです。
来年こそ「八戸のえんぶり」を見に来ませんか!?
参考
八戸えんぶりHP
国指定文化財等データベース
デーリー東北新聞社「えんぶりまめ辞典」
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