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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「水増し」表現は適正ではない

2009-06-05 12:23:57 | 農村環境
 昨日「「悪」と言われる所在」において、国土交通省が投資効率の低い路線の建設凍結をしたことについて触れた。そもそもそれらが自省の中で試験問題を作成して自ら採点したという自省基準に照らしたというものなのだろうが、このことについて6月3日の中日新聞で農水省事業の「投資効果水増し」というタイトルで記事にされたものにも愛知大学の教授が同様のコメントをしている。同日付の中日新聞では三重県で行われている宮川用水第2期地区が三面に渡り大事件のごとく叩かれている。そこでは前述の国土交通省と同様の投資効率計算が紹介されている。総効果額を総事業費で除して、それが1.0以上ならOKというものだ。問題は効果額の内容だと記事では触れている。電柱や道路が新しく更新されることで生まれる公共施設保全効果。水田のほ場整備を行うことで地籍が明確になるという地籍確定効果。農道の景観が良くなるという農道環境整備効果。そのほか遺跡が発見されて文化財的価値が明かになる文化財発見効果。用水路の地中化で通学路が安全になる安全性向上効果。などなどさまざまな農外効果はそもそもの農業振興の効果ではないと指摘する。

 問題の原点には、当初の計画事業費に対して総事業費が上がったにも関わらず効果額も上乗せされて上がっているのが気に入らないようだ。とくに当初にはおそらく無かったであろう効果要因を追加して上乗せしているのが「おかしい」と言うのだ。確かにマジックといえばマジックであるが、ではそもそもそうした農外効果が発生しないというものではない。理屈のように聞こえるが、実際のところ例えばほ場整備を行わなければ文化財の発見はなかっただろう。そして文化財があると判断されて埋蔵文化財発掘を行えばそれらに従事する人たちへの調査費によって本来関わらなくても良かった人たちへ報酬として効果が出ることになる。これを事業費の額に比例して加算するのが適正なのかという指摘もあるが、それは計算方法として指摘するものであって、そうしたマジックをごまかしのように算定したという批判は間違っている。また公共施設が更新されることによって発生するという効果にしても、支障があって作り変えるということになれば、それまで利用した期間の効用と今後の耐用年数の中で発生する効用とを比較して延命される分が効果額としてカウントされるのは間違いではない。もちろんこれもその算定方式が適正かどうかという批判は受けても仕方がないが。

 つまるところこうした土木事業をすることによって「土建屋が儲かる」という陰湿な妬み(そういうものが無いとは言わないが、なぜ土建業界だけがそう叩かれ続けなければならないのかという思いはある)の表れであって、問題のすり替え的な発想ではないかと思う。むしろこうした農外効果を積み重ねていかなければ農業にまつわる多大な施設の維持もなかなかままならないということなのである。農業振興にかかわる効果額だけで事業が本当に成り立つかどうか考えてみれば、おそらく今では多くの事業が凍結しなくてはならないほど際どいものになるだろう。開発をして増産することで効果を見込んでいた時代とは異なる。その証として、今では環境とか生態系などというものを意識して事業は進む。それを効果と言えないはずはない。
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