Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

用悪水路

2009-06-20 19:43:43 | つぶやき
 わが家の北側には小さな水路がある。夏場は時に枯れたりするからいわゆる灌漑用の用水路ではない。用途は周辺の湧水あるいは排水を集めて下流へ流している排水専用のものと言えるだろう。排水というとどこか汚さが通じるように、この世の中では下水と等しいほどの厄介者ということになるだろうか。だからというわけではないが、この水路敷は登記上「用悪水路」という地目になる。「排水」ならまだしも、いよいよ「悪」ときたものだ。土地登記上の地目には21種類がある。あまり聞きなれないものがあるからこんなにたくさんになるが、通常の農村でもせいぜい田、畑、宅地、山林、原野、雑種地ぐらいが一般的で、あとは墓地、境内地、ため池、公衆用道路に前述の用悪水路が加わる。水気のある地目としてはため池か用悪水路くらいしか浮かばないのである。ではなぜ世の中にたくさん存在する用水路なのにこの「用悪水路」という地目がそれほど耳慣れないかというと、用水路なり排水路なりは古くからあったもので国有地の「青線」と呼ばれているものがほとんどである。ところが開発の時代を経て新規に設けられた水路に対しては地番が振られることになって、そうした水路は「用悪水路」と名づけられていったのである。青線が国有地ならこうした後に登記されてきた水路は個人のものであったり、自治体のものであったりする。明らかに多くの人々のためにあるものなのに、個人の土地として登記されて「用悪水路」とされていることも多いのである。事実、わが家の北側の水路も、わたしが家を登記した際にはまだ個人名の土地であった。後に町に寄付されて現在は自治体所有物ということになっているが、これらも明治事時代の古い公図のままだったら、用悪水路などという地目で登記されずに、大きな畑の中にただ水が流れているだけの形上の水路のものの個人の土地の中を勝手に水が集まって流れているというものになっていたのかもしれない。たまたま国土調査と言われるものが行なわれ、土地が明確化されたことによってこの「用悪水路」が登場したわけなのだ。

 当初「用悪水路」という地目を目にした際、「これは排水路であって、用水路は「用水路」という地目があると思っていた。ところがそんな地目はないのである。この「用悪水路」についてはこう説明されている。「灌漑用又は悪水排泄用の水路」である。ようは灌漑用と排泄用両者を用悪水路」と言うのだ。確かにどちらも用を足すだけの意味のある水路ではあるが、灌漑用に使っている水路に対して「悪水路」という表示はどうも納得がいかないのである。先日も会社の登記関係の仕事をしている先輩と話していて、「なんで用悪水路なの?」という会話をした。わが社の場合は排泄用の水路に関わった仕事もしているが、多くは灌漑用の水路に携わっている。そうしたなかでこの「悪」と呼ばれる名称に出くわすとどうも気分が良くないのである。その先輩も「そうだよね。ただの「水路」で良いのに何で「用悪」なんだろうね」とその名称に疑問符を投げた。21種類も用途別に地目があるのならせめて「用」と「悪」を別々にして欲しかったものである。ただでさえイメージの悪い都会での用悪水路が、農村でも同様に呼ばれるのはやはり気分は良くないわけである。
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