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新温泉町浜坂にある日本キリスト教団浜坂教会の
牧師日記

「名はレギオン、大勢だから」

2018年02月22日 | 聖書のお話

「名はレギオン、大勢だから」 マルコによる福音書 5章1~12節

 人は、堪えられないような苦しみを受けたり、安心していられる場所を奪われたりすると、大きなストレスを抱えてしまうものです。そのストレスから逃れて生きるために、苦しんでいるのは自分ではなく、他の人が苦しんでいるのだと考え、自分の命を守ろうとするために苦しみを切り離すことが起こるそうです。一方で切り離されて苦しんでいる存在もまた自分であり、そうして一人の人に複数の人格が生じてしまう症状のことを解離性同一性障害(DID)と呼ぶそうです。この病の治療法は、その人の話をよく聴くということなのだそうです。

 このことを当てはめてみると、ゲラサ地方で出会った人は、解離性同一性障害(DID)で苦しんでいたのかも知れません。彼は、鎖を引きちぎり、足かせを砕いてしまうほどの怪力を発揮したり、何かを訴えて叫び続けていたり、自傷行為をするかと思えば、ひれ伏してイエスさんを礼拝する信心深さもありました。まるで、彼のうちに複数の人格が存在しているかのように思えます。イエスさんは、彼の話を聴こうとして「名は何というのか」とお尋ねになりました。すると、彼は「名はレギオン、大勢だから」と答えました。

 レギオンとは、6千人を伴うローマ帝国の軍団の名称でもあります。戦争によって身内を殺されたり、安心していられる場所を奪われたりすることは、堪えられないような苦しみです。彼は、ローマのレギオン軍団による戦争被害者であり、イエスさんは、戦争によって個人の尊厳を奪われた人に寄り添い、その深い苦しみと心の傷を癒やされたのかも知れません。自由、平等、平和の尊さを教えられているような気がします。

 


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