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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「○○さ」のどーろくじん

2024-07-04 23:38:25 | 民俗学

 

 「旧武石村余里の自然石道祖神 中編」で触れた通り、旧武石村余里においては、ずいぶん近いところに道祖神が祀られている。数軒単位で道祖神があったりして、よその道祖神とは祭祀数がとても密である。このことについても小林大二氏が『依田窪の道祖神』で触れている。

 一つ目のグラフはその『依田窪の道祖神』に掲載されている依田窪における道祖神際箇所数と世帯数をその祭祀箇所数で割った数値、ようは箇所当たりの戸数を算出したものである。前掲書では一覧になっているものをグラフ化してみた。ただし前掲書の発行が古いものであるから、その世帯数データは昭和45年の国勢調査の値である。そもそも祭祀箇所数が圧倒的に突出しているのが武石である。70箇所という祭祀箇所は次に多い丸子の30箇所の倍以上である。したがって祭祀箇所あたりの戸数も小さなものとなり、武石では15戸と算出されている。その中でも密さを実感させるのが「余里」なのである。このことについては、二つ目のグラフ、武石村での集落別の同じ値を示したもので、余里の祭祀箇所数は14を数え、箇所当たり6戸と算出されている。

 一つ目のグラフでもわかるように平均戸数にはばらつきがあるが、50戸前後というのが一般的と捉えられる。武石でも人口の多い地区では同様の値を示しており、同じ集落内に何か所も祭祀場所があるという例は、他の地域を見ても珍しい地区と言えそうである。小林氏は前掲書に次のようなことを記している。

「あれはとよサところのどーろくじんだ。あれはしばっクルワのどーろくじんだ」

ようは個人名や、屋号で呼ばれる道祖神が、余里には存在する。それほど小単位で祀られているのである。


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