Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

紅葉の芽吹き

2006-04-24 08:25:38 | 自然から学ぶ
 妻の実家の裏山にあるイワツツジの近くに一本の紅葉しているような木がある。カエデの系統の木は芽吹きが紅葉しているように見えるのだが、実はこの木は「ハナノキ」である。飯田下伊那にはこのハナノキの自生地があちこちにあるものの、このハナノキは絶滅危惧種として知られている。

 『下伊那郡誌自然編』によると、ハナノキは幕末の博物学者伊藤圭介によって世界の学会に紹介されたカエデ科の落葉高木という。恵那山を中心とした長野・愛知・岐阜の3県の地域と、大町市居谷里湿原だけに分布するといわれる日本固有の植物で、下伊那地方では飯田市山本を北限として阿智村・下条村・阿南町などに自生地があることで知られている。日本固有ではあるものの、ハナノキの仲間は世界にもあって、化石からグリーンランドやアラスカからヨーロッパまで広く分布していたといわれるが、現在は日本と北アメリカ東部だけにみられる。土地を選ばないといわれ、実生や挿し木などによって人工的に植えられて成長しているものも多いという。

 飯田市山本では平成2年ころにゴルフ場開発が自生地周辺で起きて、地元の反対で中止したという経緯もある。また、その周辺を現在盛んに整備されている三遠南信道が通過する予定でもある。昨年断念された県が設置予定であった阿智村の産廃処理施設の周辺にもハナノキがあった。湿地帯に自生しているケースが多いということで、そうした立地条件は開発の標的にされる、といういい例であったのかもしれない。

 妻の実家でもこのハナノキを阿智村の知人からいただいて植えたものという。かなり昔に植えたもので、幹はずいぶんと太い。ハナノキのことは知っていたものの生態をよく知らなかったわたしは、妻に「あの紅葉している木は何」と聞いたわけだが、カエデ科であるということも知らなかった。芽吹きがいかにも紅葉しているように見え、それも春の姿なのだと知る。葉の姿もまさしくカエデ系の形だ。そんな紅葉の芽吹きも、しばらくすれば緑に変わる。次は自生地にも行ってみたい、そんな気持ちになった。
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