国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

君の頭は自然に揺れているか?

2011年08月11日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
昨日の『ココリコ坂から』ではないが、
映画の出来はともかくとして、「いいなぁ~」と安易に言わせてくれない雰囲気がある。
良いものは良いのだが、
あまりにも簡単に「いいなぁ~、好きだなぁ~」などと言ってしまうと
自分を安く見積もっているかのような感じになってしまうのだ。
(果たして誰に対してか?)
だからとりあえず「うん、まぁ、よかったんじゃない?」と
言葉を濁しながら、上から目線で評してしまうのが、何ともいえずわびしい。

それはジャズにも言えて、俗に言う「美メロ」(つまりは美しいメロディー)を聴いて、
「いいなぁ~」と言うのは簡単なのだが、
どうにも「そっちよりもこっちの方がよっぽどイイよ!」と
語気を荒げて言いたくもなってしまうことがある。

つまるところ、結局は「肩肘を張っている」わけだ。
それに加えてあれやこれやと理屈をこねくり回し、
何が言いたいのかまとまらなくなったりもする。
にわか趣味人のイタイ性である。

そんな時にこのアルバムを聴いてみる。
オーネット・コールマンの『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』
まずジャケットを見たらすぐにグルグル回したくなる印象的な顔の絵だ。

かけてみて驚くのが、最初の「テーマ・フロム・ア・シンフォニー」である。
「ファー、ミ、レー、ソ、ファー、ミ、レー、ソ」と
オーネットの下手なのか上手いのか分からないアルトのテーマが脳天を直撃する。
大体僕でさえ聴いていてテーマの音が分かるのだ。
それがだんだんと複雑にばらけていくのだが、
それでも「いいのか?」と思えるほど緊張感が感じられない。
ドラムもギターもずれているような、いないような…
とにかく「ファー、ミ、レー、ソ」である。

終わったと思えば2曲目も同じである。
もちろんヴァージョンは違うのだが、
しっかりと刻み込まれた「ファー、ミ、レー、ソ」が飛び出し、
オーネットのアルトがループしていく。
これは聴いてみないとその感じが分からない。
そもそもジャズというのは難しい音楽だと思われがちである。
だが、オーネットやアルバート・アイラーのように
児戯に近いような音を重ねていくことで曲をまとめていくミュージシャンたちもいる。

このアルバムを聴いていると「イイ」とか「よくない」とかいう言葉を越え、
そのタイトル通り、ただリズムにのって思うがままに
頭を揺らしていけばいいんだと思わされてしまう。
時には言葉を忘れて、
その本能の赴くままに何事も自然に楽しむ心が欲しいものだと思ってしまう。