20世紀が陸送そして空輸の時代であったように、今世紀は宇宙輸送が著しい発展を遂げた。宇宙開発において欧米に大きく遅れを撮ったわが国だが、国内企業の競争激化により今やその差は埋まりつつある。ことマスドライバー応用技術では世界を牽引しつつある。その象徴ともいえる、わが国で3番目、東北地方では初めてのマスドライバー『疾風』が旧八戸港跡地に完成した。
マスドライバー(以下M.D.)はリニアモーターやレールガンの力によって物資・資材を衛星軌道上へと射出する施設でアメリカで10軌、EUで7軌、アジア・アフリカ・ロシアで計25軌が既に稼動中。
M.D.『疾風』は住友宇宙株式会社が7年の歳月をかけて建設した新型M.D.で、従来型のものに比べ出力を大幅に向上した改良型。第一宇宙速度の2倍以上である最大25km/sで物資を射出できる。
欧米では10年以上前に建設されたM.D.による事故が多発している。特に、一昨年カリフォルニア州で280人の犠牲者を出したM.D.『Hammer』の物質墜落事故は記憶に新しい。事故原因のひとつとして施設の老朽化により、射出速度が大幅に低下したことがあげられている。
そこで、『疾風』設計に当たっては耐久性とともに射出速度に余裕を持たせた設計が取り入れられた。今世紀はじめに開通した東北新幹線『はやて』と同じ名前が冠されたM.D.『疾風』。新幹線同様、我が県にとっての光となるか。今年度3億トンの物資輸送が見込まれている。