Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

総務省のドラえもんポケット

2009-06-22 12:25:29 | つぶやき
 下伊那郡内の各町村で「定住自立圏構想」における協定が議会で可決され始めている。実はその議決において、どこの町村も共産党議員だけが反対票を投じるとというかたちで可決されている。19日に下條村が可決して、これで1町2村が可決に至っている。下條村の反対意見をみると「『中心市』の飯田市主導になり、町村自治が守られるか分からない。慎重に時間をかける必要がある」というものである。

 地方紙自治に少しでも興味のある人はその内容を少しでも解っているのだろうが、おおかたの一般住民には何のことかさっぱりだろう。そもそもこうした動きは国が働きかけるものであって、それも一般住民に対して投げかけているのではなく、自治体に対してのようは補助金を飴としてちらつかせているようなものなのである。わたしの町でも「道州制につながるのでは」「対等性は保てるのか」といった内容を町長に投げかけた議員がいた。これもまた共産党議員である。

 では「定住自立圏構想」とは何なのということになる。町のHPには次のように紹介されている。

○私たちが住んでいる飯田・下伊那地域は、雄大な自然の中で独自の文化を築きあげ、古くから交通の要衝として栄えてきました。最近は三遠南信自動車道、リニア中央新幹線といった新たな動きがあり、地域発展の可能性も期待されます。しかし、少子高齢化、人口減少、地域経済の低迷など厳しい社会状況の中で、この地域を持続的に発展させ、後世に引き継いでいくことは容易なことではありません。
○国も同様な状況で、広範な支援が期待できなくなる中、それぞれの市町村が単独で生活機能を整備していくことは難しくなることが予想されます。
○定住自立圏構想は、圏域の中心となる「中心市」と「周辺町村」が必要と
する個別のテーマごとに、1対1の協定締結を積み重ねていくことで相互の
利益を生み出していきます。市と町村がそれぞれの特色を活かしながら、生
活に必要な機能を「集約とネットワーク」の考え方で役割分担し、自立した
生活圏域を構築していくものです。

というものである。わたしなりに解釈すれば、平成の合併が収束宣言の後、とくに小泉時代に締め付けを受けた地方に対しての補足的な政策と言ってよいのだろう。この政策も最近辞任劇で話題になった総務省の企みである。わたしたちの生活空間を左右するような政策を発信する、実はわたしたちに最も身近な省といっても差し支えない。合併も総務省、もっといえば合併以前に動き出していた広域連合という企みもこの省である。今回の定住自立圏構想というものを総務省のHPから探ってみると、やはりと言う具合に三大都市圏ではなく地方を優先した政策である。その政策の内容の中でいくつか気になるものを拾ってみる。「医療」という分野を見ると「病院と診療所の役割分担による切れ目のない医療の提供、地域医療を担う医師の育成や派遣、ICTを活用した遠隔医療その他の医療を安定的に提供できる体制の確保等に向けた連携」とある。良く受け止めれば最近の医師不足の中で、中心市が医師を確保して周辺自治体へも医療サービスを展開していくと取れるが、悪く取るとただでさえ中心市の医師が不足している中では役割分担という名目で中心市以外にある病院はサービスを切られる可能性もある。そして「宣言中心市等における人材の育成」という部分で「宣言中心市等における外部からの行政及び民間人材の確保」という考えを当てはめていくと、周縁部が中心市のために役割を担わなくてはならなくなるという印象も浮かぶ。

 もちろん悪く取ればということで、交通網に関してみれば、現在は自治体ごとにバス路線を巡回させていたりしていて、空っぽのバスが走っているのが実情である。広域的な取り組みでそうしたことが解消される可能性は高い。地産地消という考えも広域的な方がより材料の提供は広がる。ただ広域サービスという名の下で集約されてさらなる周縁部の過疎が進むということが予想されないわけではない。地元の議員が「道州制につながるのでは」などということを言ったが、そんなレベルよりももっと身近な部分で問題を孕んでいる可能性もある。もっといえばなぜこうも総務省は次から次へと広域的行政に向けた施策を引き出しから出してくるかということである。広域連合とどう違うのという疑問を誰でも持つだろうし、合併と、そして今回の定住自立圏構想とどこがどう整理されているのかと問われればそれを答えるられる人は少ないだろう。簡単に言えばこうした飴を用意してそれに飛びつく魚たちを待ち構えているようなものなのだ。もちろん財政難の中で、補助金が欲しいと思っている行政関係者が多いのだろうが、そんな飴に飛びついてしまったせいでこんな世の中になってしまったことをみんなどこかで知っているのに、結局は金に弱いのである。飯島町町長がこの定住自立圏構想に対して議会で問われ、消極的姿勢を示した。その中で「スタートしている下伊那地方での協議をみると問題も多く、慎重な対応が必要」と答えている。実はこの中心市の用件に飯島町が属している上伊那南部地域だけでは当てはまらないというのが本音なのだろう。中心市宣言の用件に「人口が5万人程度以上であること(最低でも4万人を越えていること)」というものがある。ようは上伊那広域圏でないとそれを満たさないわけで、住民サービスという連携から考えると上伊那では合意できない内容になるだろうし、同じ地域に二つ以上の市が存在していれば同じような駆け引きが生じてしまうはずだ。

 さて総務省の次なる引き出しには何が入っているのだろうか。

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 ちなみに総務省のHPでは「広域連合とは」という答えを記載している。そこには「広域連合は、様々な広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応するとともに、権限委譲の受け入れ体制を整備するため、平成7年6月から施行されている制度です。 広域連合は、都道府県、市町村、特別区が設置することができ、これらの事務で広域にわたり処理することが適当であると認められるものに関し、広域計画を作成し、必要な連絡調整を図り、総合的かつ計画的に広域行政を推進します」とある。 この後合併問題に直面した市町村は、広域連合の取り組みは何だったのかと思ったことだろう。そして合併騒ぎが終わった。わたしの町ではこの定住自立圏構想に医療分野で期待しているのだろうが、前述したように中心市主導で逆にサービス低下にならないことを祈るだけである。
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